九州八十八ヶ所百八霊場めぐり、次に目指すのは第27番・蓮城寺である。もっとも地元では蓮城寺というより「内山観音」という通称で知られており、途中の道路標識にも内山観音と出ていたように思う。
豊後大野の玄関駅である豊肥線の三重町駅前を過ぎ、国道326号線に入る。大分市から宮崎へは国道10号線、また現在は東九州道がメインルートで、この326号線は番号が3ケタということで整備もされていないのかなというイメージを持っていたが、道路の改良もあり、現在では大分市と宮崎方面を結ぶ意味では国道10号線より最短かつメインのルートとなっているそうだ(その代わり、臼杵や佐伯といった大分南東部のエリアは経由しない)。元々、日向への街道はこのルートを通っていたという。
326号線から少し外れたところ、その中で存在感を出しているのが蓮城寺である。駐車場の案内板にも「内山観音略案内」とある。欽明天皇の頃から1400年以上の歴史を有している。中国の天台山からやって来た僧蓮城が開山し、真名野長者が創建したとされる豊後最古とされる寺である。本尊の千手観音は蓮城が持って来たとされ、秘仏の扱いである。
真名野長者といえば、元々炭焼きをしていたが仏の数々の軌跡により長者となった人物とされる。その娘が般若姫で、都から忍びで来ていた皇子(後の用明天皇)と結婚する。後に般若姫は皇子のもとに行くべく船に乗ったが、途中周防灘で嵐に遭い、身を投げて亡くなってしまう(海の龍神の怒りを鎮めるためだったと言われている)。娘の死を嘆き悲しんだ真名野長者が建てたのが山口県の平生にある般若寺であり、(この後で行く予定にしている)臼杵の石仏とされている。まあ、臼杵石仏についてはあまりにも時代がかけ離れているのであくまで「伝説」とのことだが・・。
真名野長者と般若姫については、一寸八分の観音像を祀る長者堂にその足跡が残る。
他にも、四国八十八ヶ所のお砂踏みもあるのだが、シャッターが下りていて開放の気配はない。
反対側の、境内の経堂や、水子地蔵が並ぶ一帯にも向かう。この辺りも緑が濃い。
境内の一角にあるのが大師堂で、九州八十八ヶ所百八霊場の札はここに掲げられていた。あら、観音霊場と八十八ヶ所百八霊場とでは別のところだったか・・。
隣接する敷地にあるのが薬師堂である。こちらには998体の薬師如来が祀られており、観音と薬師ということで種類は異なるが、その数の多さで京都の三十三間堂と並び評される。それはよしとして、ただ九州八十八ヶ所百八霊場の公式サイトでの蓮城寺の解説文には、「この蓮城寺にたくさんの薬師像が安置されているため、本尊千手観音にちなみ通称『内山観音』と言われています」とある。・・・薬師と観音がごっちゃになっていないか・・。この文面なら「内山薬師」とならないかな。
蓮城寺じたいは観光寺院というわけではないが、桜や紅葉の名所としてシーズンには近隣から多くの人たちが訪ねるそうだ。そのために、公園の意味合いも兼ねて駐車場も広く取られている。
さて、最後に朱印である。今回蓮城寺に来るにあたり懸念していたのがこの朱印である。九州西国霊場めぐりで蓮城寺を訪ねた2021年9月といえば、緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が取られていた最中。その中で蓮城寺は特に敏感だった印象がある。納経所には「参拝の自粛を御願い申し上げます」の張り紙もあった。その時は呼出しのチャイムを鳴らして、寺の方に書置きの朱印の紙をいただいたが(九州西国霊場はもともとこのスタイル)、何も言わずにピシャッと扉を閉められたように思う。
そして九州八十八ヶ所百八霊場めぐりでふたたび蓮城寺を訪れることになったが、同霊場の公式サイトによると、少なくとも2022年5月~11月の間は朱印を休止とあった。これもコロナの警戒から・・?
で、2023年5月である。「参拝の自粛を御願い申し上げます」の張り紙は相変わらずである。この期に及んでまだこうした張り紙があるとは、単にはがし忘れているだけとは思うが、ひょっとしたら今でも本気で自粛を呼び掛けているのかもしれない。そうとらえると、四国八十八ヶ所のお砂踏み霊場のシャッターが閉まったままなことや、境内の手入れが行き届いていないことについても話は通る・・。
ここのためにもう一度出直すのもな・・と、納経所の窓の張り紙を見ると、朱印はこちらという矢印があった。それは納経所の建物の横扉で、扉を開けると物置のようだが、テーブルも置かれ、一角に九州八十八ヶ所百八霊場のセルフ用の朱印一色と、九州西国霊場用の書置きの紙が用意されていた。セルフ朱印、十分です。
今回の九州八十八ヶ所百八霊場めぐりでは、大分県をクリアしたそのままで宮崎県に入り、延岡近辺の札所まで回ってしまおうと考えている。延岡に行くならこのまま国道326号線に乗れば近道だが、この後、臼杵、津久見、佐伯と回ることになる。まあ、そちらはそちらで魅力的なところだし、そもそもこの日(5月6日)は差益で1泊としている。