まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第6回九州西国霊場めぐり~世界遺産・三池炭鉱跡を駆け足でめぐる

2021年12月27日 | 九州西国霊場

大牟田の石炭産業科学館を出て、世界遺産に登録されたかつての三池炭鉱関連の施設跡を見に行くことにする。スポットはいろいろあり、かつて走っていた三池炭鉱専用鉄道の線路跡をたどりながら、いったん万田坑跡のある熊本県荒尾市に入り、三池港までぐるりと回るコースがおすすめとあるが、時間の関係で三池港までは行けないなと思う。そこで、1時間半の持ち時間で回るポイントを宮原(みやのはら)坑跡、万田坑跡の2点に絞るが、それでも外をぐるりと回るくらいの時間かなと思う。

科学館からクルマを走らせる。先の記事でも触れた三池工業高校の横を通る。高校がここに移る前には三池集治監という囚人の収容施設があり、今でもレンガ造りの塀の一部が残されているという。

住宅地の中に入る。その向こうに櫓の骨組みが見えてくる。世界遺産に登録されたためか、大型バスも停められる駐車場も広がっている。かつて専用鉄道で活躍していた電気機関車を模したトイレもある。

駐車場・道路と櫓の間が切通のようになっている。ここが専用鉄道の敷地跡である。枕木が残っているのがわかる。

宮原坑跡は見学が無料というだけでなく、見学者それぞれにボランティアガイドがついて案内をしてくれる。こちらとしては残り時間が気になっており、自分でぐるりと見て回るくらいでいいなと思っていたが、こちらからお願いするというよりガイドの方が「どうぞどうぞ」と来られるので、無下に断ることもないかと案内をお願いする。お年は70歳代とも80歳代とも見えるが、話の内容からかつて三池炭鉱で働いていた方のようだ。話は明治の殖産興業の頃のことから始まったが、「ここ(三池)は三井だったんですが、今の国の重要なところといえば三菱が押さえているでしょ・・」と、ちょっとしたライバル心ものぞかせていた。

宮原坑は、従来の七浦坑、宮浦坑等の排水の効率が悪化したことから新しく開かれた竪坑で、開かれた後は排水、入排気だけでなく揚炭、人員昇降も兼ねる主力坑の役割を果たした。現在残っているのは主に人員昇降を担った第二竪坑の櫓と、レンガ造りの巻揚機室、ポンプ室であるが、その人員は三池集治監に収容されていた囚人が多かったという。1930年に炭鉱坑内での囚人労働の禁止令が出て、宮原坑は翌年に閉鎖された。

巻揚機やゴンドラもほぼ当時のまま残されている。ワイヤーの巻き方の仕組みについても説明していただく。

それにしても、囚人労働の跡地を世界遺産にしていいものかという気がするが、世界を見渡せば、かつて大英帝国の植民地だったオーストラリアにも、本国から流刑に処せられて資源の採掘や建設工事に従事させられた囚人たちの遺跡群もあるそうだ。産業、経済の発展というプラスの面がある一方で、囚人、あるいは植民地の人たちが強いられた過酷な労働という負の側面も忘れてはならないという意味も込められているという。

何やかんやで30分ほど案内していただいてお礼を言い、ちょうどバスでやって来た団体さんと入れ替わるようにして宮原坑を後にする。

さて、次は万田坑である。徒歩やレンタサイクルで時間があれば専用鉄道の軌道跡に沿って向かうのがおすすめのようだが、クルマだとそうはいかない。いったん離れてソーラーパネルが並ぶ一角を抜け、回り込む形で荒尾市に入る。あっさりと県をまたいだが、県境が川などで区切られているわけではない。また、大牟田市の中に荒尾市の飛び地もあるそうだ。県境(もっと昔の国境)は何らかの事情で定められたことだが、現実はともに三池炭鉱で栄えた歴史を持つこともあり、県境をまたいで一つの都市圏を形成しているという。一部では大牟田市と荒尾市で県をまたいだ合併の話もあったそうだ。さすがにそれは実現しなかったが、さまざまな面で連携が図られている。

ということで、万田坑は熊本県の観光スポットということになる。こちらは「万田坑ステーション」として整備されており、見学料420円とある。宮原坑からクルマを運転して来たが、この後大牟田駅まで戻ることを考えると滞在時間は15分ほどしかない。しかも、見学スポットして開放されているエリアは宮原坑よりも広いので、それこそ駆け足になってしまう。閉館まで時間が少ないこともあってか、同じように待機していたボランティアガイドも一緒に回ることなく、順路だけ教えてくれる。

万田坑は三井が総力をあげて整備した竪坑だそうで、大正から昭和にかけて設備の充実が図られ、日本最大級の規模を有したという。

採掘じたいは1951年に中止されたものの、1997年の閉山まで坑道内の管理業務を行っていたためか、宮原坑と比べても施設、設備の保存状態もよい。現在も世界遺産としての保全のためか、一部エリアが修復工事中だった。時間の都合でどちらか1ヶ所だけしか見学できないということなら、万田坑のほうがよいかもしれない。

また、トンネルを含めたさまざまなスポットがあるため、映画のロケ地になったり、コスプレ写真の撮影イベントが行われたりと、さまざまな活用がなされている。

構内を駆け足で回り、レンガ造りの巻揚機室に入る。巨大な歯車つきのウインチが完全な形で残されている。

最後にガイドの方から、「ここからの眺めがいいですよ」と、ちょっと柵を開けてくれる。ちょうど構内に専用鉄道の線路が伸びていて、そこに夕陽が差し込んでいる。かつての夢の跡を彷彿とさせ、なかなかうならせる眺めである。

2ヶ所の竪坑跡を見ることができて満足だが、できればもう少し時間を取って、他のところも含めて回れればよかったと思う。まあ、札所めぐり3ヶ所と合わせて1日でこなそうというプランもかなり無茶だったかな。荒尾市から再び大牟田市に入り、ニッポンレンタカーにクルマを返却したのは約束の時間であるちょうど17時。

そのまま駅に向かい、17時13分発の鳥栖行きに乗って久留米に向かう。この便を逃すと、久留米から博多乗り継ぎで手配していた「バリ得つばめ」プランが無効になってしまう。

時間に余裕があれば大牟田から西鉄に乗ってもよかったかなと思いつつ、日が落ちる中、2両のロングシート車で北上する。

17時52分、久留米着。次に乗るのは18時12分発の「つばめ326号」。少し時間があるので、いったん駅の外に出ることに・・・。

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