尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

「負ける戦い」をした蓮舫陣営ー2024都知事選①

2024年07月08日 22時19分25秒 |  〃  (選挙)
 2024年7月7日に、東京都知事選挙が行われた。結果は予想されたとおりに、現職の小池百合子が3回目の当選を果たした。小池氏の場合、問題は「出るか出ないか」であり、出るなら勝つことが確実視されていた。もし今春に総選挙があった場合、小池氏は国政復帰を模索するのではないかと僕は予想していた。だがチャンスがないまま、結局は都知事選に出ることになった。小池氏は2016年の初出馬時に「2,912,628票」で当選し、2020年には「3,661,371票」と圧勝した。2024年は「2,918,015票」で、ほぼ第1回目と同じである。つまり前回から70万票ほどが減少したわけである。
(都知事選結果)
 小池知事に最盛期の勢いは失われつつあった。そこに対立候補として、5月27日に立憲民主党参議院議員蓮舫氏が出馬を表明した。当初は「小池対蓮舫」の争いとみられていたが、終わってみれば広島県安芸高田市の前市長石丸伸二氏が2位となった。終盤戦に石丸猛追が伝えられたが、それにしても僕は「2位争い」を予想していた。まさか35万票以上も差が付く蓮舫大敗は予想していなかった。「蓮舫大敗」はなぜ起こったのか。これこそ今回の都知事選の最大問題だと思う。
(出馬表明時の蓮舫氏)
 蓮舫氏の出馬表明より前に、石丸伸二氏は5月16日に都知事選への出馬を表明していた。しかし、5月末時点では両者の知名度には大きな差があったと思う。その後、蓮舫氏はなかなか公約を公表しなかった。僕はそれはどうなんだろうなと思っていたが、実際に発表された公約を見ても大きな変革を予感させるものは無かった。蓮舫氏が負けると判ったのは、告示日の第一声の場所を知った時。それは中野だった。2012年の自民党政権復帰選挙でも、長妻昭氏が勝ったのが中野区を含む東京7区。(その時小選挙区で勝ったのは、長妻氏と現在自民党の長島昭久氏だけだった。)

 蓮舫氏や支援陣営の話では、街頭演説では多くの聴衆が集まり盛況だったという。盛り上がりが感じられ、なぜこれほど大差で敗れたのか判らないという。実際に画像を検索すると、なかなか盛り上がってる感じだ。(下記画像)しかし、それがくせ者。石原都知事時代以来、ここ20年間左派系は「義侠心に富む負け覚悟の候補者」しか担いでこれなかった。蓮舫氏は久方ぶりの一般的知名度が高い候補者で、内輪で盛り上がるのも想像できる。だけど、戦略的に考えた場合、立憲民主党が弱体な地域で第一声を上げないと行けない。例えば、東京東部の錦糸町(墨田区)や北千住(足立区)、あるいは多摩地区の八王子(萩生田氏の地元)などである。
(蓮舫氏の演説)
 東京東部の大量の小池支持層を引き剥がすためには、地道に街頭演説を繰り返すしかない。しかし、蓮舫氏ではなく、石丸伸二氏が何カ所も演説を繰り返していた。さらに蓮舫氏は「外苑再開発」問題が争点になると言い切り、住民投票を検討するとも言った。これも疑問が多い言動だ。僕はこの問題を一度も書いてない。それどころか、実は神宮外苑のイチョウ並木をちゃんと見に行ったことがない。有名な絵画館前で待ち合わせしたこともない。僕の家からは身近な場所ではないのである。一般論として「自然を大切に」は理解出来るが、東京人の心のふるさとみたいに語る人があると、やはり「あっち側に住んできた人」と思う。

 「蓮舫氏自身の問題」「立憲民主党の問題」「共産党の支援問題」などいろんな側面があるが、結局は「内輪」の運動に終始した感がある。東京の政治風土は「保守」でも「革新」でもなく、「強いものに付く地域」だと思っている。地元意識が薄く、東京人は東京を愛していない。(そう考えないと、あんなに「ふるさと納税」をするのが理解出来ない。)東京に住んでるだけで、給料も高くなる。(公務員の場合、「地域手当」が大分違う。)東京で「子育て」をしているというのは、それだけで(好きな言葉じゃないが)「勝ち組」だ。小池知事はそこに焦点をあてて「バラマキ」を繰り返してきた。
(開票後の会見を行う蓮舫氏)
 最新の参院選である2022年東京選挙区で、蓮舫氏は4位で当選した(670,339票)。他に立憲民主党から松尾明弘氏が出たが8位で落選(372,064票)。共産党からは山添拓氏が3位で当選(685,224票)。さらに社会民主党から出た服部良一氏が59,365票を獲得している。4氏を合計すると、「1,786,992票」となる。それを政党レベルで見た場合の基礎票と考えると、何と50万票も流出している。無党派層がどうのと言う以前に、党の基礎票も固めきれなかったことが判る。

 非常に重大なのは、「小池バラマキ」が一端始まると、既得権化してしまって変えにくいことだ。子育て家庭に月5千円支給、私立高校授業料無償化など、一端やり始めると止めにくいが、果たしてそれが政策として最善のものか。一端立ち止まってゼロベースで検討するという公約を蓮舫氏は出せなかった。むしろ「小池都政の子ども政策」は「ある程度評価する」とアンケートで答えている。しかし、小池都政の進めて来たことは、「格差拡大政策」だろう。そしてその受益者は小池氏を支持し続ける。それに対する根本的批判は、自らも私立学校にしか通ってこなかった「山の手のお嬢様」の問題意識に入って来ないのかもしれない。

 しかし、それは最初から判っていることだ。そこをいかにして「化けさせる」のが選挙参謀の醍醐味だろう。それを考えると、全く戦略が立ってなかったと思う。自民党の問題により、衆院補選で立憲民主党が3戦3勝になった。勢いが立憲民主党にあると誤認してしまったのではないか。また政党支持の問題では、自民党が小池氏を「ステルス支援」する中で、蓮舫氏も同じように「政党隠し」になってしまった。僕はすべての国政野党(「維新」や「れいわ新選組」などにも)推薦依頼を出し、結果的に立民、共産、社民だけになってもいいから「推薦」とはっきりさせる方が良かったと思う。それでマイナス面があったとしても。

 結果的に立憲民主党の勢いを東京が止めてしまった。都議補選でも9箇所中、3箇所に候補を出して足立区しか勝てなかった。特に品川区など2位にもなれず、自民党を下回っている。次の国政選挙への影響も大きいだろう。

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