神仏霊場巡拝の道めぐりの洛西シリーズ。松尾大社からはいったん嵐山を素通りして、車折神社に到着。神社の北は嵐電、そして南はバス停という立地である。
車折神社といえば境内に並ぶ朱色の玉垣、そしてそこに記されるのは数多くの芸能人の名前である。その数は4000枚以上あるそうで、駐車場の周りにも及んでいる。その中で有名な人や、自分が推している人を見つけるのも神社での楽しみとなっている。
それにしても、「芸能人」の定義って何だろう。「芸能を職業としている人の総称」とされるが、「芸能」の定義もこれまた広い。演劇、音楽、映画、演芸、舞踊・・いろいろ連想するが、それを「職業としている」となるとどうだろうか。もちろんそれで食べている、あるいは巨額の富を得ている人もたくさんいるが、全体で見るとごく一握りというのが実態だろう。生活のためにアルバイトを掛け持ちしているとか、いや逆にアルバイトの空き時間に芸能活動をしているとか・・。
目につくのはやはりテレビで見かける俳優、歌手、アイドル、お笑い芸人だが、アナウンサーやスポーツ選手の名前も見える。もっとも、全体をぐるっと見渡すと玉垣に書かれた名前のほとんどは知らないもので(やはり有名な人とそうでない人で、掲げられる場所にも差があるのかな)、「芸能人ってこんなにたくさんいるの?」とも思ったが、私が存じ上げないだけでその界隈では人気の芸能人もたくさんいることだろう。
ここで触れておくと、これらの玉垣に囲まれた一角は車折神社のあくまで境内社扱いの「芸能神社」である。建てられたのは昭和32年のことで、「古事記」の天の岩戸伝説で知られ、芸能・芸術の神として信仰される天宇受売命を祭神としている。それ以降、車折神社といえば・・ということでテレビや雑誌の取材も数知れず入り、玉垣を奉納した芸能人がその様子をSNSにあげることでまた人気を集めて・・となっている。
この玉垣奉納はプロ・アマを問わず、芸能・芸術・技芸の全ジャンルにわたり申し込むことができる(あくまで本人、もしくは本人から正式な許可を得た代理人に限る)。そうなるとハードルは結構低く、「今は全く売れていないが、売れることを祈願して奉納する」というのはあり、いやそういう人が大半だろう。
さて、芸能神社の先にある(というのも変な言い方だが)車折神社の本殿。平安後期の漢学者・儒学者である清原頼業を祭神としている。頼業が亡くなった後、所領があった現在地に廟が建てられ、宝寿院という寺として開かれたのが始まりである。宝寿院は室町時代に天龍寺の末寺となり、その中にある廟が車折神社として信仰されたのは江戸時代に以降とある。明治の神仏分離で衰退したが、富岡鉄斎が宮司となり再興、現在にいたる。そして現在は先に触れたように芸能人が多数訪れるように・・・。
今回、南のバス停から境内に入ったから先に芸能神社に触れたのだが、北の電停から境内に入るのが車折神社の正統なお参りと思われる。こちらから入ると出会うのがパワースポット「清めの社」。厄除け、八方除けのパワーが秘められているという。
そして本殿で手を合わせる。こちらにはパワーストーン「祈念神石」があふれている。車折神社は石に対する信仰が篤く、パワースポットとして訪れる人も多いそうだ。そのうえで芸能人にあやかりたいとなると・・。
再びバスに乗り、この日の宿泊地に向かう。途中で間違った系統のバスに乗ったことに気づいて回り道をした後、降り立ったのは、臨済宗の大本山である妙心寺前・・・。