立春の土曜日、久しぶりに代官山へ出かけました。
ヒルサイドセミナー、人生に大切なものはすべて絵本から教わったpert3の
第5回目、ゴフスタインの新刊『あなたのひとり旅』出版記念の対談を
聴きに行くためです。
対談されたのは、『あなたのひとり旅』を訳した谷川俊太郎さんと、編集者としての
末盛千枝子さん。
末盛さんが長いあいだ温めていたゴフスタインの新刊が、現代企画室から
「末盛千枝子ブックス」シリーズの第一弾として出ることになり、その発表も兼ねた
ものでした。(今まですえもりブックスから出ていた絵本も、ここから追々復刊
されていくようです。詳しくは原題企画室のサイトへ→★)
その日の対談の様子は、こうめさん、琴子さん、まつかぜさんのブログで
すでに紹介されています。ぜひ、お読みになってください。
私の感想といえば‥
まず、谷川俊太郎さんに会える!ということが何よりの楽しみでした。
舞台に表われて、その第一声を聞いたときは、久しぶりにドキドキしました。
この頃あんまり誰かに会ってときめくことってなかったのですが・笑。
声の大きさ、その話し方(もちろん話の内容)、姿勢のよさなど、私が想像していた
「谷川さん」を大きく越えていて‥人間の年齢ってなんなんだろうと、ふと、
考えてしまいました。誰しも体の変化はある程度受け入れざる負えないけど、
ある時から、実年齢を手放して、自由になれる人っているんだなーと思い、
しなやかに生きる、のびのびと生きる、好きなように生きるも、そんなところと
繋がっているのかもしれないと思いました。
ヒルサイドセミナーで、末盛さんのお話を伺うたびに、お話そのものももちろん
よいのだけれど、私は、末盛千枝子さんの、その話し方というか、
心のどこかに持っている、ユーモアみたいなものが、とても好きなのだと、
思い、この日は、お相手の谷川さんの「ユーモア」も重なり、何度も何度も
心から笑わせていただきました。
非・日常というほど、遠すぎもせず、けれど、私の日常とはやっぱり違う場所で‥
好きな絵本、好きな本、好きなともだちなどなどの‥「好き」のかけらを感じながら
過ごせた時間はとてもしあわせでした。
さて、新刊の絵本『あなたのひとり旅』
線画ではなく、パステルで描かれていて、テキストはゴフスタイン自身のもの
ではなく、ローザ・リー&ドク・ワトソンの歌の詞なのです。
(会場で実際にその歌を流してくれましたが、カントリーっぽい曲だったのが
ちょっと意外な感じでした。)
ゴフスタインは、真実の愛とは何かを絵本で表現したいと考えていて
この“Your Lone Journey"を聞いたときに、自分の考えてきた
愛とか結婚とは、これだと思ったのだそうです。
長年連れ添った夫婦のうち、夫の方だけが先に旅立ってしまい、
残された妻が、嘆き悲しむ様子を描いた絵本なんですが‥私は、緑を基調と
したふたりの部屋に置かれた、なんでもない木の椅子が、ふたりの関係と
残されたものの悲しみをとてもうまく表しているなあと感じました。
椅子につっぷして泣いていた妻も、最後の場面では、立ちあがっています。
その姿を、ようやく無理して立ちあがったとみるか、立ってはいるが足元は
ふらふらと見るか、しっかりと前を向いて床を踏みしめていると見るかは、
読者である私たちの心持ちしだいなのでしょう。(顔のパーツは何も描かれて
いないので、彼女がどんな表情なのかもわかりません)
この日、セミナーが終わって、友達と代官山をぶらぶら散歩して、お茶を飲んで
帰ったら、家へ着く前にとっぷりと陽は暮れ、十日目くらいの月があまりにも
きれいでした。
風も穏やかなことに気が着いたと同時くらいに、そうだ今日は立春だったと思い、
そうしたら、春の訪れがすこし楽しみになってきている自分を、自分の足取りの
軽さでわかったのでした。
2012年2月4日の月、のようなひかりが、いつか私もゆくであろうひとり旅を
見守ってくれるといいなと思います。