横浜に行ってみようと思う。目的地は横浜・日本大通りから馬車道にかけてのエリア。ここにある近代歴史遺産の建造物を見て回ろうというものである(中華街とか山の手エリアは今回はパス)。最近の「ヘリテージング」というのが話題になってから訪れるのは私自身初めてではないだろうか。
みなとみらい線の日本大通り駅に現れる。この線も開業して5年、今ではすっかり横浜観光のメイン路線となっている。
さてここから建造物めぐり・・・ということで、日本大通り駅の真上にある「横浜都市発展記念館」へ。ここは昭和初期の「旧横浜市外電話局」を保存活用したという。正直、この建物の存在は知らなかった。
ここでは横浜の都市形成や都市生活についての展示がなされているが、このほかに企画展で「横浜ステーション物語」というのをやっていた。日本で初めて鉄道が敷かれたのは新橋~横浜間であるが、その横浜駅も鉄道や都市の発展とともに場所も変わりながら(初代の横浜駅は、現在の桜木町駅のあたりという)、横浜の街を見続けてきたという。当時の資料を見ながら現在のJR線、私鉄線の前身となる鉄道線を確認するのも面白い。目を引いたのは「近い・早い・安い」と、当時の「省線」と徹底比較することで競合意識をむき出しにした東京横浜電鉄(現在の東急東横線)のポスター。もちろんこの企画展の存在も事前には知らなかったから、思わぬところでの収穫である。
日本大通りに出る。ちょうどイチョウ並木が鮮やかに黄色く色づいている。カメラを構える人のほか、スケッチブックを広げて写生にいそしむ人たちも多い。歩道の幅も広く、ゆっくりと腰掛けて筆を取るにはもってこいのロケーションである。
その中にあるのが「神奈川県庁本庁舎」。中央の塔は「キング塔」という、どっしりとした感じの造りの建物である。どこか西洋の宮殿を思わせるような風格である。最近の庁舎は近代的なビルが多いが、こうした建物のほうが「役所」としての威厳(庶民にとっては高圧的?)が感じらるように思う。もっとも今はこうして観光名所となっているが・・・。
少し歩くと「横浜税関庁舎」。ここにはイスラム風の丸いドーム状の塔があり、こちらは「クィーン塔」の名前がある。玄関は海のほうを向いており、さすがは海の玄関である税関らしい。薄い色合いの壁が、異国情緒をも漂わせる。
さらに歩いて、「横浜開港記念会館」へ。横浜の時計台とでも言おうか。こちらは「ジャック塔」。普段は中のホールも公開しているようだが、本日はイベントで貸切になっており玄関口までしか入れなかったが、建物の外観を見るだけでもうなるばかりである。キング・クィーン・ジャック、それぞれ独特の味わいがある建物である。
いつしか馬車道まで出る。この道に沿って「旧横浜正金銀行本店本館」がある。こちらもイスラムのモスク状の屋根を持つ重厚な建物。関東大震災の時にも耐えたという。うーん、昔ながらの銀行の建物というのも威厳があるもんですな・・・。
もっとも現在は神奈川県立歴史博物館として、神奈川県内から出土された土器・石器類、中世都市・鎌倉、近世の東海道を中心とした庶民文化、横浜開港からの近代化・・・と、神奈川県の歴史が資料も豊富に展示されている。こちらも興味深く回ることができ、結構長い間滞在してしまった。
横浜というところ、これだけ多くの近代歴史建造物が残っているのはどうしてだろうか。これは街の気質とでもいうものだろうか。いや横浜に限らず、函館、神戸、呉、門司など、港町にはなぜかこの手の建物が多く残っているように思う。とすれば、海に生きる街の人たちの思いというか、「海外的なもの」への憧れとでもいうものだろうか。
やはり海を見たい、ということで、海岸のほうに向かって再び歩く・・・・。