新型インフルエンザ フェーズ6
重症化への備え 人工呼吸器、集中治療室を
地球規模で感染拡大~世界的大流行(パンデミック)と、11日に世界保健機関(WHO)が宣言。
警戒水準(フェーズ)を5の段階から最高の6に引き上げました。前回の新型(香港風邪)出現以来用年ぶり、この“大流行の嵐”を切り抜けるにはどうしたらいいのか。上野敏行記者
なぜ引上げ
WHO発表の新型インフルエンザ感染確定者数の勢いが止まりません。
すでに76の国と地域で約3万6千人。南半球のオーストラリアでは冬を迎えて感染者が1800人を超え、急増。大規模な地域の感染が始まっています。(15日)
WHOが警戒水準を最高の6段階に上げたのは、人から人への感染拡大が北米の2地域に加え、オーストラリアでも確認されたことでした。
引き上げは当然?
「ええ。しかし、急激に状況が変化したわけではない」というのは、東北大学大学院医学系研究科の押谷仁教授。専門は感染症学、元WHO西太平洋事務局感染症地域アドバイザーです。「感染の地域的な広がりから判断したことです。冷静な対応が必要です」
WHOが世界的大流行と宣言した意味は?
「世界各国でこれから大規模な感染拡大が起こり得ると判断したことです。封じ込めなどを中心とした対策から、国内での感染拡大を前提にした被害軽減のための対策に移行すべきです」
地域で拡大
日本でも感染はかなりの速さで拡大しています。感染者数は23都道府県595人。(15日)感染源をたどれない例も多くなっています。たどれないことは、地域で感染が広がっていると考えられています。
一方、新型インフルエンザの病原性は季節性インフルエンザと同程度、感染しても軽症者がほとんど。だから、“問題なし”という意見も。
押谷教授はいいます。
「あまりにも楽観的な見方です。健康な若い人を中心にした感染から、今後は地域に広がり、基礎疾患などをもった人に感染するようになってくると、重症者が出る可能性があります」
新型インフルエンザには、ほとんどの人が免疫を持っていません。感染の拡大は急速で、感染者が多くなります。
通常の季節性インフルエンザ流行で、日本は毎年1千万人前後が感染し、1万人あまりが死亡。致死率は0.1%ほど。
新型インフルエンザで想定される致死率は0.1~0.4%です。
国立感染症研究所感染症情報センターの岡部信彦センター長は指摘します。「ほとんどが軽症者であっても、感染者が多くなれば、重症者も出てきます。普通の風邪並みと考えたら、安心を超して油断になります」
急速に進行
米国の感染者1万7855人。うち死亡45人で致死率0.25%。(11日、米疾病対策センター)
重症者中心の検査に方針が変更され、実際はこの数倍の感染者がいるとされています。
その米国。現在も相当数が重症化し、入院していると伝えられ、死亡者も増えています。英国でもオーストラリアでも重症者が出ています。
重症化しやすいのは、5歳以下の子ども、妊娠後期の女性、基礎疾患喘息などの肺疾患、心疾患、糖尿病、自己免疫疾患など)をもつ人です。
気がかりなのは、まったく基礎疾患をもたない健康な20~50代の成人も一定の割合で重症化していることです。ここが季節性インフルエンザと大きく違うところです。
重症化の実態も少しずつわかってきています。
基本は、ウイルス性肺炎、急性呼吸窮迫症候群からくる呼吸不全です。
急速に進行し、集中治療室で人工呼吸器を使った呼吸管理が必要になります。先進国でも救命が難しく、重症化してからの抗ウイルス薬の治療効果は限られています。
すぐに必要になるのは、集中治療室であり、人工呼吸器です。それは限られています。医師不足などで医療体制が弱まっている地域もあります。妊婦が重症化したときには産科病床・新生児集中治療室などが必要です。
いずれも重症者が多発した場合、想定される治療の課題です。
押谷教授はいいます。
「日本の医療体制の弱点を突かれ、被害拡大の可能性があります。重症者への医療機関の対応を含めた“被害軽減策”を早急に考えるべきです」
【しんぶん赤旗日曜版】2009年6月21日付けより転載。
秋口の流行の第2波にむけて、余裕のあるうちうに準備しておく必要があるようです。
重症化への備え 人工呼吸器、集中治療室を
地球規模で感染拡大~世界的大流行(パンデミック)と、11日に世界保健機関(WHO)が宣言。
警戒水準(フェーズ)を5の段階から最高の6に引き上げました。前回の新型(香港風邪)出現以来用年ぶり、この“大流行の嵐”を切り抜けるにはどうしたらいいのか。上野敏行記者
なぜ引上げ
WHO発表の新型インフルエンザ感染確定者数の勢いが止まりません。
すでに76の国と地域で約3万6千人。南半球のオーストラリアでは冬を迎えて感染者が1800人を超え、急増。大規模な地域の感染が始まっています。(15日)
WHOが警戒水準を最高の6段階に上げたのは、人から人への感染拡大が北米の2地域に加え、オーストラリアでも確認されたことでした。
引き上げは当然?
「ええ。しかし、急激に状況が変化したわけではない」というのは、東北大学大学院医学系研究科の押谷仁教授。専門は感染症学、元WHO西太平洋事務局感染症地域アドバイザーです。「感染の地域的な広がりから判断したことです。冷静な対応が必要です」
WHOが世界的大流行と宣言した意味は?
「世界各国でこれから大規模な感染拡大が起こり得ると判断したことです。封じ込めなどを中心とした対策から、国内での感染拡大を前提にした被害軽減のための対策に移行すべきです」
地域で拡大
日本でも感染はかなりの速さで拡大しています。感染者数は23都道府県595人。(15日)感染源をたどれない例も多くなっています。たどれないことは、地域で感染が広がっていると考えられています。
一方、新型インフルエンザの病原性は季節性インフルエンザと同程度、感染しても軽症者がほとんど。だから、“問題なし”という意見も。
押谷教授はいいます。
「あまりにも楽観的な見方です。健康な若い人を中心にした感染から、今後は地域に広がり、基礎疾患などをもった人に感染するようになってくると、重症者が出る可能性があります」
新型インフルエンザには、ほとんどの人が免疫を持っていません。感染の拡大は急速で、感染者が多くなります。
通常の季節性インフルエンザ流行で、日本は毎年1千万人前後が感染し、1万人あまりが死亡。致死率は0.1%ほど。
新型インフルエンザで想定される致死率は0.1~0.4%です。
国立感染症研究所感染症情報センターの岡部信彦センター長は指摘します。「ほとんどが軽症者であっても、感染者が多くなれば、重症者も出てきます。普通の風邪並みと考えたら、安心を超して油断になります」
急速に進行
米国の感染者1万7855人。うち死亡45人で致死率0.25%。(11日、米疾病対策センター)
重症者中心の検査に方針が変更され、実際はこの数倍の感染者がいるとされています。
その米国。現在も相当数が重症化し、入院していると伝えられ、死亡者も増えています。英国でもオーストラリアでも重症者が出ています。
重症化しやすいのは、5歳以下の子ども、妊娠後期の女性、基礎疾患喘息などの肺疾患、心疾患、糖尿病、自己免疫疾患など)をもつ人です。
気がかりなのは、まったく基礎疾患をもたない健康な20~50代の成人も一定の割合で重症化していることです。ここが季節性インフルエンザと大きく違うところです。
重症化の実態も少しずつわかってきています。
基本は、ウイルス性肺炎、急性呼吸窮迫症候群からくる呼吸不全です。
急速に進行し、集中治療室で人工呼吸器を使った呼吸管理が必要になります。先進国でも救命が難しく、重症化してからの抗ウイルス薬の治療効果は限られています。
すぐに必要になるのは、集中治療室であり、人工呼吸器です。それは限られています。医師不足などで医療体制が弱まっている地域もあります。妊婦が重症化したときには産科病床・新生児集中治療室などが必要です。
いずれも重症者が多発した場合、想定される治療の課題です。
押谷教授はいいます。
「日本の医療体制の弱点を突かれ、被害拡大の可能性があります。重症者への医療機関の対応を含めた“被害軽減策”を早急に考えるべきです」
【しんぶん赤旗日曜版】2009年6月21日付けより転載。
秋口の流行の第2波にむけて、余裕のあるうちうに準備しておく必要があるようです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます