尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「一票の格差」最高裁判決の問題点、「比例代表」に変更を

2023年01月26日 22時44分15秒 |  〃  (選挙)
 2021年の衆議院選挙における「一票の格差」訴訟で、1月25日に最高裁大法廷判決が出た。ある意味で予想されたとおりなのだが、判決は「合憲」という結論だった。最高裁裁判官15人中、14人が合憲で違憲としたのはたった一人(宇賀克也裁判官)だった。この裁判は2つの弁護士グループによって、全国16の高裁、高裁支部に申立てられた。(公職選挙法の規定により、選挙の効力を争う訴訟は高裁に提起する。)高裁判決では「合憲」が9件「違憲状態」が7件だったという。それが最高裁になると、圧倒的に政府寄りが多くなる。任命した歴代内閣は、安倍内閣が8人、菅内閣が5人、岸田内閣が2人である。

 この判断には大きな問題があると考える。それは「格差が2倍を超える」にも関わらず、「合憲」としたからだ。2009,2012,2014年の衆院選に関しては、最高裁は「違憲状態」としていた。2017年衆院選は、かろうじて最大格差が2倍以内だった。今回は最大と最小の格差が2倍を超えていたのだが、最高裁は「合憲」と判断した。明らかに基準を下げている。それは2022年の国会で「10増10減」が実現したなどと、選挙当時ではなく、選挙以後に生じた出来事を判断材料にしているのである。

 選挙の効力を争う裁判が進行中は、その選挙で選ばれた議員に欠員が出ても補欠選挙が行われない。補選は10月と4月に行われるので、本来なら7月に亡くなった安倍晋三議員の補欠選挙は昨年10月に行われたはずだが、それが延期になっている。今回4月に補選が現在のところ3件、それに加えて岸信夫前防衛相が辞任して補選になると言われているので、4つの補選が行われる予定。補選が行われるのは、山口県が2つ和歌山県が1つ(岸本周平議員が知事選に出るため辞任)、千葉県が1つである。でも山口県と和歌山県は「10減」の対象県である。つまり4月に補選をやっても、次の衆院選ではなくなってしまう選挙区なのである。
(最高裁の判断の流れ)
 まあ、最高裁判決をいくら考えても仕方ないので、今後の問題を。結局、日本は人口減少段階に入っていて、地方の高齢者が減っていき若年層はますます都市部に集中するようになる。それが良いわけではないが、そうなると予測出来る。従って、何回増減を繰り返しても「一票の格差」はまた大きくなる。選挙のたびごとに「違憲訴訟」が起きるのである。その裁判に費やす時間的、資源的なロスがもったいないではないか。小選挙制度比例代表制度には一長一短があり、完全な選挙制度はない。しかしながら、比例代表なら「一票の格差」は生じないから、結局のところ選挙制度を比例代表に変えるしか手はないのではないか。

 今まで100年以上、選挙民は「候補者の名前を書く」という選挙をやってきた。だから、今さら候補者を全部政党が決める選挙にすれば、何だか自由がなくなる感じがするだろう。だから、参議院の比例区でやっている「非拘束名簿式比例代表制」、つまり候補者名を書いても、政党名を書いてもよく、政党ごとに合計して比例で政党の当選者数を決める。具体的な当選者は、個人別得票の多い順に決める。これを衆院選でも実施する。衆参の比例区を同じ制度で行う。これしかないのではないか。それを都道府県レベルで行うか、いくつかの都道府県をまとめて「ブロック」レベルで行うかという問題は残る。(衆院議員が数が多いので、全国一律でやるのは難しい。)結局、そうするのが良いと思っている。(まあ、前にも書いてるんだけど。)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「見事な走り」ー動詞の名詞... | トップ | 「ガーシー」議員問題、どう... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

 〃  (選挙)」カテゴリの最新記事