きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

暴力被害者を支援する女性たち ドイツ③ 人権教育の一環に

2021-08-21 07:14:38 | 政治・社会問題について
暴力被害者を支援する女性たち ドイツ③ 人権教育の一環に
「女性への暴力問題は常に隠ぺいされ、語るのは時にタブーとされてしまう」―。フライブルク市を拠点に活動する人権擁護団体「メンシェンレヒテ3000」のグドルン・ビッペルさん(57)は「問題を可視化し、人々の意識を変えていくことが、暴力根絶につながる」と語ります。
メンシェンレヒテはドイツ語で人権を意味し女性への暴力は人権問題だと位置づけて暴力根絶に向けた活動をしています。毎年、市内で11月25日の「女性に対する暴力撤廃国際デー」から12月10日の「国際人権デー」まで、「女性への暴力に反対する16日間」のキャンペーンを行っています。



グドルン・ビッペルさん(桑野白馬撮影)

スイスに倣って
スイスで暴力防止をめざす16日間の取り組みが行われていると知り、市でも取り組めないかと模索したのが始まりです。
市内の関係団体に協力を要請し、10ほどのグループをつくり会合を重ね、2012年からキャンペーン活動をしています。
期間中、DV被害者の支援団体や自治体と協力し、暴力反対のポスター作製・展示や移民・難民の女性の保護のあり方を協議する会合を開きます。DV支援の現状や課題を報告するパネルディスカッションや、講師を招いて女性が身を守る護身術の教室も開きます。
「一人ひとりがあらゆる種類の暴力が許容されないと認識する必要がある。被害を受けたのは『あなたのせいではない』との共通認識が大切だ」。暴力の被害者が恥ずかしさや無力感から閉じこもってしまいがちになることを防ぎ、声を上げられる社会の実現を目指します。



フライブルク市内で行われた女性への暴力に反対するデモの様子(ビッペルさん提供)

市全体巻き込む
ビッペルさんは「女性への暴力は、女性の人権を軽視することで起こる」と話し、この問題を人権教育の一環として取り入れることが必要だと指摘します。「すべての人が性差にかかわらず平等だと子どもの時から教わるのが大事だ」
暴力根絶には粘り強い取り組みが必要だと強調するビッペルさんは、あきらめないことが大切だと繰り返します。「社会は少しずつ変わっていく。市全体を巻き込んだ活動を続けて、女性が安心できる社会の実現を目指したい」
(フライブルク=桑野白馬)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年8月17日付掲載


「一人ひとりがあらゆる種類の暴力が許容されないと認識する必要がある。被害を受けたのは『あなたのせいではない』との共通認識が大切だ」
「女性への暴力は、女性の人権を軽視することで起こる」
「すべての人が性差にかかわらず平等だと子どもの時から教わるのが大事だ」
あきらめないことが大切だとも。


暴力被害者を支援する女性たち ドイツ② 行政に女性権利課

2021-08-20 07:16:16 | 政治・社会問題について
暴力被害者を支援する女性たち ドイツ② 行政に女性権利課
ドイツ南西部のフライブルク市(人口23万人)は温暖化対策をはじめ市民参加の街づくりで有名です。暴力から女性を守る取り組みも注目されています。
「夜の女性タクシー」が3年前にスタートしました。女性がタクシーを利用する場合、夜10時から朝6時まで市内のどこまで乗っても料金は7ユーロ(約910円)。差額は市が負担します。
夜道を一人で歩いていた女性が性暴行被害にあう事件が相次いだことから、女性の安全な帰宅を保障するために始めました。市が年間約3100万円の予算を投じています。





「夜の女性タクシー」を宣伝するスデッカー(フライブルク市提供)

市長直属の部署
市は35年前から「女性の権利向上担当課」を設けている先駆者です。市の属するバーデン・ビュルテンベルク州は2016年から人口5万人以上の自治体に、基本法(憲法に相当)に定められた男女平等をもとにジェンダー問題を担当する職員の設置を義務付けています。
市の「女性の権利向上担当課」職員シモーネ・トマスさん(54)は、19年にドイツ国内で報告されたDV件数、14万1792件について、「衝撃的な数字だ。ただでさえ閉じこもってしまいがちなDV被害者の支援は、コロナ禍でさらに困難に直面している」と語ります。
同課は市長直属の部署。2人の女性職員が年2万5000ユーロ(約325万円)の広報関連予算を使い、女性の地位向上をめざします。家庭内や公共の場での暴刀根絶のための対策も担い、男女の権利平等をめざします。
同市にはNPO団体「FRIG」が中心となり、DV被害者の支援網が作られています。ここには医療専門家、市、警察や裁判所が加わります。「あらゆる関係者が定期的に意見交換や信報共有をする場はとても大切。切れ目のない被害者支援を実現できる」とトマスさん。



「家にいても安全ではない?」とDV被害者や被害を知った人に連絡を呼びかけるポスターのそばに立つシモーネ・トマスさん=2021年7月、フライブルク市役所(桑野白馬撮影)

加害者の更生も
市は、3年前から犯罪防止課と協力して、加害者の更生に向けたカウンセリングを始めました。
「感信をうまく抑制できない人もいる。加害者への支援も必要な場合がある」。男性被害者の支援体制の確立も課題だと言います。
トマスさんは、女性への暴力を根絶するために、幼少期からジェンダー平等を議論する教育が必要だと話します。「3~4歳から、家庭で見聞きしたことが『男と女はこうあるべきだ』との考えを形作っていく」。将来、学校で男女の役割といったステレオタイプを打破するための科目を盛り込みたいと意気込みます。「算数や英語に加えて、『ジェンダー平等』の科目ができたらすてきだ。男の子も女の子も平等の権利を持つのだと伝えることが大切だ」
(フライブルク=桑野白馬)(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年8月15日付掲載


「夜の女性タクシー」が3年前にスタート。女性がタクシーを利用する場合、夜10時から朝6時まで市内のどこまで乗っても料金は7ユーロ(約910円)。差額は市が負担。女性の安全な帰宅を保障するため。これは良いですねえ。
市は、3年前から犯罪防止課と協力して、加害者の更生に向けたカウンセリングを開始。「感信をうまく抑制できない人もいる。加害者への支援も必要な場合がある」

暴力被害者を支援する女性たち ドイツ① コロナ禍DVが急増

2021-08-19 07:15:58 | 政治・社会問題について
暴力被害者を支援する女性たち ドイツ① コロナ禍DVが急増
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う都市封鎖措置で、DV被害の深刻化が懸念されるドイツ。暴力の根絶に向け、被害者に寄り添った支援に取り組む人々がいます。女性を守る現場を訪ねました。
(独シュベービッシュハル=桑野白馬)




「助けを求める電話が頻繁に鳴るようになった」。南西部バーデン・ビュルテンベルク州のDVシェルター「女性と子どものための家」で働くメヒトヒルド・アンドレスさん(56)が振り返ります。ロックダウン(都市封鎖)が緩和され始めた昨年5月ごろから保護依頼が急増しました。


メヒトヒルド・アンドレスさん=シュベービッシュハル(桑野白馬撮影)

打ち明ける「場」
昨年3月の最初のロックダウン直後は、助けを求める電話はピタリととまりました。生活必需品を扱う店以外の店舗は閉鎖され、同居の家族以外の接触を可能な限り避けることが求められたため「女性たちは未知の体験に戸惑い、どうしていいのか分からなかったのだと思う」と話します。
12歳で結婚させられ4人の子どもを連れてきた移民の女性や、暴力で体のあちこちにアザや裂傷を負いながらも、自分と子どもを守りたい一心で保護を求めてきた人もいました。「『家』は恐怖や絶望感を打ち明けられる場所であり、これからの生活を一緒に考えるのが、わたしたちの仕事だ」といいます。
NPO団体などが運営する「家」は、州内に42カ所、全国で約350カ所あります。DV被害者の保護活動は、2002年に発効した、あらゆる形態の暴力から人を保護する目的の「暴力からの保護法」に基づきます。「家族間や、プライベートな状況下でも暴力は犯罪だと規定した大切な法律だ」とアンドレスさん。



「家」の内部の様子(アンドレスさん提供)

運営費行政から
施設の運営費は、行政からの補助金と寄付金でまかないます。スタッフは、保護された女性が滞在日数分の失業保険の給付金を申請するのを手伝います。それとは別に、失業保険窓口から、女性の滞在日数分の費用を受け取ります。平均で約半年の滞在を経て、住居や仕事を見つけ、新しい生活を歩み始めるまで見届けます。
苦しみを紛らわせようと、アルコールや薬に依存してしまう人もいます。専門家や精神科医と連絡を取り合い、被害者に合わせた支援を提供します。「他団体や自治体、警察と情報共有し、支援内容を広く認知してもらう。それが必要に応じた素早い支援につながる」と話します。
アンドレスさんの「家」は6部屋、14人まで保護が可能です。女性支援担当3人、子どものケア担当者1人。保護要請の急増を受け、入所できる人数を増やす予定です。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年8月14日付掲載


「『家』は恐怖や絶望感を打ち明けられる場所であり、これからの生活を一緒に考えるのが、わたしたちの仕事だ」
施設の運営費は、行政からの補助金と寄付金でまかないます。スタッフは、保護された女性が滞在日数分の失業保険の給付金を申請するのを手伝います。それとは別に、失業保険窓口から、女性の滞在日数分の費用を受け取ります。平均で約半年の滞在を経て、住居や仕事を見つけ、新しい生活を歩み始めるまで見届けます。
DV被害からの緊急避難だけでなく、自立まで支援する取り組み。

どう見る原発コスト② 再エネ100%の日本に

2021-08-18 07:15:39 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
どう見る原発コスト② 再エネ100%の日本に
龍谷大学教授 大島堅一さんに聞く

―経産省の審議会では、再生可能エネルギーの大量導入に伴う費用が高くつくことで、電気代が数倍になるなどの試算を出しています。
今までのシステムは、大規模集中型の石炭火力や原発を前提に系統などの電力システムを組んでいました。再エネを主力電源にするために新しい仕組みに入れ替える費用が発生するのは当然です。システムとして入れ替えるための費用で、再エネのコストにだけのせる議論はおかしいです。

【エネルギー基本計画】
電力や資源についての政府の中長期的な方針を示す計画。3年に1度改定し、現行計画は2018年に閣議決定しました。このほど出た次期計画素案では、2030年度の総発電量は、現行計画から1割程度少ない9300億~9400億キロワット時と想定。総発電量に占める再生可能エネルギーは、現行計画の22~24%から36~38%に。石炭火力は、現行計画の26%から19%としています。




原発は高費用
安定供給のための費用ということであれば、原発にも必要です。原発は、1基の発電量が大きいので、動かなくなった時のバックアップがたいへん大きくなります。実際、今年の1月の電力価格の高騰の引き金を引いたのは、関西電力の原発に定期点検で不具合がみつかり、点検期間が予定外に延びたこと、LNG(液化天然ガス)の調達の遅れです。
それが原発を電源にすることで必要になる費用です。審議会の議論は、それを全く考えないバランスを欠いた議論です。
しかも、大規模なバッテリーなどの価格がどんどん安くなっていて、再エネの導入に新たな費用もいらないぐらいになってきます。

―どうシステムを変えていくかという議論をしないといけないということですか。
そうです。原発は現在、全体の6%しか発電していない。6%を20~22%に引き上げるのは相当の努力が必要ですが、再エネはいま20%を超えていますから、原発がなくても問題はありません。
しかし一度、原発を20~22%にするという目標ができてしまうことの不幸は、それに向けて、いろんな政策が作られることです。再エネのブレーキを踏むことになります。
原子力に対して後押し、ないしは優遇しない限り、そこまで発電量が伸びることはない。それは国民の大きな負担です。できるだけ早く再稼働させようとか、できるだけ長く使おうとすれば、国民を危険にさらすことにもなります。やるべきではありません。エネルギー基本計画に原発について、「必要な規模を持続的に活用していく」という内容が入ること自体が不幸を生むと思います。
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現は、省エネと再生エネルギーを中心とした社会でまかなうべきであって、原発なんてありえません。

次世代に被害
放射性廃棄物のこともあり、長期的に見れば、今の現役世代が払えない膨大なコストと膨大な放射性廃棄物を次世代の若者に手渡すことが運命づけられている、不公正そのものだからです。
これは気候変動と同じです。気候変動も今の世代や過去の世代が、全然排出したことがない将来の世代に被害を及ぼすのですから。
カーポンニュートラルとともに、環境保全型社会を作るということが必要です。省工ネを徹底して再エネ100%の日本をつくるということだと思います。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年8月14日付掲載


原発は現在、全体の6%しか発電していない。6%を20~22%に引き上げるのは相当の努力が必要。逆に、再エネはいま20%を超えていますから、原発がなくても問題なし。原発の発電量を増やすことは、再エネの普及を抑え込むことになります。
原発の発電量を無理に増やさず、LNGなどで中継ぎをして、再生可能エネルギー100%へ。石炭火力などは、もちろん論外です。

どう見る原発コスト① 隠せなくなった高費用

2021-08-17 06:44:55 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
どう見る原発コスト① 隠せなくなった高費用
龍谷大学教授 大島堅一さんに聞く

経済産業省は「第6次エネルギー基本計画(素案)」をとりまとめました。2030年に総発電量に占める原発の比率は現行通り20~22%と、相変わらず原発に固執しています。同省はまた、15年以来6年ぶりに電源別の発電コストの検証結果も発表しました。原発のコストに詳しい龍谷大学の大島堅一教授に原発コストの実態、エネルギー基本計画の問題点について聞きました。(松沼環)




―今回の原発コストの評価をどう見ますか。
30年時点の原発発電コストは、1キロワット時当たり「11・7円以上」と発表されました。15年の検証では、原発は1キロワット時当たり「10・3円以上」でした。
東京電力福島第1原発事故の費用や追加的安全対策費用をコストに加えましたから、原発が安くないことを覆い隠すことができなくなりました。
しかし、おかしいのは、事故の計算方法と追加的安全対策の計算方法です。
福島原発事故の費用に関しては、放射性廃棄物の廃棄にかかる費用が入っていません。
福島原発事故の廃炉で出てくる放射性廃棄物の量は、原子力学会の報告書によれば、原発の廃炉などで発生する比較的放射性レベルの高い廃棄物(L1廃棄物)で比べると、通常の原発1基を廃炉する場合の1000倍を優に超えています。
国内の約50基の原発の処分も見通しがありませんが、1000基分以上の廃棄物が追加されたのです。安いとか高いとかではなく、国家の危機です。
追加的安全対策費では、各電力会社に聞くと平均2000億円となりました。しかし経産省の評価では、原発を新設する場合は最初から設計で取り込めるからと、対策にかかる多くの費用を除外して約1400億円になったとしています。しかし、除外される根拠が全く分かりません。ここにも大きな穴があります。
どちらにしても建設費に関連する資本費の部分にかなりのごまかしがあるので、実態はもう少し高くなります。


■2030年電源別発電コストの経済産業省試算結果(円/キロワット時)
石炭火力13.6~22.4
LNG火力10.7~14.3
原子力11.7~
陸上風力9.9~17.2
太陽光(事業用)8.2~11.8
太陽光(住宅)8.7~14.9


前提崩れても
―同省審議会で示された発電コストは、モデルプラントを新たに建設した場合の計算ですが、既存の原発の発電コストはどう見ますか。
15年の同省作業部会で公開された方法を基本に計算すると、11年以降にかかったお金と、かかるだろうお金だけを積み上げて発電量で割るとものすごく高いことが分かりました。
発電コストは総費用を総発電量で割って単価を求めるのですが、安全対策費が大変高くなっています。東電柏崎刈羽原発(新潟県)では2基の再稼働のために1兆円を超えるお金を出しています。
再稼働をしていない原発もありますが、今後再稼働をしたとしても残された運転期間が短くなっているので、発電量が少なくなります。
前回の18年のエネルギー基本計画では、既存の原発について原発は低廉であることを前提に再稼働を進めると書いてありましたが、実際には既存の原発でも、経済的にまったく割に合わない。方針自体が間違っていたということがはっきりしたにもかかわらず、今回の素案にも同様の表現が踏襲されています。

国民を危険に
―電力会社などが今、運転期間を通常40年から60年にのばすとか、定期点検や安全対策をしている期間を発電期間から外すべきだと要望していますが。
そういう要望が出てきていることを非常に危惧しています。法改正を含めた検討の可能性が懸念されています。
しかし、止まっている期間が長すぎて、見込み違いだっただけです。
失敗したら自分で責任をとる、それが資本主義のルールです。失敗した経営方針では競争にさらされてその業者は倒れる、あるいはそういう技術はなくなっていくというのが、資本主義です。見込み違いを、国民を危険にさらすことで解消しようとしています。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年8月13日付掲載


原発の発電コスト。2011年以前と以降で大きく変化。安全対策費や廃炉にかかる費用が上積みされて発電コストがアップ。
失敗したら自分で責任をとる、それが資本主義のルール。それなら、原発から撤退するべきです。
運転期間を通常40年から60年にのばすとか、定期点検や安全対策をしている期間を発電期間から外すべきだなどとセコイことを考えない事。