朝鮮半島の激動と北東アジアの平和④ 戦争の危機 「すべてをかけ防ぐ」
今年2月初め、米国の次期駐韓大使に内定していたビクター・チャ氏はワシントン・ポスト紙に寄稿し、政権内で北朝鮮へのピンポイント攻撃=Bloody・Nose(鼻血作戦)が計画されていると告発。へーゲル元米国防長官は、同時期に軍事情報専門サイト「ディフェンスニュース」のインタビューで、政権内で検討されているとされる北への軍事攻撃について、報復がないと考えるなら「無謀な賭けだ」とし、「韓国で数百万の死者が出て、数万人の米国人も犠牲になる。大惨事もなく日本も切り抜けることはない」と強く警告しました。チャ氏の大使内定は取り消され、太平洋軍のハリス司令官が駐韓大使に決まりました。
米の軍事作戦を告発したビクター・チャ氏の寄稿文を掲載したワシントン・ポスト紙電子版より
2500万人影響
米国の議会調査局(CRS)は昨年10月末の報告書「北朝鮮の核の挑戦―軍事的選択肢と議会の論点」で、次のような分析結果を示していました。北朝鮮が1分間に1万発の砲弾をソウルに撃ちこめるとすれば、通常兵器だけでも戦闘開始から数日で3万~30万人が死亡し、戦闘開始から数時間で数十万人の韓国国民が死亡し、米国民10万人(または50万人)を含め南北で2500万人以上に影響が及ぶ。
一方、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は年初から北朝鮮との対話の道を追求。平昌冬季五輪開会式に北朝鮮高官を招待し、金永南(キムヨンナム)最高人民会議常任委員長や金正恩(キムジョンウン)氏の妹・金与正(キムヨジョン)氏らとの面会を実現し、南北首脳会談の開催とともに米朝首脳の直接対話を促しました。南北の接近・対話路線の強まりに世界中が注目しました。
このとき安倍晋三首相は、平昌五輪・パラリンピック期間中延期となった米韓合同軍事演習について、五輪終了後は「予定通り実施することが重要だ」と発言しました。これに対し文大統領は「これはわれわれの主権・内政に関連した問題だ」と不快感を示しました。
何もできず
日本の元外務省高官は「昨年から今年にかけて戦争の一歩手前までいった。意図がなくても計算違いで戦争が始まる非常に危険な状態だった」と指摘。「圧力の先に何が起こるか、戦争か交渉かの二つだ。戦争になれば、北は滅亡するがその時日本に向かって撃つ。ミサイルに核を載せれば大惨害が起きる。そんな戦争を起こさせてはならない、それが日本の総理に課せられた責任であり安全保障の根本だ。圧力の先に交渉があるとして動くべきだった。ところが何もできなかった」。元高官は憤然とした表情を見せました。
戦争回避―。南北、米朝会談で当面の重大な危機が回避されたのです。
文大統領は昨年8月15日の演説で次のように決意を語っていました。「二度と戦争はあってはならない。すべてをかけて戦争だけは防ぐ」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年8月18日付掲載
「北と南の軍事衝突が起これば数百万の死傷者が出る」という指摘。それだけは防がないといけないと対話へ舵を切る。
今年2月初め、米国の次期駐韓大使に内定していたビクター・チャ氏はワシントン・ポスト紙に寄稿し、政権内で北朝鮮へのピンポイント攻撃=Bloody・Nose(鼻血作戦)が計画されていると告発。へーゲル元米国防長官は、同時期に軍事情報専門サイト「ディフェンスニュース」のインタビューで、政権内で検討されているとされる北への軍事攻撃について、報復がないと考えるなら「無謀な賭けだ」とし、「韓国で数百万の死者が出て、数万人の米国人も犠牲になる。大惨事もなく日本も切り抜けることはない」と強く警告しました。チャ氏の大使内定は取り消され、太平洋軍のハリス司令官が駐韓大使に決まりました。
米の軍事作戦を告発したビクター・チャ氏の寄稿文を掲載したワシントン・ポスト紙電子版より
2500万人影響
米国の議会調査局(CRS)は昨年10月末の報告書「北朝鮮の核の挑戦―軍事的選択肢と議会の論点」で、次のような分析結果を示していました。北朝鮮が1分間に1万発の砲弾をソウルに撃ちこめるとすれば、通常兵器だけでも戦闘開始から数日で3万~30万人が死亡し、戦闘開始から数時間で数十万人の韓国国民が死亡し、米国民10万人(または50万人)を含め南北で2500万人以上に影響が及ぶ。
一方、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は年初から北朝鮮との対話の道を追求。平昌冬季五輪開会式に北朝鮮高官を招待し、金永南(キムヨンナム)最高人民会議常任委員長や金正恩(キムジョンウン)氏の妹・金与正(キムヨジョン)氏らとの面会を実現し、南北首脳会談の開催とともに米朝首脳の直接対話を促しました。南北の接近・対話路線の強まりに世界中が注目しました。
このとき安倍晋三首相は、平昌五輪・パラリンピック期間中延期となった米韓合同軍事演習について、五輪終了後は「予定通り実施することが重要だ」と発言しました。これに対し文大統領は「これはわれわれの主権・内政に関連した問題だ」と不快感を示しました。
何もできず
日本の元外務省高官は「昨年から今年にかけて戦争の一歩手前までいった。意図がなくても計算違いで戦争が始まる非常に危険な状態だった」と指摘。「圧力の先に何が起こるか、戦争か交渉かの二つだ。戦争になれば、北は滅亡するがその時日本に向かって撃つ。ミサイルに核を載せれば大惨害が起きる。そんな戦争を起こさせてはならない、それが日本の総理に課せられた責任であり安全保障の根本だ。圧力の先に交渉があるとして動くべきだった。ところが何もできなかった」。元高官は憤然とした表情を見せました。
戦争回避―。南北、米朝会談で当面の重大な危機が回避されたのです。
文大統領は昨年8月15日の演説で次のように決意を語っていました。「二度と戦争はあってはならない。すべてをかけて戦争だけは防ぐ」(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年8月18日付掲載
「北と南の軍事衝突が起これば数百万の死傷者が出る」という指摘。それだけは防がないといけないと対話へ舵を切る。