先週の日曜日(11月2日)、楽しみにしていた展覧会に行ってきました。
上野の国立西洋美術館でおこなわれている、ヴィルヘルム・ハンマースホイ展です。
私がハンマースホイという画家の名を知ったのも、その絵を最初に見たのも
前述のとおり、稲垣早苗さんからです。
しんとした室内と、白く大きいドアが印象に残ったことを覚えています。
とても好きだなと思ったのは、その白いドアが、開かれていること。
隣の部屋が見えて、そのまた奥へと続く部屋のドアも開け放たれていて
そうして、すこしだけ見えている窓から、白い光が射しこんでいること。
そのモチーフは、画家がどういう人なのかとか、描かれている場所が
どこなのか、とかいうデータを大きく超えて、なにか、私の胸にゆるい波のような動揺と、
よく知った物語を、繰り返し読むような懐かしさの両方を、呼び起こしました。
たった1枚の、ドアで、ないこと。
何枚ものドアの、そのどれもが開かれていること。
窓は、外へと通じている証であること。
そんなところが私を惹きつけたと思うのです。
‥ ‥ ‥
今回の展覧会は、初めて、ハンマースホイの絵を観る人に、とても親切な
構成になっていて、時代背景や、彼がどんな人で、どんな絵を描き、どんな家族と、
どんな家に住んでいたのか、また同時代にはそんな絵描きがいたのかなど、
とてもわかりやすくできていました。
彼が好んで描きこんだ自宅の見取り図や、どの部屋から、どの角度で
見て描いたのか、ということまで。
でも、目を閉じて、私が思い起こすのは、最初に見た、ドアの外の
そのまた向こうの、ドアと窓‥
木の椅子に腰かけた、黒い服を着た女性の、白いうなじ‥
室内、ストランゲーゼ30番地という作品群が好きで、その中でも
図録番号57が、一番好きかもしれません。