上野の鈴本演芸場正月二之席に行ってきた。年末に年の暮れらしい演目、例えば「芝浜」なんかを聴きに行きたかったけど、時間が取れなかった。今になると何の用事があったのか思い出せないけど。1月はぜひ行きたいと何とか行ける日を作った。寒いから夜はやめて、浅草や新宿だと長くなるから、短い上野で。(上野は4時上がりである。)トリは春風亭一之輔で、トリに聴くのは久しぶり。よく聴いてる人が多いが、まあ安心してノンビリ出来るからそれが良い。半分ぐらいの入りか。
前座は白鳥門下の三遊亭東村山で、その後に出て来た柳家緑太(3月に真打昇進)から白鳥の他の弟子は「三遊亭青森」や「三遊亭ぐんま」なのに、一人だけ自治体名だといじられていた。奇術の「小梅」さんをはさんで、三遊亭歌扇、柳家歓之助は初めてだけどなかなか面白い。紙切りの林家二楽に続き、新作の柳家小ゑんは「下町おたく」が田原町のせんべい屋で妄想に入る「下町せんべい」。これは前にも聞いてるが、ものすごく面白くて場内でも大受けする。せんべい屋が「まっつぐ」とか言うと大感激しちゃって、奥さんは「お久」でしょと決めつけると「オレの女房はエリカだよ」というところなど爆笑。
次はごひいきの桃月庵白酒のはずが、今日は代演の隅田川馬石。大家の紹介で祝言した相手が京の格式ある言葉しか話せない「たらちね」。寄席ではよく出てくる噺だが、これは今までの中でもすごく面白かった。両者のディスコミュニケーションの案配が難しく、下手すると単なるおバカみたいになるが、今日は味わい深く面白かった。馬石も注目の落語家だ。
ごひいきの音楽パフォーマンスのだゆきは相変わらず受けている。次の林家正蔵師匠も最近よく聴いてる「一眼国」。まあ同じなんだけど、いつものマクラ(見世物小屋の思い出)も受けていた。そこで仲入(休憩)。その後大神楽でなごんで、林家彦いちの「ドキュメンタリー落語」。実際にあった話という触れ込みで、京浜東北線川口、西川口間で電車が急に停まってしまった時の乗客ドキュメント。隣のおばちゃん達が話していたという、知り合いの夫が食品会社を辞めさせられた顛末。「缶にガが入って、カイコ(解雇)になった」というのを、これはうまいとメモするところがおかしい。その後音漏れ少年がケータイでキレ始める。その再現がおかしい。結局その相手は誰だったかと思うと母親だった。やはり彦いちの新作は面白いな。
続いてごひいきの古今亭文菊だが、気の長い男と気の短い男のやり取り「長短」という噺。熱演なんだけど、噺そのものがあまり面白くない。漫才のロケット団は相変わらず面白い。今は「疑い出すといろいろ疑いが出て来る」四字熟語が「疑心暗鬼」じゃなくて「中居正広」で爆笑を取っていた。そして最後にトリの春風亭一之輔。マクラで受けた後で、町内の素人芝居で「天竺徳兵衛」の忍術の場をやる。役に不満な連中が出て来ない。「舞台番」役がフンドシを付け忘れて…という噺は初めて聴いたけど、調べると「蛙茶番」という題だった。おかしいっちゃおかしいが、品がないか。一之輔もどうも今ひとつかも。
寄席はやはり落語と色物の混ざっているのが良い。あまり気を詰めずに楽に見られる。眠くなっても気にしなくて良い。長い映画やお芝居だと寝るともったいないからコーヒーと飲んでしまうと、夜寝付きが悪くなる。まあ、いろいろと困ったことが多い年になってきた。今年はまだまだ頑張れると思うので、ライブ芸能をたくさん見たい。そう思って演劇や落語のチケットを数枚予約してある。まあお金の問題で、歌舞伎やミュージカルは行かないんだけど。ということで、体調を崩さず気を付けていきたい。