まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

細倉鉱山近代化産業遺産見学

2008年11月17日 | 旅行記B・東北

時刻表検定試験の受験地を仙台ということにしたが、ちょうどJRで「仙台・宮城ディスティネーション」というのをやっている。駅にもパンフレットが置かれていたので回るところを物色する。最初はこの秋に陸羽東線に登場した「みのり」号と鳴子温泉を絡めて・・・と思ったのだが、あいにくと指定席券は秒殺で売り切れており(だからいやなんですね・・イベント列車って)、こちらは断念。

すると、同じ県北エリアで「細倉マインパーク」というのを見つける。昨年まで栗原電鉄(後には「くりはら田園鉄道」に名を変えたが、「くりでん」の愛称で親しまれていた)が走っていたところで、鉱山めぐりというのも面白いかと思う。ちょうど現在の細倉金属鉱業の施設や坑道跡などが「近代化産業遺産」として認定されたとあり、事前の予約により見学者を受け入れているとのこと。問い合わせたところOKをいただき、これで予定は決まった。古川駅からレンタカーで細倉に向かい、その後は現地で決めることとしよう。

Pb154143古川駅から1時間弱で細倉鉱山に到着。交差点には「近代化産業遺産認定」の看板が立ち、その一角には旧くりでんの終点、「細倉マインパーク前」駅がある。細倉鉱山で採掘された亜鉛鉱を東北本線の石越まで運ぶために敷かれた路線であるが、ご多分に漏れず鉱山の閉山→人口の減少→利用者の減少→赤字に苦しむ→廃止という流れをたどったもの。

Pb154144ただこのマインパーク前駅、扉に鍵はかかっているものの、駅舎はまだ残っている。それだけではなく、古い機関車やホーム、そして線路まで残っている。これは残しているのか放置しているのかはわからないが、これも「近代化遺産」なのかなと思う。しばし線路の上を歩いて、結局乗車する機会のなかった鉄道の風景を空想する。

Pb154150約束の時間になり、細倉金属鉱業を訪ねる。応対してくれたのは総務課の方で、見学者は私一人。午後からは観光バスの団体が来るとのこと。普段は同社のOBの方がガイドをされるそうだが、私が訪れたときは地元テレビ局の番組収録があったために、総務課の方の案内となった。「栗原もあの地震で温泉がやられたから、こういう遺産をいろいろとPRしているんです」という。そういえば、この地域を襲った岩手・宮城内陸地震というのは今年の話だった。日夜さまざまな出来事が起こる中、この地震が起きたのが随分前のことのように思っていたのは恥ずかしい限りだ。

栗駒山の麓にある温泉地は大きな被害があったが、細倉鉱山のあたりは岩盤でできているために地震の揺れも大きなダメージにはつながらなかったという。ただ、三ヶ所ある自社用の水力発電所の一つが、周囲の土砂崩れで操業を停止しているという。

Pb154157時代を感じさせる事務所建物に招じられ、入り口に「近代化産業遺産」の認定証が飾られているのを見た後に、建物の中で同社の歴史を案内してもらう。細倉鉱山は平安時代に発見され、江戸時代には亜鉛の鉱山として仙台藩の財政を支えたという。明治になり所有者が変わる中で最後は三菱の経営となり、閉山後は分社化され亜鉛の精錬などを行う工場として稼動している。最近では自動車のバッテリーのからの鉛のリサイクルが主要業務で、環境保全にも一役買っているとか。こうした施設見学や、鉱山のハゲ山への植林活動もそうした活動の一環とのこと。

Pb154159ヘルメットをかぶって場内を歩いて回り、バッテリーのリサイクル工程や鉱廃水処理の工程(閉山後も鉛を含んだ地下水が湧き出ており、これを処理するのも事業の一つ)の説明を受けた後、クルマで裏手の鉱山に移動する。この山を舞台に植林活動を行っており、ところどころに若い木々が見える。

Pb154170工場を見下ろす景色はなかなかよいものである。ただ残念だったのが、ちょうどテレビ局のクルーが来ており、OBの方が説明をする場面を何回もカメラを回しながら撮影していたため、じっくりと見ることができなかった。その代わりというわけではないが、見学者が私一人のため、工場のさらに奥にある昔の採掘跡に案内していただいた。クルマ一台がやっとという道幅で、バスでやってくる団体客は入れないというところ。昔の手堀の名残を残す「たぬき堀跡」や、鉱山の守り神である「山神社」を案内していただく。見た目では小さなお堂だが、現在も毎年の仕事初めの日には社長などが安全祈願を行うという。

1時間半ほどのコースで案内していただき、工場を辞する。近代化産業遺産の説明もだが、「公害」と結び付けられやすい産業ならではの環境活動の説明というのも、現地に来て初めて知ったことで思わぬ収穫となった。この後で「細倉マインパーク」に行こうかとも思ったが、ナマの話を聞いた後でテーマパークというのもな・・・と、パスすることに。その代わり、説明の中にも出てきたのだが、映画『東京タワー』のロケ地となった細倉鉱山の旧佐野社宅にオープンセットが保存されているというので、そちらをのぞくことにする・・・・。

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