陽の光がふりそそぐ穏やかな土曜日の朝です。
いつの間にかカレンダーは残り3枚の10月に入っています。
こういうよい天気の日に思い出す光景があって。
それは10年前に亡くなった父の葬儀の日。
実家の菩提寺は、東京都と埼玉県の県境に流れる荒川の、
陸橋からもよく見える土手の上にあって、葬儀もそこで執り行いました。
その日も、今日のようによく晴れた日で、祭壇前に並べられた椅子から
立ち上がると、鉄橋の上を走り抜ける京浜東北線の電車の窓がきらきら
輝いているのが見えました。
あの電車にはどこかに出かける人が乗っていて、笑ったり話したり
座席で眠ったりしているのだろうなあと、喪服姿の私は思ったものでした。
川口駅から電車に乗るたびに、あるいは川口駅へと帰ってくるたびに、
電車の窓から、私はお寺の建物を眺めます。
その中には祭壇が飾られているかもしれない、そこから誰かが、
この走っていく電車に思いを乗せているかもしれないー。
10年前の、黒い着物姿の私が居るかもしれないー。
あの場所に居た私が、電車に乗っている私を見ていたように。
先日の『佐野洋子展』のあと、図書館で2冊本を借りました。
どちらも児童書の棚にあったものですが、私が上に書いたような感じが
描かれていたので、その偶然に驚きました。
この本の最初の短編、「はしか」。
病院のベッドに居るわたしが、お見舞いにくる母と兄を窓から見ているが、
いつのまにか、視点が逆になる。
こちらはさらにシュールな話で‥。
自由気ままに生きていた豚が、知らぬ間に家や家族を持たされた自分を
おかしいと思い、元の気ままな自分に戻る。聞きなれた声のする方を見ると
かつて妻だった豚と、一緒に暮らしていた時よりも大きくなった子供たちが居て、
自分でない、でも自分にそっくりの豚のお父さんとピクニックに来ている‥。
ここに居るのは、ほんとうに自分なのか。
あの時あの場所に居たのも自分なのか。
今ここにこうしてパソコンのキーボード叩いている自分。
電車に乗っているかもしれない自分。
商店街を歩き、大きな建物に向かっている自分。
ベッドの横の、開かない窓から雲の流れを見ている自分。
そっちの私も、元気ですか。
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