まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第21番「神呪寺」~新西国三十三所めぐり・10(甲山を目指すウォーキング)

2016年05月22日 | 新西国三十三所
今回参詣することになった「神呪寺(かんのうじ)」は、西宮にある。西宮のシンボルとも言える甲山の中腹にあるが、地元では「神呪寺」というよりは、弘法大師も祀ることから「甲山大師」という名で親しまれている。西宮というところも、阪神間の移動で何度となく通っているが、こうしたところを回ったことがない。甲山と聞いて連想するのは、知的障害児の養護施設が舞台となった「甲山事件」という冤罪事件。地図によればその施設は神呪寺から少し西のところにあったが、現在は閉鎖されて後は病院になっている。

その甲山を目指すわけだが、新西国霊場や神呪寺のサイトなどを見ると、阪神の西宮からバスが出ている。また鉄道の最寄駅となると阪急甲陽線の終点・甲陽園から歩いて30分のアクセスである。このところ、札所めぐりがウォーキングの一部になっているので、それなら甲陽園から行くことにしようか。

ただ、周辺スポットを検索すると、神呪寺に隣接して甲山森林公園というのがあり、地元の人たちのウォーキングの場として親しまれているという。また、公園の東には「地すべり資料館」なるものもある。これを絡めるとなると、甲陽園からではなく、歩く距離が長くなるが阪急今津線の仁川から行くのが便利となる。仁川も下車したことがないし、こちらから行くことにしよう。戻りは甲陽園方面に出るということで、「循環ルート」となる。

ということで、阪急梅田に現れる。まずは特急で西宮北口を目指すが、乗る列車には、マルーン一色の阪急にあって珍しいイラストが施されている。「爽風(kaze)」と呼ばれるもので、イラストを手掛けたのは神戸市出身のわたせせいぞうさん。

おしゃれで透明感のある画風で知られているが、阪急のカラーによく似合っているように思う。沿線のスポットを背景としたラブストーリーを想像させる。

西宮北口で下車して、今度は今津線に乗り継ぐ。こちらは少し前に映画にもなった有川浩さんの小説『阪急電車』の舞台である。わたせせいぞうがラブストーリーなら、こちらは普段着のお話。3駅で仁川に到着する。

ここからウォーキングだが、まずは駅からすぐのところを流れるその名も仁川沿いに歩く。右岸と左岸でそれぞれ一方通行の道である。閑静な住宅街といった趣で、広い敷地の邸宅、個性的な一戸建てが並び、高級車も停まっている。ただ中には2階建ての賃貸アパートも点在しており、これなどは家を継ぐ人がいなくなったのか、家を手放して土地を貸すようにしたのか、そういう面があるのかもしれない。

正面にこんもりと見えるのが甲山である。甲山の名前の由来は、見た目が甲(兜)のように見えるからとも、その昔神功皇后が国家守護を願ってこの山に甲冑や宝飾品を埋めたからだとも言われている。

駅から20分ほど歩くと仁川の幅も狭くなる。渓谷らしいスポットもあるが、どこか作り物のようにも見える。ここから階段を上がったところにあるのが「地すべり資料館」。

資料館の前には「やすらかに」と書かれた碑があり、裏面には「1995年1月17日 阪神大震災地すべり犠牲者の碑 仁川百合野町26名 仁川町六丁目8名」とある。阪神・淡路大震災というと、阪神高速や三宮のビルの倒壊、そして大規模な火災というのが今でも映像で流れることがあるが、地すべりの被害というのもあった。地震での地すべりというと、先月起きた熊本地震の、南阿蘇村の被害が思い起こされる。

この資料館は、その後復旧工事が行われた仁川百合野地区の斜面の動向の監視と、土砂災害について学習できる場として開かれたものである。土砂災害のメカニズムについても触れられている。日本全国で土砂災害の危険個所に指定されているのは53万ヶ所にも及ぶという。よほどの平地でない限りは、土砂災害のリスクというのは常にどこかに潜んでいるものだろう。また近年はゲリラ豪雨など、一度の雨量が増えているため、がけ崩れや土石流の回数や被害も増えているように思う。思い出されるのは一昨年の8月に広島で起きた豪雨災害である。この仁川近辺も山の斜面に住宅が並んでいるが、いざという時に大丈夫なのかなと思う。

資料館から甲山森林公園に続く道がある。ちょうど関西学院大学のキャンパスが近く、沿道には関学の部活動のグラウンドやコートもある。また森林公園自体もトレーニングに適しているのか、ランニングする学生の姿も見える。また学生だけではなく、地元の人、あるいは近隣からウォーキングに来る人も。道幅も広いがクルマは入れないし、ところどころには軽登山道もある。

その軽登山道の途中、甲山を望むポイントがある。この左手にある建物が神呪寺である。時折鐘の音が響いてくる。こうして見ると、甲山が信仰の対象で、神呪寺はその拝殿のように見えてくる。

しばらく歩くと展望台に出る。こちらからは西宮から大阪方面を望むことができる。晴れているがもやっていてそこまでは見えなかったが、空気が澄んでいれば大阪平野を通り越して生駒山も見えるという。夜景を見に来るのもいいかもしれない。

森林公園の中心に出る。公園と言うことでちょうど甲山を仰ぎ見るように噴水や彫刻が配置されている。ここの木陰で食事したり、ベンチでくつろぐ人の姿が多い。

来る前の計画では、時間配分の関係で先に甲山の頂上まで行き、その後で神呪寺にお参りしようとしていた。ただ、公園から市道に出て歩くと、神呪寺の山門に出てきた。甲山の頂上にはここからだと寺の境内を抜けて裏手の山道を行くのが近道ということで、それならばお参りも先に済ませることにする・・・。
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