来年春のJR九州ダイヤ改正では、九州新幹線全通に伴い、並行する鹿児島本線特急「リレーつばめ」号の新幹線移行(廃止)や、新幹線と接続する線区における列車体系の変更などで、新規開業を迎える九州新幹線だけでなく、在来線でも鹿児島本線を中心に他のJR旅客各社を凌ぐ大きな変動が生じています。
特に「リレーつばめ」号が廃止となる鹿児島本線の博多以南(鹿児島県内を除きます)は変動が大きく、今まで列車密度が高く、新たな列車の設定が難しかった博多~鳥栖間でダイヤに余裕が生じる事もあってか、長崎本線の特急増発と3層建列車を取り止め、博多~佐賀間の特急乗車機会を増やすだけでなく、需要の割に本数が少なかった博多近郊の鹿児島本線普通列車の増発にも充てている事は、大いに評価できると感じます。
また鹿児島本線鳥栖以南では、「有明」が新幹線の走らない早朝・深夜時間帯に1往復が残され、この列車の停車駅増加で早朝・深夜帯の利便性が向上しているのは評価できるとは言えますが、他は通勤時間帯のライナー列車的存在としてごく一部が長洲以北で運行する以外、在来線特急は全廃となっています。
九州新幹線も大牟田・玉名は在来線と離れた新駅(新大牟田・新玉名)になりますので、在来線の快速を現在より増やすとは言えども、これも特急の代替列車というよりは普通列車の快速化で、小駅では普通列車が毎時1本のみに削減される有様です。
そのため福岡県南部~熊本県北部にかけては、利便性が随分低下していると言わざるを得ないのが現状で、大牟田は現行「リレーつばめ」号が全て停車していますので、これがなくなると大牟田周辺から福岡方面へはJR快速ではなく並行私鉄で…という旅客も増えそうな気がします。
そして玉名は高速バスや並行私鉄なども…という状況ですので、他の公共交通機関を使うという選択肢が存在する大牟田に比べると、更に悲惨な状況と言っても良く、リコールされる程のお騒がせ市長(この件に関するコメントはお控え下さい)で有名になり、九州新幹線から取り残された鹿児島県某市の2の舞にならないか懸念される所です。
ちなみに熊本県北部の鹿児島本線は、現行毎時2本が走る普通列車の1本がダイヤ改正後に快速化され、県北(荒尾・長洲・玉名)~県都(熊本)間の速達列車が一応確保されるとはいえ、この列車も福岡方面からの直通ではなく、「くまもとライナー」と称して大牟田~熊本間での運行となっています。
さすがに福岡県内(一部荒尾まで)の快速列車の様な6~8両編成ともなれば、輸送力は過剰気味になるかと思いますし、駅設備も新駅や熊本駅の一部ホームなどが短いという問題もありますが、系統分割ではなく分割・併合で対応できなかったのかと感じると共に、この快速列車がもし現行普通列車と同様の2両ワンマン運転で毎時1本ともなれば、相当な混雑が常態化しないかも気になる所です。
また現在「有明」号が博多方面から直通運転している豊肥本線では、さすがに規格の異なる新幹線を直通運転させる事は不可能な事から、この列車の豊肥本線区間だけ現行特急並みのダイヤで快速列車を設定し、豊肥本線沿線から新幹線へ乗り継ぐ形態に変化しています。
こちらは普通列車の快速化とは異なり、熊本都市圏におけるローカル輸送の充実にもなりますので、博多方面へは熊本駅での乗継が必須になるのは難点とはいえ、現行並みかそれ以上の利便性を提供する事になっているのは評価できる事です。
この他今度のダイヤ改正では新たな観光列車の運行開始や、「リレーつばめ」号廃止や「有明」号大幅減便で捻出される787系の転用→古参485系運用廃止による在来線特急の設備向上などが目玉となっています。
これらと共に一部ローカル列車の「見直し」という言及での減便や、ライナー列車の設備向上に伴う特急格上げなど、新幹線に限らず全体的に速達化・格上げの傾向が強いと見受けられます。
その中でも今回の九州新幹線開業で列車体系が大きく変わる福岡~熊本間などは、かなりの流動があり、その中には新幹線程の速達性は求めないものの、割安な手段を求める客層も多数存在しているはずです。
同区間は日本全国でも屈指の高速バス高頻度運行区間(片道100km以上での運行頻度は日本一・定期券も設定されている程です)にもなっていますので、JR側は高品質(速達・快適)に特化した方針を採り、私鉄電車や高速バスなど他交通機関との棲み分けを図るのか、JR自体で様々な客層に対応できるように努めるのかも気になる所ですが、せめて公共交通機関から自家用車へのシフトが進まない事を願いたいものです。
(さすがに福岡県内快速~毎時1本のくまもとライナー乗り継ぎは、今後ナイスゴーイングカードが廃止される事なども踏まえると、青春18きっぷユーザーなど以外には、余りメリットがないかと感じます)
またJR側がダイヤ改正の概要を発表した事で、福岡市内~大牟田間での並行路線を運行すると共に、福岡~熊本間の高速バス運行にも携わり、バス事業規模日本一でも知られる九州唯一の大手私鉄などで、今後新たな動きが出てこないのかも気になる所です。
写真は九州新幹線全通後、特急に代わり主役となる快速に充当されるであろう福岡・熊本両地区のローカル車両と、鹿児島本線と競合する大手私鉄の電車・バスです。
大牟田~熊本間の「くまもとライナー」がどの車両・編成で運転されるのか気になる所ですが、写真2枚目の様な編成で運行される事を願いたいものです。