尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

比例区票の検討、実は自公とも前回より減らしたー2022年参院選②

2022年07月13日 22時33分27秒 |  〃  (選挙)
 毎回行っている比例区票の点検作業。今回の比例区の投票総数は5302万7248票だった。全国の有権者は約1億500万人なので、1%違うと100万人ほど違ってくる。19年参院選は約5007万票21年衆院選は約5747万票だった。前回参院選より投票率が高く、その分300万票近く増えた。しかし、参院選は大体衆院選より低くなるので、21年衆院選より440万票減っている。
(22年参院選の結果)
 では各党を順番に見てみる。まず自民党だが、今回比例区で1826万票で、全体の34.43%になる。これは昨年の衆院選の得票率34.66%とほぼ同じである。ここでも安倍元首相銃撃事件は影響を与えなかったことが判るだろう。以下に最近5回の国政選挙の得票数を示す。(参院選後のカッコは獲得議席。)
 16年参院選→(17年衆院選)→19年参院選→(21年衆院選)→22年参院選 
 2011万(19)→(1856万)→1711万(19)→(1991万)→1826万(18) 
 
 6年前は2000万票を越えていたのに、その後は21年衆院選の1991万が最高である。衆院選と参院選は違うと言っても、去年から160万票減らしている。19年参院選は投票率が低く、3年前よりは110万票増やしたが、実は1議席減らしている。なお、6年前まで比例区は48議席だったが、3年前から50議席に増えた。今までの自民党の最多獲得議席は86年衆参同日選の22議席、最少は2010年の12議席である。2013年からは18、19、19、18となっている。今回は自民党大勝利というイメージを持っている人が多いと思うが、実は前回より比例区で減らしているのが事実である。
(個人名1位の自民党赤松健候補)
 公明党618万票ほどで、獲得議席は6議席だった。公明党も前回より1議席減らしている
 753万(7)→(698万)→654万(7)→(711万)→618万(6)
 16年参院選から減り続けていた得票が、21年衆院選で久しぶりに700万票台に載せた。しかし、今回は去年より100万票減らしている。獲得議席も1889年、2010年以来の3回目の6議席となった。まあ重点候補は6人だったが、7人に届かなかったのは痛いだろう。創価学会員の高齢化、コロナ禍で集会が難しい、公明党議員(遠山元衆院議員など)のスキャンダルなどもあるが、最大の要因は選挙区で自民党が堅調だったことだと思う。野党統一候補とし烈な選挙をしている時は、公明支持者をつなぎ止めるため「選挙区は自民党、比例区は公明党」と自民党支持者に訴えると言われる。今回はそれがなかったのだろう。

 次は野党を見る。立憲民主党は6年前にはなかった。6年前は民進党で11議席を獲得していた。
 17年衆院選から見ると、(1108万)→792万(8)→(1149万)→677万(7)
 衆院選では、まだそれなりの力があったものの、投票率が低かった前回参院選より120万票も減らして、議席も1減だから、やはり立憲民主党は敗北と言うべきだろう。原因がどこにあるかは、別に考えたいと思う。労働組合出身の候補は軒並み10万票以上の個人名得票があって、5人全員当選した。前回国民から出て落選した基幹労連は今回立民から出て当選。他には自治労、日教組、JP労連、情報労連である。組合以外の当選者は辻元清美と青木愛だけだった。労組は大切だが、これでは党勢が伸びない。
(比例区で当選した辻元清美候補)
 続けて国民民主党を先に見ると、316万票ほどで3議席。いずれも労働組合出身者で、当選したのは電力総連、自動車総連、UAゼンセン。電機連合の矢田稚子副代表は落選してしまった。3年前から30万票減らしてる。全国組織が頑張る参院選の方が比例票が出る体質なんだろうと思う。取りあえず労組3人ぐらいは当選させられる。だから脱原発の立民にまとまるより、電力総連には国民民主党が居心地良いんだろう。
 19年参院選から見ると、348万(3)→(259万)→316万(3)

 次に「日本維新の会」を見るが、16年参院選は「おおさか維新の会」だった。その時は515万票で、4議席だった。
 515万(4)→(339万)→491万(5)→(805万)→785万(8)
 「維新」は自民党と同じく、著名人を比例区で擁立したが、8人目の青島健太は3万3553票で当選した。これは今回の個人名最少得票当選者である。「維新」は785万のうち、708万が政党名得票だった。実に90.3%にもなる。政党名投票を呼びかけている共産党の91.8%には及ばないが、異例に高い。(なお、どの党も政党名得票が圧倒的に多いのだが、自民党、立憲民主党とも75%ほどである。)つまり、著名人を立てたからではなく、有権者は「維新」そのものに投票しているのである。
(投開票日に辞任を発表した「維新」の松井代表)
 共産党362万票ほどで、3議席
 602万(5)→(440万)→448万(4)→(417万)→362万(3)
 16年参院選から見ると、半減とは言わないが240万票も減っている。4割減である。今回は野党協力が不調で、共産党も全部ではないけれど、33選挙区に候補を立てた。しかし、比例票上積みにはつながらなかった。この党勢低調をどう考えるか、どう打開するか。きちんと党内で自由闊達な議論が行われなければならないだろう。

 れいわ新選組は、前回19年に228万票、21年衆院選は221万票、今回22年参院選は232万だった。数だけで言えば今までで一番多いけれど、220~230万票程度が上限なのかとも考えられる。毎回衆参選挙ごとに、山本太郎が辞任して出馬するわけにもいかないだろう。

 社民党は、2.37%の得票で、一応政党要件をクリアーした。
 154万(1)→(94万)→105万(1)→(101万)→126万(1)
 「福島瑞穂を当選させる会」としては1議席を確保したわけだが、今では「希少生物」になっているのは間違いない。3年後は福島瑞穂に匹敵する著名人を擁立出来るのか。3年後は厳しいのではないか。

 「NHK党」は、19年に152万票で1議席。2022年は125万で1議席。前回は3.02%で、今回は2.36%。どう考えるべきかは判らない。
 そして問題の「参政党」。177万票、3.3%で1議席を獲得した。何と社民、N党より多い。2023年の統一地方選で、地方議会に大量に進出するのではないかと思う。その議員から国政に出る人も出て来る。だが、単なる「極右」というより、「陰謀論」「カルト政党」化する可能性もある。「コロナワクチン反対運動」などを行うかどうか。「維新」はトランプの米共和党に近く、「参政党」はフランスの「国民連合」(旧国民戦線)ではないか。しかし、反外国人労働者の姿勢が「れいわ新選組」とも近く、左右を越えたポピュリズム政党の基盤を作っていくのかもしれない。

 いずれにせよ、自民党、立憲民主党、公明党、共産党がすべて19年参院選より1議席減らしているのをどう考えるべきだろうか。僕にはまだまとまった考えがない。何にせよ、安倍事件の影響はあったとしても、政党選択には影響しなかったと見るべきだろう。 
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