米大統領選 争点をさぐる① 経済格差・貧困 有権者の不満にどう応える
11月の米大統領選挙に向けて、共和党は今月18日から、民主党は25日からそれぞれ全国大会を開き、正副大統領候補を指名し、政策綱領を決めます。いよいよ本選を迎える大統領選挙の争点を探ります。
「僕は1%の富裕層じゃない。中間層もしくは低賃金の労働者。アルバイトを二つ掛け持ちしないと、家賃など最低限の生活費も支払えない」―。4月の東部メリーランド州、民主党で指名獲得を争うバーニー・サンダース上院議員の集会に参加した男性(27)は語りました。
上位1%に集中
大統領選挙をめぐる論戦では、経済格差をどう是正し、経済政策で既存の政治に不満を感じる有権者にどのように応えるかが鋭く間われています。
米「経済政策研究所」(EPI)によると、2009~13年に米国内で拡大した所得の85・1%が富裕層上位1%に集中、全所得の20%を占めました。
米最大の労組全国組織、労働総同盟産別会議(AFL・CIO)によると、米大企業424社の最高経営責任者が15年に受け取った報酬額の平均は、一般労働者の平均年収3万6875ドル(約385万円)の335倍です。
こうした現状に対し、指名獲得が確実な民主党のヒラリー・クリントン前国務長官と、共和党のドナルド・トランプ氏は6月下旬にそれぞれ、経済を主題とした演説を行いました。
「富裕層上位だけでなく、確実に全ての人に経済を機能させる必要がある」と述べたクリントン氏は、「あまりに多くの連邦議員が『トリクルダウン(富裕層の富が潤えばその恩恵が下位にも滴る)』経済という失敗した経済学にとらわれている」と強調しました。
「より豊かになるためのより良い賃金を」などと書かれた横断幕を手に集会に参加する米市民=4月14日、フィラデルフィア(洞口昇幸撮影)
格差是正を公約
格差是正のため、社会生活基盤や自然エネルギー分野への財政支出による給与の良い雇用の創出、学費などを抱える勤労世帯への減税、米政府規定の最低賃金を時給7・25ドルから12ドルに引き上げることなどを公約してきました。
民主党では、サンダース氏が格差是正を最大の公約に掲げ、最低賃金時給15ドルへの引き上げを要求。その訴えに共感が広がり、最賃時給15ドルを求める運動の拡大や地方自治体での実現もあり、民主党の政策綱領の草案には最賃時給15ドルが盛り込まれました。クリントン氏も容認する姿勢を示しています。
「全ての人のために再び、米国を偉大にする」と訴えるトランプ氏は演説で、「経済の国際化が、政治家に献金する財界の支配層をとても豊かにした。私もその一員だった」と、自戒とも受け取れる発言もしました。鉄鋼業での良質な雇用の創出、中低所得層の一部の減税・税免除、課税の簡素化を公約に掲げます。
◇
この連載はワシントン支局の島田峰隆、洞口昇幸が担当します。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年7月15日付掲載
「トリクルダウン」経済理論の発祥の地であるアメリカでさえ、大統領選でその理論は誤っていたと発せられている。
最右翼のトランプ氏でさえ、自戒の発言をしている…
11月の米大統領選挙に向けて、共和党は今月18日から、民主党は25日からそれぞれ全国大会を開き、正副大統領候補を指名し、政策綱領を決めます。いよいよ本選を迎える大統領選挙の争点を探ります。
「僕は1%の富裕層じゃない。中間層もしくは低賃金の労働者。アルバイトを二つ掛け持ちしないと、家賃など最低限の生活費も支払えない」―。4月の東部メリーランド州、民主党で指名獲得を争うバーニー・サンダース上院議員の集会に参加した男性(27)は語りました。
上位1%に集中
大統領選挙をめぐる論戦では、経済格差をどう是正し、経済政策で既存の政治に不満を感じる有権者にどのように応えるかが鋭く間われています。
米「経済政策研究所」(EPI)によると、2009~13年に米国内で拡大した所得の85・1%が富裕層上位1%に集中、全所得の20%を占めました。
米最大の労組全国組織、労働総同盟産別会議(AFL・CIO)によると、米大企業424社の最高経営責任者が15年に受け取った報酬額の平均は、一般労働者の平均年収3万6875ドル(約385万円)の335倍です。
こうした現状に対し、指名獲得が確実な民主党のヒラリー・クリントン前国務長官と、共和党のドナルド・トランプ氏は6月下旬にそれぞれ、経済を主題とした演説を行いました。
「富裕層上位だけでなく、確実に全ての人に経済を機能させる必要がある」と述べたクリントン氏は、「あまりに多くの連邦議員が『トリクルダウン(富裕層の富が潤えばその恩恵が下位にも滴る)』経済という失敗した経済学にとらわれている」と強調しました。
「より豊かになるためのより良い賃金を」などと書かれた横断幕を手に集会に参加する米市民=4月14日、フィラデルフィア(洞口昇幸撮影)
格差是正を公約
格差是正のため、社会生活基盤や自然エネルギー分野への財政支出による給与の良い雇用の創出、学費などを抱える勤労世帯への減税、米政府規定の最低賃金を時給7・25ドルから12ドルに引き上げることなどを公約してきました。
民主党では、サンダース氏が格差是正を最大の公約に掲げ、最低賃金時給15ドルへの引き上げを要求。その訴えに共感が広がり、最賃時給15ドルを求める運動の拡大や地方自治体での実現もあり、民主党の政策綱領の草案には最賃時給15ドルが盛り込まれました。クリントン氏も容認する姿勢を示しています。
「全ての人のために再び、米国を偉大にする」と訴えるトランプ氏は演説で、「経済の国際化が、政治家に献金する財界の支配層をとても豊かにした。私もその一員だった」と、自戒とも受け取れる発言もしました。鉄鋼業での良質な雇用の創出、中低所得層の一部の減税・税免除、課税の簡素化を公約に掲げます。
◇
この連載はワシントン支局の島田峰隆、洞口昇幸が担当します。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年7月15日付掲載
「トリクルダウン」経済理論の発祥の地であるアメリカでさえ、大統領選でその理論は誤っていたと発せられている。
最右翼のトランプ氏でさえ、自戒の発言をしている…