尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

参院選、東京はもう決まってる?を検証

2022年06月16日 23時15分51秒 |  〃  (選挙)
 6月15日で通常国会が閉会し、いよいよ参議院選挙が近づいて来た。町にはポスター掲示板が立てられたけど、何でも東京では継ぎ接ぎして大きくしているとか。もともと30人も用意してあったのだが、それを超えるかもしれないと言われている。高い供託金を払って立候補するのは自由だが、ポスターを貼らない人の方が多い。なんだか矛盾を感じるな。

 7月10日投開票の参院選だが、始まる前の体感では全然盛り上がっていない。「野党分裂」がその最大の理由だが、岸田首相も人気が沸騰するタイプじゃない。ごく平凡に選挙を終えて、ごく平凡な勝利をえることを与党は求めているようだ。そしてデータ的には、自民党の圧勝になる可能性が高い。野党内の盛衰ぐらいしか「面白み」がない。従って投票率も低いと予想される。

 衆院選は何とか5割を超えるが、参院選は5割に行かないことがある。前回2019年は48.8%だった。今回(2022年)も5割を下回る可能性が高いのではないだろうか。ロシアのウクライナ侵略の中、エネルギーや食料の値上がりが著しい。しかし、それは日本が取ってきた経済政策による「円安」によるものでもある。そこら辺の問題をきちんと論議するのではなく、財源の裏付けもない「防衛力増強」が選挙の争点にされていきそうだ。相互の議論がかみ合わないまま投票日になってしまう予感がする。
 
 さて、自分が住んでいる東京都選挙区6人も当選する。大選挙区というしかなく、毎回誰に入れるべきか、情勢報道を見ながら悩むことになる。100%一致する人はいないことが多い。かなり近い人はいたとしても、当選可能性が低かったりする。絶対当選する人に入れるのもなあと思ったりもする。しかし、そういう議論の前に、「もう東京の当選者は決まっている」という声が高い。いや、これからの選挙運動によって変わりうるといえば、その通り。しかし、大方は見えているのも間違いない。
(東京都選挙区の顔ぶれ)
 まず「絶対確実」は竹谷とし子公明党)、蓮舫立憲民主党)、朝日健太郎自由民主党)である。公明党は1962年の「公明政治連盟」として初めて立候補して以来、東京で負けたことがない。(新進党で立候補した1995年を除く。)かつては4人だった選挙区で、4位になったことが2回あるけれど、大体は2位ぐらいになっている。竹谷とし子は全国的には無名かもしれないが、すでに2期当選してきた。公明党は支持者周辺をまとめれば勝てるわけで、その範囲では知名度十分だろう。

 蓮舫は「アンチ」も多いが、政治家では悪名は無名に勝るだろう。すでに3期当選してきて、蓮舫しか知らない有権者もいるだろう。前回2016年でさえ112万票も獲得した。立憲民主党のもう一人に票を分けるだけの得票があるが、制度上それは出来ない。今回も知名度の高い蓮舫がかなり先行していると伝えられる。今回は前回より減ると思われるが、当選は堅いと見るべきだ。自民党の朝日健太郎は自民党の情報では一番優勢だというが、それほどかどうかは僕には判らない。前回当選して1期やってるから、自民党支持者には浸透しているということだろう。
(2016、2019年の東京選挙区)
 さて、過去2回の「6人当選」になってからの「最低当選者」は50万票ちょっとになっている。自民、立民の票割り具合にもよるが、今回も大方似たような感じになるだろう。そう考えると、山添拓日本共産党)、生稲晃子自由民主党)も当選ラインを越えるのは間違いないと思われる。共産党は2021年衆院選東京ブロックで、67万票を獲得している。山添は前回66万票、もう一人の吉良佳子は70万票ほどである。普通に得票出来れば当選である。生稲晃子は自民党支持者に浸透していないという声がある。その名前で活動していたわけじゃないので、知らない人もいるんだろう。でも選挙が始まれば、自民党票(衆院選で200万票)のうち70万ぐらい来ればいいわけだから、当選ラインを越えるんだろうと思う。

 そこで最後の一人ということになる。結局東京で立候補した山本太郎れいわ新選組)、都民ファーストの会代表で国民民主党支持の荒木千陽、立憲民主党のもう一人松尾明弘、日本維新の会の海老沢由紀、無所属の乙武洋匡の5人が続くと考えられる。海老沢は都議選に出たというけど、大阪出身で大阪市会議員である。党の勢いだけで当選ラインに届くかは疑問。荒木は小池都知事がどこまで票を出せるかによるが、「ファーストの会」公認で「諸派」扱いになるのが弱点。松尾は1年だけ繰り上げ当選で衆院議員を務めただけなので、全都的知名度がない。乙武が何票取るかは予想しようがないが、50万はキツいか。

 となると、やはり「悪名は無名に勝る」ということで、知名度が高い(党代表だから党首討論にちょっと出られる)山本太郎の可能性が高いと思われる。2013年には東京で66万票を取った実績がある。ただ衆院選では36万票だった。2019年参院選でも東京では20万票ぐらいだった。海老沢や荒木と山本では、現時点では山本優位と思うけれど、それこそ選挙戦中に変わってくるかもしれない。まあ、自民、公明で与党が3人。後は野党で3人だが、国民民主と維新の会は実質与党である。この野党内の情勢しか意味がないような今回の参院選を象徴するような東京都選挙区になりそうだ。社民やNHK党は当選可能性がない。
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「核兵器シェア」という愚論、ウクライナと核兵器問題ーウクライナ戦争④

2022年03月05日 22時18分19秒 |  〃  (選挙)
 ロシアではプーチン大統領が戦況に関する報道を国内で大幅に規制する改正刑法案に署名した。ロシア軍に関する「フェイクニュース」や「信用失墜を狙った情報」を広める行為を禁止する内容で、違反者は最大で禁錮15年や罰金150万ルーブル(約140万円)を科される。これは外国報道機関にも適用されるとされ、欧米報道機関には撤退したところも出始めている。今後個人のSNS発信も規制されるかもしれない。「特別軍事行動」と述べているプーチン大統領は引っ掛からないのだろうか。
(報道規制法に署名)
 今回はウクライナ戦争と核兵器に関して考えたい。ソ連崩壊時にソ連の核兵器はロシア以外に、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンに配備されていた。各国内に配備された核兵器は、もちろん各共和国が管理していたのではなく、「ソ連軍」が管理していたわけである。しかし、突然のソ連崩壊により、それぞれの国に取り残されてしまった。その核兵器はどうなったかというと、結果的にはロシアに引き渡されることになった。1994年のブダペスト覚書によって、先の3国が核不拡散条約(NPT)に加盟し、核兵器を保有する署名国(米英ロ、後に個別に仏中も)が3国の安全を保証することで、3国は核兵器をロシアに引き渡すとされた。

 僕も今回の事態になるまで、そのことを忘れていたのだが、ロシアだけでなく米英なども全くの覚書違反ではないか。ロシアは何と言ってるかというと、ウィキペディアを見ると、2014年の政変でウクライナには革命が起こり新国家となり、その新国家の政権とは覚書は未確認だと言っているという。そんなバカなという詭弁である。もっともこのブダペスト覚書は政治的に署名されただけで、各国によって批准された条約と違う。法的な強制力があるかどうかは微妙な問題らしい。

 「あの時核兵器を放棄していなければ」と論じる人がいる。今回のロシア侵攻はウクライナに核兵器があれば防げたのだろうか。しかし、考えてみればそんなことはあり得ないと判る。何故ならば、ウクライナには核兵器を管理する能力がなかったからである。米英もNPTに反して新核保有国を認めることは出来なかっただろう。そういう問題をクリアーしたとしても、ウクライナには核兵器をリニューアルしていく技術も資金もない。無理に核兵器を所持しても、それは大昔の核兵器をただ持っているだけのことである。どんなに頑張っても、ウクライナがロシアより大量の核兵器を持つことなど不可能である。

 ウクライナが無理に核保有に固執しても、当時の国際環境からデメリットしかないんだから、ブダペスト覚書に署名したのは合理的な行動だった。実際仮にウクライナに核兵器があったとして、どのように利用できると言うのだろう。核兵器を用いれば侵攻するロシア軍を撃退できるというのは、意味がない議論だ。確かにロシア軍は壊滅できるが、代わりに自国の大地が放射線廃棄物によって恐るべき汚染に見舞われる。だから核兵器は基本的に相手国領土でしか使用できない

 ではウクライナ周辺に集中していたロシア軍には使えるか。もちろん、そんなことは不可能だ。ウクライナ側から戦端を開いて大量破壊兵器を使用すれば、世界の同情は一挙に失われる。開戦責任をすべてウクライナが負うことになる。そして、ロシアは6375発の核兵器を持つとされるから、ウクライナ主要都市は直ちにロシアによる核攻撃を受けることになる。つまり、ロシアを上回る核兵器を所有し、ロシア核基地をすべて特定して、そこに正確に核爆弾を投下して一気に無力化する能力がない限り、ウクライナに数百発の核兵器があったとしても使うことは出来ないのである。

 今の核兵器数はストックホルム国際平和研究所の年鑑に掲載された数で、提携する広島県のサイトに出ている。(「世界の核兵器保有数」参照。2021年1月時点のもので、アメリカ5800、中国320、フランス290イギリス215で、200を越えているのはこの5ヶ国だけ。要するに核兵器は事実上米ロの独占に近く、5大国以外でNPT体制を無視して核兵器を保有する国はあるけれど、全世界的にはあまり意味がないのである。(全世界的に意味がなくても、インド、パキスタンはお互いを牽制する目的だけで保有している。イスラエルも核を持たないアラブ諸国に優位に立つために保有している。)

 日本では安倍晋三元首相が「核兵器の共有(シェア)を議論すべき」と述べた。この共有というのは、NATOで導入されているものだが、「アメリカの核兵器を日本国内に配備して共同で運用する」という方式である。もちろん「非核三原則」(持たず、作らず、持ち込ませず)に反する議論だが、現実性の全くない愚論というしかない。NPT体制発足時にアメリカの核兵器はすでに西欧諸国に配備されていた。それを限定的に条約後も継続する条項で、ある時期までは秘密にされていたという。「共有」というが、アメリカ軍が管理して運用するものであって、米国の戦略を無視して配備国が核兵器を使うことは出来ない。
(核共有を主張する安倍元首相)
 有効性や戦略的効果、あるいは政治的判断は別にして、日米安保条約があるんだから「核兵器共有」は可能なのだろうか。沖縄返還以前は沖縄に核兵器が配備されていたし、日本国内の基地にも配備されていた可能性がある。しかし、それは大昔の事情であって、「日本は特別」というのなら他の国も「自国も特別」と言うだろう。アメリカに可能ならロシアも可能だとなり、例えばロシアの核兵器をシリアに配備するといった壊滅的悪影響をもたらすに決まっている。(そうなったらイスラエルはシリア基地を核攻撃する可能性が高い。)ロシアがキューバと「共有」しても良いことになる。安倍氏は「日本は特別に認められるべき」と思い込んでいるらしいが、世界を破滅に追い込む政策である。

 そもそも安倍元首相はプーチン大統領と世界でもっとも多く会談した首脳の一人である。第一次政権時代を含め、27回も会ったという。山口県に呼んだことも記憶に新しく、「ウラジーミル」などと呼んでいた。その結果、北方領土問題は何の進展もなく、なし崩し的に日本が条件を下げてしまった挙げ句、ロシアは憲法改正で「領土割譲禁止」を決めてしまった。その交渉のことは先に「安倍外交と北方領土ー「大誤算」の内情」(2021.12.20)を書いた。結局安倍氏はプーチンに欺されてコケにされたんだと僕は思っている。安倍氏がまずするべきことは、北方領土交渉をプーチン大統領とどのように交渉すべきだったか、明らかにすることではないか。「私はプーチンにこう欺された」という本を書けば世界的ベストセラーになるだろう。
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群馬と山口、自民王国の立憲民主党ー立憲民主党考④

2021年11月20日 23時32分23秒 |  〃  (選挙)
 前回に東京8区を見て、「野党協力が功を奏した」選挙区があることを確認した。しかし、日本全体を見れば、そういう選挙区の方が少ないだろう。全選挙区を自民が独占し、さらに野党候補の比例復活を1人も許さなかった県も幾つかある。野球で言えば「完封」というべきか。今回の「完封県」は、青森山形群馬福井岐阜島根山口高知の8県である。保守系無所属が当選した熊本県も事実上の「完封」である。よほど保守的な「自民王国」であっても、誰か1人ぐらいは野党系が比例で当選しているものだが、上記の県には野党の国会議員が衆議院にいないのである。

 そんな県がこれほど多くては、とても「政権交代」どころではない。2009年を調べると、高知県だけは民主党が1人も当選しなかったが、他の県では誰かがいた。今回は岸田文雄安倍晋三麻生太郎二階俊博石破茂岸信夫西村康稔森山裕など西日本の有力政治家の選挙区に立憲民主党の候補がいなかった。そこでは共産党社民党れいわ新選組などが立候補して、一応「与党対野党」という形になっている。しかし、それらの党がが野党統一候補として有力者を破ろうと意気込む地区ではない。要するに自民に太刀打ちできないから、立憲民主党が候補を擁立も出来ない「捨て区」である。

 首都圏では甘利明石原伸晃ら自民党有力者を破った小選挙区もあった。だが西日本では善戦するどころか「不戦敗」がこれほど多いのに、政権交代なんて言うのはおこがましかった。「立憲民主党政権に共産党が閣外協力」がどうのこうの、いろいろ言われたけれど、果たして考える価値があったんだろうか。「数字上の可能性」があるから、政権側(や保守系マスコミ)が大々的に問題視した時に、枝野代表も「そんなに勝つわけない」と自分からは言えないだろう。でも、今回すぐに政権交代が実現出来る客観的可能性はなかった。今回は150議席程度が目標で、そのための「戦術」としての野党協力なんだとずばり言えば良かった。

 東西の自民王国の代表として群馬県山口県を見てみたい。群馬県では1区が公認でもめたが、今回から中曽根康隆、4区が福田達夫、5区が小渕優子とかつての首相の子ども、孫が完璧に世襲王国を築いている。特に5区は今まで一度も比例復活もない。2区はかつて笹川堯元総務会長が連続当選していたが、2009年に石関貴史に敗れた。2012年からは井野俊郎が当選中。石関は2005年に比例で当選し、09年には小選挙区で当選。12年には維新に転じて比例で当選、14年にも比例で当選した。17年には落選、今回も無所属で出たが立憲民主党候補の半分(2.5万)しか取れず落選した。
(2021年衆院選の群馬県立候補者一覧)
 群馬3区は笹川博義が4回連続して当選中。笹川堯の子だが、選挙区が違う。09年以前は谷津義男元農水相が連続当選していたが、09年に柿沼正明が当選した。2012年に落選して、その後の情報が無い。その時はまだ40代だったが、以後の選挙には出ないで政界からは引退したようだ。また群馬1区では、05年までは尾身幸次佐田玄一郎が交互に当選していたが、09年には民主党の宮崎岳志が当選した。宮崎は12年には落選したが、14年には比例で当選。17年は希望の党で落選、今回も維新から出て落選した。つまり、2009年は自民王国の群馬においても5区中3区で民主党が当選していたのである。その勢いあってこその政権交代だった。

 2009年にはもう一人民主党の当選者がいた。群馬4区の三宅雪子である。4区は09年まで5回を福田康夫、以後4回を福田達夫と福田家以外が当選したことがない。(5区も小渕家しか当選者がいない。)フジテレビのアナウンサーだった三宅は、小沢一郎の要請を受けて立候補し福田に肉薄して比例区で当選した。当時は知名度も高く、「小沢チルドレン」の代表格とされた。小沢と政治行動を共にし、12年は千葉4区の野田佳彦の選挙区に回って落選、13年の参院選でも落選した。以後はジャーナリストとして細々と活動していたが、2020年1月2日に水死しているのが発見された。自殺とされている。

 続いて西の自民王国、山口県を見る。明治の元勲までさかのぼらなくても、戦後だけでも岸信介佐藤栄作安倍晋三と山口県選出議員が20年も首相をやっている。山口4区では1996年以来、全9回すべて安倍晋三が当選していて、比例当選者も出していない。ただ7回連続して10万票以上を集めていたのだが、今回は8万票と前回より2万票以上減らしたとちょっと話題になった。今回は共産党も出ずに、対立候補はれいわ新選組だった。山口3区も前回まで河村建夫が当選を続けて比例当選も許さなかった。今回参議院から林芳正が転じて、立憲民主党の女性候補に圧勝した。得票率で4分の3を占めている。
(山口県の自民党候補者)
 このように山口3区、4区は今まですべて「完封」を続けている完全なる自民王国だが、山口1区に関してはすべて高村(こうむら)正彦、正大父子が勝利しているのだが、2009年だけは高邑(たかむら)勉が比例で当選した。高邑は12年総選挙前に辞任して山口県知事選に出て落選。その後は維新に移って、14年衆院選に出たが落選した。以後は立候補していないようである。山口県はこのように自民が圧倒しているのだが、山口2区だけはちょっと事情が違う。96年には佐藤栄作の次男、佐藤信二が当選したが、選挙には強くなかった。2000年に民主党の平岡秀夫が当選し、03年も維持した。05年は福田良彦に敗れて比例で当選したものの、福田が岩国市長選に出るため辞任すると補選で勝利。09年も勝利し、民主党政権では法務大臣を務めた。

 しかし、平岡は2012年の選挙で岸信夫に敗れ、14年にも続けて落選して政界を引退した。岸信夫は安倍晋三の実弟だが、岸信介の子ども夫婦の養子となって岸家を継いだ。その事は本人には長く知らされなかったという。2004年に参院選に出馬して当選し、12年に衆院に転じた。現職の防衛相ということもあり、今回は共産党候補に3倍以上の大差を付けている。こう見てくると山口県の自民王国は今後も続くのは明らかだろう。2009年でも民主党は小選挙区で1人、比例区で1人だったのだから。それでも有力な候補者が少しでもいなければ、政権交代どころではない。

 日本を変えたい、自民党政権を変えたいと思っている人でも、じゃあ、福田達夫や小渕優子、あるいは安倍晋三や林芳正の対抗馬になってくれと言われたら、了解することは難しいだろう。「落選確実」なのだから、野党から出てしまったら生活が成り立たなくなる。学者や公務員、大企業に務めている人は仕事を続けていた方が有利だ。落選しても次まで活動できるような生活保証は立憲民主党には出来ないだろう。本来なら党職員や党に近いシンクタンクなどが受け皿になれればいいのだろうが。山口2区の平岡秀夫は弁護士で、その後も死刑廃止運動の集会などで話を聞いている。弁護士や医師など落選しても影響の少なそうな資格を持つ人に出て貰うしかないのだろうか。

 今回書いたのは、首都圏だけ見ていてはダメで、地方の「自民王国」を検討すれば、とても立憲民主党が政権を取るなどという段階には達していないという冷厳なる現実である。右だの左だのと言うレベル以前に、地方議員も少ないし地方組織が弱すぎる。どんなところでも自民党内閣の政策に問題を感じている人はいるだろう。そのような現場の声を拾っていく苦労、工夫をもっと続けるしかないだろう。少なくとも、もっと西日本で強くなるにはどうすれば良いか、西日本対策本部を作って対応しないとまずいと思う。
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東京8区のケーススタディー立憲民主党考③

2021年11月19日 22時43分42秒 |  〃  (選挙)
 現在の選挙制度は衆議院も参議院も矛盾を抱えている。衆議院は小選挙区比例代表区があるが、小選挙区では「各野党が選挙協力をする方が有利」だが、比例代表区では「各野党がそれぞれの独自の主張をする方が有利」である。どっちも重要ではあるが、政権交代を実現しようというならば、全国の小選挙区の半分以上で勝利する必要がある。比例ではその特性から、大きな差は付きにくい。だから小選挙区で大差を付けないといけないのである。2009年衆院選がそうだったし、参議院で自民党が大敗したときも「1人区」の敗北が全体を決めたのである。そこで小選挙区で協力しようという動きが出て来る。

 今回首都圏では選挙協力によって野党が勝った選挙区がいくつもあった。その中で自民党元幹事長で(小なりといえど)派閥のトップだった石原伸晃を破った東京8区(杉並区の大部分)を取り上げて見たい。(投票率61.03%)
 吉田晴美(立憲民主党) 13万7341票 (48.45%)
 石原伸晃(自由民主党) 10万5381票 (37.17%)
 笠谷圭司(日本維新の会) 4万0763票 (14.38%)
 8時の開票速報開始とともに、吉田晴美の当確が報じられた。石原伸晃は比例で復活も出来なかったぐらい(3万票以上)差を付けられた。だが、よく見てみれば吉田晴美の得票率は過半数に達していない。これを逆に見れば、自民・維新の「保守協力」があれば、結果は変わった可能性があるのかもしれない。
(東京8区で当選した吉田晴美) 
 では、同じ東京8区の2017年の選挙結果を見てみたい。(投票率55.42%)
 石原伸晃(自由民主党) 9万9863票 (39.22%)
 吉田晴美(立憲民主党) 7万6283票 (29.96%)
 木内孝胤(希望の党)  4万1175票 (16.17%)
 長内史子(日本共産党) 2万2399票 (8.80%)
 円より子(無所属)   1万1997票 (4.71%)
 斎藤郁真(諸派)      3850票 (1.15%)  
 これを見れば、「次回は吉田晴美にまとまれば石原伸晃に勝つんじゃないか」と思うのも当然だろう。前回の立民と共産の票を合わせれば、ほぼ石原票と同じになる。もっとも前回の希望の党と今回の日本維新の会は、ほぼ同じ4万票を獲得していて、「非共産票」もあるんだろうと思う。それにしても接戦予想が出たことで、投票率が5%も上昇した。石原伸晃も前回より5千票以上上乗せしているが、増えた分の大部分は吉田票になったと思われる。(なお諸派の斎藤は「都政を革新する会」で、中核派系である。円より子は元民主党参議院議員で、2012,14年に東京8区の民主党候補だった。今回は東京17区で国民民主党から出馬して維新、共産にも及ばず4位だった。)
 
 次に東京8区の比例票を見てみる。主要政党のみ。( )内は2017年。【 】は2019年参院選(対象は杉並区全体)
 自由民主党  8万5703票  (7万6828票)  【7万9037票】
 立憲民主党  6万5028票  (7万3471票)  【5万1138票】
 日本維新の会 3万6311票   (8552票)   【2万0790票】
 日本共産党  3万0998票  (2万8076票)  【2万7395票】
 れいわ新選組 2万2687票           【2万8364票】
 公明党    1万9855票  (1万8297票)  【1万8445票】
 国民民主党  1万4752票           【1万1854票】
 社会民主党    4346票   (2631票)    【4999票】
 希望の党          (4万1014票)

 比例区票の見方はなかなか難しい。僕が驚いたのは、この地区では(今回の得票順で見れば)公明党が第6党だということである。東京でもそういう地区があるんだ。今回の自民+公明票はほぼ選挙区の石原票である。つまり、自民、公明票は固めたが、それ以外には浸透しきれなかった。一方、維新+国民民主は、選挙区の維新票より1万票ほど多い。国民民主党票も、吉田晴美に流れた方が多いと思われる。立憲民主党は前回より減らしているが、19年参院選より多い。前回衆院選にはなかった「れいわ新選組」に流れている可能性が高い。東京8区は2012年に山本太郎が初めて選挙に立候補したところで、なじみがあるところである。

 東京8区は1996年の小選挙区導入以来、8回連続して石原伸晃が当選してきた。ただし、石原が得票率で5割を超えているのは、実は2003年、2005年の2回だけだった。恐らくその頃が石原伸晃の最盛期で、だから2009年の野党転落後の自民党で幹事長を務めて、次期総裁の最有力候補と思われていたわけだろう。対する民主党は2003年、2005年には30代の鈴木盛夫という人が立候補していた。2回とも比例当選も出来ず、2009年には社民党の保坂展人(現世田谷区長)を擁立して敗れた。その後は円より子が2回、吉田晴美が2回立候補した。今までも反石原票がまとまったならば小選挙区で勝てたという選挙が多い。

 こういう風に見てみると、今回吉田晴美に(維新以外の)野党がまとまったのは、自然な流れのように思われる。首都圏には非自民系無党派層が多く、国民民主党を支持する大企業の労組票も少ない。(本社は多いが、工場が少ない。)自民党に対抗するためには、立憲民主党と共産党が「共闘」とまでは言わずとも、「棲み分け」することへの抵抗感は他ブロックより小さいだろう。北海道、東北、甲信越なども比較的同じような傾向がある。一方で、大工場が多い東海ブロック、維新が圧倒している近畿ブロックは全然違う。中国、四国、九州では自民が圧倒的に強い。日本も全国共通ではなく、アメリカや韓国のような「地域的な政党支持の違い」のある国になっている。首都圏だけの感覚でみてしまうと、違和感を持つ人も出てくるのだろう。(本当はここで西日本の状況を検討するつもりだったが、結構長くなってしまったので、ここで一旦終わりにして置きたい。)
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立憲民主党に定年はないのかー立憲民主党考②

2021年11月17日 22時51分17秒 |  〃  (選挙)
 立憲民主党に対して、民主党政権以来同じ顔ぶればかりが出ているという批判がある。なるほどそうも見えるだろうが、それは酷な感想だと僕は思っている。同じことは自民党にも言えて、麻生太郎二階俊博など80代になっても選挙に出ている。05年の郵政解散、09年の民主党政権交代、12年の自民党政権復帰と大きな選挙ドラマを生き抜いた、強力な地盤を持つ西日本の議員が政界の中心を占めているのである。安倍晋三、岸田文雄、石破茂、麻生、二階など皆09年でも小選挙区を勝ち抜いた政治家だ。

 民主党系の場合、09年に大量に当選した議員の多くは、12年以後に生き残れなかった。今回代表選に出馬意向が伝えられる逢坂誠二西村智奈美もその時には落選している。泉健太大串博志小川淳也などは比例区で当選したが小選挙区では敗れた。この時は元首相の菅直人、衆院議長の横路孝弘、衆院副議長を2度務めた赤松広隆、今回落選した辻元清美なども比例当選だった。

 2012年に小選挙区を勝ち抜いた民主党議員は、枝野幸男安住淳長妻昭前原誠司玉木雄一郎玄葉光一郎らである。民主党内閣で閣僚を務めたほどの知名度がなければ、安倍政権下を生き延びられなかった。(付け加えれば、他にも松本剛明山口壮(現環境相)、長島昭久細野豪志ら今は自民党所属の議員も当選した。)2009年の総選挙では、民主党だけで143人もの新人議員が当選したが、そのうち2021年の衆院選でも当選したのは玉木雄一郎大西健介山岡達丸後藤祐一岸本周平奥野総一郎ら(他に維新で当選した議員を入れても)14人しかいない。(玉木デニー沖縄県知事、本村賢太郎相模原市長など自治体の首長に転じた者もいる。)

 名前ばかり挙げてしまったが、09年には多くの女性新人議員も民主党から当選したのだが、生き残れなかったのである。今回も立候補したものの落選した人もいる。山尾志桜里のように引退した人もいる。結局ほとんどの人は政界から遠ざかってしまった。立憲民主党には中堅の人材が少ないとか、女性議員が少ないと言っても、それは有権者が自民党男性議員を当選させてきたのである。生き残った人が中心にならざるを得ないから、立憲民主党には民主党政権時代からずっとやっている人ばかりになってしまう。だから僕はそれを批判するのは酷だと思うわけである。

 しかし、それはそれとして、立憲民主党の小選挙区の候補はいつまで同じ人なんだろうか。別に同じ人でもいいんだけれど、それは「当選している限り、本人が自ら辞めない限り永遠に現職を優先して公認する」というルールがある場合である。立憲民主党は前回選挙時にバタバタと立ち上げなければならなかった。そういう事情から枝野代表など創業メンバーの個人商店的な色彩が強かった。他党にあるルールなども決まってないことが多い。例えば、自民党は「比例区は73歳定年」というルールがある。

 もっとも個別事情で「例外」もあって、近畿ブロックの奥野信亮は77歳、九州ブロックの今村雅弘は74歳でそれぞれ単独1位になって当選した。福岡10区の山本幸三元地方創生相は73歳で名簿に掲載されなかったため、城井崇(無所属)に負けた後に比例で復活できなかった。惜敗率95%以上だったから、載っていたら当選だった。これでは不公平だと不満が出るのも当然だろう。甘利明の場合は、72歳なので辛うじて定年制に引っ掛からず、比例名簿に掲載されたため当選できたわけである。

 それに対して立憲民主党は例外なく、小選挙区立候補者を比例名簿1位にしている。比例単独候補も少しいるが、すべて小選挙区候補の後であり、年齢制限もない。だからこそ、79歳の小沢一郎(岩手3区)、73歳の篠原孝(長野1区)が当選できたのである。高齢者の声を届ける議員も確かにあっていい。だけど、小沢一郎菅直人海江田万里中村喜四郎など、「余人をもって代えがたい」のかもしれないが、いつまで議員をやるつもりなんだろうか。横路孝弘は2014年の選挙時に73歳で、17年の選挙には出ずに引退した。赤松広隆は2017年の選挙時に69歳で、今回立候補せずに引退した。

 何歳までならいいかは決めがたいが、現実に小沢一郎は「政権交代より世代交代」を訴える38歳の藤原崇に小選挙区で初めて負けてしまった。藤原は2012年の選挙で29歳で比例区に当選し、小沢に挑むこと4回目で小選挙区を制した。これは(政治的立場を抜きにして考えれば)、香川1区の小川淳也以上に「快挙」なんではないだろうか。若ければ良いというものではないのは、自民党の2012年初当選組が「魔の○回生」と呼ばれ続けてきたのを思い出せば判る。だけど、旧民主党立ち上げから政権奪取、野党への転落から10年近く、ずっと同じような顔ぶれだと言われれば、全くその通りだと思う。 
(小選挙区で敗れた小沢一郎)
 高齢だからダメと言ってしまっては、高齢者だけではなく、障がい者や病者も議員として活動できるのかということになってしまう。社会の多様化を進める政党は、議員の多様性も具現化しなければいけない。ただし、どうしても小選挙区では日常活動や知名度が欠かせない。高齢議員は日常活動が鈍っても、知名度で長く当選してきた面が多いだろう。それでは政治が停滞するのも無理はない。ある程度高齢になったら、自分がまだ元気なうちに後進を育てることも大切だと思う。

 それでもいつまでも政治に関わっていたいと思う場合は、参議院の比例区に回って貰うのはどうだろう。参議院の性格上、長い政治体験を生かした活動が期待できる。解散がなく6年間続けられるし、途中で病気、死亡などの場合も次点者が繰り上がるので問題ない。小沢一郎、菅直人レベルなら全国で数万票は期待できそうだから、当選するのではないか。高齢者にしてみれば、みんな若い人になると知らない候補者ばかりになる。長いこと知っていた人が出ていれば、全国的に党勢拡大にもつながるんじゃないか。非拘束名簿式なんだから、個人名投票が多ければ当選、少なければ落選というだけで、これならいくら高齢で立候補しても何の問題もないだろう。
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「保守本流」枝野路線の破綻ー立憲民主党考①

2021年11月16日 23時04分32秒 |  〃  (選挙)
 衆議院選挙の問題に戻って。今度は政党について考えたいが、全部の政党を論じても仕方ない。先に自由民主党の派閥史を書いたから、今度は野党第一党立憲民主党について考えることにする。与野党のそれぞれ第一党に関しては、どの国でも考えることがいっぱいある。アメリカなら民主党と共和党、ドイツならキリスト教民主同盟と社会民主党…といったように。関心が無いという人もいるだろうが、それは「関心がない」というあり方で関与しているのだと思う。

 2021年の衆院選は立憲民主党が負けたというよりも、「自民党が勝った」という選挙だった。細かい数字は別に書くが、ともかく野党第一党だった立憲民主党は議席を減らした。その責任をとって枝野幸男代表が辞任した。今後党員も参加した代表選挙が行われるが、まだ立候補者も確定していない。衆院選に関しては、共産党と選挙区協力を行ったことに象徴されるように、枝野代表の方向性が「左過ぎた」という批判がある。それが「定説」になってる感じもあるが、僕はそれには疑問を持っている。
(辞任を証明した枝野代表)
 立憲民主党は小選挙区ではそれなりの力を発揮したが、比例区で振るわなかった。それを素直に解釈すれば、有権者が政権交代を望まなかったということだ。その証拠に朝日新聞の最新世論調査では、自民過半数獲得の結果を「よかった」が47%「よくなかった」が34%という結果になっている。それは何でだろうと考えてみると、「地力の差」が大きいと思う。

 コロナ禍で2年近く地域の祭りなどもなくなり、大規模な集会や決め細かな集票活動も出来なかった。今回は直接会って投票を依頼する運動が難しかった。そうなると、もともと持っていた「地力」が出てしまう。最終盤の「維新」などは勢いで伸びたと思うが、他党の場合は概ね「こんなもの」という結果ではないか。小選挙区で野党系が勝ったところも、前回選挙で立民+共産が自民を上回っていたところが多いと思う。結局日本の政党の力具合が正直に出てしまったように思う。

 また参議院で多数を持っていなかったことも大きい。衆議院が優先する憲法の規定で衆院選で勝てば総理大臣になれるけれど、参議院で大きな議席差がある以上、公約した政策は進まないのが目に見えている。今まで自民党が政権を奪われたことは2回あるが、いずれも参議院で自民党が大敗する選挙の後だった。89年参院選に自民党が大敗し、92年は堅調だったけれど、合計すれば参院では自民が過半数を割っていた。そして93年に細川政権が誕生して自民党は野党に転落した。2007年参院選にも自民党は大敗し、民主党が過半数を占める「ねじれ国会」となった。政治が進まないことへの国民の答えが、2009年衆院選で民主党への政権交代だった。

 コロナ禍を受けて、与野党ともに経済対策を訴えたが、すぐに実行できるのは参院で過半数を持っている自民党であることは明らかだ。政策の中身を検討すれば、もしかしたら野党の訴えたものの方が優れていたかもしれない。しかし、それは参院を通過できない以上、「絵に描いた餅」になってしまう。そう有権者が判断したのではないか。日本の政治では、憲法上衆議院が優先するとはいえ、法律の制定においては衆参が同等の力を持っている。そして参議院は解散がないので、一端大敗すると6年間は回復が難しい。その意味では「第二院の力が大きい」という特殊性を持っている。だから、今後もまず参議院で先に与野党逆転が実現しない限り、政権交代は難しいのではないだろうか。

 もうひとつ大きな理由としては、直前に岸田政権が成立したことを無視できないと思う。枝野代表は2021年5月に文春新書で「枝野ビジョン」を刊行している。そこでは「左に寄る」ことではなく、むしろ正反対に「保守本流を目指す」と言っていたはずだ。これは安倍政権が長すぎて、政治の物差しが「右に寄りすぎた」という判断がある。憲法や歴史認識などで国民全体より右寄りの路線が当然のように続いて、その結果「ど真ん中」の政治勢力が無くなってしまった。そういう認識から、あえて「保守本流」を掲げて、政治・経済運営の「常識」を取り戻そうと訴えたわけである。

 ところが岸田内閣が成立して、「新しい資本主義」を掲げて「分配重視の経済政策」を訴えるようになった。安倍政権とそれを受け継いだ菅政権の評価を争うはずが、梯子を外されてしまったのである。もっとも岸田首相も安倍政権のもとで、ずっと外相、政調会長を務めてきた。甘利幹事長の人事を見ても、どうも自民党最大勢力の安倍派(細田派から代わって安倍派になった)に配慮している感じがする。だけど、菅政権で無役だったため、菅政権のコロナ対応に直接の責任を負わないこともあって、枝野氏の目指した政治が宏池会出身の岸田氏に「上書き」されてしまった。もっとも岸田氏は安倍、菅政権の「負の遺産」にちゃんと向き合う意思が感じられない。そうなんだけど、一般有権者には受けない論点だったと思う。
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「大軍拡」をどう考えるべきかー2021衆院選⑤

2021年11月10日 22時41分24秒 |  〃  (選挙)
 衆議院選挙であまり論じられなかったことに、「安保・防衛」問題がある。まあ他の問題もきちんと論じられたとは言えないわけだが。しかし、今回の選挙を通して戦後日本でずっと続いてきた大原則が変わってしまうのかもしれないのである。

 まず、以下で「政党A」の公約を見てみたい。
 「人間の安全保障の理念に立脚した「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向け平和構築、軍縮・不拡散、保健・感染症、女性の活躍、防災などといった日本が得意とする分野における取り組みを強化します。
 次に「政党B」の公約を見てみよう。
 「自らの防衛力を大幅に強化すべく、安全保障や防衛のあるべき姿を取りまとめ、新たな国家安全保障戦略・防衛計画の大綱・中期防衛力整備計画等を速やかに策定します。NATO諸国の国防予算の対GNP費目標(2%以上)も念頭に防衛関係費の増額を目指します。

 これがどの党か判るだろうか。A党は公明党B党は自民党である。全然違うではないか。いや、公明党は「平和」とは言うけれど、「防衛費GNP1%枠を厳守する」とは書いてない。「日米防衛協力のための指針及び平和安全法制に基づく適正な運用を積み重ねながら、日米同盟の抑止力・対処力を一層向上させ、緊密な情報共有及び共通情勢認識の構築を行います」とあって、賛成したんだから当然だが「平和安全法制」を認めている。

 「維新」の公約を見ると、「防衛費の GDP1%枠を撤廃し、テロやサイバー・宇宙空間への防衛体制をさらに強化します。また、領域内阻止能力の構築について、積極的な検討を進めます」とあって、防衛費の GDP1%枠を撤廃することでは自民党と一致している。公明党よりも「日本維新の会」の方が議席が多いわけだから、国会では防衛費の増強する「大軍拡」を望む勢力が多数を占めるのである。これをどう考えるべき何だろうか。(なお、1%枠そのものは安倍政権においてすでに撤廃されている。「撤廃」というか、「1%という上限があるわけではない」という首相答弁がなされている。)
(防衛費増強を目指す自民党高市政調会長)
 2021度の防衛予算を調べてみる。5兆1235億円であり、2011年からずっと増えている。特に2013年度の4兆6804億円から安倍政権において5千億円ほど増大してきた。一方、日本の名目GDP(国内総生産)は円ベースで528兆9605億円である。今後少しずつ統計が改定されていくのだが、大まかには大体同じだろう。昨年度の防衛費は5兆688億円なので、対GNP比は0.95%ほどになる。これを2%以上にするということは、2021年度の予測数値で考えるならば、10兆円以上にするということである。
(世界各国の軍事費)
 上に示したように、自民党の公約通りの大軍拡が実現すれば、日本は米中に並ぶ一大軍事国家になる。そんなことは現実的に不可能だと思うが、方針として明示した意味は大きい。ヨーロッパ各国のように、人口規模が小さく一人当たりGDPが日本より大きい国と比較すること自体がおかしい。(一人当たりGDP(ドルベース)は日本は24位である。)防衛費を倍増させるなど、国家は大国でも国民生活は貧困だった戦前日本の再来である。もっともそれは簡単に出来ることではない。労働力が不足する中で、すでに大きく割り込んでいる自衛隊員を倍増させるなど出来ない。だから、「装備」を増強することを考えているのだろう。要するに、米国製兵器をもっと買うことになるのだろう。

 どんな予算もそうだけれど、特に防衛費は増やしたら減らしにくい。人件費は削れないし、大型兵器は一年単位ではなく何年にもまたがって設計段階から膨大な予算を必要とする。一度始めたら、途中で止めることは難しい。日本はすでに「事実上の空母」を所有するようになっている。とすると「敵基地攻撃能力」だけでなく、ミサイルや原子力潜水艦を「専守防衛」の名の下に開発するのだろうか。この方向性は「亡国への道」だと僕は思う。「地上イージス・アショア」が断念に追い込まれたように、国民の抵抗に直面することになるだろう。
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消費減税より給付金ー2021衆院選④

2021年11月09日 22時47分52秒 |  〃  (選挙)
 衆院選で野党の議席減をめぐって、立憲民主党と共産党の選挙協力を語る人が多い。間違っていたとか、いや一定の効果もあったとか。まあ、それも考えるべきことだろうが、有権者はそれで投票先を判断したのだろうか。僕は政党の路線問題を気にする人なんて、そんなに沢山いるとは思えない。政治に強い関心を持っていた人は、左右を問わずマスコミやネットで大きな声で語る。でも、それが勝因(敗因)だと決めつけるというのもどうなんだろうと思うのである。

 じゃあ、有権者は何を重視したのだろうか? 選挙後に行われた共同通信の世論調査では、「経済政策」が最多で33.5%を占めて他を圧倒している。それから「年金・医療・介護」が16.0%、「新型コロナウイルス対策」が14.9%で、この3つが10%を超えている。その次に「子育て・少子化対策」が9.4%、「政治とカネ」が8.4%、「外交や安全保障」が6.1%、「地域活性化」が3.8%、「原発・エネルギー対策」が3.5%、「憲法改正」が2.1%、「その他」が1.1%となっている。

 この調査リストには何で「女性の政治進出」や「選択的夫婦別姓制度」がないのだろうか。「地球温暖化問題」は「原発・エネルギー対策」に入るのかもしれないが、はっきりと明記するべきではないか。それとも日本の選挙では全然争点にならないのか。それより何より「所属団体の推薦」とか「知人の依頼」という項目こそ必要なのではないだろうか。まあ、それはともかく、いつも日本の有権者は「経済」とか「年金」を重視すると答えている。どこまでホンネを答えているのか判らないけれど。

 一応有権者は経済やコロナ対策を重視したと考えると、野党が掲げた「消費税減税」がアピールしなかったのかと思う。自民党や公明党が掲げた困窮世帯や子どもへの給付金の方が受け入れられたということではないか。消費税に関しては、アップするときに聞くと「引き上げに反対」という声が多くなる。しかし、しばらくすると慣れてしまうのか、受け入れられて来る。2021年10月の調査では「10%のまま維持する方がよい」が男女ともに多数派になっている。「一時的にでも引き下げる方がよい」は男性で38%、女性で33%である。(11月5日付朝日新聞夕刊)
(消費税に関する世論調査)
 つまり、国民の中で少数しか賛成していない政策を野党は公約にしたことになる。少数派でも野党が主張して行かなければならない問題もある。与野党を分かつ基本的な問題では、多数少数に関わらず信じる政策を掲げるのが正しいだろう。しかし、経済政策などではどうなんだろうか。国民の中に消費税維持派が多ければ、それを受けて税収をいかに「再分配」していくかこそ論じた方が良かったのではないだろうか。

 与党の方では公明党の「子どもに10万円給付」をめぐって、選挙が終わってから慌てて調整している。選挙で勝ったら連立を組むことは決まっていたんだから、選挙前に「与党共通公約」を発表するべきではないのか。今頃になって高市自民党政調会長が「公明党案は自民党の公約とは相容れない」などと言っているが、選挙後にそんなことを言うのはおかしい。野党はその矛盾点を選挙中に指摘して、自公両党を追及するべきではなかったのか。選挙後に与党間調整をしていることに違和感を感じる。

 結局は「現金で5万円」「残り5万円はクーポン」という方向でまとまるらしい。これはギリギリ公約通りかと思うけれど、このクーポンというのは大学や専門学校への入学金や授業料に使えるのだろうか。18歳にも支給するんだから、当然そういう使い道ができなければならない。所得制限も協議されている。それは僕が「公明党の「子どもに10万円給付」公約を考える」で書いたように、児童手当の仕組みの利用を考えているからである。当然そうなると思っていたが、もともとの公明党案からは逸脱になる。ちなみに僕は「労働組合と選挙ートヨタ労組の撤退の意味するもの」も書いた。今回の選挙の焦点はその二つだと思っていたからである。終わってみれば、まさにその通りだったと思う。

 何で消費税が受け入れられたのか。逆に野党はなぜ消費税にこだわる人が多いのか。恐らくは1989年の消費税導入時にさかのぼって、「だまし討ち」(中曽根元首相が大型間接税は導入しない」と公約して選挙に大勝した)で作られたこと、そして「逆進性」があるということだろう。しかし、逆進性と言っても、日本の税率はヨーロッパほど高くない。ヨーロッパでは25%ぐらいある国が多いが、その代わりに食品は5%とかゼロになったりしている。消費税を下げて、代わりに高額所得者の所得税を引き上げるなど言っているが、国民すべてからモノ・サービスの購買時に掛ける消費税分に充当できるとは思えない。

 日本では高齢化が急速に進行し、高齢層も若年層も、年金や医療が現在のように保証され続けるのか不安に思っている。そのため、ただ減税すればいいという主張では国民は納得しないのではないか。アメリカでも減税を主張するのは共和党である。ただ消費税を減税すれば、高い買い物をする富裕層の方が有利になる。それより野党はきちんと「コロナ困窮者」に給付金という仕組みを提示するべきだったと思う。「子どもに10万円」という政策は、いろいろと疑問を呼びながらも、間違いなくインパクトがあった。それは公明党が700万票を回復した原動力になったのではないかと僕には思える。
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立憲民主党は果たして本当に負けたのかー2021衆院選③

2021年11月08日 22時52分31秒 |  〃  (選挙)
 2021年衆議院選挙に関して、結果と比例票の推移を書いたままになっている。間が開いたが、次に各党の結果と置かれた状況を自分なりに考えてみたい。まずは立憲民主党から。立憲民主党は議席を13も減らして、100議席を割り込んで96議席となった。自民党も15議席減らしているのだが、元々の議席数が多く過半数を大きく超えているから、減らした感じがしない。菅内閣の支持率が低迷していたから、岸田内閣に代わって「よくこの程度の減で済んだ」と思われている。一方の立憲民主党は悪くても「多少は増える」と予想されていたので、大敗イメージになった。その結果、枝野代表が辞意を表明して、今後特別国会後に代表選が行われる。
(「変えよう」と訴えていた立憲民主党)
 議席を大きく減らしたんだから、立憲民主党は「敗北」には違いない。開票直後の記事でもそう書いた。もう政権交代も近いようなことを言ってたんだから、話が大分違ってしまった。しかし、今さらにはなるけれど、立憲民主党は果たしてどの程度負けたのだろうか。それをきちんと検証しなければいけない。

 衆議院選挙は小選挙区比例代表区だから、それぞれ検討してみたい。
 前回の2017年衆院選は、なかなか開かれなかった臨時国会を開いたと思ったら、安倍元首相によって何の審議もないままに冒頭で解散されてしまった。何だかんだ言っても野党の不意を打ったということだろう。さらに小池都知事を中心にした「希望の党」が国政に参入し、「民進党」がそれに合流するという展開になった。しかし、希望の党は民進党全員ではなく、「選別公認」の方針を打ち出したため、公認を得られない議員を中心に「立憲民主党」が結成された。そういう経緯があったため、小選挙区では自民党が圧勝したのである。
 【2017年衆院選の小選挙区=総計289】
 自由民主党=218 公明党=8 与党226
 立憲民主党=18、希望の党=18、維新=3、共産=1、社民=1、無所属=22 野党・無所属計63

 無所属や希望の党で当選した議員の中には、その後立憲民主党に移籍した議員が多い。
 希望 階猛大島敦笠浩史下条みつ、渡辺周、大西健介泉健太佐藤公治、白石洋一、大串博志 以上10名
 無所属 小沢一郎、安住淳金子恵美玄葉光一郎、中村喜四郎、福田昭夫野田佳彦江田憲司、中島克仁、黒岩宇洋、菊田真紀子、篠原孝、重徳和彦、中川正春、岡田克也、平野博文、広田一、原口一博、玉木デニー(屋良朝博) 以上19名。

 玉木デニーが知事選に出た後の後継を含めて、総計29名が立憲民主党に加わった。先の18議席に加えると、37議席を持っていた。ところで今回立憲民主党は小選挙区でいくつ勝ったのだろうか。それは57議席である。希望や無所属から加わった議員も、上で下線を付けた議員は小選挙区で勝った。僕も小沢一郎中村喜四郎が小選挙区で落選する(比例で当選)するとは思っていなかった。中村喜四郎は立民とは共同会派に止めて無所属で臨んでいたなら勝てたのではないだろうか。

 立憲民主党は前回よりメンバーが増えて衆院選に臨み、前回より大幅に増えた57議席を小選挙区で得た。その大部分は野党間の選挙協力があった選挙区である。もちろん、300近い小選挙区の中で57程度では政権獲得にはほど遠い。でも僅差の敗北も多かった。いわゆる惜敗率が90%以上を「接戦」と考えるならば、全国では32選挙区が接戦だった。何かちょっとしたことが違っていたら(例えば菅内閣のままで選挙が行われたとか、選挙中に大きな失言が相次愚とか)、自民党を30議席減らせた潜在的可能性はあったのである。ただ、それは自民党が単独過半数を割るというだけのことで、公明党を加えれば与党で過半数になる。それを覆すためには、現在のように西日本の小選挙区でほとんど勝てない現状のままでは政権獲得は難しいだろう。(近畿以西では12議席だけ。全部で113小選挙区。)
 
 以下に示す世論調査に見るように、国民の半数近くが「与野党伯仲が望ましい」と答えていた。しかし、比例区の投票先を聞くと、圧倒的に自民党が多い。与野党逆転を望む人よりも、与党が野党を上回ることを望む人の方が3倍ほど多い。伯仲を望む人が挙って野党に投票しない限り、与党は圧勝するはずである。野党間の選挙協力を評価しない人が評価する人より多いことも注目点である。このように、小選挙区はまずまず健闘したものの、比例票で圧倒されたのが今回の衆院選で野党が負けた原因だった。
(共同通信の世論調査)
 では、比例区票を確認してみよう。今回と同じく「国民民主党」や「れいわ新選組」が存在したのは、2019年の参院選だけである。だから2回の選挙の比例票を比較してみる。参院選は全国集計だし、個人名も書ける。衆院選はブロック別に行われ、政党名しか書けない。また参院選の方が投票率が低くなるのが普通である。だから、両者を簡単に比べてはおかしいのだが、他に材料がない。

        (2019年参院選)      2021年衆院選
 投票率     (48.79%)         55.93%
 自由民主党   17,712,373       19,914,883
 公明党      6,536,336        7,114,282

 立憲民主党   7,917,720        11,492,115
 日本維新の会   4,907,844        8,050,830
 日本共産党    4,483,411        4,166,076
 国民民主党    3,481,078        2,593,375
 れいわ新選組   2,280,252        2,215,648
 社会民主党    1,046,011        1,018,588

 面倒くさいと思うだろうが、この数字をよく見てみると、5割も行かなかった2019年参院選と比べて増えてない政党が多い。実は立憲民主党以外の共闘した野党は皆票を減らしている。今回参院選よりも増えたのは、自民、維新、公明、立民なのである。立憲民主党は参院選よりも350万票以上増やした。それに伴って、前回は37議席だった比例区で39議席を得た。増えているのである。しかし、自民党や維新の会の票の増え方が大きかったので、「比例」であるから増え方が限定的だった。

 小選挙区では20議席増やし、比例区では350万票以上増やした。「立憲民主党は果たして本当に負けたのか」とタイトルに掲げたのも、なるほどと思ったのではないだろうか。
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比例票に見る各政党の勢力ー2021衆院選②

2021年11月02日 22時47分39秒 |  〃  (選挙)
 毎回書いている比例区票の点検作業。2005年衆院選から2019年参院選までは「比例区票の時系列的検討ー2019参院選②」(2019.7.23)に書いたので、今回は時系列点検は止める。面倒な上に、要するに17年衆院選、19年参院選との変化を中心に見れば良いだろうと思うからだ。それ以前は折に触れて数字を振り返る。

 その前に今回の投票率を見てみたい。今回の投票率は55.93%で戦後で3番目に低い。しかし、一番低い2014年、2番目に低い2017年に比べて見れば上がっている。昔を振り返ると、大平内閣の1979年衆院選では台風と重なって68.01%と、その前の75年より5%も下がって自民党が激減した。その後で大平・福田の有名な「40日抗争」が起こり自民党が真っ二つに割れた。しかし、今になってみると昔はずいぶん高かったんだなと思う。最近60%後半になったのは、2005年、2009年だけ。しばらく、あるいは二度とないのではないか。

 今回は自分はあまり盛り上がりを感じなかったのだが、それも道理で自分の選挙区(東京13区)は50.88%で、東京で一番低かった。東京で一番高いのは東京8区の61.03%。ここは立民の吉田晴美が石原伸晃を破ったところで、その他にも東京5区、東京6区、東京19区など、立民・共産の選挙協力が行われて自民を破った選挙区はいずれも60%に達した。立憲民主と共産の協力は(全国的な評価は別にして)、東京では選挙の盛り上がりをもたらし、野党の勝利に結びついたと言えるのではないか。

 今回の比例区の総得票数は5746万5978票だった。全国の有権者総数は約1億500万人なので、1%違うと100万人ほど違ってくる。17年衆院選は5575万票で、19年参院選は5007万票ほどだった。つまり、前回衆院選より2.2%ほど投票率が高かったので、その分200万票近くが増えている。

 では各党を順番に見てみる。まずは与党から。自民党は今回比例区で1991万票を得た。約2千万票で、全体の34.66%になる。16年参院選からの票数は、2011万→1856万→1711万となっている。2005年の小泉郵政選挙の2500万票越えには及ばないが、今回は非常に支持が厚かったのである。菅内閣時には確かに内閣支持率が下がったが、政党支持率はずっと堅調だった。比例区の投票先を聞く調査でも、圧倒的に野党を引き離していた。それは何故なのかこそ、野党は厳しく問う必要がある。
(開票中の岸田首相)
 公明党711万4千票ほど。16年参院選から振り返ると、753万→698万→654万と減り続けていた。かつては800万票を越えていた時もあるが、次第に落ちていたのは創価学会や協力する自民党支持団体などが高齢化して、昔ほどの集票力がなくなったなどと言われる。今回は1年半続くコロナ禍の中で、きめ細かな集会などが開けない中、票の出方が注目されたが、結果的には5年ぶりに700万票を回復した。今回自公が勝利したのは、今までの世論調査を素直に見れば納得の結果である。選挙制度やマスコミのあり方には問題があるが、それはともかく全国で自民党、公明党と書いた有権者が多かったという事実の上に選挙結果がある。

 次は野党を見る。立憲民主党は1149万2千票ほどなので、およそ1150万票である。17年衆院選は1108万、19年参院選は792万だった。17年は希望の党が968万票ほどあった。その時に当選した議員は国民民主を中心に、自民、維新などに分かれている。だから全部は来ないわけだが、それにしても4年間に前回無所属や希望、前回衆院選は小沢一郎らは「生活の党と山本太郎と仲間たち」という党だったのだが、まとまって大きくなったはずが42万票しか増えていない。結果的にそれが議席を減らす最大要因になったと言える。前回の比例当選が37名、今回が39名なので、前職議員が増加した分に見合わなかった。「比例は共産」「比例はれいわ」などと言ってた激戦区もあったらしいからそういう影響もあったかも。
(辞意を表明する立民の枝野代表)
 国民民主党を先に見ると、259万票ほど。今回善戦したイメージもあるが、19年参院選は348万票だったから、減らしている。参院選より投票率が高く票数が700万も多くなったのに、300万票も行ってない。前回の参院選では3人しか当選出来ず、労組の擁立議員も落選した。このままでは2人当選も危なく、連合も立民を批判するだけではなく、国民民主党もこのままでいいのか、しっかりと検証するべきだろう。

 共産党は今回416万6千票ほどで、9議席だった。16年参院選から見ると、602万→440万→448万となっていて、600万票から大分減っている。前回は比例区で11議席だから、32万票減らして2議席減らした。今の法律では小選挙区に出ないと選挙運動がやりにくい。今回は相当に候補を取り下げた影響からか、比例区の票も減らしてしまった。協力先の立憲民主党も減らしたんだから、何のためにわざわざ自党の候補を取り下げて協力したのかと党内でちゃんと議論しなければおかしい。

 れいわ新選組221万票で、3議席を獲得した。東海ブロックで1議席を確保したが(小選挙区の得票が少なかったため)、当選にならなかった。事実上は4議席獲得と同じである。しかし、19年参院選では228万票だから、実は減らしている。まあ衆院選では中国、四国や北海道、北陸信越など定数が少ないブロックがある。そういうところでは小政党に入れても当選可能性がないため、小党の場合は全国1区の参院選の方が集票しやすい。それにしても、山本太郎を当選させるという目的を果たした後で、22年参院選ではどうなるのか。

 社民党は101万票だったが、どのブロックでも当選者を出せなかった。だが、実は17年衆院選の94万より増えている。19年参院選は105万で1議席。2022年は福島みずほの改選なので、1議席を獲得できる可能性はある。意外なことに社民党はなくなってしまうのではないかというほど減らしていないのである。

 さて、問題の「維新」だが、比例票は805万だった。25議席獲得。17年衆院選は339万、19年参院選は491万なので、倍増とまでは行かないがそれに近い。かつて「みんなの党」が2010年参院選に794万票を獲得したことがあるが、かつての公明、共産以外に全国で800万票を超えた第3党はないと思う。どこから出て来た票かよく判らないけれど、立民、共産、社民は前回衆院選と大きく違わない以上、前回1000万票近かった「希望の党」から国民民主と維新増加分が出て来たということではないか。
(激増した「維新」)
 こうして見ていくと、自民、公明が支持されたという大きな傾向が見える。マスコミはいろんな政策を言うが、「憲法改正」とか「選択的夫婦別姓」などを重視する人は、もう与野党どっち側に入れるかは判断済みだろう。「共産党の協力」などを重視する有権者もいるだろうけど、実際にはそんなに多くはないと思う。僕はコロナ禍の苦難に対して「大型経済対策」「子どもに10万円」と言った与党が支持されたのではないかと思っている。参院でも多数を持ってるからすぐに実行できる。それに対し「消費是減税」を言う野党は実現可能性が疑わしい上に、実現しても小売り業には面倒。いずれ戻すときも大変だしと思われ、政策として練れていなかったと思う。路線問題より、経済政策で与党が勝ったのではないか。
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与党が絶対安定多数を確保した選挙ー2021衆院選①

2021年11月01日 23時10分18秒 |  〃  (選挙)
 2021年10月31日に衆議院選挙が行われた。岸田首相は「与党で過半数」が目標と言っていたが、まあそれは「衆院選は政権選択選挙だから」という建前である。自民党の公示前勢力は276人、前回の当選者は284人なのだが、前回は「希望の党」をめぐるゴタゴタがあって自民は出来すぎとも言える。今回は事前予想では自民単独では過半数が難しいという報道(読売等)もあって、単独過半数(233)は何とか越えて、出来れば絶対安定多数(261)に迫りたいというあたりがホンネの数字だった。

 フタを明けてみれば、自民党は追加公認二人を加えて261議席と絶対安定多数を確保した。NHKの選挙速報が始まった時点では、210~250台後半という幅がある数字だった。当初は「単独過半数が焦点」かと思われたのである。ところが公明党32人を加えて、自公で293人と与党が圧勝した。もっとも小選挙区ではし烈な激戦区が多く、なかなか決着が付かなかった。午前1時を過ぎても決まってない小選挙区が幾つかあった。
(総選挙の結果)
 立憲民主党共産党を中心に選挙協力が行われたが、両党ともに議席を減らした。立民の枝野代表も、共産の志位委員長も、協力には「一定の成果があった」と言っている。しかし、それは裏を返せば「一定の成果しかなかった」=「大きな成果には結びつかなかった」ということでもある。その問題は別に考えたいが、東京8区(石原伸晃落選)や神奈川13区(甘利明が小選挙区で落選)は野党の選挙協力なくしてはありえなかった。その結果甘利幹事長は辞任した。自民党の権力構造に影響を与えたのは間違いない。
(甘利幹事長が辞意)
 それにしても立憲民主党は公示前勢力110人を大きく割り込んで、96人当選と100人に達しなかった。小選挙区は全289区の中で57議席、比例区は39議席と前回の37議席とあまり変わらない。比例での復活当選が少ないので、次回の期待も難しい。比例区は全176議席中、自民が72議席公明が23議席と合計で95議席も獲得している。だから「小選挙区制度だから勝てない」と野党支持者が言うのは間違いだ。選挙制度を比例中心に変えても、負けるのである。それは何故か、じっくりと検討する必要がある。
(落選した石原伸晃)
 共産党は10議席(公示前12)、国民民主党は11議席(公示前8)、れいわ新選組は3(公示前1とあるが、これは立民から除籍された高井崇志が滋賀3区から出たものなので、実質は公示前ゼロ)、社会民主党は沖縄の小選挙区を守って1議席である。これらは小政党なので、はっきり勝った負けたと言いにくい部分がある。はっきりしているのは「立憲民主党は敗北」で、「日本維新の会」が大勝利ということだろう。

 「維新」は小選挙区で16、比例区で25、合計で41議席も獲得して、一躍第3党になった。もっとも2012年に「大阪維新の会」が国政進出に当たって「立ちあがれ日本」と合同した「日本維新の会」というのがあって、56議席を獲得したこともあったが。(なお、旧「維新の会」は石原慎太郎と橋下徹が共同代表を務めていた。)その後、いろんな経緯があって、維新にも浮き沈みがあって前回は小選挙区で3(うち1つは丸山穗高)、比例で8の計11議席だった。しかし、今回は大坂の小選挙区では公明党が出ている4つを除く15議席も当選した。

 それは何故なんだろう。今回は比例代表区で東京、北関東、南関東、東海では2議席、九州と北陸信越でも1議席と関西ローカル政党という範囲を超えつつある。特にビックリしたのが東京12区。ここは東京唯一の公明党擁立区で、広く名前が浸透していた太田昭宏が引退して、比例北関東から当選3回の現職岡本三成が立候補した。一方で立民も出ずに、共産党元議員の池内沙織が出ている。池内は毎回立候補しているので名前も通っている。朝日新聞26日付の情勢報道では「岡本と池内が互角」と出ている。「維新新顔の阿部司が懸命に追う」とある。

 開票結果を見てみると、以下の通り。
  岡本三成 101,020
  阿部 司  80,323
  池内沙織  71,948
 どこが「互角」なんだと思うが、実は最終盤に吉村洋文大阪府知事が東京12区に入って、かなり密着して細かく回ったという。その結果、無党派の池内票を引き剥がしたのだと思う。前回2017年は太田票が11万2千票なので、実は1万票以上減らした。池内は8万3千票だったから、こちらも1万1千票も減らしたのである。他の選挙区ではこんなに違っているところはない。調査時点では確かに岡本、池内互角に近い結果だったのだろう。吉村効果が東京でも出るのである。反自公だけど、共産じゃない票がやはりあるのだ。

 この「維新」をどう考えるのかも、また別に考えたい。他に無所属で10人(自民党追加公認2人を除く)が当選した。与党系が3人、野党系が6人、他1人ではないかと思う。与党系は静岡5区の細野豪志、岡山3区の平沼正二郎、熊本2区の西野太亮の3人。平沼は平沼赳夫の次男。西野は野田毅を破った。どっちも自民公認が得られないが保守系。細野も今さら野党系には戻れないけど、岸田派の自民党吉川赳も比例区で当選したから、自民党に入るのも大変だ。どうするんだか知らないけど、首班指名では岸田と書くのは間違いない。

 野党系はあえて政党公認なしで退路を断って臨んだ人が多い。茨城1区の福島伸享、新潟5区の米山隆一、京都4区の北神圭朗、福岡9区の緒方林太郎、大分1区の吉良州司の5人で米山以外はかつての民主党議員である。もう一人鹿児島2区の三反園訓(みたぞの・さとし)がいる。非自民系の支持で知事に当選したが、任期中に自民に近づき2期目を目指す選挙は自民の推薦を得ながら落選した。しかし、今回は自民党前議員がいる選挙区で出馬して当選した。首班指名でどうするんだか、僕には判らない。

 今回の結果については、概ね朝日新聞の情勢報道に合っていた。朝日は近年下限と上限を示しているが、自民党は251~279、立憲民主党は94~120になっていた。自民は真ん中に近いが、立民は下限に近い。公明25~37、国民民主8~12、共産9~21だから、どの党も合っているが、共産は下限に近い。一方で維新は25~36なので、上限を突破している。朝日予測は野党に厳しく、逆に読売予測は与党に厳しかった。普段の支持傾向と逆なんだけど、もちろんわざとしたわけではないだろう。読売は投票率を高く見積もりすぎたのかと思う。立民、共産も予測範囲内だったが、予測の一番下に近かった。それは最終盤になって維新に予想以上に取られたということ以外に考えられないと思う。

 なお、書く気にはならなかったが、自民党の堅調は予測しないでもなかった。首都圏では無党派が多く、共産党や公明党関係の人も多いから、選挙協力にもあまり違和感がない。だから立共協力がある程度成果を挙げそうなムードも間違いなくあったと思う。だがそれだけで日本全体を判断してはいけない。愛知県の立憲民主はトヨタの選挙撤退で大きく減らした。また選挙直前にあった北と南の出来事は僕には暗示的だった。北は北海道旭川市長選で、15年ぶりに自民系市長が誕生した。士別市長選でも自民系が勝った。それを受け衆院選でも立民が持っていた議席を立民から立った前旭川市長が守れなかった。

 南では沖縄で「オール沖縄」勢力にほころびが生じ、地元資本の金秀グループが抜けた。その結果もあってか、沖縄の4選挙区の内、半分で自民党が勝利した。負けたのは3区と4区で、どちらも立憲民主党だった。比例区でも復活できず、「オール沖縄」の打撃は大きい。北と南で別々に起こった問題だが、各地方では立憲民主党が難しい情勢にあることを何となく予感させる出来事だった。単に直前に岸田内閣に衣替えして有権者の目をそらしたというだけの問題ではない。
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自書式から記号式へ、さらに順位付け投票に選挙改革を

2021年10月30日 22時23分47秒 |  〃  (選挙)
 選挙というものは、100%考えが一致する候補者はなかなか見つからないものだ。調べていくとこの人はどうなんだろうと思うことが多い。でも100%の一致を求めてしまうと、自分で立候補しない限り棄権せざるを得なくなる。自分で立候補するわけにもいかないから、まずまずのところで妥協するしかない。

 だけど最低限、名前を覚えていかないといけない。「自書式」だからである。明治時代から有権者が候補の名前を書く方式が定着してしまった。前近代から識字率が高かった日本だからこそかもしれないが、今ではどうなんだろうか。結構投票に行くのが大変だという声もある。物理的な大変さ(会場に段差があるなど)もあるが、名前を書くためのメモも持ち込んではダメ、老夫婦で相談してもダメという投書があった。

 調べてみると、衆院選と同日に行われる神戸市長選では「記号式」で行われるという。記号式と言っても、要するに候補者名の上に○印を付けるだけである。(下の画像参照)もっとも記号式は31日だけで、期日前投票、不在者投票は自書式だという。その理由は判らない。他にも記号式でやってるところがあるらしい。だから法律で出来るようになっているんだろう。
(神戸市の投票用紙モデル)
 日本の選挙というと、選挙カーが「○○、○○」と名前だけ連呼していくイメージがある。まずは名前を記憶してもらわないといけないんだから、やむを得ない面がある。政策より候補者名世襲政治家が有利になる現行の自書式を変えた方がいいんじゃないだろうか。高齢者、障がい者にはその方がいいだろうし、開票も簡単だ。解読が難しくて裁判になるようなケースも少なくなるだろう。(二人にまたがるように○をする人なんかもいて、もめることはあるだろうが。)郵便番号みたいに機械で開票すれば時間と予算も節約になる。

 しかし、それだけでなく記号式にすれば、「順位付け投票」も可能になる。小選挙区が良いのかどうか検討が必要だと思うが、小選挙区制度を続けるならば「過半数の得票がない場合は決選投票にする」べきだ。自民党総裁選だって決選投票だったのだから、自民党も反対しないだろう。投票率が5割前後、野党候補がいっぱい立って得票率40%程度で与党候補が当選したとする。そうすると有権者全体のわずか2割ほどの得票で、その地域の人々の意向を与党が代表してしまうことになる。

 それは問題だということで、今回は野党どうしの選挙協力が行われている。それは「候補を統一する」というやり方で、どこかの党(主に共産党)が候補を下ろしている。しかし、誰を統一候補にするかもめたり、直前に急に決まってバタバタしたりした。でも本来はトップの候補者の得票率が5割に行かない場合は、1位と2位で決選投票するべきじゃないのだろうか。フランスのように一週間後に決選投票をしてる国があるんだから。

 だけど一週間後にまた選挙かよと思って2回目は行かない人が多いだろう。投開票の手間も大変である。だったら「順位付け投票」をしたら良いのではないか。全員に付けるやり方もあるが、まあ「1」と「2」を書くだけでいいと思う。最初に1位票を確認して(機械ですぐに読み取れるはず)、過半数に達した候補がなければ、3位以下の候補票の2位投票を確認していく。その2位票を足してトップの候補を当選とする。2位を書かない人もいるだろうから、どっちも過半数に達しないこともありうるが、その場合はトップが当選でいいと思う。

 各野党がそれぞれ出ても、協定を結んでお互いに2位と書くように支持者に呼びかければいい。立憲民主党の場合、政策的に共産党に歩み寄らないと2位と書いてくれないことがありうる。だけど保守系候補の場合、維新に近づく人もいるかもしれない。この制度になれば、各政党がもっと擁立することになる。自民党の場合、国民民主などに2位と書いてもらうために、あまり極端に右派的な政策を抑制する必要も出て来る。いろんなことが起こると思うが、それが目的ではなく、要するに「小選挙区では過半数の得票で当選とする」ことが重要だということだ。最新の読み取り機を開発すれば、十分に実現可能だと思う。
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衆院選より総裁選の方が長かったテレビ

2021年10月29日 23時12分56秒 |  〃  (選挙)
 もう一回衆院選について。選挙を見ていて、段々僕はどの党が勝つかという問題よりも、日本の選挙制度を作り直さないといけないという気持ちが強くなってきた。以前から選挙制度や選挙運動などについて何度も書いてはいるが、それでもいつまでも書かないといけない。確かに町のあちこちにポスター掲示板はある。選挙の案内は送られてくるから、住民票の場所に住んでる人は選挙があることぐらいは知ってるだろう。でも、毎回入れる党が決まってる人はいいけれど、そうじゃない若い人なんかはどうすればいい? もちろん、調べる気があればスマホでマッチングアプリもあるけれど、選挙運動、あるいは選挙報道が日本には非常に少ないのである。

 そして「投票率が低い」と「自己責任」にしてしまう。僕は毎回そうなんだけど、候補者の演説にも行き会わないし、チラシも配ってない。選挙カーも一度聞こえてきただけだし、それも政策じゃなくて名前を連呼していた。選挙区の外れに住んでいるから、大体いつもそうである。そりゃあ、新聞を読んでるから候補者を知る機会はある。でも新聞を取ってない人はどうなるんだろう。選挙公報が配布されたのは28日だった。期日前投票が終わりそうな頃にやっと届いた。まあみんな読まないのかもしれないが。

 政見放送も多くの人は見てないと思う。昔(93年以前)は違った。多くの人が自分の選挙区は見てたと思う。今は政党中心になってしまい、一党の時間が長い。その最後の方で選挙区の候補を紹介しているけれど、その前は延々と党の紹介である。もちろん比例区の情報としてはそれでいい。でも小選挙区の方はこれでは困るのである。小選挙区ごとに出ている人を続けて見たいのである。そうじゃないと比較出来ないではないか。

 それに無所属候補には政見放送がない。これって、憲法違反ではないのだろうか。同じように立候補に際して供託金を納めているのに、法の下の平等に反するのではないか。無所属を含めて自分の小選挙区候補が続けて出て来れば、多くの人が自分のところだけは見ると思う。というか、インターネットで自分の選挙区の選挙公報と政見放送を24時間見られるように出来ないんだろうか。まずはそういう工夫が必要なんじゃないか。

 それにしても、今回はテレビでの選挙報道が少なすぎると思う。もちろん報じてはいる。でも31日は天皇賞だとか、ハロウィーンだとかいう方が印象的だ。朝日新聞29日の記事によると、衆院選より先に行われた自民党総裁選の報道の方が多いという。さすがにニュース番組では衆院選の方が多い。でも情報・ワイドショーなどでは圧倒的に少ないのである。これは何となくの印象と一致している。具体的に書けば、総裁選はワイドショーが14時間31分、ニュースが15時間24分の計29時間55分衆院選はワイドショーが8時間25分、ニュースが17時間52分、計25時間52分となっている。

 もっとも衆院選は途中経過だし、総裁選は結果報道も含まれているだろう。だけど、それだけではない。ワイドショーはこの間「小室眞子さん」に熱中してきた。郵政選挙の時の刺客騒動などに比べれば、今回の衆院選には皇族をしのぐ話題性がないんだろう。この日程は前から決まっていたから、僕は多分そうなる(テレビで衆院選が霞む)だろうと思ったし、それを見込んで投票日を決めたんだろうと思っている。それと同時に、現在は自民党がワイドショーも「監視」している。自民党有力候補が当落線上にある(と伝えられている)石原伸晃や平井卓也などを取り上げるには注意が必要だ。

 この間自民党内閣は二度と政権交代を起こさせないような脅迫的取り組みを構築してきた。安倍内閣以来の取り組みが成功して、今や選挙を扱うのは難しくなっているのか。もちろんNHKニュースなどでは各党首を追うみたいな報道はある。でも「世間が選挙で盛り上がる」ためには、ワイドショーなどでも沢山取り上げられる必要がある。テレビなんか見ないという若い世代も多いだろうが、高齢世代は違う。高齢世代は選挙に行くと言われるが、実は昔よりずっと投票率が下がっている。若者よりは行っているというだけのことだ。そうなると、今回の投票率が気になるところだが、果たしてどうなるんだろうか。
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最高裁裁判官の国民審査はどうするか

2021年10月25日 22時43分04秒 |  〃  (選挙)
 衆議院選挙と同時に最高裁判所裁判官国民審査も行われる。これは最高裁判所の裁判官を国民が罷免できる唯一の制度である。最高裁は多くの判決を通して国民に大きな影響を持っている。最高裁は司法権の最高機関だから、多くの国民が関心を持つべきだと、まあタテマエではそうなるけど、じゃあ現在の最高裁長官の名前を知っているかと言われてもすぐに答えられる人は少ないと思う。現在は第19代の大谷直人長官だが、数年で交代していくから覚えていられない。大谷長官も2022年6月までである。

 最高裁裁判官は70歳が定年なので、大谷長官も来年で定年になるわけだ。最高裁裁判官は40歳以上から任命されるが、戦後の最高裁発足直後は別にして、もう半世紀以上も60歳以上しか任命されていない。そして最高裁裁判官は10年に一度国民審査を受けると決められているから、最高裁裁判官にとっては人生で一度の国民審査である。

 でも国民審査で罷免されることはない。今まで一度もないし、今後もないだろう。我々は衆議院議員の選挙に行くのであって、小選挙区の個人名と比例代表の政党名を書いた上、誰も知らない裁判官の名前を書いた紙を渡されても、どうしたら良いのか判らない。罷免したい裁判官の名前に「×」を付けるか、白紙のままかのどちらかなので、つまり「○」を付ける方式ではないから、多くの人は何も書かないまま投票する。議員選挙では「白紙」は棄権を意味するが、国民審査では「白紙」は「罷免しなくても良い」の意味なのである。

 それで良いのかという問題意識から、今回は「主権者である私たちが最高裁を変えよう」というリーフレットが作られた。作ったのは「日本民主法律家協会・国民審査プロジェクトチーム」である。選択的夫婦別姓正規・非正規の格差是正冤罪(大崎事件、袴田事件)、一票の格差の4つの観点から、各裁判官がどのように関わっているかを検証して、望ましくない裁判官を指摘している。他にも重要な裁判はあるだろうし、最近任命されたばかりで最高裁判決への関わりがない人もいる。しかし、参考にはなるので、それを基に検討してみたい。(なお、このリーフレットは「澤藤統一郎の憲法日記」に教えられた。)
(リーフレット)
 最高裁の裁判官は、内閣が任命する。アメリカの場合、上院で承認される必要があり、非常にシビアな聴聞会が開催される。日本は日銀総裁や公正取引委員会委員長などは国会の同意が必要なのに、最高裁裁判官のような重大な職責を持つ役職が単に内閣だけで任命できてしまう。裁判に訴えても何だか政府よりの判決が多いような気がするのは、一つにはこの任命方法があると思う。(これに関しては憲法改正が必要。)とにかく内閣が任命する最高裁裁判官に対して意見を表明できるのは国民審査だけなのである。

 最高裁の裁判官は全部で15人いる。15人全員で裁判することもあるが、それは憲法上の新しい判断などの場合で、通常は第一、第二、第三の三つの小法廷に分かれて裁判をしている。15人の内訳は、法律で決まっているわけではないが、今までの慣例として大体固定化されている。裁判官出身が6人、弁護士出身が4人、検察官出身が2人、行政官出身が2人、学者出身が1人というのが、現在の大体の出身枠である。(昔は裁判官と弁護士枠が同じ5人だった。)以下に今回の対象裁判官を列記するが、カッコ内には出身と所属小法廷、年齢。

深山卓也(裁、第一、67) 合憲  
三浦守(検、第二、65)  合憲
草野耕一(弁、第二、66) 違憲
宇賀克也(学、第三、66) 違憲
林道晴(裁、第三、64)  合憲
岡村和美(行、第二、63) 合憲
長嶺安政(行、第三、67) 合憲
安浪亮介(裁、第一、64)
渡邉惠理子(弁、第三、62)
岡正晶(弁、第一、65)
堺徹(検、第一、63)

 合憲、違憲と書いたのは、2021年6月23日にあった「選択的夫婦別姓訴訟」の憲法判断である。最高裁では多数意見だけでなく、少数意見も公表される。最後の4人は7月以後の就任なので、裁判に関与しなかった。いろんな裁判があって、それぞれが様々に関与している。調べてみれば、いろんなサイトがある。僕は夫婦別姓問題だけで判断するのもどうかなと思う。(憲法判断は難しい論点がいくつかあるし、さらに合憲判断をした裁判官に×を付ける運動をすると、今度は違憲判断をした裁判官に×をしようという極右活動家の運動を誘発しかねない。)
(国民審査のモデル用紙)
 しかし、僕はこの間の最高裁の判断の中にどうしても納得できないものがある。それは大崎事件の再審取り消し決定である。当時「大崎事件再審取り消しー信じがたい最高裁決定」(2019.6.28)を書いた。この決定に関与した深山卓也裁判官は「×」を付けることにする。また東京高裁長官から最高裁入りして、あらゆる判決で多数意見、つまり保守的な判断を繰り返している林道晴裁判官も「×」を付けようかと思う。また検察官出身の三浦守裁判官は、林裁判官と同様に多数派を形成しているだけでなく、かつて大阪高検検事長として湖東病院事件の再審開始決定を最高裁へ特別抗告した責任者である。それは最高裁で棄却され、再審が開かれ無罪判決が出た。無罪の事件を引き延ばした責任は大きいと思う。

 ということで、3人に×を付けようと思うのだが、どうせ罷免には至らないので他の人に勧めるつもりもない。もっといろいろの裁判を調べてもいいんだけど、覚えていられない。4年間衆院選がなかったため、国民審査が11人というのはかつてない多さである。衆院選が優先だが、ちょっとヒマがある人は調べてみてはどうかなと思う。せっかくの制度なんだから。まあ参考ということで。
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公明党の「子どもに10万円給付」公約を考える

2021年10月24日 23時00分10秒 |  〃  (選挙)
 公明党が衆院選の公約として「18歳までの子どもに10万円を給付する」という政策を提唱している。この公約をどう考えるべきだろうか。確かにコロナ禍で子育てに困っている人は多いと思うが、それは全員ではないだろう。大学生も非常に困っている人がいると報じられているが、どうして18歳で区切るのかが疑問。一般的に困窮している人すべての支援を考えるべきではないのか。それより何より、一人一人に10万円を配るよりも、そのお金をまとめて使えば保育や児童虐待防止などにずいぶん回せるのではないだろうか。
(公明党の公約を発表する山口代表)
 この「10万円給付」には「所得制限を付けない」と言っている。それは「スピード感を持って対応する」ためだと言っていた。僕はこの段階で非常に大きな疑問を持った。もちろん「親の所得に関わらず子ども全員に給付する」のも一つの考えである。その方がいいと思えばそう主張すればいい。でもそんなに困ってない家庭には給付しなくてもいいというのが普通ではないか。その場合、親の所得を新たに把握しようと思えば時間が掛かると考える人もいると思うが、それは間違いである。行政は子育て世代の所得をすでに把握しているのである。

 中学を卒業するまでは「児童手当」を支給していて、それには所得制限があるからである。また中学を卒業するとほぼすべてが高校に進学するが、高校授業料無償化制度にも所得制限がある。民主党政権では「児童手当」を「子ども手当」と呼んだが、政権交代で名前を元に戻した。また民主党政権で実現した高校授業料無償化は、当初は所得制限がなかった。政権交代後に自公政権で所得制限が設けられたのである。だから18歳までの子育て世代の所得は(ほとんどを)行政当局で判っている。それを公明党が知らないはずがない。

 「子どもに10万円給付」というときに、何も新たな制度は必要ない。中学生までだったら、単に「児童手当に10万円をプラスすれば良い」だけのことだ。しかし、一時的に10万円を給付すれば、それを親が自分のために使ってしまうかもしれない。だから「月1万円増額を10ヶ月」続ければ良い。しかし、それよりも「月5千円増額」ならば20ヶ月続けられる。そういう風に考えていけば、じゃあ一時的に大金を給付するのではなく、千円でも2千円でも恒久的に増額した方がいいのではないか。「児童手当を増額する」と言えば良いのではないだろうか。

 中学生までは児童手当もあるわけだから、親に給付するということになるだろう。でも高校生の場合はどうなんだろうか。18歳までに10万円給付ということは、40人学級の場合「1クラス全員分で400万円」ということである。だから8学級あれば、1学年で3200万円。全日制3学年分で、何と9600万円になる。つまり高校一校に1億円臨時給付するということである。(東京都の場合、日比谷高校などは8クラス。職業高校は35人、定時制課程は30人と違っている。クラス規模も少ない学校もあるが、概ね学校全体で合せれば5千万~1億ほどになる。)

 そういう風に計算してみれば、その1億円を生徒全員で山分けしようぜというのが公明党案だと判る。しかし、生徒にどう使うかを考えさせてみれば、必ずしも山分け案が勝つかどうか判らないと思う。もちろん困っている家庭もあるだろう。そういうクラスメイトを支援するべきだという考えもあるだろうが、せっかくだから学校全体で使ってはどうかという意見も出ると思う。IT環境の整備などもあるが、行政からは後回しにされやすいトイレのウォシュレット化なども案に出るかもしれない。それよりも世界全体に目を向けて、もっと大変な環境の子どもたちや地球環境問題などに寄付したらという意見も出てくるのではないか。

 そういうことを生徒に考えさせてみればどうなんだろうと思うのである。そういう議論をすれば、やっぱり個人への還元も欲しいという声も出て来るだろう。でもお金で渡せば食べ物などに消えちゃうから図書カードにしたらとか、そういう議論をするのが勉強になるような気がする。でも最終的にはやはり卒業後の大学や専門学校などの入学金に充てるというのが一番多いのではないだろうか。

 それだったら学校全体で1億円受け取って、奨学金に回したらいいのではないか。学校ごとにやるのは大変すぎるので、各学校が信託銀行などに預けて独自の奨学金を作るとか。しかし、それだったら10万円給付なんかやめて、大学生も含めて既存の奨学金制度をもっと充実させることに使ったらどうなんだろうか。結局そういうことになるんじゃないか。困窮世帯は別に対策を作るとして、子ども一人に10万円給付するより、保育や奨学金など子育て支援システム構築に回した方がずっといいと思う。それを国政選挙を前にして、連立与党の一員であるのに独自公約として打ち出したところに、何となく「バラマキ」でアピールしようという感じを受けてしまう。
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