八幡さまの平家池の畔に建つ県立近代美術館の鎌倉館がいよいよ、来年1月には閉館する。八幡さまとの借地契約満了のためというが、それは唯の言い訳で、県予算の経費削減の一環だろう。たしかに葉山館があって、鎌倉別館があり、比較的、恵まれているとはいうが、”文化の後退”は、さびしいことだ。
同美術館は1951年の創立で、これは日本最初の公立近代美術館なのだそうだ。調べてみると、竹橋の国立近代美術館は翌年の1952年に出来ている。歴史的な美術館なのである。加えて、鎌倉館は著名な建築家坂倉準三の設計で、建物だけでも残して欲しいという声が強かったが、残すことに決まったようだ。
旧歌舞伎座のさよなら公演が1年かけて興行されたように、鎌倉館も最終年にさよなら展覧会を三期に分けて開催する。題して”鎌倉からはじまった。1951-2016”。そのPart1を、鎌倉まつりがはじまった4月12日に観に行ってきた。
鎌倉別館が開館し、二館体制になった1985年から、葉山館が開館して三館体制になってから現在までの鎌倉館で開催した展覧会を取り上げている。以下に、その要約を当館の案内から。この時期は、テオドール・ジェリコー、オットー・ディックス、ジョルジョ・モランディなど海外作家の大規模な展覧会と並行して、日本の近代美術の回顧展や独自の視点によるテーマ展などを積極的に開催しました。また、活躍中の作家を取り上げた「今日の作家たち」シリーズは、1988年から2007年までに11回を数えます。さらに、日本の近代美術の海外への発信が活発になったのもこの時期の特徴であり、海外の美術館や研究者との共同企画による「ジョン・ラスキンと近代日本」、「モボ・モガ 1910-1935」展が開催されました。
鎌倉館では、平面作品として、三岸節子、横尾忠則、加納光於、池田満寿夫、野中ユリ、朝井閑右衛門、斎藤義重らの作品が一点ずつ展示されている。後半に西脇順三郎展示コーナーがあり、面白くみさせてもらった。ノーベル賞候補にもなった世界的詩人だが、絵筆も握る。どこかの文学展ではじめて絵画作品をみたときはおどろいたものだが、1994年に当館で”西脇順三郎展”も開催されたそうだから、相当な腕前ということだろう。”詩集あんどろめだ”、”近代の寓話”、”旅人かえらず”の初版本が置かれ、その横に”九月”(ピンク色の画面や白い山からは9月というより春の雰囲気)、”マラルメの扇”そして、”キリストの変容 ― マタイ伝第17章” (シャガール風という印象を受けた)。飯田國;西脇順三郎の”クロマトポイエマ”は、西脇の英詩を画面に散りばめ、飯田がアルファベット文字をそれぞれに決めた色で置き換えるというもの。クロマト(色)とポイエマ(詩)というわけ。楽しい作品だった。
鎌倉別館では日本画特集で、お馴染みの画家が多く、素直に楽しめる(笑)。清方、青邨、蓬春、遊亀、松篁、深水、辰雄、荘司福、そして、片岡球子。球子は”剃髪”と”徳川家康”の二点。
鎌倉別館はこれまでも、結構、面白い小展覧会が開催され、随分、楽しませてもらった。ここは残るので安心している。さよなら展に二期つづけて行くと、三回目は無料となるので、是非、三回制覇して、鎌倉館とお別れしたい。
鎌倉館
鎌倉別館
剃髪 (片岡球子)
鎌倉館をつぶした責任者も、頭をまるめてほしい。