セルジオ・レオーネ監督の「ドル3部作」4K版がリバイバル上映されている。『荒野の用心棒』『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン』の3作のことで、まず最初の2本が上映中。(なお「ドル箱3部作」という表記もあるが、今回「ドル3部作」としている。)これらは「マカロニ・ウエスタン」(アメリカではスパゲッティ・ウエスタン)と言われたイタリア製西部劇の世界的ブームを呼び起こした。当初は残酷描写が売りの「まがい物」と思われていたが、今ではエンニオ・モリコーネの音楽と主演したクリント・イーストウッドを全世界に知らしめた映画史的にも重要な傑作シリーズと認識されている。
『荒野の用心棒』(1964)は言うまでもなく黒澤明監督の『用心棒』の(無許可の)リメイク作品である。後に問題になって、日本の上映権は黒澤プロに所属している。黒澤作品を見てない人でも、今では定番的設定なので筋書きは読めるだろう。このストーリーは多分江戸時代の日本よりも、アメリカ国境に近いメキシコの方が相応しいと思う。冒頭のアニメのタイトルロールから、すべてが完璧に決まってる。主人公は名前もなく、ただ二大勢力が対立する町にフラッとやってきた。彼はカウボーイハットに無精髭を伸ばし、ポンチョをまとって、その下には銃を隠し持っている。演じているのはテレビドラマ「ローハイド」で知られ始めていたが、映画では無名のクリント・イーストウッド(1930~)だった。
(『荒野の用心棒』)
監督のセルジオ・レオーネ(1929~1989)はイタリアで娯楽映画を作っていたが、世界的には全く無名。多くのスターにオファーしたが断られ、結果的にイーストウッドになったという。それが大成功したのである。また小学校の同級だったエンニオ・モリコーネに音楽を依頼、一度聞いたら忘れられないメロディが西部劇に合っていた。各国入り交じったキャストだったので、その国ごとに吹き替えて公開されたという。今回は英語版に字幕が付いている。この段階では監督は面白い映画作りに徹していて、確かに何度見ても面白いと思う。ロケはスペイン南部で行われたが、まるでメキシコっぽいセットは違和感がない。イーストウッドは両勢力を行き来しながら、彼らを操る。そして最後に有名な決闘シーンである。構図も決まっていて見入ってしまう。
(『夕陽のガンマン』)
『荒野の用心棒』が大ヒットして、すぐに『夕陽のガンマン』(1965)が作られた。「3部作」というけど、この前書いた香港の『インファナル・アフェア』シリーズなどと違い、全く継続性はない。ストーリーだけじゃなく、主人公の設定も違っている。ただ質感は同じで、カッコいいイーストウッドに、忘れがたいモリコーネの音楽が重なる。ロケ地も同じだから風景も似ている。違うのは主人公が「賞金稼ぎ」で、懸賞金がかかる悪党を追っている。同じように賞金稼ぎをしているモーティーマー大佐という役も新味。リー・ヴァン・クリーフが演じて凄みを出している。両者の共闘と欺し合いが見物となっている。
(右=リー・ヴァン・クリーフ)
エルパソ銀行は鉄壁の守りを固めているが、そこを狙う「エル・インディオ」(ジャン=マリア・ヴォロンテ)の盗賊団がいる。イーストウッドはその一味に潜入して仲間を装う作戦を取るが…。それぞれが策謀をこらして、なかなか展開が読めないけれど、欺し合いの末に銃撃戦になる。筋としては娯楽映画の枠組で解決されるわけだが、ワイド画面に多くの情報が詰め込まれ、風景や音楽とあいまって「映画を見たなあ」という感じ。やはりこういう映画はテレビ画面以下ではダメで、大きなスクリーンで見たい。『続・夕陽のガンマン』は確か前に見ているが、コミカルな要素も入って時間的にも一番の大作になっている(178分)。
その後、巨匠と認められたレオーネ監督は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト』(公開題名『ウエスタン』)という傑作を作った。これは最近リバイバルされたが、非常に見ごたえがある傑作だった。そして遺作となった1984年の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』は日本でベストワンになった。公開版は144分だったが、その後さらに長いヴァージョンが幾つも作られているらしい。日本でも公開されて欲しいのだが、まだ見られない。今回の「ドル3部作」がヒットすれば、可能性も出て来ると思うのだが…。どうも可哀想なぐらい客が少ない。東京では丸の内TOEI、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷、グランドシネマサンシャイン池袋などで上映されている。宣伝しておく次第。
『荒野の用心棒』(1964)は言うまでもなく黒澤明監督の『用心棒』の(無許可の)リメイク作品である。後に問題になって、日本の上映権は黒澤プロに所属している。黒澤作品を見てない人でも、今では定番的設定なので筋書きは読めるだろう。このストーリーは多分江戸時代の日本よりも、アメリカ国境に近いメキシコの方が相応しいと思う。冒頭のアニメのタイトルロールから、すべてが完璧に決まってる。主人公は名前もなく、ただ二大勢力が対立する町にフラッとやってきた。彼はカウボーイハットに無精髭を伸ばし、ポンチョをまとって、その下には銃を隠し持っている。演じているのはテレビドラマ「ローハイド」で知られ始めていたが、映画では無名のクリント・イーストウッド(1930~)だった。
(『荒野の用心棒』)
監督のセルジオ・レオーネ(1929~1989)はイタリアで娯楽映画を作っていたが、世界的には全く無名。多くのスターにオファーしたが断られ、結果的にイーストウッドになったという。それが大成功したのである。また小学校の同級だったエンニオ・モリコーネに音楽を依頼、一度聞いたら忘れられないメロディが西部劇に合っていた。各国入り交じったキャストだったので、その国ごとに吹き替えて公開されたという。今回は英語版に字幕が付いている。この段階では監督は面白い映画作りに徹していて、確かに何度見ても面白いと思う。ロケはスペイン南部で行われたが、まるでメキシコっぽいセットは違和感がない。イーストウッドは両勢力を行き来しながら、彼らを操る。そして最後に有名な決闘シーンである。構図も決まっていて見入ってしまう。
(『夕陽のガンマン』)
『荒野の用心棒』が大ヒットして、すぐに『夕陽のガンマン』(1965)が作られた。「3部作」というけど、この前書いた香港の『インファナル・アフェア』シリーズなどと違い、全く継続性はない。ストーリーだけじゃなく、主人公の設定も違っている。ただ質感は同じで、カッコいいイーストウッドに、忘れがたいモリコーネの音楽が重なる。ロケ地も同じだから風景も似ている。違うのは主人公が「賞金稼ぎ」で、懸賞金がかかる悪党を追っている。同じように賞金稼ぎをしているモーティーマー大佐という役も新味。リー・ヴァン・クリーフが演じて凄みを出している。両者の共闘と欺し合いが見物となっている。
(右=リー・ヴァン・クリーフ)
エルパソ銀行は鉄壁の守りを固めているが、そこを狙う「エル・インディオ」(ジャン=マリア・ヴォロンテ)の盗賊団がいる。イーストウッドはその一味に潜入して仲間を装う作戦を取るが…。それぞれが策謀をこらして、なかなか展開が読めないけれど、欺し合いの末に銃撃戦になる。筋としては娯楽映画の枠組で解決されるわけだが、ワイド画面に多くの情報が詰め込まれ、風景や音楽とあいまって「映画を見たなあ」という感じ。やはりこういう映画はテレビ画面以下ではダメで、大きなスクリーンで見たい。『続・夕陽のガンマン』は確か前に見ているが、コミカルな要素も入って時間的にも一番の大作になっている(178分)。
その後、巨匠と認められたレオーネ監督は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト』(公開題名『ウエスタン』)という傑作を作った。これは最近リバイバルされたが、非常に見ごたえがある傑作だった。そして遺作となった1984年の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』は日本でベストワンになった。公開版は144分だったが、その後さらに長いヴァージョンが幾つも作られているらしい。日本でも公開されて欲しいのだが、まだ見られない。今回の「ドル3部作」がヒットすれば、可能性も出て来ると思うのだが…。どうも可哀想なぐらい客が少ない。東京では丸の内TOEI、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷、グランドシネマサンシャイン池袋などで上映されている。宣伝しておく次第。
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