まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第21番「神呪寺」~新西国三十三所めぐり・10(是大神呪、融通小判)

2016年05月23日 | 新西国三十三所
甲山森林公園を抜けると目指す神呪寺の山門に出る。ここの造りは変わっていて、山門と石段の間に甲山大師道が通っていて、信号もなくクルマの通行量が多い。何でまたこのような構造になったか。

神呪寺が創建されたのは、今からおよそ1200年前の831年とされている。当時の淳和天皇の妃であった眞井御前が空海の協力を得てこの地で3年の修行をして、その後に空海から剃髪を受けて如意尼と呼ばれるようになった。この方は如意輪観音を篤く信仰しており、神呪寺の本尊の如意輪観音像は、如意尼の姿を写して空海が刻んだとされている。大和の室生寺、河内長野の観心寺と合わせて日本三如意輪と称されているが、現在では「融通観音」として、家運繁栄・商売繁盛のご利益をもたらすとして多くの参詣者が訪れる。

その如意輪観音は普段は秘仏で、年に一度、5月18日のみ開帳されている。私が訪れたのは21日のことで合わなかったのだが、平日は仕事のこととて仕方がない(もっとも、5月18日は朝の6時から本堂を開けているそうだから、その気になれば早朝に拝むことはできる)。

その代わりと言ってはアレだが、毎月21日は月例の弘法大師の縁日例祭が開かれている。本堂横の大師堂で、1日3回護摩祈祷が行われることになっている。先の記事で「時間配分の関係で、先に甲山の頂上まで行き、その後にお参りしよう」としたのは、この護摩祈祷のタイミングを見計らってのことで、午後1時からのぶんを見てみようというものだった。ただ着いたのが思ったよりも早い11時20分頃で、ちょうど11時からのぶんの最中だった。大師堂の中では僧侶と檀信徒とおぼしき方々の読経が進んでいる。その間にも大師堂の上がり口のところで山伏姿の人がいて、杖でもって参詣者一人一人に「エイッ」と喝を入れている。私も本堂にお参りするより先に、こちらで「エイッ」と気合を入れてもらう。

その後で改めて本堂に行き、外陣で般若心経である。本尊は1200年前のものだが、寺そのものは以前は別のところにあったり、戦火で焼かれたりという歴史があり、現在のところに落ち着いたのは江戸時代とされている。

それにしても「神呪寺」。字面だけ見れば「神の呪い」と読んでしまうところだが、この「呪」は「呪い」ではなく、「真言」の意味。うーん、余計にわからないか。「呪い」よりは「呪文」としたほうがイメージとしてはわかりやすそうだ。仏を祈る言葉で、サンスクリットをそのまま音訳したものである。「神呪」は、般若心経の一節に「是大神呪 是大明呪・・・」というのがあり、「偉大なる真言」というような訳がつけられている。「甲山」「神の山」の昔の音がそこに混ざり合って寺名になったとされている。

神呪寺も他の寺院と同じようにさまざまなお守りやお札があるが、その中でよく知られているのが「融通小判」。融通観音が描かれた小判で、それこそ「融通を受ける」というご利益があるのだとか。普段、札所に参詣してもお守りやお札を求めること、あるいはおみくじを引くということはほとんどないのだが、この日は迷いなく「融通小判」に手を出していた。小判に目がくらんだと言ってしまえばそれまでだが、おカネにとどまらず広い意味での「融通」というのを得られるよう、自分の普段の行いも心がけたいものである。

境内に休憩スペースがあり、ここからは先ほど森林公園から見たのと同じように大阪平野の景色を望むことができる。こうした感じで大阪平野を見るのは初めてで、新鮮な感じがする。ここまで歩いて来た甲斐があった。

・・・と言ったところで、この景色を眺めながら、次の参詣先を決めるくじ引きとサイコロである。

1.大津(立木山寺)

2.比叡山(横川中堂)

3.阪急宝塚線(萩の寺、満願寺)

4.赤穂(花岳寺)

5.龍野太子(斑鳩寺)

6.神戸須磨(能福寺、須磨寺、太山寺)

今度は前の二つが滋賀県、残り四つが兵庫県(萩の寺は大阪府だが)という、また極端な選択肢となった。それにしても兵庫県の引きが強い。くじ引きはスマホのアプリなのだが、何度も同じ選択肢が出ているイメージがある。

そしてサイコロが出たのは・・・「6」。神戸須磨である。ここで出たか・・・これは遅くとも6月中、そしてできれば特定の日に行きたいところだ。その理由は、またその時に・・・。

ここまで来れば、もう次の護摩祈祷は別にいいかなとなったが、せっかくなので甲山の頂上に行くことにする。境内を抜けると裏手に鳥居があり、甲山大明神の祠がある。その奥が軽登山道となっている。寺が標高およそ200mで、甲山の頂上は309mあるという。ジグザグして道幅は狭いが、階段やら石畳やらで道は整備されている。

寺から10分ほど上って頂上に到着。三角点にはいつの頃からか石が三角錐状に積み上げられている。ちょっとした広場になっていて、周りを囲むようにベンチが置かれているが、木で囲まれているので周りを望むことはできない。ここで軽めの昼食とする。

神呪寺の参詣と甲山登頂ということで、この日の主な目的は終了。まだ12時半でこの後どうするかだが、せっかく西宮に来たのだからと、「西宮」の由来となったスポットに行くことにする・・・・。
コメント