尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

レイ・ハリーハウゼンの特撮映画

2013年07月09日 21時21分40秒 |  〃  (旧作外国映画)
 アメリカの特撮、特殊効果の監督だったレイ・ハリーハウゼン(1920~2013)が死去し、今キネカ大森の名画座で追悼上映をしている。とっても面白いし、こういう素朴な面白さの魅力を再発見する感じ。僕は特撮映画にはほとんど関心がなく、日本でも外国でもそれほど見ていない。特に最近20年ぐらいの、コンピュータによる素晴らしい画像処理による特撮は、どうもあまり見る気がしない。いくら技術が進展しても、映画はウソ、お芝居の世界だというのは判り切っている。宇宙や怪獣はあんまり本当らしくなくていいと思うのである。そういう意味では、半世紀以上前のアメリカ映画は、素朴な頑張ってる感があふれていて、娯楽映画の楽しさがいっぱいだ。こういうのがテレビ時代になる前に作られていたわけである。

 「地球へ2千万マイル」(1957)という映画は、日本では劇場未公開だった。製作50年を記念してハリーハウゼン自身によるカラー化が行われた。それが2007年の東京国際映画祭で特集上映された。今回の上映素材はその時と同じものだと思う。題名は金星ということで、アメリカの金星探査船が(なぜか世界には秘密のまま打ち上げられ)、金星から帰還する時に失敗し、シチリア沖の海に突入する。乗員は一人を除きみな死亡し、持ち帰った謎の生物は地元の少年が持っていって、バカンスに来ていた獣医に売ってしまう。さて、その謎の生物はもちろん想像の通りの筋になって行き、最終的にはローマの動物園で象と闘い逃げ出して、コロッセオに逃げ込む。ハリーハウゼンがヨーロッパに行きたかったらしいけど、ゴジラが東京を破壊するように、謎の金星生物(イーマと言うらしい)がローマで「活躍」するというのは趣向である。この怪獣は、とてもよく出来ていて、大気の組成が違うので地球ではどんどん大きくなってしまうし、硫黄を食物にするし、銃で撃っても影響がない、という不気味さを味わえる。

 日本でも公開された「シンドバッド 7回目の航海」(1958)は、冒険また冒険の快作で、シンドバッド三部作の最初の作品。魔法で小さくされてしまった婚約者の隣国の王女を元に戻すために、シンドバッドは魔術師と共に、一つ目の巨人がいる謎の島に赴く。骸骨剣士、双頭の鷲、火を噴く怪獣、魔術師が持つ魔法のランプなど、不思議、不思議の連続である。謎の島に行くにあたっては、うわさがバクダッドに広まり船員が集まらない。そのため死刑囚を恩赦する約束で連れて行く。魔術師は魔法のランプを取り戻すために島に行きたいが、シンドバッドとは対立している。こういうふうに、船内は危険がいっぱい。島に着くと島の怪獣が次々と登場。ということで、目を離すいとまがない。特撮はよくできているけど、技術的に特撮感はぬぐえないので、そのまがいもの感も魅力の一つになっている。楽しい映画の2本立て。

 京浜東北線大森駅東口、西友ストア5階のキネカ大森で、12日まで。「シンドバッド」が一日3回、「2千万マイル」は一日2回上映。まあまたどこかでもっと大規模な回顧上映をするところが出てくるのかもしれないが。でも、こういう昔のハリウッド映画の楽しさは抜群だ。まあ考えるところはないけど。
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