朝鮮半島の激動と北東アジアの平和③ 世界史的転換 新しい可能性を前に
「今必要なのは、新しい可能性を前に進めること。その可能性はまだ小さいが、その意味はとても大きい」。在京の韓国メディアの関係者の一人はこう述べます。
交渉に貢献
7月29日に都内で開かれた原水爆禁止2018年世界大会・科学者集会で基調報告した和田春樹東京大学名誉教授は、朝鮮戦争以降の軍事対立の歴史を振り返ったうえで、現在の米朝協議の歴史的意味を強調しました。和田氏は「朝鮮半島の完全な非核化は朝鮮半島の完全な平和と切り離すことはできず、単に(北の)非核化にとどまらない」として、米韓合同演習、在韓米軍問題、在日米軍の問題などに影響を与えると指摘。そのうえで「非常に難しい交渉だが失敗は許されない。そして成功すれば東北アジア世界を決定的に変えることになる。だからこの地域の全ての国家がこの交渉に参加し、これを助け、貢献しなければならず、これを傍観することは許されない。特に日本の責任は大きい」と力を込めました。
米朝共同声明にうたわれた完全非核化の「対価」とされる北朝鮮の「安全の保証」は、北朝鮮の国家承認、戦争状態の終結につながります。戦争状態の終結は、韓国に駐留する国連軍、在韓米軍の存在意義にかかわり、北朝鮮有事への対応を中心任務とする在日米軍と日米同盟体制にも影響をもたらします。まさに北東アジアの軍事的対立構造を平和のルールに置き換える世界史的転換の可能性があるのです。

原水爆禁止2018年世界大会・科学者集会で報告した日韓の研究者ら=都内、7月29日
米軍撤退へ
トランプ米大統領は米朝首脳会談後の記者会見で、3万2000人の在韓米軍を「将来、本国に戻したい」と発言し衝撃が走りました。4月末の南北会談直後、韓国の大統領特別補佐官が米外交雑誌への寄稿で「米国が平和条約にサインしたら、在韓米軍の存在を正当化するのは難しくなる」として物議をかもしました。
文在寅(ムンジェイン)政権は打ち消していますが、日米同盟派の安保研究者の一人は、「在韓米軍撤退はもともと米政権内にある議論。今の流れで出てきても不思議はない。韓国政府高官の発言を米韓当局が関知しないわけがない」と“警戒感”を示します。
元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、「トランプ大統領は、『交渉が順調に進む間は軍事演習はしない、挑発的だ』という姿勢だ。11月の中間選挙が終わればすぐ次の大統領選挙の動きとなる。この期間は平和のプロセスを進める大きなチャンス」と指摘。韓国がASEANと協力を進める動きを高く評価しつつ、「南北がどんどん和平の動きを世界に示すことは、懐疑的な内外世論を動かす力となる。日本としては、北朝鮮との国交正常化交渉を進めることが重要だ」と語ります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年8月17日付掲載
「在韓米軍を将来、本国に戻す」―。トランプ大統領らしい突拍子のないような発言ですが…。
平和条約が結ばれた後は、あながちないこともないかもしれません。まさに新しい可能性なのです。
「今必要なのは、新しい可能性を前に進めること。その可能性はまだ小さいが、その意味はとても大きい」。在京の韓国メディアの関係者の一人はこう述べます。
交渉に貢献
7月29日に都内で開かれた原水爆禁止2018年世界大会・科学者集会で基調報告した和田春樹東京大学名誉教授は、朝鮮戦争以降の軍事対立の歴史を振り返ったうえで、現在の米朝協議の歴史的意味を強調しました。和田氏は「朝鮮半島の完全な非核化は朝鮮半島の完全な平和と切り離すことはできず、単に(北の)非核化にとどまらない」として、米韓合同演習、在韓米軍問題、在日米軍の問題などに影響を与えると指摘。そのうえで「非常に難しい交渉だが失敗は許されない。そして成功すれば東北アジア世界を決定的に変えることになる。だからこの地域の全ての国家がこの交渉に参加し、これを助け、貢献しなければならず、これを傍観することは許されない。特に日本の責任は大きい」と力を込めました。
米朝共同声明にうたわれた完全非核化の「対価」とされる北朝鮮の「安全の保証」は、北朝鮮の国家承認、戦争状態の終結につながります。戦争状態の終結は、韓国に駐留する国連軍、在韓米軍の存在意義にかかわり、北朝鮮有事への対応を中心任務とする在日米軍と日米同盟体制にも影響をもたらします。まさに北東アジアの軍事的対立構造を平和のルールに置き換える世界史的転換の可能性があるのです。

原水爆禁止2018年世界大会・科学者集会で報告した日韓の研究者ら=都内、7月29日
米軍撤退へ
トランプ米大統領は米朝首脳会談後の記者会見で、3万2000人の在韓米軍を「将来、本国に戻したい」と発言し衝撃が走りました。4月末の南北会談直後、韓国の大統領特別補佐官が米外交雑誌への寄稿で「米国が平和条約にサインしたら、在韓米軍の存在を正当化するのは難しくなる」として物議をかもしました。
文在寅(ムンジェイン)政権は打ち消していますが、日米同盟派の安保研究者の一人は、「在韓米軍撤退はもともと米政権内にある議論。今の流れで出てきても不思議はない。韓国政府高官の発言を米韓当局が関知しないわけがない」と“警戒感”を示します。
元外務省国際情報局長の孫崎享氏は、「トランプ大統領は、『交渉が順調に進む間は軍事演習はしない、挑発的だ』という姿勢だ。11月の中間選挙が終わればすぐ次の大統領選挙の動きとなる。この期間は平和のプロセスを進める大きなチャンス」と指摘。韓国がASEANと協力を進める動きを高く評価しつつ、「南北がどんどん和平の動きを世界に示すことは、懐疑的な内外世論を動かす力となる。日本としては、北朝鮮との国交正常化交渉を進めることが重要だ」と語ります。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年8月17日付掲載
「在韓米軍を将来、本国に戻す」―。トランプ大統領らしい突拍子のないような発言ですが…。
平和条約が結ばれた後は、あながちないこともないかもしれません。まさに新しい可能性なのです。