朝鮮半島の激動と北東アジアの平和⑧ 対話で紛争解決へ 日中「対立」は論外
「朝鮮戦争終結の平和条約が締結され、在韓米軍が撤退したら日本は“最前線国家”だ」
在韓米軍の撤退で日本は中国との「対決」の最前線に立つことになり、大軍拡や改憲が避けられないという主張がメディアや安保関係者から盛んに出されます。
机上の空論
これに対し元日朝国交正常化交渉日本政府代表の美根慶樹氏は、「安保専門家には、ミサイルや艦艇などの装備で初めて日本が守られ、その一つでも欠ければだめだという発想がある。それは一種の机上の空論だ」と指摘。「今は冷戦構造が終わると同時に新しい関係ができていくプロセスだ。日米安保がすぐになくなることはないが、米中、日中をはじめ北東アジア地域の経済的椙互依存の深まりも考慮し、非軍事的な解(答え)を見いだすことが必要。軍事オプションの一つが欠けたら別の軍事力で埋めるという古い発想は百害あって益なし」と語ります。
米朝首脳会談を受け中国も「平和的手段と対話による政治的解決」(王毅外相)を強調し、支持を表明しています。(6月12日)
韓国の在京メディアの関係者は、「新たな日中の対立激化は最悪のシナリオ。日清・日露戦争以来の植民地支配とその後の分断国家を終わらせるプロセスなのに、大国の対立のはざまで半島が再び戦場国家になりかねない」と、歴史意識に根差した強い懸念を語ります。
尖閣諸島
責務と役割
中国が軍拡を進めることに周辺国が不安を感じているのは事実です。南シナ海では人工島の造設と軍事化を継続。尖閣諸島周辺では中国艦船による領海侵犯が続いています。
他方、8月12日には安倍晋三首相と中国の李克強首相が日中国交正常化40周年にあたり祝電を交換。5月の李氏の訪日をうけ、「両国関係が正常な関係に戻った」と相互に確認し、関係改善への希望を述べ合いました。秋には安倍首相の訪中も検討されています。
米国も尖閣をめぐる日中の偶発的衝突に強い懸念を示しており、自衛隊と中国軍との海空連絡メカニズムが運用開始されるなど、衝突回避の努力もされています。
こうしたもとで日中間ではさらに踏み込んだ対話が必要です。
「九条の会」事務局員で一橋大学名誉教授の渡辺治氏は「南北、米朝という対立する当事者が、直接対話に踏み出したことで新しい局面が開かれた」と強調。そのうえで「朝鮮半島で切りひらかれた方向を北東アジア全体のルールにする。そのために日本は中国に直接対話をよびかけ、尖閣諸島など日中間の紛争案件の解決をはじめ、北東アジアの包括的な平和ルールづくりへと踏み出す責務と役割がある」と語ります。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年8月24日付掲載
尖閣諸島や南シナ海での緊張があるからこそ、中国との対話が大事。
「朝鮮戦争終結の平和条約が締結され、在韓米軍が撤退したら日本は“最前線国家”だ」
在韓米軍の撤退で日本は中国との「対決」の最前線に立つことになり、大軍拡や改憲が避けられないという主張がメディアや安保関係者から盛んに出されます。
机上の空論
これに対し元日朝国交正常化交渉日本政府代表の美根慶樹氏は、「安保専門家には、ミサイルや艦艇などの装備で初めて日本が守られ、その一つでも欠ければだめだという発想がある。それは一種の机上の空論だ」と指摘。「今は冷戦構造が終わると同時に新しい関係ができていくプロセスだ。日米安保がすぐになくなることはないが、米中、日中をはじめ北東アジア地域の経済的椙互依存の深まりも考慮し、非軍事的な解(答え)を見いだすことが必要。軍事オプションの一つが欠けたら別の軍事力で埋めるという古い発想は百害あって益なし」と語ります。
米朝首脳会談を受け中国も「平和的手段と対話による政治的解決」(王毅外相)を強調し、支持を表明しています。(6月12日)
韓国の在京メディアの関係者は、「新たな日中の対立激化は最悪のシナリオ。日清・日露戦争以来の植民地支配とその後の分断国家を終わらせるプロセスなのに、大国の対立のはざまで半島が再び戦場国家になりかねない」と、歴史意識に根差した強い懸念を語ります。
尖閣諸島
責務と役割
中国が軍拡を進めることに周辺国が不安を感じているのは事実です。南シナ海では人工島の造設と軍事化を継続。尖閣諸島周辺では中国艦船による領海侵犯が続いています。
他方、8月12日には安倍晋三首相と中国の李克強首相が日中国交正常化40周年にあたり祝電を交換。5月の李氏の訪日をうけ、「両国関係が正常な関係に戻った」と相互に確認し、関係改善への希望を述べ合いました。秋には安倍首相の訪中も検討されています。
米国も尖閣をめぐる日中の偶発的衝突に強い懸念を示しており、自衛隊と中国軍との海空連絡メカニズムが運用開始されるなど、衝突回避の努力もされています。
こうしたもとで日中間ではさらに踏み込んだ対話が必要です。
「九条の会」事務局員で一橋大学名誉教授の渡辺治氏は「南北、米朝という対立する当事者が、直接対話に踏み出したことで新しい局面が開かれた」と強調。そのうえで「朝鮮半島で切りひらかれた方向を北東アジア全体のルールにする。そのために日本は中国に直接対話をよびかけ、尖閣諸島など日中間の紛争案件の解決をはじめ、北東アジアの包括的な平和ルールづくりへと踏み出す責務と役割がある」と語ります。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年8月24日付掲載
尖閣諸島や南シナ海での緊張があるからこそ、中国との対話が大事。