名松線の終着駅・伊勢奥津。3月に運転再開した区間の乗車を楽しんだ後、せっかくだからと、駅前に停まっていた津市が運行する臨時無料バスに乗る。終着駅のさらに先に行けるとは旅の思わぬ面白さである。
ただ実は、このバスがあることについては、当日の朝にホテルで朝刊を読んでいた時に、地方面に載っていたのをちらりと目にしていた。津市のホームページでは数日前から告知していたようだが、そうした情報に触れることはなかったし、北畠神社とか多気(たげ)の集落の存在自体これまで知らなかった。
2台合わせて7~8人の乗客で伊勢奥津から出たマイクロバスは、10分ほどで道の駅美杉に到着する。ここでしばらく停車した後、北畠神社に向かう。途中、大和の長谷寺から伊勢神宮に向かう伊勢本街道の宿場町と交差する。この多気は、伊勢奥津の次の宿場である。
北畠神社に到着。折り返しのバスは1時間20分ほど後だが、この辺りを散策しながら道の駅まで戻り、そこでバスに乗るのが効率的だろう。パンフレットでは神社の奥の山上に霧山城跡というのがあり、歩いて往復1時間半のコースだという。バスは列車ダイヤに合わせておよそ2時間おきに運行されているので、もう一本後に乗るつもりなら山城に登るのもいいだろう。でもまあ、町を歩いて折り返しのバスに乗るのがちょうどよさそうだ。
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神社の鳥居の写真を撮っていると、「お話しよろしいですか?」と声をかけられる。先ほど伊勢奥津の駅にいたカメラマンと記者らしき二人組である。「三重テレビなんですが、バスの感想などお聞きしたいので」と言われる。私でいいのかなとも思うが、せっかくなのでお受けした。テレビのインタビューを求められるのは、人生2回目のことである。鳥居をバックに撮りましょうと言われ、その前に立つ。
訊かれた内容は、「どこから来たのか」からはじまり、「津市がこのバスを走らせるのは知っていたか」「こうした試みについてどう思うか」「また乗ってみたいか」というもの。バスの存在を知ったのはつい先ほどのことだが、バスがあったから多気や北畠神社の存在を知り、訪ねることができた。こういうバスにはまた機会があれば乗りたい・・・ということを少しお話しした。取材の内容からすれば三重テレビのローカルニュースとか、津市の広報番組というところだろう。ただ大阪では三重テレビは見られないので確かめようがないが。
さて参拝である。神社が建つのはかつて北畠氏の館があった場所である。霧山城は合戦時の拠点で、平時は館にいたのだろう。南北朝時代にこの地に拠点を置いたのは北畠顕能という人。南北朝の戦いで名前が出る北畠親房の子であり、北畠顕家の弟である。親房は「神皇正統記」を著すなど南朝のブレーンだったし、顕家は足利尊氏らと何度も激戦を繰り広げた末に討ち死にし、北畠といえばガチの南朝方である。その中で顕能も伊勢を拠点に南北朝時代の後半は南朝方の中心として北朝に対抗していた。ただ、彼の死により軍事的中心を失った南朝方は強硬路線から和平路線に転換せざるを得なくなり、その9年後に南北朝統一ということになった。
室町時代といえば北朝方の守護大名が全国に勢力を伸ばしたが、その中にあって伊勢は南朝方の顕能の家系が長く治めていた。ゲームの「信長の野望」では、伊勢を領有している大名として北畠具教というのが出てくるが、彼は顕能の末裔である。最後は織田信長により倒される。
北畠神社は顕能を祀る神社であるが、その境内にある像は顕家のもの。まあ、こちらのほうが有名だし、顕能という人の名前は、私も当日ここに来て初めて目にしたくらいである。祭神としては顕能をメインとして、サブに親房・顕家を祀るように置かれている。
拝殿にて参拝。拝殿そのものは小ぢんまりとしたものだが、地元の人たちには広く親しまれているような感じである。
拝殿の脇に「建武中興十五社」の立札がある。建武中興に力を尽くした人物を祀る十五の神社である。いくつか並べると、吉野神宮(後醍醐天皇)、八代宮(懐良親王)、湊川神社(楠木正成)、藤島神社(新田義貞)、阿倍野神社(北畠親房・顕家)、四条畷神社(楠木正行)といったところが並ぶ。十五社そのものはいずれも現在では由緒があり広く親しまれているところなのだが、この旅行記を書く中でネット記事をいろいろ見ると、十五社のほとんどは明治以降に神社として創建されたものだとわかる。中には寺の一角にあったお宮が、例の神仏分離・廃仏毀釈の施策により神社化・神格化されたものもある。その中にあってここ北畠神社は、江戸時代の初期・寛永年間の創建ということで最も古い。元々地元ゆかりの人を祀っていたのが、明治になってさらに祭り上げられたといったところだろう。
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北畠神社の一角には北畠氏館跡庭園がある。顕能から時代は下って室町後期に、北畠晴具の義父・細川高国によって築かれたという。ここは有料エリアで、社務所で見学券を購入して、木戸を押して入る。時期として新緑に向かうところで、緑が鮮やかである。紅葉の時期はもっと美しいだろうと思う。自然の地形を武士らしく素朴に活かした造りとされているが、石の配置や川の流れも、伊勢の山奥(失礼!!)にいるとは思えない。この神社と庭園を見に来ただけでも、時間をつくって臨時バスに乗っただけの価値はあった。
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帰りはひとまず道の駅まで歩くことにする。来る途中の道にあった美杉ふるさと資料館を見学する。資料館は二重の円周ゾーンになっていて、外周では美杉の自然や、現在の美杉に直接つながる民俗史料が並ぶ。民俗史料そのものはあちこちにあるもので、農業、川での漁業、そして林業で使われたさまざまな道具が並ぶ。個人的に目を引いたのは、昭和20年代か30年代だかの相撲の巡業のポスター。横綱・東富士を中心に朝汐や松登といった名前が並ぶから、高砂一門の巡業である(当時は今と違って一門別で巡業を行っていた)。
内側のゾーンでは顕能に始まる伊勢北畠氏の歴史紹介で、霧山城下の絵図なども展示されている。伊勢の中心といえば現在の県庁のある津や、ここから近い松阪といった平野部のイメージがあるが、中世の頃は守りのことも考えてこうした山の中というのがあったのだろうか。まあ、吉野や京都に出ることを考えれば、なるべくそちらにも近いほうが有利だったのかもしれない。
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この多気は伊勢本街道の宿場町である。奈良から長谷寺を経て伊勢神宮に向かうものだが、地図によれば長谷寺からはほぼ真東に山の中を突き抜ける感じである。現在のルートでいえば国道369号線、368号線などの道路があるが、難所ルートと言われている。そのせいか鉄道はこのルートを避けて北側の街道に沿うように造られた。多気には昔の宿場町風情を残す町並みや常夜燈が残されている。
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ちょうど5月、川を挟んで鯉のぼりが青空を泳いでいる。1時間あまりの散策だったが、なかなか良いところだった。臨時の送迎バスは連休期間の5月8日までの運転とのこと。エリアは違うが、運転再開直後は桜の時期ということもあって、「三多気の桜」を見る臨時バスも出ていた。今度は先ほどの北畠氏館跡庭園の紅葉を目当てに・・・というのもあるかもしれない。ただ、行った先でバスが手持ち無沙汰なようにも見えたから、往復型もよいが美杉地区のスポットを巡回型で回るルート設定もいいかなと思う。
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道の駅に到着し、簡単な食事と土産購入の後でやって来た帰りのバスに乗る。伊勢奥津駅に戻るとちょうど次の列車が到着したところで、駅前には先ほどよりはるかに多い観光客の姿があった。私たちと入れ替えでバスに乗り込むが、あっという間に2台とも満席になったようだ。一方ホームでは、今から気動車を出ようという人もいる。ワンマン運転で、伊勢奥津でも出口は運転手後ろの一ヶ所だけのため、処理に時間がかかっているようだ。キハ11の2両編成だが、すし詰め状態だったのではないだろうか。
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これからの予定では、この列車に乗ってどこかの駅で途中下車する。それまでの間、伊勢奥津の駅前をしばらくぶらついたのだが・・・・。
ただ実は、このバスがあることについては、当日の朝にホテルで朝刊を読んでいた時に、地方面に載っていたのをちらりと目にしていた。津市のホームページでは数日前から告知していたようだが、そうした情報に触れることはなかったし、北畠神社とか多気(たげ)の集落の存在自体これまで知らなかった。
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北畠神社に到着。折り返しのバスは1時間20分ほど後だが、この辺りを散策しながら道の駅まで戻り、そこでバスに乗るのが効率的だろう。パンフレットでは神社の奥の山上に霧山城跡というのがあり、歩いて往復1時間半のコースだという。バスは列車ダイヤに合わせておよそ2時間おきに運行されているので、もう一本後に乗るつもりなら山城に登るのもいいだろう。でもまあ、町を歩いて折り返しのバスに乗るのがちょうどよさそうだ。
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訊かれた内容は、「どこから来たのか」からはじまり、「津市がこのバスを走らせるのは知っていたか」「こうした試みについてどう思うか」「また乗ってみたいか」というもの。バスの存在を知ったのはつい先ほどのことだが、バスがあったから多気や北畠神社の存在を知り、訪ねることができた。こういうバスにはまた機会があれば乗りたい・・・ということを少しお話しした。取材の内容からすれば三重テレビのローカルニュースとか、津市の広報番組というところだろう。ただ大阪では三重テレビは見られないので確かめようがないが。
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室町時代といえば北朝方の守護大名が全国に勢力を伸ばしたが、その中にあって伊勢は南朝方の顕能の家系が長く治めていた。ゲームの「信長の野望」では、伊勢を領有している大名として北畠具教というのが出てくるが、彼は顕能の末裔である。最後は織田信長により倒される。
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拝殿にて参拝。拝殿そのものは小ぢんまりとしたものだが、地元の人たちには広く親しまれているような感じである。
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