上越市は高田市民球場。7月28日に行われた新潟アルビレックス対信濃グランセローズの試合である。今年発足した北信越BCリーグの試合を見るのは初めてである。一昨年に四国アイランドリーグの試合は2試合観戦したことがあるが、それと比べてどうか。入場料1000円に、北信越BCリーグの公式プログラム(新潟・後藤監督=元巨人=のサイン入り)や携帯クリーナーを買い求めた後、スタンドに入る。
収容人数2000人、両翼90m、中堅120mという球場だが、内野席はネット裏を含めてコンクリートのうちっぱなしである。バスタオルをビニール袋に入れて即席の座布団をこしらえ、ネット裏に陣取る。天気はよくなってきたが朝方は雨が降ったと見えて余計に蒸し暑さを感じる。またビールが進みそうだ・・・・。
![P7283123 P7283123](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/6d/53819b9b7295179c138f31e87059c5b0.jpg)
ちょうど両チームの守備練習を行っているところ。三塁側がホームの、オレンジカラーの新潟アルビレックス、一塁側がビジターの、信濃リンゴの赤を基調とした信濃グランセローズである。ユニフォームの正面から肩口から背中からパンツの尻のところまで、それぞれのスポンサーの地元企業のロゴが貼られている。新潟・信濃(長野)・富山・石川の北信越4県。それぞれの風土の違いというのは四国4県以上に個性的だろう。各県チームを応援する有力な地方新聞(新潟日報、信濃毎日新聞、北日本新聞、北国新聞)もあることだし・・・・。それだけに、北信越BCリーグは、四国アイランドリーグ以上に「地域貢献」というのを意識している。そんな中での「信越決戦」だ。もっとも、ここまでの4チームの戦績を見るに、富山と石川が競り合い、信濃が5割そこそこ、そしてリーグの借金のほとんどすべてを新潟が背負っているという順位だ。
そんなこともあるし、ましてや先ほど大きな地震の被害に見舞われた県である。判官びいきではないが、フェンスの横断幕にもあるように「がんばろう!新潟」で、今日はアルビレックスを応援することにしよう。試合前にはJリーグと同じ「アル~ビレックス!!」のコールとかサポーターズソング「BELIEVE」が流れる。スタジアムDJもいる。今日は新潟にとっても「遠征」であり、普段の試合がどうかはわからないが、これらもプロ球団ならではの演出である。
この球場のある高田城は、江戸時代の松平氏の居城であったが、やはり知名度とすれば、同じ上越市にある上杉謙信の居城・春日山城のほうが有名である。そのためか、新潟の応援席には「毘」の旗もなびいている。また北信越BCリーグには「地元枠」入団というのがあり、ここ上越出身で、4番で主将の小西、9番で先発出場の木ノ内の両選手には特に大きな声援が送られていた。「地元出身のプロ選手」。ええ響きやないですか。
子どもたちによる地元・高田の「関町太鼓」の演奏披露や、投手、上越市長=捕手、新潟・後藤監督による始球式、そして、新潟県中越沖地震で亡くなられた方への黙祷などの行事があり、試合開始。新潟、信濃両県から多くのファンが詰め掛けており、熱戦が期待される。
新潟・宮本、信濃・藤原の両右腕の先発で始まる。ともにストレートとスライダーで組み立てるタイプの投手。ただ初回から、新潟・宮本が四球を続け、信濃・藤原も連打でピンチを迎える。後続を断ったが危なっかしい立ち上がり。
先制したのは信濃。2回表にまたも四球2つでチャンスを作り、8番の久米のタイムリーで2点を挙げる。一塁側に詰め掛けた信濃ファン、そして信濃・木田監督も喜ぶ。ちなみに木田監督というのは、日本ハムに入団した年に最多勝・最優秀防御率などタイトル総なめ、新人王、そしてMVPも獲得したあの木田勇投手である。
4回には信濃の5番・大村(背番号1)のライトへのホームランで1点追加。これで3対0と信濃優位。結局新潟先発の宮本は5回までこの3失点だったが、被安打4(うち本塁打1)はまだしも、四球7はいただけなかった。ストライクとボールがはっきりしていたかな。
一方の信濃・藤原は少しずつ調子を上げ、新潟打線に得点を許さない。スタンドから大きな声援が起きるのだが、地元選手の小西、木ノ内にもなかなかいい当たりがでない。
四国の時もそうだったが、独立リーグの応援というのもトランペットにそれほど頼らず、「○○、○○、かっとばせ~○○」とか、「打って~打て打て打て打て○○」という、太鼓のベースに合わせたシンプルなものである。ただこの日は、他に観客のいないレフトスタンドに陣取って、拡声器と大太鼓でひたすら自分のペースで(ほとんどの客は内野スタンドのリーダーの音頭で応援しているのだが)大声を張り上げているおっちゃんがいた。昔のプロ野球の試合(特にパ・リーグあたり)におったような、応援団の原風景を見ているようだ。ちなみにこの日の観衆、1574人。
さて試合も中盤に入り、信濃は藤原続投、新潟も2人目の鴨下が好投。点も入らず、締まった展開になってきた。
7回の表、ラッキー7。信濃応援団はここで始めてトランペットが持ち出され、長野県歌という「信濃の国」の斉唱。「信濃の国は十州に境連なる国にして・・・」という、長野県の学校では必ず音楽の時間に習うという歌である。これも県民球団の現れ。一方のアルビレックスはサポーターズソングが流れ、ここでジェット風船・・・・。うーん、独立リーグまで広がったか、この悪習。「風船を5個拾った方には入場引換券を差し上げます」とか言っているけど、この風習だけは広がってほしくなかったな。
試合のほうは新潟が鴨下から藤野につなぎ、信濃も7回から2人目梅澤、そして9回には抑え投手の小林がきっちりと抑え、新潟応援団の声援もむなしく、3対0で信濃の勝ち。今日は投手中心の試合となったが、ホームランも出たことだし、球場の雰囲気も含めていつものNPBとはまた違った興行を見られて面白かった。
これで、四国アイランドリーグに続く、プロ野球独立リーグの試合を観戦したことになる。技術のことはわからない素人の私が言うことではないのだが、確かにNPBと比べれば技術、体力、スピードでは劣る。早くから素質ある選手であれば高校や大学卒業時にNPBのドラフトにかかるはずだ。ただ、これまでチャンスがなかったとか、晩成型で目立たなかったとか、そんな選手もちらほらいるのも確か。
そして、何よりも彼らは「地元のスター」である。野球を通しての地域貢献とか、グラウンド外での活動(この日もスタンドで選手が回ってきていたが、中越沖地震被災地への義援金の募金活動や、ボランティア活動など)という点で見れば、NPBの2軍選手よりも幅広いことを行っているのではないだろうか。
独立リーグの先輩である四国アイランドリーグからは、NPB入りした選手も出ている。北信越BCリーグがこれからどのような選手を輩出するのか、楽しみである・・・・。
さて熱戦の後を受けて高田駅まで戻る。高田駅横の「日本海庄や」で軽く飲んでから直江津に移動し、今夜の宿泊地である「ルートイン上越」へ。駅からは徒歩で20分以上かかったが(国道8号線沿いであり、鉄道よりもクルマの客相手のホテル)、温泉大浴場もあり、昨夜の夜行からの疲れを落とす。直江津の「浜やきめし」を食べると、さて明日はどのように動こうかと考える間もなく、そのまま翌朝までぐっすり・・・・。(続く)