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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

「経労委報告」を読む① 国民の苦難を顧みず

2021-02-23 07:48:01 | 働く権利・賃金・雇用問題について
「経労委報告」を読む① 国民の苦難を顧みず
経団連が春闘の財界側指針となる「経営労働政策特別委員会報告」を出しています。労働運動総合研究所(労働総研)の藤田実事務局長に分析してもらいました。

労働総研事務局長 藤田実さん

コロナ禍で出された『経労委報告』を読んだ第一印象は、国民の苦難に寄り添わない報告だということです。
第1章は、「『ウィズコロナ』時代における人事労務改革の重要性」と題して、テレワークの普及による「場所と時間に捉(とら)われない働き方」に伴う経営側から見た問題点や地域と中小企業の活性化などの問題を取り上げています。
第2章は、「労働法制の改正動向と諸課題への対応」と題して、改正高齢者雇用安定法や副業、フリーランス問題、最低賃金制度における経営側の主張を展開しています。
第3章は「2021年春季労使・協議における経営側の基本スタンス」で、春闘に対する主張を展開しています。
この構成から分かるように、コロナ禍で苦しんでいる中小企業や非正規労働者の実態を取り上げ、企業や政府に対応を促す内容はほとんどありません。苦しんでいる労働者・国民の問題に向き合おうとしていません。



経団連前で「内部留保を賃上げに回せ」と訴える全労連・国民春闘共闘の人たち=1月15日、東京都千代田区

労働者収入激減
コロナ禍で飲食業や宿泊業、観光業、娯楽業、運輸業などサービス業を中心に多くの業種で営業自粛を強いられ、労働者は大幅な収入減により生活困難に陥っています。
それは、政府統計でもマクロ的に確認できます。「労働力調査」によれば、20年の就業者数は6676万人、前年比で48万人減少し、完全失業率も前年より0・4%増の2・8%となりました。とくに非正規労働者で男性は665万人と26万人の減少に対し、女性は1425万人と50万人の減少となっており、女性は男性と比べて約2倍の減少です。
コロナ禍で営業自粛や時短で売り上げが減少した企業で雇い止めが相次いだり、シフト減で辞めざるをえなくなり、それが非正規雇用の女性に集中しています。20年の女性就業者のうち、非正規労働者が54・3%と過半数を占めていることの反映でもあります。

女性が生活苦に
この結果、とくに女性の非正規労働者の収入が大きく減少しています。NHKとJILPT(労働政策研究・研修機構)の共同調査(20年11月)によれば、収入が3割以上減少した割合は、男性が15・6%であるのに対し、女性非正規労働者は26・1%、シングルマザーは24・6%。約4分の1の女性非正規労働者の収入が大幅に減少し、生活困難に陥っているのです。
しかも非正規労働者だからという理由で、休業補償を受けられない女性労働者が多くいます。野村総研の調査は、シフト削減などで仕事が激減しても休業手当を受けていないパート・アルバイトが女性だけで約90万人いると推計しています。大幅な収入減に直面した労働者は、食費を切り詰めて生活を維持しているのが実態です。
このようにコロナ禍でとくに女性非正規労働者が苦境に陥っているのに、『経労委報告ヒは総資本の立場としてどのように対応するのか、全く言及がありません。組織労働者が対象となる春闘への方針提起ということもありますが、少なくとも労働者の苦しみに対して企業はどのように対応すべきか、明らかにする必要があります。この意味で、今年の『経労委報告ヒは、経済団体としての社会的責任を果たしていません。
(つづく、5回予定)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年2月19日付掲載


新型コロナのもとでの、テレワークの普及による「場所と時間に捉(とら)われない働き方」が進められています。
しかし、それに対応できない業種・職種では、非正規を中心に収入減や解雇が。
解雇させずに雇用を守れと言うことと合わせて、非正規を含めてすべての労働者に休業補償を。