頭で考えてから、好きになったり欲しくなったりする本が多い昨今、
この絵本は、三蔵さんが開いてページを見せてくれている間に、
両腕あたりがぞわっとしてきて、好きだなと思いました。
たくさん遊んで眠たくなってしまったうさぎのぼうやが
お母さんにだっこされて、夜の街を、帰ります。
途中でお父さんも迎えにきてくれて、眠たいぼんやりとした頭で、
店じまいをする本屋さんや、窓の向こうで電話をする人を見たり、
漂ってくる夕ご飯の匂いや、ひっそりとした道に、昼間とはまるで違う
夜の街を感じます。
よるって とても しずかだな
いつもと ちがって だあれも いない
・・・・・
いつもの よる
とくべつな よる
みんな いえに かえって
ねむりに つく
おやすみなさい
最後は、ぼうやが自分のベッドで眠りにつくところで終わります。
安らかで、静かで‥眠りにつく前に読んだらとてもよい本ですが、
紹介してもらっている時に、最初に私の頭に浮かんできたのは、
なぜか、『オーケストラの105人』という絵本でした。※
(オーケストラの団員が、夜の演奏会のために、出かける支度をする場面が
丁寧に描かれているお話です)
何年か前に、「絵本の栞」の中で、夜の街へ出ていく人と、その人を
見送り、家に残る人たちの間にある1枚のドアのことを書いたので、それが
自分の中に残っていたからかもしれません。
見送る側にとって、扉の向こうに広がる夜の街はとても特別。
開け放たれたドアからは夜の匂いが入り込み、いってらっしゃい、気を付けてね、
と見送られた方の人は、一歩二歩とドアから遠ざかるほどに、「外の人」の顔に
なっていきます。
夕暮れ時が過ぎ、夜のカーテンで空が覆われていくのを、たいていの場合
私は家の窓から眺める側なので、お店をしめる準備をしている店主さんも、
これから仕事に行こうとしている人の足音も知りません。
「こちら側」から眺める「向こう側」は、未知の場所で、窓から入る空気の匂いが
それは特別であることを教えてくれるのです。
懐かしいのは、どちらなのかなと思います。
そのむかしの残業や遅番‥で夜の街を知っていたことなのか、
閉じまりする前に仰いだ空、肺を満たした空気の匂いにびくっとしたことかー。
いずれにしても、いまこのときに、よい絵本に巡り合えたなあと思っています。
※『オーケストラの105人』は、『105人のすてきなしごと』と題名と訳者が
変わって販売されています。
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すっかり忘れていましたが、本日6月27日はこのブログの誕生日でした。
2005年に始めたので、ちょうど10年!です。びっくり。
この10年、ありがとうございました。
また新たな気持ちで、細々とでも綴っていきたいと思います。
よろしくお願いいたします。