私たちが訪れたとき、小沼(この)には広々として静寂な雰囲気が漂っていた。沼の周辺には、シロヤシオ、ミツバツツジ、レンゲツツジ、ヤマツツジ、ドウダンツツジなどが自生しているが、これらでは蕾が硬いか芽吹きがはじまったばかりであった。ところで、深田久弥は著書で「小沼は山に取りかこまれた、ひっそりと静かな沼で、水面は明るい。あまりに明るく、あまりに静かなので、却って底気味の悪い気のしたことを覚えている。」と述べている(日本百名山)。
麓から95箇所以上も急カーブが連続する狭い県道16号で、神経質な運転を強いられたためであろうか。私たちにとって、この日の小沼は静かに時が流れるスポットであった。
沼の南側で眺めた水面(標高 1,470 m、周囲 1Km)、地蔵岳(1,650 m)、そして黒檜山(1,828 m)。水面には、青空の映り込みと沼固有の色によるグラデーションが現れていた。
映り込みとさざ波の対比。さざ波がたつ水面の色は風の強さで変化した。間もなく、ツツジやズミの花が新緑の中に点在する風景が対岸に現れるだろう。
私たちは、静かな景色を眺めながら何人かの人々と歓談した。 ある若者のグループは、黒檜山、駒ヶ岳、小地蔵岳、長七郎山を歩き、これから地蔵岳に登るとのことであった。若者達は黒檜山が見える景色に感動を覚えたようであった。
帰路では東岸を歩いた。
太陽の位置が低くなりはじめた時間帯にて(東岸にて)。
湖畔には、フデリンドウ、ヒメイチゲ、マイズルソウなどが生えている(活き活きとしていたものから)。
***********
さて、往路と帰路で出会ったミツバツツジ(トウゴクミツバツツジ)から。
県道16号にて。
片側一車線のために停車できる箇所は少ないが、ミツバツツジロードとも言えそうなスポットがあった。
鳥居峠にて。
峠の西側の崖に生えているミツバツツジが西日を浴びていた。その美しさは、生えている位置次第では見る人を強く感動させるほどであった。
覚満淵が入るアングルで。
5月15日午後。