九州八十八ヶ所百八霊場の第6番・南淋寺を後にして、西鉄バスで甘木バスセンターに戻る。次は、前日(25日)に雨のため参詣を断念した第5番・大師寺に向かう。最寄りの田主丸にある板町バス停まで甘木観光バスで行くのだが、起点の甘木鉄道甘木駅まで歩いて行かずとも、西鉄の甘木バスセンターのすぐ近くに甘木中央バス停がある。次の田主丸行きは10時17分発で、20分ほどは休憩時間としてコンビニやバス停のベンチで過ごす。
やって来たバスにもう一人の客とともに乗り込む。その客は朝倉医師会病院で下車して、後は前日と同様、私一人のバス移動である。
バスは県道甘木田主丸線を走り、両筑橋で筑後川を渡り、朝倉市から久留米市に入る。「両筑」とは初めて目にする名前だが、筑前と筑後をまとめるということでこの辺りでは一般的な呼び方なのかな。筑前・築後はこの辺りでは筑後川の北と南で分かれていて、朝倉市が筑前、久留米市が筑後となる。その昔は田主丸と甘木、秋月を結ぶ「両筑軌道」という鉄道も走っていたそうだ。後に鉄道は廃止されてバス路線に転換され、会社じたいも西鉄に吸収されたが、時代を経てその西鉄から分離されたのがこの甘木観光バスである。
20分あまりで板町に到着。目指す大師寺はバス停南の交差点を渡ったところで、入口の案内板があり、少し路地を入ったところに位置する。石標の向こうに本堂が見える。
大師寺が開かれたのは大正時代、高野山開創1100年を記念してのことという。寺の山号が「新高野山」で寺が「大師寺」となると、完全に「弘法大師案件」である。本尊は不動明王だが、地元の人からは「お大師さん」「弘法さん」として親しまれているという。
その境内だが・・・何と全面工事中。本堂、その横の庫裏ともどもネットで覆われていて、日曜日だが庫裏のほうでは作業が行われている。あらあら・・・。周りにはかろうじて不動明王をはじめとした仏像が立っているが。
本堂前の燭台には「朱印は書き置きを用意しています」と印字された紙も挟まれていたが、どこに声をかけてよいものやらわからない。
特に、大師寺が工事中である旨の案内がどこかにあったわけではなかったが、それなりの年月をかけて大改修を施しているのだろう。これなら、前日に大雨の中無理して来なくてよかった。この日もどっと暑さがやって来たが、仕方がない。電話番号を調べて電話でもすればどうにかして納経帳に朱印を押すこともできるかもしれないが、そこまでしなくてもよいかなとも思う。
田主丸がある久大線沿線には、久留米近辺にいくつか札所があって九州八十八ヶ所の後半に来ることになるし、番号はそれより前だが大分内陸部の日田にも札所がある。今回、大師寺の朱印はお預けとして、それらと組み合わせて大改修後の本堂を訪ねればいいかなという気になった。ここは割り切ろう・・。
ここからまた筑後川を渡って朝倉市に戻る。当初は板町11時33分発の甘木行きのバスに乗るつもりだったが、大師寺の滞在はごくわずかな時間だったので、その1本前の10時57分発に十分間に合う。先ほど田主丸行きで乗った便の折り返しで、またしても乗客は私一人。
次に目指すのは、第90番の浄心院。交通案内では西鉄甘木から電車で2駅の上浦から徒歩10分とあるが、地図を見るとそこまでぐるり回らずとも、この甘木田主丸線のどこかから歩いてショートカットできそうだ。路線図と地図とを見比べて、小田というバス停で下車。運転手には変わった客に見えたかもしれない。
青空も見えるようになり、暑くなってきた。その中で平坦な道を20分あまり歩くと、浄心院の近くに出た。ここまで来れば、残り2ヶ所でのゴールが見えてきた・・・。