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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

不思議はどこに

2008-11-18 16:09:37 | 好きな本

図書館で、目についた棚から、まとめて何冊か本を借りました。

偶然目にして、偶然手にとって、読む順番も、そんなに考えたわけでもないのに、
続けて読んだこの2冊は、気持ちの中で繋がってきているのです。

ルチアさん
   高楼方子 文 出久根育 絵


人魚の島で
 シンシア・ライラント文 竹下文子訳 ささめやゆき絵


2つの本を結んだキーワードは、「不思議」でしょうか‥


『ルチアさん』の不思議は、水色の玉。

表紙に描かれている女の子たち(姉妹です)が住む、たそがれ屋敷に
ある日、ルチアさん、という名前のお手伝いさんがやってきます。
スゥとルゥルゥの姉妹は、目をまるくして挨拶をするルチアさんを見つめます。
だって、ルチアさんは、水色のコートを脱いだあとでも、まだ全体に
水色っぽく、ぴかぴか光って見えるのです。
それは、二人が宝物にしている、水色の玉(宝石と二人は呼んでいます)に
そっくりです。

水色の宝石は、遠い異国にいるお父様からのおみやげでした。

「金と銀の粉が踊っているみたい」
「海の夕陽だって溶けてるみたい」 
と二人は、飽きずにそれを眺めます。

水色の玉のように、なぜ、ルチアさんは光っているのでしょう。
そもそも、ほんとに光っているのでしょうか。
不思議の糸は、ルチアさんの娘(ボビー)をも巻き込み、時間を超えて
最後は、大人になったスゥのところで静かな終わりを迎えます。

母の心を満たしていたものは、「どこか遠くのきらきらしたところ」
だったにちがいありません。そのような場所が、からだの中に
溶け込んでいたからこそ、つねに、静かな喜びとともにいられたのだ、
そう思うのです。

ルチアさんの娘のボビーは、スゥ宛の手紙で、母のことをそう語っています。





『人魚の島で』の不思議は、鍵。 人魚からもらった鍵です。

主人公の男の子、ダニエルは、小さな島でおじいさんと二人で暮らしています。

題名や、冒頭から人魚が登場することで、おとぎ話のような感じを受けますが、
この物語は、内気で孤独な子供だったダニエルの、成長ものがたりです。

ぼくが人魚に会ったのは子どものときだ。
もちろん、だれも信じてくれなかったけれど、それはどうでもよかった。
ぼくはひとりでいることの多い孤独な子だったから、(中略)
人魚は、きっと、ぼくになら姿を見せても安心だと知っていたのだ。
ぼくには祖父しかいなかったし、その祖父は、ぼくに読み書きだけは
教えてくれたものの、あとはひとりで勉強しろといって、ハンノキ材の
彫刻で生計をたてていた。人魚は、それも知っていたにちがいない。

冒頭の部分を読むと、ダニエルが人魚に出会ったのは、偶然でもなんでもなく、
ダニエルもそれをむしろ「必然だった」と捉えているようにも思えます。
それほど、ダニエルの孤独は深かったのでしょう。

人魚からもらった鍵は、少年期のダニエルの「お守り」になりました。


ダニエルの孤独を思うとき、私は、何度も読んだ春樹作品の、それぞれの主人公が
抱える孤独を、思い出していました。(もちろん、全然違うよと、お思いになる方も
いらっしゃるでしょうが)

ルチアさんに戻れば、ルチアさんが見ていた「ここではない、どこか」
二人の姉妹の父が夢見た「ここではない、どこか」も、今まで読んできた幾冊かの
本を思い出させてくれました。(こちらは誰の、なんという本とは言えないのですが)




不思議な話、不思議な気持ち、不思議な現象、不思議な出来事‥

いちばん不思議なのは、どこに繋がっていくかわからない、人の心の中です、きっと。







コメント (6)
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