まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

こじらせ娘の殺人

2021-03-03 | 日本映画
 「ファーストラヴ」
 公認心理師の由紀は、父親を刺殺した女子大生環菜についての本を執筆するため、拘置所で彼女と面会する。環菜の不可解な言動に戸惑う由紀は、さらに環菜の弁護人が夫の弟である迦葉であると知り狼狽する。由紀と迦葉にはある痛ましい過去があったが…
 最近作品の映像化が多い島本理生の直木賞受賞作の映画化。同じく島本センセイ原作の映画「Red」よりは、こちらのほうが幾分かは面白かったです。刺激的な事件や映像に狎れているせいで、原作を読んだ時はそんなに衝撃も感銘も受けなかったのですが、小説の中で起きてたことの実写を観るとかなり胸がザワつきました。他人の顔についてる汚いもの、そんなもの見たくないという不快感、そして気づかないふりして沈黙する罪悪感、というか。

 目を背けたくなるような性的シーンや虐待シーンなどは全然ないのですが、男たちの幼い少女に向けられる欲望、そしてそれを黙殺しようとしたり察知できなかったりする大人たちや社会の非情さや鈍感さが、忌まわしく許しがたかったです。つくづく痛感しました。女性って、本当に苦痛だらけで生きづらい。この映画で由紀や環菜が苛まれる苦しみや痛みは、男性には理解できないものでしょう。イタズラとか強姦されたわけではないのに大げさな、なんて思う男性も多いのでは。環菜が父親にされてたことなんか、立派な性的虐待ですよ。犯罪として告発や糾弾ができない形の虐待だったのが、本当に卑劣で残酷だった。あんな目に遭えば、環菜じゃなくても人格も人生も歪んじゃいます。幼い環菜を自分の部屋に連れ込んでた男も、東南アジアで少女買春してた由紀の父親も、普通に善人として社会生活に埋没してたのが気持ち悪かった。表面化しない性的虐待の被害者のことを思うと胸が痛み、加害者を思うと憤懣やるかたないです。

 環菜と由紀の父親は、気持ち悪い!と唾棄すべき存在ですが、母親たちはさらに悪質かも。傷ついてる娘を救えず、守ろうともせず、それどころかさらに傷つけるようなことをする毒母たちの悪意と無神経さには、男たちの汚らしい性欲よりもゾっとしました。すべての母親が子どもを愛するわけではないんですね。同じ性である母と娘の関係は、特にこじれやすい。環菜の母親も非道かったけど、由紀の母親も相当な性悪だった。私が由紀なら、父親は軽蔑と嫌悪ですむけど、母親には一生拭えない憎悪と恐怖を抱くでしょう。無神経な人がいちばん怖い。
 かなり深刻でデリケートなテーマなのですが、映画も小説同様にかなりライトな感じ。息苦しくなるほどにヘヴィなものになるよりはいいのかなとは思いつつ、ちょっと物足りなさも否めません。キャストもライトな面々。ヒロインの由紀役の北川景子、やっぱすごい美人!

 ショートヘアも似合ってて、小顔が際立ってました。いつもどこでも完璧なメイク、趣味も値段も高いファッションなど、まさにザ・女優。こんな公認心理師いねーわ!と苦笑。私が環菜なら、あんな美人には何も喋りたくない傷ついても苦しんでも、優しい男たちが近づいてきたり支えてくれる。美人はやっぱ得だね、みたいなヒロインでしたが、いかにも仕事ができます的カッコつけたキャリアウーマンではなく、優しく柔らかく演じていたところに好感。険がとれた感じになってたのは、実生活が幸せなおかげなのでしょうか。たまに演技がオーバーで、目ひんむいた顔とかほとんどホラーな景子さんでした

 迦葉役は中村倫也。ちょっと最近、いろいろ出すぎ?とは思うけど、可愛いので好きです。私が初めて彼を知ったドラマ、高校生役だった「とめはねっ!」の頃とあまり変わってないのが驚異。それにしても。彼ってイケメンなの?いい感じにブサカワ顔だと思うのだけど。童顔すぎて大人の敏腕弁護士に見えん!小柄で痩せてるので、スーツがまるで七五三!ミスキャストと言わざるを得ません。でも大学時代のシーンは違和感なし!髪型が可愛かった。由紀とホテルで初めてセックスするシーンで上半身裸になってるのですが、プヨプヨした子どもみたいだった韓流男優の肉体美を見慣れてるせいか、日本の俳優の裸ってほんと残念。

 由紀の夫、我聞役は窪塚洋介。久々に見たけど、今でも可愛いですね!可愛いおじさん。若い頃の角とか特異ぶったところがなくなって、すっかり落ち着いた感じになりましたね。すごい棒読みが気になったけど。我聞みたいな、すべてを見透かしててすべてを許す仏様みたいな男、返って怖いと思った。ヨースケ&倫也のツーショットはラストだけでしたが、可愛い兄弟!

 環菜役の芳根京子は、有名な女優なの?初めて知りましたが、難しい役を熱演してました。彼女もオーバーな演技が多く、特に何もしなくても複雑な感情や心の闇を感じさせる演技って、やっぱ難しいんだな~と彼女を見て思いました。木村佳乃(環菜の母)、高岡早紀(由紀の母)が毒母を好演。実際に淫行事件を起こした板尾創路が環菜の父役とか、よく引き受けたな~。環菜の元カレ役の清原翔は、綾野剛そっくり?東京の風景が夜も昼もオシャレで、大都会への憧れをかき立てられました。
 取材するヒロインVS堀の中の女殺人犯、といえば柚木麻子の「BUTTER」も面白かったので、ぜひ映画化してほしいものです。木嶋佳苗をモデルにした被告人役は、吉本新喜劇の酒井藍か、3時のヒロインの太った人にやってほしいかも(^^♪
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人を呪わばイケメンふたり

2021-02-11 | 日本映画
 韓流映画祭、まだまだ続くのですが、ちょっと休憩(^^♪
 若い頃のように貪欲な読書はできなくなったのですが、あまり長くないライトな小説なら楽しんでます。最近はBL小説ばかり読んでます木原音瀬の「箱の中」面白かったです。今は「赤と白とロイヤルブルー」読んでます。アメリカ大統領の息子とイギリスの王子が恋に落ちるというトンデモ設定なのですが、映画化されたら誰がいいかな~と妄想しながら読むのが楽しいです。巣ごもりで配信映画鑑賞や読書もいいけど、安心して映画を観に行ったり旅行できる日が早く来るといいですね!


 「さんかく窓の外側は夜」
 幼い頃から霊が見えることに悩んでいた三角康介の前に、除霊師の冷川理人が現れる。冷川に誘われ彼の助手となる三角だったが…
 最近の邦画には、内容といいキャストといい、ほとほと絶望している私なのですが、それは狭量な偏見と先入観のせいなのかもしれません。くだらない、つまんなそうと端っから拒否するような食わず嫌いは矯めたいです。この映画は、そうしてよかったと思えた作品でした。想定外に面白かったです。私、ファンタジーは苦手だけど、オカルトは好き。そしてご存じの通り、私は筋金入りの腐。オカルト+BLという、美味しい組み合わせな映画でした。ただし、どっちの要素もライトで薄いので、コアなオカルト好きや腐にはちょっと物足りないかもしれません。

 まずはオカルト部分。ぶっちゃけ、ぜんぜん怖くないです。私はホラー不感症なので、怖いはずのシーンも笑ってしまうんですよね~。怨霊とかより、殺人鬼が死体をバラバラにしてるシーンのほうがウゲゲでした。こういう映画を観るにつけ、霊感とかある人ってホント大変だな~と同情を禁じ得ません。呪い殺す能力は、ちょっと羨ましいかもと思ってしまいましたが話と構成が、ちょっと複雑?それとも脚本と演出が粗かっただけ?よくわからない、ん?え?どういうこと?なシーンや展開が多々あって、そういうのが今ドキな手法みたいだけど、それこそが映画をライトで薄いものにしてしまう要因なのかな、とも思いました。

 それにしても。冷川って除霊師どころじゃないよ。人間じゃない。能力はほとんど悪魔に近い。三角との契約書とか、ほとんど魔力。でもそんなに能力を活かして大活躍はしてなかったような。彼が少年の頃に教祖さまをしていた邪教が、また悪さをしているという設定みたいでしたが、その教団のやろうとしてたことも説明不足。謎の女子高生エリカが、なぜ教団の言いなりになって呪殺を続けていたのかも不明。冷川もエリカも、あんなに人を殺しまくったのに、ほとんど罪悪感もなく、刑事の奥さん救っただけで世界平和のために死力を尽くした、みたいな英雄然だったのが腑に落ちなかった。それにしても冷川さん、いったいどんな経緯で心霊探偵になったんだろう。社会から隔絶されて教団内で育った子、と言えば。オ〇ム真理教のアーチャ〇ーを思い出しました。やたらと焼き肉を食ってる冷川ですが、その理由がちょっと切なくて可愛かったです。

 次に、BL部分。BLではなく、いま流行りのブロマンスなコンビ設定ですが、ブロマンスって恋愛感情や性的な雰囲気はない、友情と信頼で固く結ばれた、仲間にしては熱すぎる仲が良すぎるノンケ同士の関係、と私は定義しているのですが、冷川と三角はそんな感じではありません。ブロマンスな男たちは、今にもキスしそうに近づいたり、バックハグしたり、手をつないだりなんかしませんし。BL的な台詞やシーン満載ながら、イマイチ萌えなかったのはなぜ。こうすりゃ女どもは喜ぶだろ的な安易なあざとさと、二人があまりにもキレイな中性的風貌なので、男が男と!な禁断の匂いがしないということが、萌えを阻んだのでしょうか。

 冷川役の岡田将生が、やっぱ美男子!ゴロゴロいるちょっとイケメンレベルとは雲泥の差な美貌。さすがにちょっと老けたけど、ぜんぜん劣化はしてません。きれいな顔!優しそうだけど、笑顔が酷薄で不気味なのが役に合ってたかも。長身でスタイルいい。女よりほっそりな体型。そんなに儲かってない探偵にしては高価そうで上品な服も、似合っててカッコよかったです。三角(サンカク、ではなくミカド)役の志尊淳も、思ってたほどキャマキャマしくなくて安心。女より可愛い顔してますね~。それをよく自覚してるような演技が、「劇場版おっさんずラブ」とかでは鼻についたけど、今回は地味で暗い役だったおかげで不快感はなかったです。意外と小柄?長身な岡マとかなり身長差があったような。二人ともふとキャマっぽくなる瞬間があり、演技では隠せない地が出たようで微笑ましかったです。

 呪いの女子高生エリカ役は、欅坂を卒業?脱退?直後の平手友梨奈。初めて演技してるところを見ましたが、うう~ん。ヘタだけど独特の雰囲気と個性はありますね。ぶりっこじゃないところが最大の魅力。A村とかY岡とか、もうCM見ただけで不快になる頭痛がする気色悪いブリっこ女優には辟易してるので、平手ちゃんみたいな誰にも媚びないニヒルな一匹狼女子って稀有で魅力的です。漫画みたいなオカルト顔も役に合ってました。血ヘド吐いたり目ひんむいて奇声あげたり、非アイドルな仕事っぷりには拍手。いろいろ中途半端にやらず、演技に専念していい女優になってほしいです。
 怪奇現象や怨霊よりもショックだったのは、脇役の顔ぶれ。三角の母役は和久井映見、邪教の新教祖役は筒井道隆。はじめ誰だか判んなかった。人気絶頂だった若い頃の二人、すごく好きだったんですよね~。かつてはいろんな映画、ドラマで主役を張ってた彼らが今は…隔世すぎて、わし世代にとっては結構せつない現在の二人でした。北川景子が、エリカに呪い殺される弁護士役で友情出演してました。チョイ役でしたが、彼女も老けたな~。平手ちゃんや景子さんよりも、岡マと志尊くんのほうが美人

 ↑ 終わり方からして、続編あり?ぜひ実現してほしいものです。同じ岡田主演でも、准一のザ・ファブルと違って将生のほうの続編は観たいです
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炎の鬼退治!

2020-11-05 | 日本映画
 「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」
 指令を受け、炭治郎は善逸、伊之介と共に鬼が出没するとされる無限列車に乗り込む。先に乗車していた柱の煉獄を補佐する炭治郎たちの前に、魘夢が現れ…
 前代未聞的に社会現象となってる人気アニメの劇場版、ついに(&コソっと)観に行きました~(^^♪アニメ映画を映画館で観たのは本当に久しぶり。甥のダミアンが小さかった頃、コナンを一緒に観に行って以来。自主的に独りでアニメを観に行ったのは、人生初!小さい頃からアニメにはあまり興味がなくて、大ヒット作や話題作もTVで放送されたら観る程度の冷淡さ。ディズニーやジブリはどちらかと言えば苦手で、公開されるたびに気分は非国民、肩身の狭い思いをしています。今回ばかりは非国民にならずにすみましたTV版も周囲に勧められるまま何の気なしに観始めたのですが、これが噂以上の面白さですっかり年甲斐もなくハマってしまいました。アニメの最終回の続きは劇場版、というあざとい商魂逞しさにも素直に屈して、ウキウキと、でもいい歳したおっさんがという羞恥心も抱きつつ、映画館へとレッツラゴ~したのでした。

 このアニメ、お話も面白いけど絵がとにかくきれい!日本のアニメってやっぱスゴいわ~と、その美しさ、独創性、躍動感に感嘆、圧倒されっぱなしでした。惹き込まれてあっという間のエンディング。至福の時間でした。主人公の竈門炭治郎を筆頭に、敵も味方もキャラクターが個性的で魅力的なのも、このアニメの人気要因。私がいちばん好きなのは、やっぱ炭治郎です。優しくて純真でけなげで、そして強い!その満身創痍な不撓不屈さには惚れ惚れします。少年だけど抱かれたいです。劇中、魘夢の手先が炭治郎の夢の中に侵入して、彼の精神の核を破壊しようとするのですが、炭治郎のあまりの清澄な心の風景に畏怖、感動して邪心を捨ててしまう、というエピソードがあったのですが。私の心の中なんて掃除してない便所みたいなもんだろうな~と自嘲、苦笑してしまいました。

 炭治郎の仲間たち、善逸や伊之介、妹のネズ子(漢字がわからん)も大活躍してましたが、この劇場版の真の主役は煉獄杏寿郎になってましたね!鬼殺隊の最強戦士グループ、柱の一人である炎柱の煉獄さん、めっちゃカッコよかった~まさに漢(おとこ)!あの独特なしゃべり方、言葉遣い、何か伝染してしまいます。うむ!とか、よもやよもやだ!とか、不甲斐なし!とか、つい(いや、故意に)に日常会話で使って若い子のウケ狙いに余念がない私です。華やかにダイナミックに鮮やかな煉獄さんの炎の呼吸技にも瞠目。明るいキャラと壮絶悲壮な運命とのギャップにも萌え。炭治郎たちへの振る舞いなど、まさに理想の先輩、理想の上司!抱いて!

 今回炭治郎たちが戦う鬼、魘夢もなかなか強烈にユニークな敵でした。ユニセックスな見た目とキャラ、オネエな鬼というのが独特。ねんねんころりこんころり、息も忘れてこんころり、鬼が来てもこんころり♫魘夢が歌う子守唄がツボでした。夢の中、精神世界での戦いは、クリストファー・ノーラン監督の「インセプション」を思い出させました。夢から脱出するために自分の首を斬って自決しまくる炭治郎にヒィ〜!ヤメテー!でした。魘夢もなかなかの強者でしたが、あれでも十二鬼月の中では下っ端なんですよね〜。十二鬼月の幹部の一人、終盤に登場する猗窩座が体育会系イケメン。煉獄の強さに男惚れして、彼を執拗に魔道へとスカウトする猗窩座でしたが。ほとんど煉獄に恋してましたよね~。鬼滅ってかなり腐女子人気も高いのでは?腐の妄想、萌えを刺激するBLのかほりがかなりするし。列車で寄り添って眠ってる煉獄と炭治郎。可愛い炭治郎が男らしい煉獄の肩にチョコンと頭を預けてる姿、狙ってるとしか思えんシーンだった。ネズ子以外、女はほとんど出てこないし。ドキ!男だらけのボーイズ映画でした
 無限列車編でもう終わり!ってことは、よもやないはず。TVで第2弾が始まるのか、再び映画化なのか、ブームが終わらないうちに続きをお願いしたいですね
 
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夏は海!君は全裸!

2020-09-11 | 日本映画
 「ぐらんぶる」
 キラキラなキャンパスライフを夢見て島の大学にやって来た伊織は、ある朝大学の構内で目覚める。彼は全裸で、前夜の記憶がなかった。服と記憶を求めて全裸でキャンパス内を駆けずり回る伊織の前に、彼と同じ状況にある耕平が現れ…
 始まって5分ぐらいで、何でこんな映画を観に来てしまったんだろう…と、後悔と自己嫌悪が脳内をぐるぐるしましたが、観てるうちにだんだんとその延々と続くくだらなさに慣れてきてしまい、気づくと最後まで退屈することなく観ることができました。少なくとも感動押し売りなお涙ちょうだい系邦画よりは、こっちのほうが好きです。でも、しょーもないシーンや台詞には、正直ほとんど笑えませんでした。こういう精神年齢の低い笑いを楽しむには、私はもう年を取りすぎてます。ここは笑うところ!と言わんばかりなギャグシーンがかなりしつこく、冒頭のタイムリープしてるみたいな繰り返しとか、VAMOS踊りとか、くどいな~と辟易したのも事実。

 ただひたすら、若い男たちが全裸になってドタバタ大騒ぎするだけの内容は、映画というより深夜ドラマみたいでした。昔の深夜ドラマではセクシーギャルがお色気担当でしたが、この映画ではそれが若い男、というのがまあ斬新というか独特ではありました。若い男の全裸をイヤというほど堪能したい人にはおすすめできる作品です。
 くだらない内容ですが、すごく一生懸命、体を張って笑わせようと頑張ってることはいじらしいほど伝わってきて、最近の何だか鼻につくだけの上から目線なお笑い芸人には感じない好感、爽やかさを感じました。くだらなさ、しょーもなさを笑えなかったのは残念でしたが、みんな楽しそうで元気いっぱい、その底抜けの明るさは、コロナ禍で余儀なくされている不安や閉塞感を、ちょっとだけ拭ってくれました。

 この映画で最も良かった点は、ベタベタしい友情とか、暑苦しいスポ根とか、甘々な恋愛とか、ありきたりすぎる幼稚で陳腐なネタがほとんどなく、ただもうほんとにバカやってるだけ、元気なだけだったところ。それがむしろ潔かったです。
 主演の竜星涼と犬飼貴丈のハイテンションおバカ演技&全裸には、なかなかの役者魂を感じました。この映画に出るの、さぞや捨て身の勇気が要ったことでしょう。若手俳優としてもイケメンとしても、そこまでずば抜けた存在ではない俳優にしか演じられない役、といえば失礼でしょうかいまいちブレイクできない現状を打破、というより、もうヤケクソ自暴自棄に近かったのでは。ここまで若い男優がすっぽんぽんに、なるだけでなく、すっぽんぽんで珍奇な動きやポーズをするのを見たのは初めてです。仕事とはいえ、よーやったわと感嘆。

 伊織役は「賢者の愛」とか「テセウスの船」とか、ドラマでちょこちょこ見かける竜星涼くん。どちらかといえば冷たい暗い役のほうが多そうですが、この映画ではトンマでお人好しな役と、とっちゃん坊や顔が可愛かったです。耕平役の犬飼くんは「美しき罠」で田中麗奈の弟役だった子?きれいな顔ですが、年取ったら崩れそう。二人とも背が高くて服を着てたらスタイルが良くてカッコいいのですが、肝心の全裸は肉体美ってほどではないです。痩せすぎ色白すぎ。これが韓流俳優だったら、さぞや眼福なセクシー筋肉祭りだったことでしょう。ダイビングサークルのメンバーはみんなムキムキでしたが。主役二人は、仲良しだけどイマドキの若者らしいドライな個人主義というか、イチャイチャベタベタはせず、BLのかほりが全然しなかったのも残念なポイント。二人のVAMOS踊りはすごく可愛かったです。伊織の叔父さん役、高嶋政宏のVAMOS踊りは衝撃と戦慄!高嶋さんも、あれよくやったな~。

 ダイビングサークルなのにダイビングシーンはほとんどありません。ラストにあるダイビングシーンでの海が、すごくきれいで清涼感あり。潜ってみたくなりますが、ダイビングってすごく体力が要るんですよね~。私、沖縄に行った時に一度だけ経験しましたが、楽しかったというよりただもう疲れた。なのであれが最初で最後
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クーデターの男!

2020-03-30 | 日本映画
 「動乱」
 昭和7年の仙台連隊。宮城大尉が隊長をつとめる中隊の初年兵・溝口が脱走する。溝口を追って彼の生まれた村落に来た宮城は、溝口の姉・薫と出会う。薫は親の借金のため遊郭に売られようとしていた…
 70・80年代の邦画が好きです。今のようにポリコレが蔓延しておらず、内容も演出も自由で斬新で、男優女優の演技も濃密で果敢でした。昭和の代表的な映画スターといえば高倉健と吉永小百合。二人が共演したザ・スター映画です。二人ともほとんど神格化されたスター。演じる役同様に、お二人の人柄にも容貌にも嫌な感じとか汚らしさとか安っぽさとかが微塵もなく、真面目で清廉で高潔なイメージ。超大物なのに俗悪なセレブ臭がない、けど親しみやすい庶民臭もない。今はもういない美しく遠い存在の銀幕スター。出演作も役もその聖なるイメージを損なわないものばかりで、ファンにとってはそれが大事なこと。宗教のような崇拝と応援なのです。私も健さんと小百合さまは好きです。強い日本の男、美しい日本の女の理想形だとも思います。でも、つまんない、おもしろくない、とも思ってしまうのです。いつも同じような役、美しいイメージを守る、という役者にはあまり魅力を感じないんですよね~。イザベル・アジャーニとかイザベル・ユペールとかもいつも同じような役でイメージも不変なんだけど、二人の場合はヤバいキ○ガイ系なので常に衝撃と驚愕がある。健さんと小百合さまにはそれらがない。

 この映画でも、過酷な運命に翻弄されながらも気高く美しく生きる男女、という従来の二人で、新鮮味はゼロです。でも、やはり今の男優女優にはない神々しい映画スターのオーラが。チャラチャラした軽薄さがないところは、むしろ新鮮かもしれません。禁欲的で朴訥で寡黙な健さんは、まさに聖なる男。いかに自分がカッコいいか、演技がうまいかをひけらかす、目立ちたがりの衒気な俳優が多い中、健さんの静けさ無骨さは本当に希少で貴重。軍服や着物姿も絵になる。棒読み?と思うことも多々ありますが、それが漢(おとこ)役には適してるんです。感情的なペラペラ長台詞とかオーバーな表情や動きなど、演技派きどり演技はウザいだけです。軍人だけどどこか仁義、任侠なテイストがあるところも健さんらしかった。

 「細雪」や「天国の駅」など、80年年代の吉永小百合は本当に美しく、なおかつ“女”な演技に挑戦していました。女優として最も輝いていた時代です。以後も美しさは保っておられる彼女ですが、キレイキレイなだけなポリコレ大女優として今に至っています。この作品の小百合さまも、可憐でけなげで慎ましくも強い芯を秘めているヒロインですが、遊女姿や蓮っ葉な態度、手を出してくれない健さんに抱いてよ!と切なくすがったりなど、清らかながらも生身の女な彼女は、セックスもウ○コもしそうにない今の彼女と比べると、魅力的で新鮮です。着物が本当に似合う女優。今の人気女優はみんなデカくて細く、ムダにスタイルがいいので着物がさまにならない。健さんと小百合さまの濡れ場がある!と聞いていたのですが、とても濡れ場とは言えないラブシーンでガッカリ。ついに結ばれるシーン、小百合さまの美しい恍惚顔を映してるだけで、健さんはほとんど見えない
 志村喬、米倉斉加年、桜田淳子、田中邦衛など、今はもう見られない出演者が。桜田淳子の恋人の将校役、にしきのあきらはアイドル枠だったのでしょうか。もっと凛々しい俳優にしてほしかった。健さんに寵愛されていたと言われている小林稔侍の若き日の姿も。当時の軍人さんたち、あんなに厳しい生活や言動を強いられていたのですね。脱走しただけで死刑とか陛下、大御心、とかいった言葉を口にする時、ピシっと姿勢を正す軍人たち。これも現代では見られない光景ですね。亡国を憂い怒りの決起に奔った2・25事件の将校たち、草葉の陰で安倍一味(by 北の将軍さま)をどう思ってることでしょうか。安倍一味を見ていると、いっそクーデターが起きればいいのにと思ってしまいます。
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赤い不貞

2020-03-15 | 日本映画
 「Red」
 専業主婦の塔子は、エリートの夫と愛する娘と何不自由ない裕福な家庭を営んでいたが、何か満たされないものを感じていた。そんな中、昔の恋人である鞍田と再会した塔子は…
 直木賞作家、島本理生の小説の映画化。映画を観る前に、原作を読んでみました。女の性や自立を生々しくもシビアに描いた原作と違って、かなりソフトで甘い内容になってました。ぶっちゃけ、女性向けに作り過ぎ、韓流ドラマっぽいスウィーツ映画になってしまっていてガッカリ。不倫劇なのに、不倫の背徳感とか罪悪感、理性を失って性愛に溺れてしまう怖さがほとんどなくて、観てるほうはヒロインが不倫してることを忘れてしまいそうに。ヒロインの夫や娘の存在が希薄だったせいもあり、甘々な恋愛っぽくなってしまってた。

 不倫に共感なんて、もちろん今のご時世できるわけがありませんが、自分には無縁な大人のファンタジーとして、これまで多くの映画で描かれてきた魅惑のテーマ。不倫の傑作といえば「隣の女」と「ハッピーエンド」がすぐに思い浮かびます。両作のサスペンスみたいな緊迫感、滑稽でもあるデスパレート感など、このスウィーツ邦画には微塵もありません。内容もシーンもキレイキレイすぎて、バカバカしくなってしまうほどウソ臭く、気恥ずかしくなったり鼻白んでしまうばかりでした。映画を韓流もどきにしてしまったこと、そしてヒロインに魅力を感じられなかったことが、この映画の敗因でしょうか。瀟洒な家に住んで、きれいな服を着て、カッコいい仕事して、おいしいものを食べて、いい男とアバンチュール、なんてリア充すぎるバラ色生活、不満や苦悩なんてバチが当たりますよ。いい御身分だよね、としか思えなかった。悩んだり迷ったりせず、夫と愛人の間をしたたかにしなやかに行き来する悪女っぽい非ポリコレなヒロインのほうが魅力的だったはず。

 映画では無神経で独善的な夫の存在が希薄だったせいもあり、ヒロインが追い詰められ限界突破する展開に違和感。私ならあんなブルジョア生活を送れるなら我慢する!貧困や夫のDVに苦しんでる女性からしたら、ふざけんなと噴飯ものなヒロインかもしれません。ラストなんか、もろ韓流ドラマなお涙ちょうだい化してしまい、よく原作者が許したな~と呆れてしまった。原作は、やっぱそこに落ち着くよな~な現実的でドライな結末だったのに。不倫ドラマに切なさとか涙の感動とか、スウィーツを持ち込むとこんな映画になってしまう、という悪例になってしまいました。

 ヒロイン役の夏帆が、何だかな~…目も鼻も口もデカく、おまけにガタイもデカい…のはまだいい。「隣の女」のファニー・アルダンも男みたいなデカさだったし。風貌ではなく、可愛い子ぶりっこっぽい演技にイラっとしてしまった。声も喋り方も女の子すぎる。清楚な若奥様ファッションも可愛いすぎ。性愛演技も中途半端で、この題材で脱がないとかありえない。すごい不自然。別に彼女の乳が見たいわけじゃないけど、そういうところが映画をスウィーツにしてる一因なんですよね~。共演者が彼女のことを覚悟のある女優とか評してたけど、どこがじゃ~とツッコミたいです。あれぐらいで覚悟の演技、と褒められるのが今の邦画のレベルの低さを如実に証明してます。「ハッピーエンド」のチョン・ドヨン級の演技ができる女優が邦画にもほしい。

 ヒロインの不倫相手役は、大好きな妻夫木聡この映画、もちろんブッキー目当てで観に行きましたブッキー、やっぱ可愛いですね~。おじさんになったけど、可愛いおじさん。そしてブッキー、やっぱエロいわ~。若い頃からのフェロモンが、加齢臭になることなく今も濃厚。裸も特に肉体美じゃないのに、浅黒い肌とほどよく脂ののったムチっとした体つきがたまらん。そしてブッキーといえばのディープキス!あんな激しくねっとりした口吸いする男優、ブッキー以外いませんよ。最近は池松壮亮や松坂桃李など若手も台頭してますが、今もブッキーが邦画濡れ場王です。でも何か物足りない、ブッキーならもっとできたはず、な中途半端さが歯がゆかったです。

 濡れ場は得意なブッキーですが、演技は相変わらず大根です。ニヒルでクールな大人の男の役を一生懸命演じてるのですが、何かコントみたいで笑えたわ~。おじさんになったとはいえ、退廃的な中年男の役をするのはまだ、見た目も雰囲気も可愛すぎる。原作者はトニー・レオンをイメージしてたようだし、私は今のイ・ジョンジェが適役だと思います。悲しいかな結局男優も、日本は人材不足ってことですね。ヒロインに絡んでくる男性社員役の柄本佑が、ファンの方ゴメンなさい、顔も喋り方も気持ち悪い!最近人気があるらしいけど、私には解からない。あの役、ちょっと前の向井理とか田中圭ならぴったりかも?ヒロインの夫役の間宮祥太郎は、イケメンだけどデクノボウな演技。二人はとても重要な役なのに、別にいなくても成り立つような存在にされていたことなど、脚本もダメすぎる映画です。
 
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痴情小説家

2019-11-24 | 日本映画
 「火宅の人」
 作家の桂一雄は、妻子をよそに若い愛人との情事に溺れ、私生活を題材にした小説を書いて糊口をしのいでいた。いつしか女たちとの相克に疲れ、放浪の旅に出る桂だったが…
 やっぱり昭和に作った昭和の映画はいいですね~。とにかく内容も脚本も演出も演技も、すべてにおいて濃ゆいです。最近の邦画は薄すぎて味気ない。そんな物足りなさを抱いてる若い人たちにも観てほしい昭和映画のひとつです。実在の作家、檀一雄をモデルにした主人公、桂の生き方や女性関係なんて、令和のポリコレ的には完全にアウトです。でもポリコレ的な人の話なんか全然面白くありません。他人と深く関わることが苦手な私なんかからすると、眉をひそめるどころか憧れさえする桂の激しく自由な人生です。とにかく桂先生、元気すぎる。創作と情痴に東奔西走するバイタリティには驚嘆するばかりです。

 妻、愛人、行きずりの女。おっさんの三股なんてフツーなら醜悪で気持ち悪く、卑劣で許せないはずなのですが、桂先生ってばいつもドタバタ、アタフタと忙しく大真面目に一生懸命なので、薄汚いゲス不倫おやじには見えないんですよね~。ドロドロした情念の修羅場というよりも、どちらかといえばコミカルな喜劇っぽかったのが意外でした。笑えるシーンが多いです。「仁義なき戦い」もそうでしたが、深作欣二監督の作品ってテンションが高く激しすぎて、何だか滑稽でもあるんですよね~。かなりすっとぼけてる桂だけでなく、女たちもみんなちょっと変わってるというか、泥沼不倫でありがちな陰惨さや深刻さが希薄で、みんな元気でマイペース。桂に翻弄されつつも彼に人生を左右されない強さが、珍妙かつ魅力的でした。男はズルくて可愛い、女は愚かで強い。無気力な今の男女は少し見習ってもいい、元気な男ざかり女ざかり情痴話でした。

 恋多き作家役を、緒形拳が情熱的かつ愛嬌たっぷりに演じてます。こういう役、こういう演技ができる俳優、今いないよな~と、あらためて緒形拳の偉大さ、貴重さを思い知りました。無責任で自分勝手だけど、何か憎めない、つい許してしまう情けなさ、優しさがまさに女殺し。とぼけてるけど男の欲望でギラギラと脂ぎって、ぜんぜん乾いてないぬめりがエロい。この映画でも濡れ場たっぷり。キスというより口吸い、全裸の体の重ね方や絡め方とか、緒形拳が得意だった濡れ場には、今の邦画ではもう見ることができない生臭い官能であふれています。子どもたちには優しく面白い父で、女たちには常に優しく言葉遣いが丁寧なところが可愛かったです。

 緒形拳をめぐる3人の女たちを演じた女優たちも、すごくチャーミングな好演。今の女優たちにはない独特な個性と美しさ。妻役のいしだあゆみが、なかなか強烈です。尽くす妻、耐える妻なんだけど、桂に対してすごいつっけんどんで冷淡な言動が笑えた。感情を押し殺した無表情で、家事に介護に夫の仕事の手伝いにテキパキ動く姿や、ダメ亭主を結局は手のひらの上で転がしてる貞女の余裕など、昭和の良妻賢母って感じをよく出してました。新興宗教にハマって変なお祈りをする奇態もクレイジーで笑えました。いしだあゆみは当時、大ヒットドラマ「金曜日の妻たちへ」など女優として絶頂期。顔も体もガイコツみたいに細いけど、ドスのきいた低い声と喋り方なので、ぜんぜん弱々しく見えません。緒形拳とは「野獣刑事」でも共演してましたね。
 桂の愛人役の原田美枝子が、若々しく大胆!緒形拳との濡れ場では、豊満な美巨乳を惜しげもなくさらし、もまれ吸われまくってヨガる顔も声もエロい!けど、隠微さはなくとにかく明るく元気。桂と旅を共にする行きずりの女役は、深作監督の恋人だった松坂慶子。彼女も当時、美貌といいキャリアといい絶頂期。ほんと美人!「事件」や「鎌田行進曲」など、美しいけど人が善すぎる男運の悪い場末の女、といえば彼女の十八番。彼女も濡れ場では美裸体を披露してます。昔はトップ女優といえどバンバン脱いでました。今はもうそんな果敢な女優もいないし、それを必要とする映画も作られなくなりました…
 昭和に作った昭和の映画ならではの昭和感、昭和臭も、全編に沁みわたっているのも魅力。桂一家の家とか暮らしぶりには、ノスタルジーを覚えずにはいられません。あと、桂の日本脳炎で寝たきりになってしまった息子が入院する病院。今のポリコレ邦画では絶対ありえない障害児描写です。
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行儀よく真面目なんて出来やしなかった

2019-11-17 | 日本映画
 「君が君で君だ」
 親切にしてくれた韓国人女性に好意を抱いた青年二人は、女性の元恋人も加えて女性が好きな尾崎豊、ブラッド・ピット、坂本龍馬に成りきってアパートに同居し、そこから女性の生活を観察し始めるが…
 うう~ん…何とも意味不明で気持ち悪い映画でした。狂気の恋は私の大好きなテーマなのですが、この映画のそれは全然怖くも美しくもなくて、ただもう幼稚で騒々しいだけ。ストーカー行為の内容が、もう不愉快極まりない。日がな一日、向かいの部屋から被害者の一挙手一投足をのぞき見、盗撮、盗聴してワーワーヒーヒー騒いでる姿は、もう見るに耐えない醜さ。被害者に直接は何もしないところが、返って卑劣なんですよ。脳みそがイタんでるわりにはコワレ人の怖さも面白さもなく、まるで中学生のオナニーを延々と見せられてるような気色悪さでした。見守ってる!と言いながら、彼女が体を売るのも自殺しようとするのも止めず、彼女の苦境に興奮してるだけなのも本当に気持ち悪かった。あんなおぞましいストーカー行為を長い間犯しながら、大したしっぺがえしも罰も受けず、純愛を貫いたみたいな展開には失笑。フツーは刑務所か精神病院でしょ。正気に戻ったら、真っ先に自分たちがやってたことを慙愧、後悔、反省すべきなのに。こんな形の純愛もあるんだ、みたいなノリが片腹痛いです。

 内容も演出も台詞も俳優たちの演技も、作り手側は楽しんでるのがすごく分かる。でも観客を置き去りにし過ぎ。それもまた私の苦手な、自分たちが楽しければいい的な内輪受けっぽくて不快でした。いちばん許せないのは、大好きな俳優をそんな内輪で狎れ合い映画に引きずりこんで無駄づかいしたこと。この映画を観たのは言うまでもなく、大好きな池松壮亮が主演だからです。池松くんも昔から出演作に、かなり当たり外れがある俳優。最近はハズレのほうが多くて、ほんと残念です。もうちょっと出演作を選んでほしいわ~。

 尾崎豊になりきってる男役の池松くん。何でこんな映画に出たのとトホホになりつつ、やはり若手随一の魅力と実力はギラリと光らせてはいるんですよ。焦点が定まってない瞳のヤバさ、そして美しさは、やはりイザベル・アジャーニっぽくて、こんなふざけた映画ではなく真面目に本格的に狂気を活かせる映画に出てほしい。女の下着姿になって踊ったりお祈りしたり、女の髪の毛をムシャムシャ食べる壮亮くん、キモいけど笑えます。無精ひげのない顔での映画は久々?やっぱすごい童顔!肌が浅黒く少し荒れてるところも、某事務所のメイクバッチリ顔が苦手な私のとっては、生々しい男の魅力が。

 女の下着に着替える時の上半身裸とか、尾崎豊に扮してる時のTシャツ姿で見える腋毛とか、可愛いコドモ顔だけど相変わらず性的フェロモンが濃厚。壮亮くんじゃなくてブサメンやフツメン俳優だったら、確実に観るのリタイア、いや、始めっから観てなかった。壮亮くんの暗いエロ可愛さの前では私、まるで甘い樹汁に吸い寄せられるカブトムシになってしまいます。そして壮亮くんだけでなく、もう一人私の大好きな俳優もこの映画には出演してます。ワタシ的には夢の共演!それがなぜこんな映画でと、ますますトホホ!

 ストーカーされてる韓国人女性の彼氏の借金を取り立てにくるチンピラ役で、向井理が登場。「ザ・ファブル」でのヤーさん役も割とイケてたムカイリー。今回も乱暴でヤサグレたコワいお兄さん役を好演してます。ムカイリーって善人役よりもイケズな役のほうが似合うと思う。気持ち悪いストーカーどもにビシっと手も口も出すムカイリーがカッコよかったです。薄い眉毛もチンピラファッションも、何やったってオシャレに見えるところもムカイリーらしい。超小顔で長身で、スラっとしたスタイルのよさにも毎度ホレボレ。壮亮くんとのツーショットは、ほんと私の妄想が成就したかのようだった。次は本格的にW主演で競演を!高村薫の「冷血」がもし映画化されるとしたら、二人にぴったりだと思うの!

 韓国人女性のクズ彼氏が、可愛いイケメン!アホなチャラい演技も良かったし、誰?と思って調べたら、高杉真宙という子でした。他の出演作の彼も見てみたいものです。ブラッド・ピット男役の満島真之介もイケメンなのですが、オーバーすぎる演技がかなりウザかったです。イケメン俳優たちには、大したことないのに俺ってスゲー演技してるだろ?と自己満足してるだけの学芸会ではなく、下手でもいいので大胆さとか衝撃がある演技や役に挑戦してほしいものです。
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さすらいの殺人鬼

2019-11-12 | 日本映画
 「復讐するは我にあり」 
 昭和38年の福岡。現金強奪のため男性二人を殺害し逃亡した榎津巌は、大学教授を騙って潜伏した浜松の旅館の女将ハルとねんごろになるが…
 昭和40・50年代の邦画が大好きな私。中でもこの映画はmyベスト3には確実に入る傑作!うっすい軽い今の邦画と違い、昭和の重さと暗さが映画を観た!という満腹感、満足感を与えてくれます。人間関係も社会も空気さえも、どよよ~んと淀んでいた昭和という時代。同じ狂気的な凶悪犯罪でも、現代と違って濃密な情念や愛憎によって引き起こされていたものが多かった。おどろおどろしくも活力に満ちていた昭和がよく描けた映画といえば、まっさきにこの映画が思い浮かぶ私です。当たり障りのないポリコレなんか蔓延してなかった、本当に良き時代でした…

 警察の捜査網をかいくぐって日本各地で殺人&詐欺行脚、世間を震撼とさせた西口彰事件をモチーフにして佐木隆三が書いた直木賞受賞作小説を映画化したもの。凶暴な殺人と知能犯罪である詐欺を両立させた事件の特異性で、血塗られた日本凶悪犯罪史に黒い名を刻んだ西口彰をモデルにした榎津巌、その神出鬼没ぶり、被害者たちのと庶民的で人情あふれる?ふれあい、まさに殺人鬼となった寅さんです。寅さんは殺人も詐欺もセックスもしませんが、自由な風来坊で自分ルールな思考回路、調子がよくて口達者、図々しいけど人好きのするところなど、寅さんを彷彿とさせる巌。あの口のうまさ、演技力、コミュ力など、有効に活かしてまっとうに生きてたら、さぞや成功した人生を送れたことだろうに。騙してるという意識が薄く、弁護士や教授になりすましてるうちに現実と虚実の区別がつかなくなってる、みたいな様子も病的。殺さなくても?と思うような殺人ばかりなのなのは、どうしようもない殺人衝動?まさに生まれてきてはいけなかったかのような害悪人間。ロンブローゾの性悪説を、巌を見てると信じたくなるほどです。

 とんでもない戦慄の殺人鬼だけど、何か憎めない愛嬌がある巌。よせばいいのに深く関わってしまう被害者たちの気持ちは、まったく理解できないものではありません。昭和の繁栄に取り残された者たちが、肩寄せあうように巌と親しくなる姿が、微笑ましくも切なくて。巌とハル母娘とのやりとりは、絶望の中の刹那のぬくもりやユーモアがありました。巌の正体が殺人鬼と気づいた後のハル母娘の態度は、本当に孤独な人、絶望した人にしか理解できない悲しい人情なのではないでしょうか。

 巌役は、私にとって今なお日本最高の名優である緒形拳。この映画の彼、もう最高で~す!こんな演技、そしてこんな俳優、もう二度とお目にはかかかれないでしょう。まさに不世出の役者。今の人気俳優なんて、緒形拳に比べたら水道水やティッシュみたいに薄くて軽い。緒形拳のファンなら、今の邦画やドラマにはとても満足できないはず。この映画の緒形拳も、とにかくギラギラしてます。鬼気迫るって言葉は、彼のためにあるといっても過言ではない。目つきとか鋭すぎてヤバい。怖いけど、同時に女を濡らす色気もハンパない。低音の美声がセクシー。残虐な殺人シーンではまさに悪鬼ですが、それ以外はひょうひょうとトボけた感じが可愛いんですよ。福岡弁?『にゃにゃ』とか方言が可愛かった。緒形拳といえば昭和の濡れ場王ですが、この映画でもエロかった。緒形拳は当時42歳ぐらい。あたらめてキムタクとか嵐とか、いい年して幼稚な無難タレントだなと失笑。

 緒形拳以外の出演者も、むせそうになるほどの昭和な名演。巌の父役の三國連太郎は、晩年のスーさんとは別人。息子の佐藤浩市にはないイヤらしさ、妖気が強烈。巌の妻役の倍賞美津子の生々しい色香!湯煙の中で義父を誘惑するシーンでの、熟れた巨乳ポロンがエロすぎ。ハル役の小川真由美も、可愛くて哀れな熟女を好演。彼女も濡れ場では熟れたおっぱいを披露。彼女たちのように女の業を妖艶に演じることができる女優も、今はもういなくなってしましたね。エロ熟女といえば、かつてロマンポルノで男たちのリビドーを刺激しまくった白川和子や絵沢萌子も顔を出してます。ハルの母役の清川虹子、巌の母役のミヤコ蝶々など、ばあさん女優たちも強烈な存在感。ハルの旅館に派遣されて巌の相手をするデリヘル嬢役の根岸季衣も、なにげに印象的でした。
 昭和に撮影したからこその昭和な雰囲気も、この映画の魅力です。当時の駅とか汽車の中、ダイヤル電話、古い連れ込み旅館やボロいアパートなど、平成になってセットやCGで作ったものではないリアルさに、昭和を生きた者は郷愁を覚えることでしょう。
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熟女のたくらみ

2019-10-31 | 日本映画
 「よこがお」
 訪問看護師の市子は、派遣先の家の娘である基子、サキ姉妹と親しくしていた。そんな中、サキが誘拐される事件が起きる。逮捕された犯人は、市子の甥だった…
 やっと観ることができました~公開2日目の昼過ぎ、劇場はほぼ満席の盛況ぶりでした。同じ深田晃司監督&筒井真理子主演の「淵に立つ」では家族が崩壊しましたが、今回は女の人生が崩壊してました。他人の不幸は蜜の味的な怖さと面白さ、という点で2作は共通しています。深田監督らしい独特な心理描写は不変だけど、今作にはワイドショー的な俗悪さ、下世話さがあって、前作よりわかりやすくとっつきやすい仕上がりになってたような。事件捜査ではなく、犯罪をめぐる相克や愛憎を描いていた80年代の良質な2時間ドラマっぽかったです。

 一寸先は闇、好事魔多し。生きてると思いもよらぬ不運、不幸に見舞われることもありますが、市子の場合はまさに神も仏もない理不尽さ。自業自得な転落ならまだしも、市子は何も悪いことはしてない、むしろ善徳を積んでる聖女のような女なのに、どうしてあんな目に遭わねばならなかったのでしょう。前世ではよほどの極悪人だったのでしょうか。

 他人に優しすぎ、他人を信じすぎな市子を見ていて思ったのですが。あんまり穏やかに優しく生きてたら、悪意や歪んだ愛情など邪なものが入り込む隙ができてしまうのかな。善良さって、人間をユルく弱くしてしまうのかもしれません。ある程度の意地悪さとか猜疑心は必要なのかも。あの時ちゃんと正直に言ってたら。あの時あんな話を気軽にしなければ。もうちょっと市子が用心深く計算高い女だったら、あんな悪夢は避けられたかもしれません。でもでも、絶対に失敗なんかしない、自分に傷がつくようなことはしない、不運も不幸も寄せ付けない、鉄の鎧のような自己防衛で自分を守ってるガチガチな女なんか、ほんとつまんないです。破局や破滅とは無縁なヒロインよりも、市子のように不幸を手繰り寄せてしまう女のほうが魅力的です。

 あれよあれよと社会的信用も女の幸せも失ってしまう市子、その原因を作った者への復讐を企てるのですが。憎い女から男を寝取るという、何ともショボい復讐。しかも結果的に復讐にならず、骨折り損で終わってしまうというトホホさ。もっと冷酷で残忍な方法とか、狂気的な大暴走とかにしてほしかった。でも、そんないかにも作ったようなサスペンスやホラー復讐ではなく、悪女にはなれない善良な女の、疲弊し破綻した精神状態での精いっぱいな自暴自棄って感じが、返って生々しい悲惨さで暗澹となりました。それにしても。被害者が殺されたわけでもない誘拐事件に、マスコミってあんなに執拗に騒ぐものでしょうか?

 市子役の筒井真理子が、またまた魅力的な好演。美人だけど美人すぎない、高嶺の花的な大女優ぶってないところが、親しみを抱けて好きです。ふんわり優しそうなところが素敵。熟女ヘアヌードを披露する大胆なエロさも、きれいなだけ、可愛いだけな女優とは違います。邦画には貴重な大人の女優です。基子役の市川実日子の個性的な容貌が、愛しさあまって憎さ百倍になる女心の怖さ、切なさによく合っていました。

 市子が接近する美容師役は、これまた邦画の至宝男優である池松壮亮。「だれかの木琴」でもイカレた熟女に迫られる美容師役でしたね。相変わらず若いくせに倦怠感と色気がハンパないです。雰囲気とか喋り方とか、もう人生に倦んだ熟年みたい。でも髭があっても隠せない童顔と、少年っぽい笑顔が可愛くて市子と動物園や美術館でデートするシーンの彼、落ち着いた大人の男っぽくてカッコよかった市子とのセックスシーンは大したことなく、濡れ場とは言い難くて残念。でも押し入れでの市子との全裸対面座位は、なかなかエロかったです。おかしな熟女が近づいてきてもあまり意に介さず、簡単に寝たりする無防備で投げやりなアンニュイ青年役が似合う壮亮くんは、やはりワラワラいるイケメンなだけの若手俳優たちとは一線を画してますね。ちょっとフランス男っぽい退廃が独特で素敵です。
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