変貌する経済 政府開発援助(ODA)⑤ 腐敗助長する「共犯」
日本交通技術株式会社(JTC)が設置した第三者委員会の調査報告書によると、JTCからベトナム鉄道公社(VNR)への贈賄は、VNR側の要求で行われました。
調査報告書は、ハノイへ運ばれたとみられる現金の総額を7220万円としました。そのうち、VNR側へ渡されたと認定したのは、①契約締結に伴う賄賂4500万円②会議費・外注管理費の一部の還流300万円③契約変更に伴う賄賂1200万円④契約変更後の賄賂300万円⑤人件費増額の一部の還流300万円―の合計6600万円です。
職員が現金運び
その都度、VNR側から要求額などの提示があり、それに基づき金額や支払い方法などを交渉し、合意しました。支払いは、受け渡しの経路を隠し、またJTCの財務状況に合わせ、分割して円の現金で行われました。JTCは、本社で仮払いし、現地へ出張する役員や職員が現金で運びました。この異常な仮払いが、東京国税局が不正支出を摘発するきっかけになりました。
調査報告書は、贈収賄のVNR側の窓口として3人(匿名)を認定しました。ベトナムでの報道と付き合わせると、ベトナム側ですでに逮捕されている6人の中の3人と符合します。VNR側は、賄賂や資金還流を要求し、その捻出方法や受け渡し方法まで指定するなどしていました。
第三者委員会の聴取に対し、JTCの関係者たちは次のように答えています。
「現地のクライアントは鉄道分野ではJTCの唯一のお客であり、今後もビジネスを継続したいという思いから、話を進めた」
「どこのコンサルタントもやっているというような理解であったので(リベート提供について)違和感はなかった」
「社内で是正できるのであれば、そのようなこと(リベート提供)はしたくなかった。しかし、JTCには既にそういう風土ができていて、しかも、それがなければ仕事が前に進まないという状況だった」
VNR側の要求に応じたとはいえ、JTCは、調査報告書が指摘している通り、「『被害者』と見られるべきではなく、相手国の腐敗を助長する『共犯』としての立場」にありました。

VNR幹部6人の起訴を報じるベトナムのインターネット新聞=5月9日
新規を一時停止
日本政府は、ベトナム向け円借款(有償資金協力)の新規案件の採択を一時停止し、両国政府開発援助(ODA)腐敗防止合同委員会を開き、腐敗防止策を協議。その結果、7月18日、腐敗防止の新たな措置で合意したとして、VNRが関係する新規案件の採択を引き続き停止するものの、その他の案件は、採択の検討を開始するとしました。JTCに対しては、前・現役員3人の起訴を受け、ODA関連業務の停止期間を既に決定した18カ月から36カ月へ延長しました。
ODAは、日本国民の税金を使って、発展途上国の経済社会発展や福祉向上に貢献する援助です。そのうち、低利で長期の融資を行う円借款は、将来的には受け入れ国の国民の税金で償還されます。
安倍晋三政権は、今年中にODA大綱を見直そうとしています。憲法を踏みにじる安倍政権のもとで、ODAすら軍事的な目的のためのものに変質する危険性が高まっています。不正・腐敗も引き続き発生しています。
往々にして、アメリカの世界戦略のため、さらには大企業の海外進出のために使われてきたODAを、憲法の精神を生かし、世界の平和のため、また貧困と飢餓に苦しむ人びとのために役立てることが求められています。
(この項おわり)(金子豊弘、北川俊文が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年8月27日付掲載
リベートの要求が常態化していて、日本の企業の側もそれ無しに仕事がでないくらいマヒしていた。
この摘発は、氷山の一角でしょう。お互いの国の税金へ運営される、政府開発援助や円借款。
徹底した運営が求められます。
日本交通技術株式会社(JTC)が設置した第三者委員会の調査報告書によると、JTCからベトナム鉄道公社(VNR)への贈賄は、VNR側の要求で行われました。
調査報告書は、ハノイへ運ばれたとみられる現金の総額を7220万円としました。そのうち、VNR側へ渡されたと認定したのは、①契約締結に伴う賄賂4500万円②会議費・外注管理費の一部の還流300万円③契約変更に伴う賄賂1200万円④契約変更後の賄賂300万円⑤人件費増額の一部の還流300万円―の合計6600万円です。
職員が現金運び
その都度、VNR側から要求額などの提示があり、それに基づき金額や支払い方法などを交渉し、合意しました。支払いは、受け渡しの経路を隠し、またJTCの財務状況に合わせ、分割して円の現金で行われました。JTCは、本社で仮払いし、現地へ出張する役員や職員が現金で運びました。この異常な仮払いが、東京国税局が不正支出を摘発するきっかけになりました。
調査報告書は、贈収賄のVNR側の窓口として3人(匿名)を認定しました。ベトナムでの報道と付き合わせると、ベトナム側ですでに逮捕されている6人の中の3人と符合します。VNR側は、賄賂や資金還流を要求し、その捻出方法や受け渡し方法まで指定するなどしていました。
第三者委員会の聴取に対し、JTCの関係者たちは次のように答えています。
「現地のクライアントは鉄道分野ではJTCの唯一のお客であり、今後もビジネスを継続したいという思いから、話を進めた」
「どこのコンサルタントもやっているというような理解であったので(リベート提供について)違和感はなかった」
「社内で是正できるのであれば、そのようなこと(リベート提供)はしたくなかった。しかし、JTCには既にそういう風土ができていて、しかも、それがなければ仕事が前に進まないという状況だった」
VNR側の要求に応じたとはいえ、JTCは、調査報告書が指摘している通り、「『被害者』と見られるべきではなく、相手国の腐敗を助長する『共犯』としての立場」にありました。

VNR幹部6人の起訴を報じるベトナムのインターネット新聞=5月9日
新規を一時停止
日本政府は、ベトナム向け円借款(有償資金協力)の新規案件の採択を一時停止し、両国政府開発援助(ODA)腐敗防止合同委員会を開き、腐敗防止策を協議。その結果、7月18日、腐敗防止の新たな措置で合意したとして、VNRが関係する新規案件の採択を引き続き停止するものの、その他の案件は、採択の検討を開始するとしました。JTCに対しては、前・現役員3人の起訴を受け、ODA関連業務の停止期間を既に決定した18カ月から36カ月へ延長しました。
ODAは、日本国民の税金を使って、発展途上国の経済社会発展や福祉向上に貢献する援助です。そのうち、低利で長期の融資を行う円借款は、将来的には受け入れ国の国民の税金で償還されます。
安倍晋三政権は、今年中にODA大綱を見直そうとしています。憲法を踏みにじる安倍政権のもとで、ODAすら軍事的な目的のためのものに変質する危険性が高まっています。不正・腐敗も引き続き発生しています。
往々にして、アメリカの世界戦略のため、さらには大企業の海外進出のために使われてきたODAを、憲法の精神を生かし、世界の平和のため、また貧困と飢餓に苦しむ人びとのために役立てることが求められています。
(この項おわり)(金子豊弘、北川俊文が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年8月27日付掲載
リベートの要求が常態化していて、日本の企業の側もそれ無しに仕事がでないくらいマヒしていた。
この摘発は、氷山の一角でしょう。お互いの国の税金へ運営される、政府開発援助や円借款。
徹底した運営が求められます。