朝鮮半島の激動と北東アジアの平和⑤ 日韓協力 プロセスを不可逆に
「始まった平和のプロセスを外から冷ややかに見るのではなく、応援すると同時に、主体的にこのプロセスに参加していくことが大事」。歴史学者の栗田禎子千葉大学教授(元日本中東学会会長)はこう述べます。
民衆の連帯
「数カ月前を考えれば、トランプ米大統領と金正恩(キムジョンウン)の言葉の応酬で一つ間違えれば核戦争になる状況が現実にあり、日本が戦場になる危険もあった。これを回避する道が開かれたことに感謝し、韓国とも協力して積極的に動くべきだ」
栗田氏は、「地域の内側から平和をつくり出す力の成長」という観点を強調しました。
韓国でキャンドル革命を進めた民衆のたたかいには、平和への強い願いが込められており、それが南北会談から米朝会談への流れをつくり出した力でした。日本の民衆運動がこれに連帯し、平和の流れを不可逆のものにすることは緊急の課題です。
他方、韓国のメディア関係者の一人は「米朝対立が終結へ進むとしても、その結果、一方にある中国の軍事拡大、覇権主義的な動きに対し、暴力的に対決する構造になってはいけない」と指摘。日韓の外交的協力の重要性を語ります。
シンガポールで行われた日韓外相会談=8月2日、外務省ホームページから
地域の安定
7月9日に神奈川大学で開かれたシンポジウムで韓国国立外交院・外交安保研究所の曺良鉉(ジョヤンヒョン)教授は、「米中は大国だが、域内諸国は大国2国にどう対応すべきか。けん制しないといけない。域内諸国が心を一つにし、大国から(日韓)両国が振り回される状況を最大限警戒しなくてはいけない。その意味で日韓関係は2国間関係というより、地域の安定という観点から『公共財』的側面がある」と発言。曺氏は、日本が国際的な多角的枠組みの中で役割を果たすべきだとし、「米国との同盟も必要だろうが、独自の努力も必要だ。中国の動きへの警戒も大事だが、日中関係を安定化させる方向に進むべきだ。地域秩序は流動的、不透明になる中で日本外交の強靱性を育てなくてはいけない」と語りました。
朝鮮半島情勢の変化の中で、大国に対し自主性を発揮できないと、新たな対立激化をもたらすと警告し日韓協力を要請したのです。
日米同盟派の元外務省高官の一人も次のように述べざるを得ません。「朝鮮戦争終結を歴史は要求している。戦争が続くという“フィクション”のもとで形成された力のバランスは崩れるが、中国に対抗する軍拡は現実的ではない。南北の不可侵合意に続き、日朝、日中の不可侵合意をつくるなど、地域の安定を目指し構想力を出し外交をリードするしかない」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年8月20日付掲載
北東アジアの安定には、中国やロシア、アメリカも大事だが、日韓の協力が不可欠ってことですね。
「始まった平和のプロセスを外から冷ややかに見るのではなく、応援すると同時に、主体的にこのプロセスに参加していくことが大事」。歴史学者の栗田禎子千葉大学教授(元日本中東学会会長)はこう述べます。
民衆の連帯
「数カ月前を考えれば、トランプ米大統領と金正恩(キムジョンウン)の言葉の応酬で一つ間違えれば核戦争になる状況が現実にあり、日本が戦場になる危険もあった。これを回避する道が開かれたことに感謝し、韓国とも協力して積極的に動くべきだ」
栗田氏は、「地域の内側から平和をつくり出す力の成長」という観点を強調しました。
韓国でキャンドル革命を進めた民衆のたたかいには、平和への強い願いが込められており、それが南北会談から米朝会談への流れをつくり出した力でした。日本の民衆運動がこれに連帯し、平和の流れを不可逆のものにすることは緊急の課題です。
他方、韓国のメディア関係者の一人は「米朝対立が終結へ進むとしても、その結果、一方にある中国の軍事拡大、覇権主義的な動きに対し、暴力的に対決する構造になってはいけない」と指摘。日韓の外交的協力の重要性を語ります。
シンガポールで行われた日韓外相会談=8月2日、外務省ホームページから
地域の安定
7月9日に神奈川大学で開かれたシンポジウムで韓国国立外交院・外交安保研究所の曺良鉉(ジョヤンヒョン)教授は、「米中は大国だが、域内諸国は大国2国にどう対応すべきか。けん制しないといけない。域内諸国が心を一つにし、大国から(日韓)両国が振り回される状況を最大限警戒しなくてはいけない。その意味で日韓関係は2国間関係というより、地域の安定という観点から『公共財』的側面がある」と発言。曺氏は、日本が国際的な多角的枠組みの中で役割を果たすべきだとし、「米国との同盟も必要だろうが、独自の努力も必要だ。中国の動きへの警戒も大事だが、日中関係を安定化させる方向に進むべきだ。地域秩序は流動的、不透明になる中で日本外交の強靱性を育てなくてはいけない」と語りました。
朝鮮半島情勢の変化の中で、大国に対し自主性を発揮できないと、新たな対立激化をもたらすと警告し日韓協力を要請したのです。
日米同盟派の元外務省高官の一人も次のように述べざるを得ません。「朝鮮戦争終結を歴史は要求している。戦争が続くという“フィクション”のもとで形成された力のバランスは崩れるが、中国に対抗する軍拡は現実的ではない。南北の不可侵合意に続き、日朝、日中の不可侵合意をつくるなど、地域の安定を目指し構想力を出し外交をリードするしかない」
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年8月20日付掲載
北東アジアの安定には、中国やロシア、アメリカも大事だが、日韓の協力が不可欠ってことですね。