NHK BSで放送されたBBCのドラマ「検察側の証人」を観ました~。原作はこれまで何度も映像化されてるアガサ・クリスティーの戯曲です。
終戦直後のロンドン。富豪の中年女性エミリーが何者かに撲殺される。家政婦の証言やエミリーの遺言書などから、エミリーと親密な関係だった青年レナードが逮捕される。弁護士のメイヒューはレナードの無実を証明しようとするが、レナードの妻ロメインは法廷で夫に不利な証言をし…
映像化の中では、巨匠ビリー・ワイルダー監督の「情婦」が有名。アガサ・クリスティ―原作の映画やドラマといえば、どちらかといえば明るい楽しい内容や演出のものが多いのですが、このドラマはかなり非アガサ・クリスティー的というか、すごく暗く陰惨な悲劇にアレンジされていました。「情婦」も悲劇的なラストでしたが、名優チャールズ・ロートンが演じた主人公の弁護士はユーモアたっぷりなキャラで、付き添い看護婦とのやりとりとかワイルダー監督らしい軽妙なコメディタッチで、往年のハリウッド映画の香り高い愉快な映画に仕上がってました。でもこのドラマときたら、何でここまで?と首を傾げてしまうほど救いのない話になっちゃってるんですよ。メインキャラ全員が深刻な問題を抱えていて、話が進むにつれてどんどん病的に狂気的になっていくんですよ。もはや事件の真相はどうでもよくなってくるほどに。
真犯人の狡猾で冷酷な殺人もさることながら、原作にはないメイヒュー夫妻の愛も希望も失われた老夫婦関係が鬱すぎる。ミステリーよりもそっちに重点が置かれているようなドラマかもしれません。心を殺して続ける絶望と苦痛に蝕まれた人生が重すぎる、けど日本の軽い捜査ものドラマに飽き足らない人には見ごたえがあるのではないでしょうか。レナードとロメインの歪んだ愛も、日本のドラマでは描かれない複雑さと怖さで面白いです。
当時の格差社会の不公平さ、正義のなさも怖い。貧乏なレナードや外国人であるロメインへの社会の扱いが非道すぎる。特に警察、ありえんほどに人権無視。今では考えられないけど、当時は当たり前なことだったんですね。
裁判と老妻に翻弄されるメイヒューも哀れでしたが、やっぱ最大の被害者は殺されたエミリーです。いくら自分勝手で若い男好きな淫乱ばばあでも、あんな殺され方されていいわけない。女主人への歪んだ愛執からレナードを憎悪する家政婦の、悲惨すぎる末路も後味が苦い。他人を支配したり傷つけたり利用したり、陥れたり呪ったりしたら必ず自分に返ってくるのです。でもやはり、映画やドラマでは黒い欲望と愛憎まみれな業の深い人間のほうが、清く正しい善人よりも面白いです。
このドラマが楽しみだったのは、私が今いちばん注目してるイギリス俳優、ビリー・ハウルがレナード役だったから(^^♪
彼、やっぱいい役者ですね!全然イケメンでも美青年でもない、どっちかっつーたらブサイクかもしれない顔なのですが、雰囲気とか佇まいがすごい美しいんですよ。ルックスで売ってない彼みたいな俳優が、長く活躍できるんですよね~。虐げられた社会底辺者の役なのですが、小汚さとかうらぶれた感じは全然なくて、貧しげな服装でもどこか優雅で上品。ぜったい犯人じゃないよ、早く助けてあげて!と心が痛む必死さ哀れさだけど、ロメインや家政婦の供述によるシーンでは冷酷で残忍な悪人の顔も見せる、謎めいた複雑な二面性のある役を好演してたビリー。スラっと背が高くてスーツやタキシードが似合うところも英国男優。それにしても。レナード役って、若い男優なら演じてみたい、挑戦しがいのある魅力的な役なのでは。
メイヒュー役はイギリスのバイプレイヤー、ハリウッド映画にもよく出てるトビー・ジョーンズ。ちっこいけど見た目と演技で存在感は強烈。見た目だけの俳優など易々と食ってしまう名優です。心身ともに病んでるのに必死すぎる姿が悲壮で怖いです。殺されるエミリー役は、SATCで人気を博した熟女キム・キャットラル。若い男を金で弄ぶ金持ちババア役ですが、あまりイヤらしくなかったのは彼女がサバサバしたアメリカ女性だからでしょうか。
最も重要な役、「情婦」では大女優マレーネ・ディートリッヒが演じたロメイン役のアンドレア・ライズバラは美人ですが、地味なところが役に巧く活かされてました。犯人が仕掛けたトリックはあまりにも有名。大胆で衝撃的ですが、現代では絶対に通用しませんよね~。証人や情報提供者の素性は徹底的に調べるだろうし、もし同じことすればすぐにバレます。
↑ 雰囲気が美しいビリーの新作、タハール・ラヒム共演のNetflixドラマ「ザ・サーペント」楽しみ(^^♪
終戦直後のロンドン。富豪の中年女性エミリーが何者かに撲殺される。家政婦の証言やエミリーの遺言書などから、エミリーと親密な関係だった青年レナードが逮捕される。弁護士のメイヒューはレナードの無実を証明しようとするが、レナードの妻ロメインは法廷で夫に不利な証言をし…
映像化の中では、巨匠ビリー・ワイルダー監督の「情婦」が有名。アガサ・クリスティ―原作の映画やドラマといえば、どちらかといえば明るい楽しい内容や演出のものが多いのですが、このドラマはかなり非アガサ・クリスティー的というか、すごく暗く陰惨な悲劇にアレンジされていました。「情婦」も悲劇的なラストでしたが、名優チャールズ・ロートンが演じた主人公の弁護士はユーモアたっぷりなキャラで、付き添い看護婦とのやりとりとかワイルダー監督らしい軽妙なコメディタッチで、往年のハリウッド映画の香り高い愉快な映画に仕上がってました。でもこのドラマときたら、何でここまで?と首を傾げてしまうほど救いのない話になっちゃってるんですよ。メインキャラ全員が深刻な問題を抱えていて、話が進むにつれてどんどん病的に狂気的になっていくんですよ。もはや事件の真相はどうでもよくなってくるほどに。
真犯人の狡猾で冷酷な殺人もさることながら、原作にはないメイヒュー夫妻の愛も希望も失われた老夫婦関係が鬱すぎる。ミステリーよりもそっちに重点が置かれているようなドラマかもしれません。心を殺して続ける絶望と苦痛に蝕まれた人生が重すぎる、けど日本の軽い捜査ものドラマに飽き足らない人には見ごたえがあるのではないでしょうか。レナードとロメインの歪んだ愛も、日本のドラマでは描かれない複雑さと怖さで面白いです。
当時の格差社会の不公平さ、正義のなさも怖い。貧乏なレナードや外国人であるロメインへの社会の扱いが非道すぎる。特に警察、ありえんほどに人権無視。今では考えられないけど、当時は当たり前なことだったんですね。
裁判と老妻に翻弄されるメイヒューも哀れでしたが、やっぱ最大の被害者は殺されたエミリーです。いくら自分勝手で若い男好きな淫乱ばばあでも、あんな殺され方されていいわけない。女主人への歪んだ愛執からレナードを憎悪する家政婦の、悲惨すぎる末路も後味が苦い。他人を支配したり傷つけたり利用したり、陥れたり呪ったりしたら必ず自分に返ってくるのです。でもやはり、映画やドラマでは黒い欲望と愛憎まみれな業の深い人間のほうが、清く正しい善人よりも面白いです。
このドラマが楽しみだったのは、私が今いちばん注目してるイギリス俳優、ビリー・ハウルがレナード役だったから(^^♪
彼、やっぱいい役者ですね!全然イケメンでも美青年でもない、どっちかっつーたらブサイクかもしれない顔なのですが、雰囲気とか佇まいがすごい美しいんですよ。ルックスで売ってない彼みたいな俳優が、長く活躍できるんですよね~。虐げられた社会底辺者の役なのですが、小汚さとかうらぶれた感じは全然なくて、貧しげな服装でもどこか優雅で上品。ぜったい犯人じゃないよ、早く助けてあげて!と心が痛む必死さ哀れさだけど、ロメインや家政婦の供述によるシーンでは冷酷で残忍な悪人の顔も見せる、謎めいた複雑な二面性のある役を好演してたビリー。スラっと背が高くてスーツやタキシードが似合うところも英国男優。それにしても。レナード役って、若い男優なら演じてみたい、挑戦しがいのある魅力的な役なのでは。
メイヒュー役はイギリスのバイプレイヤー、ハリウッド映画にもよく出てるトビー・ジョーンズ。ちっこいけど見た目と演技で存在感は強烈。見た目だけの俳優など易々と食ってしまう名優です。心身ともに病んでるのに必死すぎる姿が悲壮で怖いです。殺されるエミリー役は、SATCで人気を博した熟女キム・キャットラル。若い男を金で弄ぶ金持ちババア役ですが、あまりイヤらしくなかったのは彼女がサバサバしたアメリカ女性だからでしょうか。
最も重要な役、「情婦」では大女優マレーネ・ディートリッヒが演じたロメイン役のアンドレア・ライズバラは美人ですが、地味なところが役に巧く活かされてました。犯人が仕掛けたトリックはあまりにも有名。大胆で衝撃的ですが、現代では絶対に通用しませんよね~。証人や情報提供者の素性は徹底的に調べるだろうし、もし同じことすればすぐにバレます。
↑ 雰囲気が美しいビリーの新作、タハール・ラヒム共演のNetflixドラマ「ザ・サーペント」楽しみ(^^♪