先日、図書館で借りてきた次の1冊を読みすすめている。
『地方色』ローカル・カラー 丸元淑生(マルモトヨシオ)著
文藝春秋 1994年3月1日 第1刷
本書の中で、丸元は、アメリカ ニューメキシコ州 タオスのプエブロ・インデアンの詩を紹介している。
今日は死ぬのにとてもよい日だ。
あらゆる生あるものが私と共に仲よくしている。
あらゆる声が私の内で声をそろえて歌っている。
すべての美しいものがやってきて私の目のなかで憩っている。
すべての悪い考えは私から出ていってしまった。
今日は死ぬのにとてもよい日だ。
私の土地は平穏で私をとり巻いている。
私の畑にはもう最後の鋤を入れ終えた。
わが家は笑い声で満ちている。
子どもたちが帰ってきた。
うん、今日は死ぬのにとてもよい日だ。
丸元は、この詩に関連して次のように書いている。
こういう死は病院では迎えられない。笑い声にあふれたわが家で、老人はいま死と対面しているのだが、心にあるのは美しいもの、内なる歌声、そして生命への慈しみである。それは星の降る大地の上でしか、見ることも聞くことも感じることもできないものかもしれないが、誰しも天寿を全うしたときには、これに似た幸福感が得られるのではなかろうか。
死とはまさに生涯をかけての達成なのである。