8月4日付で、文部科学省から「学校教員統計調査-平成25年度(中間報告)の結果の概要」が発表された。翌日の各紙は「概要」にそって、「小中高の先生、若返り」などと報じた。「大量採用世代が退職」というのが、その理由の説明。間違いでもないけれど、この統計の一番重大な問題を報道していないマスコミが多い。僕の見るところ、この統計で分かることは「ついに、教員の大量退職が始まった」ということで、10年ほど前から現場で懸念されていた「いずれ、みんな辞めちゃうんじゃないか」という恐れが現実化し始めているということなのである。
この調査は、毎年行う「学校基本調査」と異なり、3年に一度行う「学校教員統計調査」というもの。進路調査などがないので、管理職と事務担当だけで処理できるから現場教員には関係ない。今回は教員数は2013年10月1日付のもので、異動状況は2012年度から2013年度の変化を調査対象としている。悉皆(しっかい)調査で、全国のすべての学校が調査対象である。私立や専門学校なども調べている。(なお、今回の発表は概要で、確定値発表は来年の3月の予定。)
これを見ると、公立小の教員は44.4歳から44.0歳へ、公立中の教員は44.2歳から44.1歳へ、確かにほんのちょっと平均年齢は若くなっている。(公立高の教員は45.8歳と変わっていない。)しかし、同時に年齢構成を見ると、公立中と公立高では50歳以上の教員が増加している。(中学は、34.0%→37.3%、高校は37.4→41.5%)と同時に、小中高すべてで30歳未満の比率が2~3%上昇している。だから、「若返っている」というよりも、「年齢の両極化」が進行しているというべきだ。
もっと驚くのは、退職者の数である。小中高だけみることにするが、小学校は18,353名(定年12,040名)、中学校は9,568名(定年5,119名)、高校は10,529名(定年5,493名)となっている。カッコ内に定年退職者を示したが、この定年には「勧奨退職」も含まれている。(「勧奨退職」というのは、一定の期間勤続している教員を対象に、定年前に退職すると退職金を割り増しにする制度のことである。大体、勤続25年、50何歳か以上という条件だろう。早い退職ほど割増し率が大きくなるのが普通。)とすると、定年(勧奨)退職以外の退職が異常に多いのではないか。定年退職者の割合は、小学校が65.6%、中学校が53.5%、高校が52.1%となる。中高では、定年退職者は半分程度しかいないではないか。
そもそも教員数はどのくらいなのかを見ると、小学校は385,065人、中学校は234,064人、高校は226,814人である。(校長なども入り、私立も入る。なお、この数は2013年10月1日付だから、前年度の退職者の割合を見るには不完全な数字だが、一応大まかな傾向を見る意味はあるだろう。))そうすると、退職者の割合は、小学校では4.76%、中学が4.09%、高校が4.64%となる。4~5%の教員が一年で辞めているのである。前回調査より小中高とも千人程度退職が増加しているので、この傾向が今後も続くとあっという間に「若返り」である。5%の教員が毎年辞めれば、10年すれば今の教師は半分になってしまう。
退職後に嘱託員として再雇用される割合は調査されていないが、「退職の理由」という項目はある。病気、特に精神疾患が多いのかと思うかもしれないが、小学校で356人、中学で227人、高校で124人で、前回とほぼ同じ。「転職」「家庭の事情のため」「その他」が小中高とも千人を超えている。理由の項目は「定年」「病気」「死亡」「転職」「大学等入学」「家庭事情」「職務上の問題」「その他」しかないから、「その他」が定年以外では一番多く2千人を超えている。「転職」は「いい転職」(他校種に変る。特に大学等に変る)もあるかもしれないが、「その他」の中身はなんだろう。もう大変すぎるから、共働き家庭などではどんどん退職しているのだろうか。締め付けが厳しくなる一方で、もう現場で働く意欲が失われているのか。とにかく、こんなに定年以外で退職している状況になっているとはビックリである。
このような状況に対して、「教員の経験が引き継がれるだろうか」という心配の声もマスコミ報道には聞かれる。しかし、教育行政側では「引き継がれなくて結構」と思っていることだろう。今までの「職場自治」のような経験を知らない若い世代に、採用時から研修漬けで「思い通りの教員」を作って行こうということだ。学校の教員も競争させるべきだという政策が進んでいるのだから、校内で教え合うなどという気風も失われていくしかない。これまでの「チョーク一本でも勝負できる」教員ではなく、タブレット端末を駆使してICT教育を推進する「新しい教育」を推進するつもりなんだから、それでいいのである。だけど、そうやって「机間巡視」を行いながら生徒の顔を見ていた教員が、生徒ではなくコンピュータばかり見ている今の医者のような存在になっていくわけである。
この調査は、毎年行う「学校基本調査」と異なり、3年に一度行う「学校教員統計調査」というもの。進路調査などがないので、管理職と事務担当だけで処理できるから現場教員には関係ない。今回は教員数は2013年10月1日付のもので、異動状況は2012年度から2013年度の変化を調査対象としている。悉皆(しっかい)調査で、全国のすべての学校が調査対象である。私立や専門学校なども調べている。(なお、今回の発表は概要で、確定値発表は来年の3月の予定。)
これを見ると、公立小の教員は44.4歳から44.0歳へ、公立中の教員は44.2歳から44.1歳へ、確かにほんのちょっと平均年齢は若くなっている。(公立高の教員は45.8歳と変わっていない。)しかし、同時に年齢構成を見ると、公立中と公立高では50歳以上の教員が増加している。(中学は、34.0%→37.3%、高校は37.4→41.5%)と同時に、小中高すべてで30歳未満の比率が2~3%上昇している。だから、「若返っている」というよりも、「年齢の両極化」が進行しているというべきだ。
もっと驚くのは、退職者の数である。小中高だけみることにするが、小学校は18,353名(定年12,040名)、中学校は9,568名(定年5,119名)、高校は10,529名(定年5,493名)となっている。カッコ内に定年退職者を示したが、この定年には「勧奨退職」も含まれている。(「勧奨退職」というのは、一定の期間勤続している教員を対象に、定年前に退職すると退職金を割り増しにする制度のことである。大体、勤続25年、50何歳か以上という条件だろう。早い退職ほど割増し率が大きくなるのが普通。)とすると、定年(勧奨)退職以外の退職が異常に多いのではないか。定年退職者の割合は、小学校が65.6%、中学校が53.5%、高校が52.1%となる。中高では、定年退職者は半分程度しかいないではないか。
そもそも教員数はどのくらいなのかを見ると、小学校は385,065人、中学校は234,064人、高校は226,814人である。(校長なども入り、私立も入る。なお、この数は2013年10月1日付だから、前年度の退職者の割合を見るには不完全な数字だが、一応大まかな傾向を見る意味はあるだろう。))そうすると、退職者の割合は、小学校では4.76%、中学が4.09%、高校が4.64%となる。4~5%の教員が一年で辞めているのである。前回調査より小中高とも千人程度退職が増加しているので、この傾向が今後も続くとあっという間に「若返り」である。5%の教員が毎年辞めれば、10年すれば今の教師は半分になってしまう。
退職後に嘱託員として再雇用される割合は調査されていないが、「退職の理由」という項目はある。病気、特に精神疾患が多いのかと思うかもしれないが、小学校で356人、中学で227人、高校で124人で、前回とほぼ同じ。「転職」「家庭の事情のため」「その他」が小中高とも千人を超えている。理由の項目は「定年」「病気」「死亡」「転職」「大学等入学」「家庭事情」「職務上の問題」「その他」しかないから、「その他」が定年以外では一番多く2千人を超えている。「転職」は「いい転職」(他校種に変る。特に大学等に変る)もあるかもしれないが、「その他」の中身はなんだろう。もう大変すぎるから、共働き家庭などではどんどん退職しているのだろうか。締め付けが厳しくなる一方で、もう現場で働く意欲が失われているのか。とにかく、こんなに定年以外で退職している状況になっているとはビックリである。
このような状況に対して、「教員の経験が引き継がれるだろうか」という心配の声もマスコミ報道には聞かれる。しかし、教育行政側では「引き継がれなくて結構」と思っていることだろう。今までの「職場自治」のような経験を知らない若い世代に、採用時から研修漬けで「思い通りの教員」を作って行こうということだ。学校の教員も競争させるべきだという政策が進んでいるのだから、校内で教え合うなどという気風も失われていくしかない。これまでの「チョーク一本でも勝負できる」教員ではなく、タブレット端末を駆使してICT教育を推進する「新しい教育」を推進するつもりなんだから、それでいいのである。だけど、そうやって「机間巡視」を行いながら生徒の顔を見ていた教員が、生徒ではなくコンピュータばかり見ている今の医者のような存在になっていくわけである。