黄緑色の花を、居室で育てている胡蝶蘭の一株が開きはじめました。花の大きさは小輪と中輪の間くらいでしょうか。それでも、緑色系の花を開く胡蝶蘭は少ないと聞いていますので、今年の結果は期待以上のものかなと自画自賛しています。ともかく、常日頃、花の時期が終わりそうだとか終わったものをワンコインで手に入れて育ていますことから、何か宝物を得たような気分で、花を眺めています。
室外では色の彩度が上がりますので、花はよりみずみずしくなります。
撮影では、ピクチャースタイルはポートレート、ホワイトバランスは太陽光に設定しています。
ラン科の花の構造です(花弁(ペタル)、萼片(セパル)、唇弁(リップ)、ずい柱)。開いているものはすべて花びら(花弁)であるように見えますが、ペタルの数はセパルのそれよりも少ないとのことです。
ずい柱(雄しべと雌しべの合体)はラン科の植物以外には見られない器官です。ずい柱の先端(奥)には花粉の塊(花粉塊)があります。リップには、花粉媒介者(ポリネーター)を花粉塊に導くための仕掛け(形と色)が用意されています。ランは実にしたたかな植物です。
ところで、地球上の植物、約27万種の1/4を、ラン科、キク科、マメ科、イネ科が占めています。「種類が多い熱帯地帯なら雑草10種とれば1本はラン科の植物という感じでしょうか(趣味の園芸、2021年3月号、NHK出版、原文引用)」。
全体像です。花茎は短く葉がつややかでありませんので、花が一際引き立っています。
根が鉢の外に出ていますが、これはいささかズボラで育てているためです。
今年はつぼみから花まで生長した個数が少ない結果になりましたので、いまから来年はと思っています。
画像は一昨年に開いた花です。黄緑色を帯びていますが、その色は今年のものにくらべて薄い状態でした(20年7月下旬)。今年と一作年の花は、同じような条件(室外、日陰、時刻、RAWモード)で撮りました。RAW画像は同一の条件で現像しました。
一作年では、もしかすると、この胡蝶蘭は緑色系の色素を吸収させながら育てられたものかなと想像していました。そうならば、今年はより淡い色の花が咲くはずです。花期終了後、色素を入れずに植え換えたからです。
花が緑色を帯びるのは、花弁や萼に緑色の色素(クロロフィル)が含まれているからです。多くの花では、クロロフィルが花の成長過程で消失します。このものが残っていますと、アントシアニンと呼ばれる色素などによる鮮やかな色が濁るからです。濁った色の花は花粉媒介者に目立ちませんので、受粉の機会が減ることになります。結果として、そのような花を開く植物は自然界から消滅するとのことです(農研機構ホームページ)。
クロロフィルの含有量がアントシアニンのそれにくらべてかなり多ければ、あまり濁っていない緑色系の花が咲くことになります。今年の花は人為的操作(たとえば、遺伝子操作)を経ない例の一つになるだろうとの思いを抱きながら、来年に向けて、当方は取らぬ狸の皮算用をしています。