先月MAKIKYUが韓国へ出向いた際には、日本からの高速船「BEETLE」が発着する釜山(Busan)や、首都Seoulとその近郊の京畿道(Gyonggi-do)以外に、地方の幾つかの都市にも足を運ぶ機会がありました。
幾つか足を運んだ地方都市の一つに、忠清北道(Chungcheon-bukdo)の提川(Jecheon)市という街があります。
提川市自体はさほど規模の大きい街ではなく、有名な観光地を抱えている訳でもありませんので、外国人旅行者が足を運ぶ機会は限られますが、KORAILの中央線が南北に走り、また東へ向かう太白(Taebaek)線の起点でもあるなど、鉄道の要衝になっています。
(西へ向かう忠北線は、ややSeoul寄りの鳳陽(Bongyang)が終点ですが、旅客列車は中央線に乗り入れて提川発着となっており、提川は実質的に東西南北4方向へ向かう路線のジャンクションになっています)
そのため提川駅では様々な旅客・貨物列車の姿を見る事が出来るのですが、MAKIKYUが提川を訪問した際には通常姿を見る事が出来る車両だけでなく、神出鬼没の試験車両にも遭遇する事が出来ました。
この試験車両がTTX(Tilting Train eXpress)と呼ばれる車両で、編成は両端車が特室(グリーン車相当)の6両編成ですが、広域電鉄以外のKORAILでは極めて少数派の動力分散式電動車(EMU)というだけでも希少な存在です。
その上韓国の旅客用車両ではまだ実現していない振り子式車両と言うのも大きな特徴で、パンタグラフや台車などを見ると、如何にも振り子式車両という雰囲気を感じたものです。
またMAKIKYUがTTXに遭遇した際には提川から乗車予定の忠北線列車もEMU(提川発着は1往復のみで、運行経路も注目の列車です)で、駅構内に足を踏み入れた際には、MAKIKYUの乗車列車とTTXが隣同士で並んでいたため、2種類のEMUが並ぶと言うKORAILの列車線では非常に珍しい光景も見る事が出来ました。
MAKIKYUはTTXの存在自体は以前から知っていましたが、神出鬼没の試験車両だけに、遭遇できるとは思ってもいませんでしたので、たまたま提川駅発の忠北線EMU乗車狙いで訪れ、遭遇できたのは予想外の大収穫でした。
今回のTTX遭遇では提川駅構内で転線のためにゆっくりと動く姿も目撃でき、MAKIKYUが提川駅から乗車したEMUを連想させる、如何にも今風のVVVF車といった起動音なども聞く事が出来ましたが、振り子式電車も試作だけに留まらず、TTXの試験結果を基にした旅客用車両の登場を期待したいと感じたものでした。
先日「MAKIKYUのページ」で取り上げたKTX 山川車内の様子ですが、今日はその続編として特室車内の様子などを取り上げたいと思います。
特室は日本のグリーン車に相当する車両で、両端の機関車間に客車を8両組み込んでいるKTX 山川では1両だけ連結されています。
この車両は座席が2+1列の横3列となっており、側面化粧板にも木目を用いるなど、見るからに一般室と比べて豪華な車両と言う雰囲気を漂わせています。
MAKIKYUがKTX 山川に乗車した際は、一般室の座席確保すらやっと…という状況で、特室は満席だった事もあって、こちらには乗車していませんが、東大邱(Dong-Daegu)駅で停車している車両の車内を視察したものでした。
特室の座席は電動リクライニング機能が装備されているなど、特室でも背もたれと座面が一段階前にせり出すだけで、座席の大きさや空間はそこそこ確保されていても、座席自体の出来栄えはムグンファ号や日本のJR新幹線・在来線特急の普通車以下と言わざるを得ないフランスTGVベースの既存KTXに比べると、設備面では随分改善されたのでは…と感じたものでした。
しかしながら座席こそ横3列とはいえ、座席の豪華さで定評あるセマウル号に比べると、見劣りすると言わざるを得ないと感じたのも事実で、リクライニング角度もさほど大きいと感じるものではなかっただけに、電動リクライニング機能装備の意義もどれほどあるのか気になったものでした。
またKTXでは各車両のデッキに補助椅子を設けており、日本では補助椅子と言うと、専ら座席指定不要の列車に装備されているものと言う印象がありますが、この座席も既存KTXでは枕木方向に設けられており、進行方向次第では逆向きに座る事になります。
KTX 山川でもこの種の補助椅子があるのですが、これに加えてレール方向を向いて座る補助椅子もあり、進行方向に関わらず逆向きに座る心配がないと言う点では評価できるかもしれませんが、全座席比率に占める割合は僅かとはいえ、高速列車でロングシートというのは非常に違和感があります。
しかも窓なし座席と言うおまけ付きですので、これでもデッキで立ち続けるよりはマシかもしれませんが、余り有り難くない座席と感じたものでした。
KTX 山川は既存KTXに比べると、車内空間の狭さや座席などが大幅に改善され、KTXを利用する際には是非時刻表で「山川」と記された列車を選んだ方が…と感じたものですが、設備面では豪華さで定評あるセマウル号はおろか、一般室では運賃の割には比較的高レベルの設備を誇るムグンファ号にも劣ると感じたものでした。
そのため韓国の列車旅を楽しむ列車と言う点では、割安な運賃と高レベルの車内設備を誇るセマウル号やムグンファ号などの一般列車に軍配が上がる所です。
しかしながら京釜間(Seoul~釜山間)で2時間半程度(列車によって所要時間差有り)、Seoul~東大邱間に至っては2時間以内と言う圧倒的な速さを誇っており、一般列車との乗継割引(KTXと乗り継ぐ1列車のみが対象で、一般列車の運賃が4割引になります)もありますので、今後も旅程に応じて両者を使い分けたいと感じたものでした。
先月MAKIKYUが韓国へ出向いた際に乗車した高速鉄道(KTX)の新型車両・KTX 山川(Sancheon)ですが、この車両は両端が動力車となっており、その間に連接構造となった客車が8両挟み込まれています。
(両端の機関車と客車の間は連接構造にはなっていません)
この客車8両の中に1両だけ特室(グリーン車相当)が組み込まれているものの、他の客車は一般室(普通車相当)になっており、MAKIKYUが乗車したのは客車の大半を占める一般室の方でした。
(需要の多い日曜日夕方のソウル方面で、乗車時間3時間前に乗車券を購入した事もあり、乗車した列車は2編成併結でも通路側で1席だけの空席、選択の余地はなく乗れただけ上等と言う状況でした)
この一般室はフランスTGVベースの初代KTXが、客室設備の面で非常に不評(特に一般室)だったため、不評だった問題点の数々を解決した事を謳っており、車体幅拡張に伴う圧迫感軽減や、座席の前後間隔(シートピッチ)の拡張などが行われています。
そして初代KTX一般室では本家フランスのTGVと同様に座席の方向回転・転換機能がなく、半数が進行方向と逆向きに座る事になり、この事が不評を買った最大の要因にもなっていますが、KTX 山川では大半の座席で全席回転式リクライニングシートを採用する事で、この問題を解決しています。
(TGVの本家・フランスではこの方式が当り前で、韓国輸出に当たっても太鼓判を押したらしいですが、この座席の不評は運行開始前から懸念されていた様で、契約上手直しが出来ない期間は過ぎている事から、具体的発表こそ聞かないものの、今後座席の取替えなども見込まれている様です)
ただこの座席はシートピッチこそムグンファ号と同レベル(980mm)が確保されているものの、初代KTXを連想させる引き出し式テーブルの収納スペースが8cm程の厚さがあります。
その上座席下部は若干の空間が設けられているとはいえ、足を大きく伸ばせる程ではありませんので、シートピッチの割にはやや狭さを感じるもので、ムグンファ号タイプの座席+肘掛にテーブルor日本のJR新幹線・在来線特急で一般的な背面テーブルであれば…と感じたものでした。
そのため初代KTXの一般室よりは随分改善されたとはいえ、座席の改善を謳っている割には、KORAILの一般列車に比べても…という程で、その上KTXの運賃設定は最上級に属しますので、高速移動が目的でなければ、KTX 山川よりもムグンファ号などの一般列車に乗った方が良いのではと感じたものでした。
(特に高速線を走らず、一般列車と同じ線路を走る東大邱(Dong-Daegu)~馬山(Masan)間など)
まして3人掛け座席を回転させる関係もあって、普通車でもシートピッチが広く確保され、足元も広々としている日本の新幹線に比べると、普通車/一般室のグレードに関しては言うまでもなく…と言う所で、KTX 山川乗車の前々日、新横浜~博多間で乗車したJR東海のN700系「のぞみ」号との格差は随分なものと感じたものでした。
またグループ利用で向かい合わせで利用する事も想定して、一部はテーブル付きで簡単なガラスの仕切りもあるセミコンパートメントとなっており、列車の性質や設備などは全く異なるものの、この区画はMAKIKYUがKTX 山川乗車前日に乗車したJRのキハ72形気動車(特急ゆふいんの森号)を連想したものです。
(余談ながらKTX 山川が発着する釜山駅と、ゆふいんの森号が発着する博多駅は、直線距離で200km程度しか離れておらず、両都市間は高速船で約3時間で移動できますので、国は異なるとは言えども比較的至近距離にあります)
このセミコンパートメントの設置をはじめ、車内には飲み物やスナック類などを販売するコーナーもあるなど、設備面で多様なニーズに応えるという面では、車内に同種座席だけを並べて座席で埋め尽くし、収容力一辺倒で画一感が否めないJR東海の新幹線車両にはない特色が見受けられます。
また車内案内表示装置も、最近ではLCDモニター採用が多く見られる中で、新幹線に関しては未だにLED文字スクロールばかりと言う中、KTXに関してはKTX 山川だけでなく、TGXベースの初代KTXでもLCDモニターを採用している点も評価できる所ですが、KTX 山川は最新型にも関わらず、LCDモニターの設置方法がが如何にも後付けという印象が否めないのは惜しい限りです。
特室車やデッキの様子などは、近日中に別記事で追って取り上げたいと思います。
先月MAKIKYUが韓国を訪問した際には、旅行の計画段階から昨年秋に開業したKTX専用高速線の京釜高速鉄道2期線(東大邱[Dong-Daegu]~釜山[Busan])と、やはり昨年に営業運転を開始したKTXの新型車両・KTX 山川(Sancheon)には是非乗車したいと思っており、先月韓国を訪問した際には、その双方の目的を共に達成する事が出来ました。
KTX 山川は両端に動力車を配した動力集中方式で、中間の客車は連接構造の付随車となる点では、フランスTGVをベースにした既存のKTXと同様です。
しかしデザインや客室設備は既存KTXと大きく異なっており、「ヤマメ」をイメージしたデザインは独特で、前面窓が大きな1枚窓となっている点では、TGVシリーズの比較的新しい車両(MAKIKYUは実車を見た事はありませんが…)を何となく連想したものです。
また編成は動力車を含めて10両と、既存KTXの約半分の長さしかなく、列車によっては2編成併結での運用を行う事で、既存KTX並みの輸送力を確保しています。
分割併合を行う事も影響したのか、LEDを用いた側面の行先表示も日本の新幹線(特にN700系は際立っていますが…)程ではないものの、表示内容が既存KTX(行先(ハングル・英文)・列車番号のどれかを表示するだけで目一杯で、これらを交互に表示している状況が貧相過ぎるのかもしれませんが…)よりはるかに充実したのも評価できる点です。
編成が短いことから、利用の少ない列車は1編成のみで運行したり、途中駅で2方向に分かれる列車を設定する事で、過密区間の列車密度を高めなくても、輸送力を増強できるなど、様々な運用に適応でき、セマウル号用ディーゼル動車を連想する活躍ぶりも特徴です。
前面が流線型である事に加え、既存KTXに比べて大柄で丸みを帯びた風貌は、デザイン的には何となくセマウル号用ディーゼル動車、それも大宇製車両を現代風に進化させた雰囲気も感じ、特に連結器を開いた状態では尚更と感じたものでした。
ちなみに京釜線方面を走るKTX 山川充当列車は、主にSeoul~東大邱~馬山[Masan]間の慶全線方面列車や、この列車のSeoul~東大邱間のみで増結される編成(Seoul~東大邱間では併結して馬山発着列車と全く同じ時刻で走りながらも、運行扱い上は別列車扱い)に充当されており、最も需要の大きい京釜間(Seoul~釜山間)での運用は非常に限られ、釜山にやってくる運用がごく僅かなのは難点です。
釜山に顔を出す僅かな運用も、金・土・日曜などに4往復運転される光明[Gwangmyoeng]~釜山間の臨時列車が主体となっており、おまけに先月発生した光明駅脱線事故(大事に至らなかったのは幸いですが…)の影響で半数が当面運休となっている他、この列車は1編成のみでの運用となっているため、座席数が少なく満席となる事もしばしばと言う状況です。
(光明駅はSeoul市の南に位置する光明市に位置し、自家用車利用者の便宜を考慮した駅ですが、永登浦[Yeongdungpo]駅まで毎時2本程度のシャトル列車が運転されています。
この他近隣の広域電鉄駅へ向かう市内バスが頻発しており、公共交通機関でのアクセスも可能ですが、韓国旅行の初心者には余り利用をおススメできない駅です)
MAKIKYUが韓国を訪れた際も、釜山から入国した訪問初日にSeoulまでKTXでの移動を目論んだものの、混雑する日曜日と言う事もあって光明駅発着の臨時列車はあいにく満席、釜山からのKTX 山川乗車は叶いませんでした。
ただ列車の空席状況を乗車券自動券売機(これだとハングルが読めれば、韓国語での会話なしで目当ての列車の空席状況を容易に調べられ、乗車券購入時の1%割引特典も嬉しい限りです)で確認すると、東大邱~Seoul間では同区間の列車こそ満席だったものの、何故か馬山からやってくる車両に1席だけ空席が残っていました。
MAKIKYUは迷わずこの1席を購入すると共に、釜山~東大邱間は高速新線を経由する既存KTXに乗車する事で、先月の旅行で目論んでいた2つの目的を達成する事が出来たものでした。
ちなみに韓国の運賃制度は日本のJRとは異なり、列車種別毎に㎞当たりの賃率が定められていますので、種別毎に定められた最低所要金額に満たない短距離での乗車以外は、途中駅での分割購入でも運賃が殆ど変わらないのも魅力で、今回はKTX同士の乗り継ぎで対象外とはいえ、KTX~在来列車乗り継ぎでは在来列車の運賃割引(KTX1乗車につき、在来列車1乗車のみが対象)が適用されるのも注目点です。
そのため既存KTXで東大邱へ移動し、1時間程の待ち時間には駅構内に停車しているKTX 山川などの様子を眺めながら、乗車するKTX 山川がやってくるのを待つ状況でしたが、既存KTXと並ぶ姿を見ると、まだ歴史の浅い韓国の高速鉄道も急速な発展を遂げ、新たな時代に突入した事を実感させられたものでした。
車内の様子などは、続編記事で近日中に追って取り上げたいと思います。
先月MAKIKYUが韓国を訪問した際には、6月に営業運転を開始したばかりの新列車「ヌリロ(누리로/Nooriro)」号に乗車する機会がありましたので、今日は「ヌリロ」号とこの列車に使用される新型電動車に関して取り上げたいと思います。
「ヌリロ」号は6月に新たに設定された列車種別で、運賃体系上は既存の「ムグンファ(무궁화/Mugunghwa)」号と同格になっており、市販の時刻表でも「무」(무궁화の略)と表示している程(駅での案内や乗車券には、「ヌリロ」号の名称が用いられているのですが…)ですので、既存「ムグンファ」号との差は新型電動車を用いている事や、停車駅が多い事程度で、実質的に「ムグンファ」号の一部と捉えても良い程です。
この「ヌリロ」号は現在Seoul~天安(Cheonan)~温陽温泉(Onyang-Oncheon)~新昌(Sinchang)の広域電鉄運行区間内のみを運行しており、列車の発着ホームこそ主に列車線ホームを用いているものの、日本の大都市近郊私鉄における有料特急列車に近い雰囲気があります。
使用車両は「ヌリロ」号運行に合わせて新造された200000番台の電動車が専属で用いられており、この電車は韓国の鉄道では久々の日本製(HITACHI)となっているのも大きな特徴です。
「ヌリロ」号用の新型電車は4両1編成(両先頭車が制御車・中間2両が電動車)となっており、MAKIKYUが乗車した列車は4両編成でしたが、列車によっては2編成併結の8両編成でも運行されます。
座席は回転式のリクライニングシートが並び、「ムグンファ」号や日本のJR在来線特急普通車とほぼ同レベルの居住性を誇りますが、「ムグンファ」号では装備していないテーブルを肘掛に内蔵している点は評価できるものです。
またHITACHI製という事もあってか、初めて乗車した車両にも関わらず、車体の側面形状や窓構造などは何処かで見た車両という印象を受けたものですが、比較的シンプルな雰囲気にまとめられた客室内に加え、座席モケットの色なども影響してか、東京~房総方面を走るモノクラスのJR特急型電車を連想したものです。
ただ如何にも最近のKORAIL車両といった雰囲気の前面や、低床の列車線ホームに対応した出入口扉などは、日本製ながらも日本の電車とは異なるものですが、この車両は列車線だけでなく広域電鉄ホームでの発着も出来る様に、出入口扉部分のステップは現在、KORAILではこの車両だけでしか見られない収納式となっています。
低床・高床双方のホームで発着できる構造の車両というと、中国国鉄の客車列車などを連想しますが、「ヌリロ」号の場合は中国の様に係員が跳上式の鉄板を操作するのではなく、低床ホームでの発着時にドア扱いと前後して収納式のステップが稼動するもので、ドア扱いを行う車掌以外の係員の立会いなしでも、低床ホームでの乗降扱いが可能になっています。
各駅到着時の案内放送(自動放送)でも、注意を促す案内が行われており、人海戦術に頼る鉄道とのレベルの違いを感じたものですが、現段階では「」号停車の大半の駅で低床ホームからの発着となっていますので、これだけの装備は過剰に感じてしまう程で、高床ホームでの発着時は出入口限定&鉄板等でステップを塞ぐ方法でも充分な感じがしたものですが、将来の運用区間拡大を目論んでの先行投資なのかもしれません。
現行の「ヌリロ」号列車設定はビジネス利用に主眼を置いているのか、平日(月~金曜日)のみ運行の列車が多く、土・日・祝日の運行本数が極端に少なくなるのは難点と言えますが、電動車ならではの高加減速性能を生かし、列車線運行列車にしては停車駅が多いにも関わらず、既存の一般列車(ムグンファ号)と遜色ないダイヤで運行しているのは大きな特徴と言えます。
またKORAILの列車線では久々の動力分散方式を用いた電動車(EMU)で、その上ROTEMなどの国産車両が多数活躍するKORAILにおいて、これまた久々の日本製であるなど、独自の名称だけでなくその中身も異色の存在です。
今後の更なる活躍にも期待したいもので、KORAILでSeoul~天安・温陽温泉方面を移動する機会があれば、是非選んで乗りたい列車ですが、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方も興味がありましたら、是非一度乗車を検討してみては如何でしょうか?
先月MAKIKYUが韓国を訪れた際には、昨年から走り始めたRDC(Refublishied Diesel Car)と呼ばれるディーゼル動車(気動車)に乗車する機会がありましたので、今日はこの車両に関して取り上げたいと思います。
RDCは近年まで首都圏をはじめ、慶尚道や全羅道方面などでも多数が運行されていた「通勤列車」(旧統一号)用に運用されていたCDC(Commuter Diesel Car)と呼ばれる近郊型のディーゼル動車を、ムグンファ号用に格上げ改造した車両です。
韓国鉄道(KORAIL)では京義(Gyong-ui)線の電鉄化による車両取替えや、慶尚道や全羅道方面における通勤列車の相次ぐ廃止などで、CDCの活躍舞台も今や京義線と京元(Gyongweon)線の末端区間に限られています。
そのためCDCの余剰が相次ぐ状況となったものの、製造から10年少々を経過した程度でまだまだ使用できる上に、通勤列車として運転されていた列車のムグンファ号への種別格上げが相次いだ事も、CDC→RDCへの改造が行われる大きな要因となっています。
RDCへの改造車は車両番号が従前の先頭車9500番台・中間車9600番台から、先頭車9000番台・中間車9100番台に改められると共に、RDCへの改造後は専らムグンファ号として運用されるため、車体色を赤系統に改めています。
その上ただでさえ幅が狭く、両開き扉とはいえ乗り降りに時間を要する片側2箇所の客扉の一つを埋めてしまい、1扉車に改造した事も大きな特徴と言え、この様はローカル線で月に1回程度代行輸送なしの列車運休を行う、JR某社の近郊型気動車を改造した観光向け車両を連想させるものがあります。
ドアを埋めた箇所はステップの張り出しが残存している上に、車両によっては窓配置がいびつになるなど、見るからに改造車という雰囲気を強く匂わせており、この姿は趣味的には面白みもあるのですが、2扉のままでは駄目だったのか?とも感じてしまったものです。
車内もムグンファ号用に格上げしただけあって、従来のセミクロスシート(クロスシート部分は転換式)から、日本の特急普通車並みの回転式リクライニングシートに改められています。
内装もRDC化の際にようやく難燃性に改められる(韓国では地下鉄車両の難燃化はほぼ完了していますが、CDCの内装は未だに難燃化されていない状況です)と共に、客扉と客室の間に仕切りが設ける改造も施しています。
JRで両開き2扉の近郊型気動車を優等列車向けに格上げ改造した車両が、改造後もデッキなし(ワンマン運転を行うには、この方が都合が良い事も影響していると思いますが…)で優等列車として運用されている状況と比較すると、この点はRDCが一歩リードしていると言えます。
またCDCは客扉が車端ではなく、中央寄りに設けられている事から、RDC改造後も残された客扉と車端にある貫通路との間は、両先頭車はトイレなどの設置があるとはいえ、やや中途半端な空間になってしまうのですが、現在1編成4両で運行されているRDC(CDC時代は3~5両で1編成を構成:以前は5×2の10両編成もラッシュ時間帯などに存在していました)では、編成内各車両で全て様相が異なっているのも大きな特徴です。
その内先頭車の一方は車端以外の客室と同じリクライニングシートが装備されているのですが、もう一方の先頭車は何故か高速列車(KTX)とほぼ同じタイプの座席(座席モケットの色は異なるのですが…)を向かい合わせに設置し、その間にはテーブルも設置(ムグンファ号の座席は背面や肘掛にテーブルの装備はありません)するなど、グループでの利用などに適した空間となっています。
中間車の1両は「Mini Mini Cafe」と称し、飲料水の自動販売機やコイン式のゲーム機が設置されており、最近KORAILの列車で食堂車に代わって連結されるようになったカフェ車の簡易版といった雰囲気ですが、僅か4両編成の気動車でこれだけの空間を設けているのは、一部の観光列車などを除く日本の鉄道と比較すると、贅沢な印象を受けるものです。
中間車のもう1両は、客扉との間にデッキが設けられたとはいえ、CDC時代と同様にロングシートが配置されており、つり革が並ぶ姿も見られるなど、RDCの中では設備的に最も見劣りする区画となっており、ロングシート自体も近年KORAILの広域電鉄で幅広く用いられている難燃化座席そのものの非常に薄くて硬い代物で、CDC時代に比べて改悪されていると言っても過言ではない状況です。
そのためこんな区画を敢えて選ぶ人物も…と思ったのですが、MAKIKYUが乗車した列車では2名程の利用客が居り、うち1人は多少日本語が話せる人物だった事もあって事情を伺った所、「足を伸ばせてこちらの方が楽」と話しており、専らフリースペース的な使い方をされている様でしたが、この区画も一応座席番号は振られており、乗車券購入時にこの区画を指定されたら…と感じたものでした。
このRDCは現在大邱(Daegu)~馬山(Masan)・東大邱(Dong-Daegu)~浦項(Pohang)間のムグンファ号を中心に活躍しており、この2系統はどちらも韓国の地方都市間を結ぶ列車にしては比較的至便ですので、大邱へ出向く機会があれば比較的容易に試乗も可能です。
(前者は一部に退役が近いと言われるNDCも運用されています)
また今後RDCへの改造を済ませた車両が続々と登場し、更に運行区間が増えたり、変動する事も予想されますが、現段階では長項(Janghang)線の金・土・日祝日のみ運転される牙山(Asan)駅発着の列車にも充当されている様で、新型電車「ヌリロ」(こちらも近日中に取り上げたいと思います)と合わせての乗車も面白いかもしれません。
通勤列車が次々と列車設定廃止となり、CDCの余剰車が多数発生した際には、まだまだ使える車両にも関わらず…と思ったものでしたが、ムグンファ号用に改造を受けて再び活用される事になったのは喜ばしいものです。
韓国の列車線では機関車牽引の客車列車や、それに順ずる動力集中方式の車両が主流を占めており、これは日本の鉄道と異なった雰囲気が楽しめて悪くないのですが、動力分散方式に慣れ親しんだ身としては、やはり床下から走行音が聞こえてくる動車は魅力的です。
電化も進む今日ではディーゼル動車の大増備は余り期待できず、少数派のまま推移していく公算が高いと思いますが、今後の活躍にも期待したいと感じたもので、この記事を見て興味を持たれた方は、是非RDCへの乗車も検討してみては如何でしょうか?
最近は九州への強行軍旅行(車中1泊を含めて2泊)の日程を確保する事すら…という状況のMAKIKYUですが、年末~年始にかけては「MAKIKYUのページ」でも日本国内と共に幾つもの話題を取り扱っている韓国や中国で、鉄道の新路線開通が幾つかあり、その一つが今月1日の韓国忠清南道・長項Changhang(天安Cheonan~長項を結ぶ長項線の終点)~全羅北道・群山Gunsan(益山Iksan~群山間を結ぶ群山線の終点)間の韓国鉄道(KORAIL)接続新線開通で、これに伴って長項・群山両駅の移設も行われています。
この区間は直線距離で数十キロ程度、二つの町は川を隔てているものの隣り合っており、長距離バスの発達した韓国という土地柄、市外バスが頻発していて、MAKIKYUも市外バスで両都市間を移動して、2つの鉄道路線を乗り継いだ事(少々大回りになりますが、全州Jeonju(全羅北道の道庁所在都市です)~Seoul間を移動する際にもおススメのルートです)もありますし、バスの他に渡船も運行されている様です。
とはいえKORAILの接続路線開通はつい最近の事ですので、当然ながらMAKIKYUはまだこの接続新線には乗車した事がなく、乗車は残念ながら暫く先の話になりそうで、ネット上で時刻を調べた程度ですが、列車の時刻を見た限りでは、概ね従前の長項線列車(Seoul市内の龍山Yongsan~長項間を、セマウル号かムグンファ号が概ね1時間毎程度の間隔で運行)が、そのまま接続路線を介して群山線に入って益山まで乗り入れる格好(これに伴って、従前の群山線区間も長項線に改称して1本化)となっており、この他朝に1往復だけ益山~舒川Seocheon(長項から10km程北に向かった長項線の駅です)間にセマウル号(ディーゼル動車)が設定されています。
長項線の列車が益山まで延伸されても、その途中の群山からSeoul方面への需要が多少は期待できるものの、益山には従来から湖南線が通じており、こちらを使った方がSeoul方面への所要時間や運賃面では遥かに優位、その上運行本数も多い状況ですので、この接続路線開通は、旅客面よりもむしろ貨物列車のダイヤ設定へのメリットの方が大きそうです。
そのため延伸された長項線列車で、益山~Seoul方面を乗り通す乗客は、物好きや湖南線列車の満席時を除いてまず期待できそうにないですし(こんな事を考えるのは、もしかしたら日本人の方が多いかもしれません)、長項線沿線も田舎町ばかりで、益山自体も鉄道駅の規模自体はそれなりとはいえ、街の規模自体はさほど大きくなく、益山~長項線沿線の需要もさほど期待できませんので、ここを発着とするのは運転上の都合が大きそうです。
ただ中には益山から更に湖南線に乗り入れ、西太田Seo-Daejeonを発着する列車(ムグンファ号)も設定されているのですが、この列車は天安~(長項線)~長項~(新線)~群山~(旧群山線)~益山~(湖南線)~西太田を「C」字形に大回りする格好となり、長項線沿線と湖南線沿線の地方都市間も市外バスなどの便がそれなりに運行されている状況ですので、趣味的にはそれなりに面白い列車かもしれませんが、この列車の設定意義に苦しみます。
(日本で言えば、京都~西舞鶴間を福知山・宮津経由で走る列車を設定する様なものです)
こんな列車を設定する位なら、機関車牽引による客車列車では益山での機回しが必要(これを避けるために、敢えてセマウル号ディーゼル動車を使うという手もあります)になるとはいえ、全羅北道の道庁所在都市でありながらも、都市規模の割に列車の利便性は決して良いとは言えず、Seoul方面への始発列車も存在しない全州まで長項線列車を伸ばすか、せめて益山~麗水Yeosu間の全羅線列車の一部を長項線直通に出来なかったものなのかと感じさせられます。
(ちなみに益山~全州の両都市間は単線非電化とはいえ全羅線が通っており、距離もさほど離れておらず、全州は益山に比べるとSeoul方面の列車本数が格段に少ない状況ですので、全州~長項線沿線の需要をはじめ、湖南線経由列車が満席となった際のSeoul方面への補完という観点でも多少は期待できそうです)
また長項線列車が益山発着でも、益山~全州間で通勤列車(日本の普通列車相当)が接続し、これらを乗り継げる様にでもなっているのであれば、まだ納得が行くのですが、近年韓国では長距離列車に重点を置く反面、ローカル列車は削減される傾向があります。
ネット上で調べた限りでも、長項線~群山線接続新線開通の影で、ダイヤを長距離列車や貨物列車に譲る必要が生じてしまったのか、全州~益山~群山間を走っていた、ディーゼル動車による群山線通勤列車まで廃止され、他地域でも通勤列車の廃止が行われている様です。
群山線通勤列車は、手頃に長距離列車とは異なるローカルムード溢れた雰囲気を楽しむ事ができましたし、全州から益山乗換えで湖南線列車へ乗り継ぐにも便利で、本数は頻発する市外バスに比べて大幅に少ないとはいえ、全州~群山間の都市間移動でも最も安く移動できる交通手段でもあっただけに、この列車の廃止は惜しい限りです。
KORAILの長項~群山を結ぶ接続新線、旅客輸送の面では課題も多そうで、今後の改善は不可欠でしょうし、群山線での通勤列車復活にも期待したい所ですが、この新線が今後有効に活用される事を願うものです。
またMAKIKYUも機会があれば是非1度この新線に乗車し、今までとは大きく変貌した長項線の姿も見てみたいものですが、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様は如何感じられるでしょうか?
写真は群山線で走っていた通勤列車(群山駅にて撮影/全州駅にて撮影・既公開記事で公開)と、在りし日の長項駅・群山駅です。
先日「MAKIKYUのページ」で、韓国の鉄道博物館に保存されているディーゼル動車に関する記事を公開した際、水仁線に関するコメントがあり、MAKIKYUも鉄道博物館で撮影した画像を振り返ってみたら、この路線の車両を撮影した写真がありましたので、今日取り上げたいと思います。
水仁線は名前の通り水原~仁川(仁川は現在の仁川駅とは別の場所で、特に京仁線との接続は考慮されていなかった模様)を結ぶ路線で、軌道幅762mmのナローゲージで日本統治下の時代に建設された路線ですが、道路網や路線バスが非常に発達している韓国の土地柄もあってか、1970年代以降は仁川方から路線の短縮が進み、最後に残った水原寄りの区間も95年に廃止されていますが、割合最近までこの様な路線が首都圏(ソウル大都市圏)で走っていた事自体が奇跡的ともいえます。
廃止直前の末期には専らディーゼル動車が用いられていた模様で、機関車牽引の客車列車はいつまで運行されていたのか分かりませんが、かつて使用されていた客車の1両が、水仁線沿線からさほど遠くない場所に立地する鉄道博物館に収蔵されています。
現在韓国(38度以南)で運行されている鉄道は全て標準軌で、ナローゲージが存在しない事は惜しまれますが、鉄道への関心もまだまだという感がある韓国において、過去にナローゲージの路線が存在した事を広く印象付ける貴重な証として姿を留め、容易にその姿を拝める事は有難い限りです。
また韓国では北韓と呼ばれる38度以北のエリア(通称:北朝鮮)では幾つものナローが存在する様ですが、ここはなかなか足を踏み入れる事はできず、仮に行けたとしても、現状では自由に行動できる土地柄ではなく、ナロー路線訪問もまず絶望的かと…
そういった意味では、東アジアの某島国は今でも現役のナロー路線も存在していますし、随分恵まれている様に感じられるのはMAKIKYUだけでしょうか?
先月「MAKIKYUのページ」では、韓国の鉄道博物館(京畿Gyonggi道・儀旺Uiwang市)に保存されている旧韓国鉄道庁(現韓国鉄道:KORAIL)の通勤型車両・1000系電車の初期車両(通称:初抵抗)に関して取り上げましたが、今日は1960年代に日本で製造され、韓国に渡って活躍した旧韓国鉄道庁9100型ディーゼル動車(この形式は晩年のモノで、導入当初は別の形式を名乗っていました)について取り上げたいと思います。
この車両は60年代にソウル近郊をはじめ、韓国各地の非電化線区(導入当初の韓国鉄道庁は全て非電化路線です)でローカル輸送用に使用する為に導入された2エンジン・2扉セミクロスシートの気動車で、川崎車両(現川崎重工業)や新潟鉄工(現新潟トランシス)が製造を担当した事から、韓国でも「カワサキ動車」「ニイガタ動車」などと呼ばれ、鉄道博物館の案内板にもその名称が記されている程です。
その為日本の旧国鉄で同時期に導入され、スペック的に類似したキハ52形とデザイン的にもよく似ており、キハ52形を大陸規格用に大柄にした車両という印象を受けますが、両端に気動車を配して中間に客車を数両組み込むといった日本では考えられない使い方をするなど随分と酷使された事や、韓国では車両使用年数が短く新車導入で次々と置き換えていく傾向がある事から、統一号(現通勤列車)用に9501型都市通勤型ディーゼル動車(CDC)と呼ばれる車両が登場した90年代中頃までは残存していましたが、現在は残念ながら全車が営業運転から退役しています。
ただ現在でも現役を遠のいたとはいえ、鉄道博物館で晩年のピドゥルギ号(「鳩」の意・現在運行されている通勤列車(旧統一号)より更に格下種別の列車で、現在は廃止されています)で活躍した際の紺色とクリームの塗装を纏った美しい姿が見られますし、また随分派手な塗装に改められて現役時代には無かった冷房装置やKORAILマスコットキャラクター「チポチポ」マークの取り付けなどが行われるなど随分姿は変容したものの、鉄道博物館内の短い区間を走る「宇宙観光列車」と呼ばれるアトラクションとして使用されている稼動車両が存在する事は嬉しい事です。
写真は鉄道博物館内の保存車と、宇宙観光列車として使用されている9100型ディーゼル動車です。
写真の車両は全羅南道Jeolla-Namdo・木浦Mokpo市にある湖南Honam線の終点・木浦駅で撮影した光州Gwangju行きの通勤列車Tonggun-Yoelchaですが、この車両は先日取り上げた2種類のどちらとも異なる塗装を纏っています。
また韓国鉄道100周年のステッカーが貼られているのもこの車両の特徴ですが、他の車両と異なるのは塗装だけで、車内設備等は他のCDCと何ら変わりがなく、このCDCの差異と言えば製造時期によって前面窓の支持枠形状が異なる位です。
(気になる方は、以前紹介したCDCの写真と対比してみて下さい)
この塗装は百済の王冠をイメージしたものと言われ、一応全羅道方面用になっていた様ですが、ソウルの近郊で運行している姿を見た事もあります。
また以前紹介した2種類の塗装に比べると見る機会も少なかったのですが、この塗装の車両も中間に他塗装の車両を組み込んで走る事が多く、この写真の列車も中間に他の塗装の車両が組み込まれていました。
CDCのカラーバリエーションはこの他にも海をイメージした青系統の塗装(見かける機会は少ない気がします)などもありましたが、これらは今や思い出の1コマ、それどころか現在この木浦駅で定期的にCDCを見ることすら出来なくなっています。
韓国ではKTXの開通以降、京釜線の様に在来列車の増発余地がある路線もありますし、それ以外の路線でもダイヤ設定を工夫すれば通勤列車の増発・拡充の余地はありそうな気がしますが、最近では増発されないどころか減便・廃止が相次いでいる様で…
今後ソウル都市圏の電鉄化で大量の余剰車両発生も想定されますので、これを機に地方都市圏のローカル列車充実を望みたい所ですが、これはKORAILの現状を見る限りでは厳しそうです。
「MAKIKYUのページ」では昨日・一昨日と2日間、年末年始にかけてMAKIKYUが旅行した際に乗車した昨年開業したばかりの国内新路線に関する記事を取り上げて来ましたが、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方の中には海外関連の記事を期待されている方も居るかと思いますし、MAKIKYU自身も海外ネタを時折掲載して行きたいと思っていますので、今日は新年初の海外ネタとして、韓国鉄道(KORAIL)の僅か1両の客車列車について取り上げたいと思います。
「MAKIKYUのページ」でKORAILを取り上げた記事の中にはローカル列車の部類に入る「通勤列車Tonggeun-Yeolcha」に関する記事もあり、その際には現在運行される殆どの列車はCDCと呼ばれるディーゼル動車で運行され…と記した事があり、CDCに関しては何度か取り上げていますが、例外的に客車で運行される通勤列車が江原道Gangweong-doの山奥・旌善Jeongseon郡を走るローカル線、旌善線で運行されています。
この旌善線は現在甑山Jeungsan~アウラジAuraji間を結ぶローカル線で、起点の甑山で太白Taebaek線と接続し、途中の旌善は市が開かれる事でも有名な所ですが、旌善で市が開かれる日にソウルの清凉里Cheongnyangni駅発着の臨時列車が運行される以外は線内運行の通勤列車が運行されるのみですので当然単線・非電化、韓国屈指のローカル線となっています。
この路線は韓国で最後までピドゥルギ(鳩)号と呼ばれるオンボロ客車列車が残存した事でも知られ、その後も1両だけの旧型客車による統一号が運行された事がありますが、近年は沿線の旌善郡がスポンサーとなり「旌善アリラン遊覧列車」として専用の客車列車が運行される様になっており、これは統一号が廃止されて通勤列車に改められた現在でも運行されていますので、KORAILの通勤列車では唯一の客車列車にもなっています。
この「旌善アリラン遊覧列車」に使用されている客車は、元々ムグンファ(ムクゲ)号で使用されていた特室車を改造したもので、塗装がKORAILの他列車では類を見ない独特の塗装に変更されている他、客室内も既存の座席を撤去し、統一号客車の発生品と思われる転換式クロスシートとカウンター席が設置されていますが、座席数が随分少なく混雑時の対応には難があります。
しかもこの列車の客車は1両だけですので、昨年MAKIKYUが乗車した際は団体ツアーの乗車が押し寄せて立席客が多数という状況が発生し、山奥のローカル線というイメージを覆す有様でしたが、1両だけの客車に対して、ディーゼル機関車1両が牽引する他にセマウル号用の発電車も連結されて計3両で運行されるという何とも非効率極まりないモノです。
こんな編成は隣の某島国では考えられませんが、この編成の発電車までもが専用塗装となっている事には恐れ入ります。
この「旌善アリラン遊覧列車」は趣味的には非常に面白い列車で、通勤列車扱いですので運賃も非常に割安ですので、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様も機会があれば是非…と言いたい所ですが、運行本数が1日僅か3往復に限られ、その上運行区間もソウルなどの大都市からかなり離れる辺鄙な所(列車で片道4時間程度を要します)ですので、KORAILの中ではかなり乗り難い路線の一つです。
また先述の様に団体ツアー客が押し寄せる事もありますので、その際はウンザリさせられますが、この路線の沿線にはさすがバス大国の韓国というだけあり、旌善を境に南北双方で市内・市外バスも運行され、列車の余りの混雑にMAKIKYUも帰路はローカルバスを用いる有様でしたが、こちらは列車より多少割高になりますが本数も多く(それでも1時間に1~2本程度ですが…)、往復で列車とバスを乗り比べて見るのも面白いかもしれません。
ちなみにこの「旌善アリラン遊覧列車」は写真で見る限り、塗装の状態などがかなり悪くなっていますが、その後ネット上で見た情報では白一色の塗装となっているモノなどもあり、現在どのような塗装で列車が運行されているのかも気になります。
(もし最近この列車に乗車された方が居りましたら、コメント等で情報を頂けると幸いです)
「MAKIKYUのページ」で以前、韓国鉄道(KORAIL)のムグンファ号を紹介した際には大半の列車は客車列車で…と記しましたが、ごく一部でディーゼル動車(気動車)が使用されており、今日はその少数派車両に関して取り上げたいと思います。
その車両は9211型(NDC:New Diesel Car)と呼ばれる車両で、この車両は1980年代に製造され、日本の京成旧スカイライナー(AE形)とよく似た前面が印象的です。
このNDCが運用される列車は現在、韓国南部の大邱Daegu~晋州Jinju間を走る一部のムグンファ号に4両編成で運行される列車のみと激減していますが、比較的最近まで東大邱Dondaegu~蔚山Ulsan間の列車でも使用されていました。
またKTX運行開始前は釜山Busan~馬山Masan間などの列車でも使用され、2~3両編成で運行される列車もありました。
車内は以前に取り上げたムグンファ号用客車とグレードは大差なく、現在は2人掛けの回転式リクライニングシートが並んでいて結構快適ですが、車体長の関係もあって、座席定員は客車より若干少な目となっています。
気動車という事で、客車列車と異なり走行中はエンジン音が車内に響き渡りますが、セマウル号動車の先頭車の様に振動だけが凄まじく…という訳ではなく乗り応えがあり、動力分散方式王国・日本の鉄道を日頃利用しているMAKIKYUにとって親しみを感じる車両ですが、運行区間や列車が限られる事もあり、MAKIKYUもまだ2回しか乗車できていません。
しかもNDCは韓国の鉄道車両使用年数が短い(概ね25年程度)事もあり、既に古参格で老朽廃車も発生(他に事故廃車も発生しています)しており、これからも廃車が出る可能性は充分に考えられる状況です。
本来なら狭い韓国の事なので、このNDCの様な車両をもっと活用し、地方都市間の細かなサービスを充実させて欲しいとMAKIKYUは思うのですが、いつまで走り続けるかも分らない状況ですので、乗車されたい方は早めの乗車をオススメします。
ちなみに写真は今年夏にMAKIKYUが大邱~馬山Masan間を乗車した際、慶山Gyeongsan駅で退避待ちの間に撮影したモノですが、現在この車両で運用される列車は大邱を朝に出発し、晋州までの間を往復する列車2往復に使用されるのみの様で、大邱~晋州間のムグンファ号列車でも半数は客車で運行されます(MAKIKYUもNDCを狙い、一度見事に玉砕しました)ので、この車両を狙われる方は注意が必要です。
なおKORAILの車両運用状況に関しては突然前触れ無く変更される事があり、以下のHP(韓国語のみ)で検索可能ですので、乗車される際は事前にこの車両(車両番号が9200~9400番台です)が運用されているか否かを確認し、事前に調べてから行かれた方が良いと思います。
鉄道物流情報システム http://logis.korail.go.kr
(リンク集2-2にもリンクがあります)
写真のCDCは、以前MAKIKYUが鎮海Jinhae線通勤列車に乗車した際に、慶尚南道Gyongsang-Namdo鎮海市の鎮海駅停車中に撮影したもので、特徴ある花柄の塗装を纏っていますが、今ではこの車両自体ここで見かける事も出来なくなっています。
(今月のダイヤ変更以降、鎮海線では通勤列車に変わってセマウル号が運行されています)
この花柄の塗装も、以前紹介した旧統一号タイプの塗装と同様によく見られた塗装で、写真の様に全車が同じ塗装で組成されていると見栄えも良いのですが、必ずしも同じ塗装の車両同士で編成を組む訳ではなく、先日紹介した塗装やその他の塗装の車両と混結されて運行している姿もよく見かけました。
またこの車両に限った事ではありませんが、かつての韓国国鉄のマーク(前面に跡が伺えます)を剥した後が目立ち、後から新しいKORAILのロゴなどを貼り付けた車両が多数走っていましたが、これも既に思い出話です。
「MAKIKYUのページ」では以前、現在は専ら「通勤列車Tonggeun-Yeolcha」で使用される韓国鉄道(KORAIL)の9501型ディーゼル動車[CDC]について取り上げましたが、今日は最近になって塗装が変更されたCDCについて取り上げたいと思います。
以前は先日取り上げたCDCを含めて幾つかの種類の塗装が存在し、中には複数の塗装が入り乱れて編成美は…といった編成も見られましたが、現在は白をベースに窓周りがグレー、そしてドア部分や前面がKORAILの新しいコーポレートカラーになっているブルーと通勤列車のカラー(?)とでもいう黄緑色に塗られた、首都圏電鉄新塗装と類似した塗り分けパターンのCDC新塗装に塗り替えが進み、各種の旧塗装はあっという間に見られなくなっています。
また以前このCDCを取り上げた際には文章で少々言及しただけの車内の様子ですが、こちらもクロスシート部分が転換式に改められた後の画像を掲載しておきます。
この車両はカミンズ製350PSエンジンを搭載(先頭車は1台・中間車は2台)していて加速も悪くなく、転換式クロスシート部分のピッチもそこそこで、この座席だけなら狭くて方向が変えられない高速列車KTXの一般室座席よりずっと良いと感じます。
ただ台車が良くないのか走行中の騒音や振動が激しく、また化粧版が難燃化改造前の地下鉄車両と同程度の安物のままですので、こういった点が改善されればかなり上等な車両なのではと感じます。
それでも通勤列車の運賃は韓国の物価を考慮すると激安で、これでも上等すぎる車両であると思いますが、一部の路線を除くと運行列車がかなり限られますので、増備はなくともせめてCDCの稼働率を上げて頂ければ有難いものですが、最近行われたダイヤ改正(改悪?)では通勤列車の運行区間・本数が削減されており残念な限りです。
ちなみにこの新塗装に改められたCDCの写真は、今年夏にMAKIKYUが全羅北道Jeolla-Bukdoの群山Gunsan~益山Iksan~全州Jeonju間を3両編成で走る通勤列車に乗車した際に終着の全州駅で撮影したもので、この一帯はソウル近郊(ここが一番多いです)や大邱Daegu線と並び、通勤列車が多数運行される地域となっています。
(それでも一日に10往復に満たない数ですが…)
CDCは90年代中頃~終わりにかけて製造されたディーゼル動車(気動車)で、幅の狭い両開き式の扉が各車両に2箇所設けられ、車内はクロスシート(かつてはボックスだったものを順次転換式に交換)とロングシートを組み合わせたセミクロス配置で中距離乗車とラッシュ輸送の両立を考慮しており、現在ソウルSeoul近郊をはじめ、釜山Busan・大邱Daeguなどの慶尚Gyongsang道方面や全羅Jeolla道など各地で通勤列車として活躍しています。
このCDCは片運転台の先頭車(9500番台)が編成の両端に連結され、中間に運転台なしの車両(9600番台)が1~3両組み込まれる3~5両の編成で運行されていますが、単行や2両編成で活躍する事が多い日本の一般型気動車に比べると機動性に欠けるのが難点で、ローカル線区でもワンマン運転等は行われていません。
このCDCは現在は1種類の新塗装で統一されていますが、比較的最近まで幾つもの塗装が見られ、写真も以前乗車した際に河陽Hayang駅で撮影した登場当時の統一号塗装を纏ったタイプのものです。
ただ車両自体のバリエーションはさほどなく、せいぜい前面の窓ガラス中央のピラー有無や、客室内の座席程度(これももう交換が終わっているかもしれませんが…)です。
CDCのカラーバリエーションについては、また別の機会に紹介したいと思います。
また以前掲載した統一号~通勤列車に関する記事(10月21日掲載)は以下のアドレスです。
http://blog.goo.ne.jp/makikyu/d/20061021