予定を繰り上げて、「中耕除草機」を使って、田んぼの除草作業をすることにした。
明日から、また名古屋へ行く用があることと、田の草が予想以上に伸びているので、あまり先延ばしは出来ない。
根を張ってしまうと除草機も手に負えなくなるので、やった方がいいだろうとの、師匠の助言で急遽始めることにした。
7時半にスタートしたが、既に太陽が田んぼを照らし、気温も上昇していた。
田に入ると、外からは見えなかった草が密生し、好天が続けば数日で稲の背丈まで伸びそうだ。
一条押しの「中耕除草機」は、稲と稲との間を押したり引いたりを繰り返しながら、前に進んでいく。
ソリ状の鉄板の後ろに二重連の回転する爪が付いていて、草を掻き取り泥の中へ押し込んでいく。
鉄の爪は草を取る以外に、表面の泥を天地返しして酸素を供給し、泥の中の不要成分のガス抜きもする。
優れものの人力道具を操るには、泥に沈んだり足を取られたりしながら、文字通り「365歩のマーチ」の世界で、前進と後進をしながら少しずつ前に進む、牛歩のような根気が要る。
澄んだ水は鉄の爪で攪拌されて泥水に変わっていく。 泥水は太陽光線を十分吸収するので、水温は上昇して稲の成長も促す。
いい事ずくめの道具であるが、手間と体力勝負に勝てず、除草剤や化成肥料に頼る気持ちが分らないでもない。
縦列は除草機が使えるが、横は手作業となる。
除草機の要領で手で草を掻き取り、泥の中へねじ込んでいく。
この作業をしながら、倒れた苗を起こし、欠けた部分を補植する。
小さな田んぼであるが、すべての作業を終えるのに、たっぷり5時間かかった。
8月まで、この作業をあと6回繰り返せば、良い米が取れると言われているが、「田んぼジム」のトレーニングはちょっと手強かった。
日焼けを気にして手伝おうとしない助手は日傘をさして、牛馬の如く働く農夫の姿をのんびり見物していた。
泥田の中から出てくると、名古屋の夜景が新鮮に見えた。