旧国鉄倉吉線跡の訪問を終え、第43番・皆成院がある三徳山三佛寺に向かう。崖にへばりつくように建つ投入堂で有名な寺である。
その位置から「日本一危険な国宝」との呼び名もあるが、三佛寺に参詣するならばぜひとも訪ねる価値がある。ただし、途中鎖場のある崖や幅の狭い箇所も通るなど、一つ間違えば事故につながりかねない道のりのため、一人での入山は禁止されてる。それは一人旅の私にとっては厳しいもので、どうしても上りたければ同じようなお一人様を見つけるか、どこかのグループに混ぜてもらう必要がある。ただ、そう都合よく出会いがあるわけでもない。
もっとも、前回中国観音霊場めぐりで三佛寺を訪ねた時には、同じ路線バスで乗り合わせた人同士で行こうと思えば行けたようにも思われた。ちょっと遠慮しちゃったなあ。
その中で調べてみると、投入堂に上るツアーも存在する。近鉄グループの某旅行会社の主催で、新大阪駅からバスで三佛寺まで来て、投入堂まで往復する日帰りツアーを見つけ、5月のある日分の申込を行ったのだが、参加者が催行人数に達しなかったとして開催中止になった。そのため、もう投入堂にはこだわらず、今回の四十九薬師めぐりでとりあえず皆成院までコマを進めることにした。
倉吉の打吹地区を抜け、三朝温泉を経由する。今回のコースでは、三佛寺まで行ったら帰りに三朝温泉に浸かる予定とした。その中で「ラドン熱気浴」というのがあり、それを体験してみようと前日に温浴施設も予約した。
さて、三徳山の鳥居をくぐり、三佛寺の入口に差し掛かると、前方からぞろぞろ歩く白装束の団体とすれ違い、道端には神輿が出ていてトラックに積み込もうとしている。僧侶が誘導して横を通してもらったが、何か祭りでも行われるのだろうか。
この先の駐車場にクルマを停めて三佛寺の入口まで戻ると、ちょうど神輿を荷台に積んだところである。この神輿には三徳山三所大権現が乗っているとのこと。私はまったく知らなかったのだが、実はこの日(4月23日)、「三徳山御幸行列」という伝統行事が行われていた。先ほどまで三佛寺で法要が行われ、神輿はこれから三朝温泉に向かうという。ちょうど廃線跡めぐりをしていた時間帯だ。
石段を上がり、三佛寺の受付に向かう。この日は御幸行列にともなう法要のため、本堂までの入山料は無料とあった。
皆成院は三佛寺の中の塔頭寺院である。三佛寺は役行者が蔵王権現をはじめとした三所権現を祀ったのが開創とされており、平安時代に慈覚大師円仁が阿弥陀如来、薬師如来、大日如来を祀り、三佛寺という名になったという。往時は大伽藍を有していたが火災等により縮小した。皆成院はその中で残った塔頭寺院であり、現在は宿坊や修行体験ができる場として開かれている。
三佛寺の本堂に続く参道沿いにあり、薬師如来が祀られている。投入堂まで上る前、あるいは下りた後に気軽に立ち寄るといった感じのところでもある。お堂の前にてお勤めとして、受付にて書き置きの朱印をいただく。
三佛寺の本堂に向かう。この先に投入堂への受付があるのだが、下りてくる人の姿はちらほらあってもこれから上ろうという人の姿もなく、また私もこの時は投入堂にそこまでのこだわりもなくなっていたので、ここで折り返す。代わりに、宝物殿に立ち寄り、投入堂で使われていた平安時代のものとされる支柱や、そもそも投入堂に祀られていて現在はこちらで安置されている蔵王権現などを拝観する。
投入堂についてはこの先に遥拝所がある。以前行った時は道端に望遠鏡が備えられていただけだったが、今回来て見ると屋根つきの東屋に、3台分の駐車場が新しく設けられている。ただし・・残念なことに望遠鏡は故障中。投入堂があるのはあの辺りというのはわかるのだが、肉眼ではほんの小さく見えるくらいである。
これで三佛寺を後にして、ラドン熱気浴を予約している三朝温泉に向かう。と、そこで行われていたのは・・・。