MAKIKYUは何度も足を運んでいる韓国では、現在KTX(高速列車)がKORAIL(韓国鉄道)における花形列車として有名な存在で、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方の中には、ご存知の方も多いかと思いますし、中にはKTXに乗車した事がある方も居られるかと思います。
このKTXは2004年春に運行を開始し、その後も高速新線区間の延伸や運行区間延長、新タイプ車両(KTX-山川)登場などの発展を遂げて現在に至っています。
このKTXが開業する前の韓国鉄道は、最重要幹線の京釜線(ソウル~釜山)でも非電化区間が大半を占め、列車線の各列車はディーゼル機関車牽引による客車列車やディーゼル動車列車が大半、21世紀に入った2000年過ぎの釜山駅でも、電車や電気機関車の姿は皆無と言う状況でした。
MAKIKYUが初めて海外に足を伸ばしたのは2002年、その時も福岡から高速船(その頃はJR九州直営だった「BEETLE」)で釜山に入り、その後韓国内各地を周遊したものでしたが、その際に列車線で初めて乗車した列車が、当時の韓国鉄道庁(韓国国鉄→現KORAIL)の花形的存在だったセマウル号でした。
セマウル号は車両の老朽廃車などによって、運行本数は減少傾向にあるものの、現在でもKORAILの一部路線で運行しており、日本の特急グリーン車並みの非常に豪華な設備を誇りながらも、比較的割安な運賃で利用できる列車として支持されています。
(設備的には車両による差異は殆どないものの、座席モケット柄などに複数のバリエーションが存在しています)
このセマウル号の充当車両は専ら動力集中方式を採用(運行開始から間もない1980年代などは、現在は存在しないタイプのディーゼル動車も走っていた様です)し、KORAILの列車線ホームは高さが低い事から、乗降口もバスの如く何段かのステップが存在しているなど、動力分散方式の電車・気動車が主流を占め、高床ホーム採用でステップなしか、僅かなステップが存在する程度という某島国の列車とは様相が大きく異なります。
一般列車でも線路幅は標準軌(線路幅1435mm)で車両も一回り大柄、列車本数も比較的多く、現地入りしてからの乗車券購入も比較的容易であるなど、海外の鉄道としては最も手頃に乗車できる列車の一つでありながらも、異国の鉄道・大陸の鉄道ならではの雰囲気を存分に堪能できるのも有り難いものです。
また動力集中方式を採用しながらも、機関車牽引による客車列車だけでなく、前後に専用の動力車を配したディーゼル動車編成も存在し、こちらが最盛期における主流派を占めていたのも大きな特徴で、この車両はDHCやPP(プッシュプル)動車などと呼ばれています。
MAKIKYUが初めてセマウル号に乗車した際も、PP動車の方に当り、この車両は個人的には海外鉄デビューと言う意味でも記念すべき存在です。
その時には今はなき食堂車(現在はカフェ車に改装され、韓国の定期旅客列車での食堂車営業は廃止されています)でコムタンを注文したのも思い出話です。
その後もMAKIKYUは何度も韓国へ足を運び、KORAILを利用しているだけあって、このPP動車によるセマウル号には幾度も乗車しています。
エンジンの振動などでお世辞にも快適とは言い難い両端の流線型動力車端にある僅かな区画の客室(車端に座席5列=定員20名)にも2回程当たっていますが、余り芳しくないと感じたこの車両への乗車
(さすがにKTXの両端に連結されている動力車よりはマシですが…)も、今となっては懐かしの思い出話です。
しかしながら最近になってPP動車の運行は激減し、流線型の先頭車(動力車)ばかりが何両もソウルの龍山(Yeongsan)にある車両工場の側線片隅に留置されていたり、PP動車編成ながらも機関車に牽引され、動力車はエンジン非稼動状態で運行に充当されているといった異様な姿を目撃しており、そろそろPP動車の運行も…と感じていました。
そのためMAKIKYUが昨年夏に韓国へ足を運んだ際には、釜山~首都圏(ソウル市内)間を移動する際に、本数の多いKTXやムグンファ号ではなく、わざわざセマウル号を狙って乗車した程です。
そのお陰でこの時は、随分早い時間に釜山を出発(6時25分発)する羽目になり、写真は乗車したセマウル号車内の案内モニター表示です。
セマウル号PP動車はソウル五輪終了後~KTX開業前の1990年代~2000年代初頭における韓国鉄道の花形的存在で、この頃の京釜線では8両編成程度のPP動車によるセマウル号が昼間はほぼ毎時走っていました。
それも2編成併結による長編成運行も常態化しており、一部は途中駅で2方向に分割する列車も存在するなど、韓国鉄道の一時代を代表する存在と言っても過言ではありません。
これだけの車両ですので、某島国なら全面退役ともなれば大々的に告知され、お別れ記念イベントや多数のグッズ類発売などが催されるのは確実で、現に比較的近年引退した新幹線100系・300系などがその代表例です。
しかし特に告知もなく、今月セマウル号PP動車の運行はあっさりと運行終了を迎えてしまい、今ネット上では本国よりも外様と言える某島国の方が、この事で大きな話題になっているのでは…と感じる程です。
昨年わざわざセマウル号のPP動車充当列車を狙って乗車した価値は充分あったと感じていますが、あっけない幕切れとなる辺りは、僅か200km程度の玄界灘を隔てただけでも、鉄道を取り巻く状況が大きく異なる事を示していると言っても過言ではありません。
PP動車の運行が終了となっても、中間車は機関車に牽引される客車として運用する事も可能で、運用上それでも特段の問題が生じない事も、特別な告知なしであっさりと退役してしまった一因かもしれませんが、最後の餞に登場当時の装いを再現したリバイバル塗装車の運行などがあっても良かったのでは…と感じます。
MAKIKYUは登場当時の赤と青色の装いだった頃は知らない身ですが、現行塗装になる前の「中期色」とも言えるKTX開業前後の20世紀末期~21世紀初頭にかけての装いを纏ったセマウル号には何度も乗車しており、初めてのセマウル号PP動車乗車=海外鉄デビューもこの車両でした。
現行塗装への塗り替えが進む過渡期には、2色の車両が入り乱れた編成が多数見受けられ、また流線型のPP動車も製造メーカーの際などで、前面形状に複数の形態が存在していたのも大きな特徴でした。
中間の客車はまだ暫くの間活躍が見込まれるかと思いますが、PP動車の韓国鉄道における功績は大きく、今後鉄道博物館などへの殿堂入り(保存)などで、その功績を後世に伝えて行く機会が生まれる事を願いたいものです。
「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方の中には、セマウル号PP動車に乗車された事がある方も多数居られるかと思いますが、今月のあっけない引退劇だけに限らず、セマウル号PP動車充当列車に乗車された際の思い出話などありましたら、是非コメントもどうぞ。