尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

鹿児島、松山、徳島、松江…、「第三の町」は?②選定編

2024年01月18日 22時51分46秒 | 社会(世の中の出来事)
 ニューヨークタイムズ選定「行くべき都市」に選ばれるべき「第三の町」はどこだろう? ということを前回に検討して、県庁所在地城下町、(出来れば)九州か四国、ただし政令指定都市は除くという条件を考えた。北海道の魅力は「日本情緒」じゃないところにあるから、ここでは除いて考えたい。というところまで、前回条件を絞った。

 この条件で考えてみると、四国は4県の県庁所在地、高松、徳島、松山、高知がすべて城下町である。(全部、百名城。)そもそも四国の場合、昔の国名が県名になっていないけど県境自体は同じである。旧国名の讃岐、阿波、伊予、土佐は、今もよく使われている。旧国の独自性が強い、ちょっと特別な地域である。九州では、鹿児島佐賀大分が城下町で、いずれの城も百名城になっている。長崎と宮崎は城下町ではなく、福岡と熊本は政令指定都市。

 さて、ここからどこを選ぶかなかなか難しいのだが、「日本情緒」とちょっと違うかもしれないけど、ストーリー性から鹿児島市をまず選んでみた。要するにアメリカ人の相当ディープな観光客向けの話である。南北戦争とほぼ同じ時代に、事実上の独立王国サツマの首都だった鹿児島は、イギリスと抵抗戦争を戦い、その10数年後には中央政府に立ち向かい兵を挙げた。そんな地域は他になく、「日本のディープサウス」(深南部)とでも呼ぶべき地域ではないか。
(鹿児島市の仙巌園)
 上記画像はまるで「富士山と五重塔」だけど、実は島津氏が作った大名庭園、仙巌園(せんがんえん)である。桜島を借景にして、実に雄大。そしてそこには反射炉も作られ、世界遺産にもなっている。庭園として素晴らしく、国の名勝に指定されている。そして鹿児島は活火山を背景にした世界にも珍しい大都市で、下記画像を見れば判るように「日本のナポリ」と呼んで遜色ない。日本人はどうしても、長州、薩摩というと幕末維新を思い出すわけだが、今回の山口選定も別に維新とか関係なかった。
(鹿児島)(ナポリとヴェスヴィオ火山)
 歴史や飲食文化の独自性も高い地域で、興味深い。フロリダ州がキューバと関係が深いように、サツマは昔琉球を支配していた。日本の大部分のところでは、「サケ」と言えば「ライスワイン」が出て来る。しかし、サツマとリュウキュウでは「ショウチュウ」と呼ばれるジャパニーズ・ウォッカを「サケ」と呼ぶのである、などなど。ちょっと面白いストーリーを書けそうだ。

 四国ではどこも面白いので、「シコク・エリア」としてまとめるというやり方もある。個別都市としてみれば、まずは「松山城」と「道後温泉本館」のある松山か。愛媛県には宇和島、今治、大洲など興味深い城下町が多い。だが、やはり観光地としては県庁所在地の松山か。ここはノーベル賞作家ケンザブロー・オオエが学んだ町で、『北京の55日』の国際的俳優にして、ラーメンをテーマにしたカルト・ムーヴィー『タンポポ』の監督ジューゾー・イタミと知り合い、オオエはイタミの妹と結婚した。まあ、正岡子規と夏目漱石では外国人には縁が薄いかなと思って、現代の話を。
(松山城)(道後温泉本館)
 しかし、日本人には鹿児島や松山はかなり観光地として知られた町である。そこで徳島を選べば、盛岡、山口並みの意外感が出て来る。ここは町の真ん中に眉山(びざん)という山があって、ロープウェイがある。県庁所在地としては珍しいだろう。そこからの夜景は函館や長崎ほど知られていないが、十分に行くべき価値がある。阿波国分寺庭園という興味深い建造物がある庭園もある。そして夏にはリオのカーニヴァルに匹敵する大規模なストリートダンス・フェスティヴァルが開かれることでも有名。
(眉山からの夜景)(阿波国分寺庭園)(阿波踊り)
 ところで、同じ中国地方から続くとは考えにくいが、町そのものとしては僕は松江が捨てがたいと思っている。松江城武家屋敷があり、ラフカディオ・ハーンという興味深い人物が住んでいた。日本的ムードでは盛岡や山口をしのいでいる。
(松江城)(武家屋敷)
 ということで4つ選んでみたが、何も県庁所在地に限らないとすれば、他にいろいろある。弘前、鶴岡、会津若松、松本、福山などである。今回は抜いたのだが、沖縄県の那覇だって「城下町」と言えないことはない。また「エリア」として考えるという手もある。僕は「信州エリア」や「琵琶湖エリア」は大きな可能性があると思う。長野県は城下町や宿場町、門前町に古い情緒が残っている。有名な城も多い。一方で現代的な宿泊施設も多い。山岳景観そのものはカナディアン・ロッキーやアルプスに及ばないかもしれないが、日本情緒を加えれば十分健闘出来る。

 また琵琶湖エリア、つまり滋賀県だが、京都や奈良の大きな寺とは違う、民衆に根付いた小さな寺がたくさんある。彦根城も素晴らしいが、むしろ安土城、小谷城(浅井氏)、観音寺城(六角氏)、佐和山城(石田三成)、坂本城(明智光秀)など、「廃城」がたくさんある。そういうところに歴史ロマンを感じる人には魅力的だ。ニンジャの甲賀、焼き物の信楽などもあり、京都や奈良の近くなのに、ちょっと違った日本の姿を見られる。

 他にも離島、つまり佐渡や隠岐などという選定もあるかもしれないが、むしろ大穴は釧路じゃないか。やはりサマー・ヴァケイションを利用して日本旅行をする人が多いだろう。トーキョーもキョートも今や猛暑である。山口も暑い。九州や四国も暑いのである。だが多分暑くない、というかほとんど寒い地域が道東地域なのだ。20度を切る日も結構ある。日本有数の漁港で、美味しいシーフードに恵まれている。近くには釧路湿原国立公園、阿寒摩周国立公園に加え、近年「厚岸霧多布昆布森国定公園」が指定された。「あっけし・きりたっぷ・こんぶもり」である。ちょっと遠出して根室の東端に至れば、今やアメリカ人が観光に行けないロシア支配地の東端を望める。暑い地域を見た後、最後に釧路へ行くという選択こそ賢いかもしれない。
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