まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

ベトナムに忘れもの

2020-07-01 | 北米映画 15~21
 「ザ・ファイブ・ブラッズ」
 ベトナム戦争で戦った退役軍人のポール、オーティス、エディ、マーヴィンは、戦死した仲間ノーマンの骨と、ひそかに埋めた金塊を探し出すためベトナムに集結し、かつて激戦地だったジャングルに再び踏み込むが…
 スパイク・リー監督待望の新作。前作「ブラック・クランズマン」がゴキゲンな傑作だったので、ほんと楽しみにしていました。今回は珍しく(初?)アメリカを飛び出して海外が舞台。しかも、ベトナムのジャングルでお宝探しという冒険映画。スパイク監督、新境地開拓!かと思いきや、今も昔もアメリカでは黒人がどれほど非道い目に遭っているかを告発、糾弾する従来のスパイク節は今回も健在、炸裂していました。

 今回は黒人への差別偏見だけでなく、ベトナム戦争(ベトナム人はアメリカ戦争、と言ってるんですね)におけるアメリカの非道さも描いていました。アメリカでは被害者である黒人も、ベトナム戦争では加害者になってしまった、憎むべき白人どもに加担して奴らの共犯者になってしまった、という自責や苦悩を描いたことが、冒険テイストよりもスパイク監督の新境地だと思いました。当時の実際の映像が頻繁に挿入されるのですが、射殺の瞬間や焼身自殺、赤ん坊の惨殺死体など、目を覆いたくなるような地獄絵図に暗澹となりました。

 元兵士の4人は、はじめは無駄に元気なアクティヴ老人風なのですが、ジャングルの奥へ進んでいくと同時に暗い心の深淵にも踏み込んでしまい、実は辛い人生を余儀なくされて破綻してることが明るみになるのが悲痛です。心身の消えない傷もですが、ジャングルに遺された地雷も戦争の罪な遺産。地雷を踏んでしまいドガーンと木っ端みじんになるシーンが、かなりホラーでゲロゲロ(死語)です。今でも昔の戦争のせいで苦しんだり傷ついたりしてる人がいる現実を突きつけられ、それとは無縁に平和に暮らしてることに罪悪感を覚えずにはいられませんでした。ラストの黄金争奪戦、まるでベトナム戦争の再現みたいで皮肉な展開でした。結局は自分たちの利益のためには他者なんかどうなってもいい、血を流すことも辞さないアメリカは、ベトナム戦争後も不変だという痛烈なメッセージのようでした。
 シビアで悲惨な内容なのですが、決して暗くヘヴィな感じにならないところがスパイク監督の魅力、力量です。ポップで軽快なノリと演出、ソウルフルな黒人音楽が好き。ラストにカメラ目線で静止している登場人物が、ぐい~んとこっちに動かされてくる演出は、ブラッククランズマンでもありましたね。トランプ大統領いじりもお約束?

 いま最も好きな黒人俳優、陛下ことチャドウィック・ボーズマン主演!とのことで、期待に胸弾ませていたのですが、んんん?!チャドウィック、主演じゃねーし!戦死したノーマン役の彼、4人の回想シーンにチョコチョコっと出てくるだけ!ブラックパンサーとはまた違う彼の魅力を堪能できると思ってたのに!騙された気分あまりの登場シーンの少なさ、見せ場のなさにガッカリしましたが、小さな役ながらチャドウィックを起用した理由もよく解かる。4人の精神的支柱な存在で、死後もトラウマのような思い出と影響を引きずらせるカリスマな役は、フツーの黒人俳優では説得力が出なかったでしょう。

 チャドウィック、共演の黒人俳優たちと比べると、やっぱ顔面偏差値の高さが顕著。悲しそうで真面目そうな顔が、過酷な宿命を負った役にピッタリ。もともと可愛い童顔なのですが、爺さん4人に囲まれてるので余計若く見えた。ベトナム戦争時代も現代も同じ爺さん俳優たちが演じてるので、彼らの息子にしか見えないチャドウィックが仲間、しかもリーダー役ってちょっと違和感。カッコいいけどちょっとしか見られないので、チャドウィックのファンは消化不良、欲求不満になるかも。同じNetflix映画なら、出ずっぱりの主演作「キングのメッセージ」のほうが、カッコいいチャドウィックを堪能できます。

 実質の主役は、ポール役のデルロイ・リンドー。なかなか鬼気迫る熱演。善と悪、正気と狂気で混濁した複雑な内面が怖くて悲痛でした。地雷撤去作業グループの女性メンバー役で、フランス女優のメラニー・ティアリーが出演していたのには驚きました。フランス映画を観たらかなりの確率で遭遇する売れっ子女優の彼女、まさかのアメリカ映画、しかもスパイク・リー監督の作品でも出会うとは。4人が裏取引する怪しいフランス人商人役が、すっかり老けて太ったジャン・レノでした。
 ベトナムにも行ってみたい!美味しいフォーが食いたい!ミャンマーにはいなかったけど、ベトナムにはイケメンが結構いそう?

 ↑ イケてるチャドウィック画像、集めてみました~(^^♪ほんとカッコイイ&カワイイ戦国時代の日本で織田信長に仕えたと伝えられてる黒人役の“Yasuke”は、コロナのせいで撮影延期になったみたい?残念!制作まで中止にならなきゃいいけど。ロケで日本に彼が来たら、相手役とは言わん、足軽役のエキストラでいいので共演したい!コメディや恋愛ものにも出てほしいな~
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スコットランドはイギリスにあらず

2020-05-19 | 北米映画 15~21
 「アウトロー・キング スコットランドの英雄」
 14世紀初頭、イギリスに侵攻され服従を強いられたスコットランド。仲間とともに蜂起したロバート・ブルースはスコットランドの王となり、イギリスから独立するための戦いに身を投じるが…
 中世イギリスの宮廷内権力争いや内乱を描いた映画やドラマは数多く観てきたけど、スコットランドの王室や政治情勢にはあまりなじみがありません。有名なメアリー・スチュアートの悲劇ぐらいしか思い浮かばない。この映画の主人公、ロバート・ブルースのことも恥ずかしながら存じ上げませんでした。ロバートが苦難の末にイギリスに勝利する物語なのですが、それにしてもイギリス、とことん悪者として描かれてました。その冷酷で残虐な支配者っぷり、イギリス人が観たら不愉快になるのでは。それとも、大英帝国に反旗を翻す者どもは容赦なく叩き潰す!な描写にはもう慣れっこになってる?この映画でも暴虐のかぎりを尽くしていてました。本当に非道いことをしてたんですね~。私のような無知な外国人が観たら、イギリス人は悪魔としか思えなくなるような映画、時代劇にせよ現代劇にせよ多いですよね~。

 これでもか!とスコットランド人を虐げるイギリス人。その方法がとにかく残酷!首つりした状態で、まだ生きてるうちに腹を裂いて内臓をエグリ出し!とかウゲゲゲ野蛮すぎてホラーです。エドワード1世とその息子である皇太子が、血も涙もない悪党。何をするにも、気に食わないから!言うことを聞かないから!自分の地位を守りたいから!という感情的で私的な理由なので、スコットランド人はもとよりイギリスの国民も可哀想。皇太子なんか、親父に愛されない認められないというフラストレーションのはけ口にしてるようだったし、人間的すぎる凡庸な人間が権力を握ったら怖いと思いました。

 イギリス側の横暴や暴虐のインパクトが強いせいか、主人公のロバート・ブルースの影がちょっと薄かったような。すごい辛酸をなめてるのに、そんな感じがあまりしない恬淡さ。これはおそらく、演じてたクリス・パインの個性によるところでしょう。偉業を成した中世の王さまらしいカリスマ性とか神秘性、重厚な風格とかは全然なかったけど、今まで見た中では最も男前でした。ワイルドな風貌、荒々しい演技も新鮮。初の時代劇に気合が入ったのか、まさかの全裸セックスシーン&全裸行水シーンにも挑戦。お尻もアソコも堂々と披露してました。ハリウッドの人気男優には珍しい頑張りは称賛に値します。

 勇猛果敢なシーンもカッコよかったけど、笑顔がとにかく優しいクリス・パイン。絶対いい人ですよ彼。だだやっぱ、ハリウッドのスマートなイケメンっぽさが拭いきれてなかったのが、ちょっと残念でした。白いセーターを着てるオシャレなセレブに見えたり。これは「キング」のティモシー・シャラメも同じでした。自国のロイヤルな貴人をアメリカ人のハリウッドスターが演じることについて、イギリス人やスコットランド人はどう思ってるのか気になります。

 ロバートの家臣役で、アーロン・テイラー・ジョンソンも出演。彼もイケメン。戦場シーンではまるで鬼滅の刃の伊之助みたいな猪突猛進キャラで笑えた。ロバートの妻役は、今年「ストーリー・オブ・ライフ わたしの若草物語」でオスカーにノミネートされるなど、最近躍進著しい気鋭の若手英国女優フローレンス・ピュー。ぶりっことは無縁なふてぶてしいまでの逞しさに好感。夫婦の営みシーンでは、彼女も堂々の脱ぎっぷり。健康的で瑞々しいおっぱいでした。

 イケズな皇太子役の俳優が、なかなかの好演&けっこうイケメン。誰?と調べてみたら、「ベロニカとの記憶」で主人公の若い頃を演じてた俳優と同一人物と知り驚きました。ベロニカではイケてなかったのに、今回の彼は別人のようにイケてました。ビリー・ハウル、わりと売れっこでいろんな映画に出てるみたい。今後が楽しみな役者です。
 ラストの英国軍VSロバート軍の激突バトルシーンは、これまた血みどろ血しぶきのホラーで、気の弱い人は観ないほうがいいかも。お話以上に、スコットランドの荒涼とした美しい風景に魅了されました。天気がいつも悪い陰鬱な空や空気感も、どこか透明感があって趣深いです。中世のイギリス、スコットランドの衣装も好き。華美ではなくシンプルなのが返って美しい。
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セクハラクーデター

2020-03-01 | 北米映画 15~21
 「スキャンダル」
 大手テレビ局FOXニュースの元キャスター、グレッチェン・カールソンがCEOであるロジャー・エイルズをセクハラで告訴する。騒動の中、被害に遭ったことがある花形キャスターのメーガン・ケリーは、沈黙を守るか共に闘うか迷い苦悩するが…
 シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビー、ハリウッドの大物女優3人の競演作。日本のCMレベル女優のキレイカワイイ学芸会にはもうウンザリ。美貌や安定路線、培った人気など、いろんなものをかなぐり捨てた恐れ知らずな役や演技、見た目で観客をドン引きに近いほど圧倒してこそ真の女優。すごい美女なのに、それを否定するような汚れ役や狂った役を果敢に演じることで定評のある女優が、一人だけでも十分濃ゆいのに三人も集合してしまった贅沢な映画、さぞや胸焼けのするような女優魂を見せつけられることだろうと、大きな期待を抱いて観ました。で、どうだったかというと…
 
 御三方とも評判通りの力演でした。美しく見せたい好感を抱いてほしいという過剰な自意識や媚は微塵もなく、世にはびこる理不尽や非道を訴えたい!という真摯で強いメッセージ性ある役と演技にはただもう感服と畏怖あるのみです。シャー子さんは得意の自分崩しでほとんどご自身を消した顔になってたし、ニコキさんは億さずに容色の衰えをあらわにし、マーゴットは恥辱のパンチラ。CMの仕事が大事な日本の女優は絶対やらない、できない勇気と根性でインパクト強烈です。3大女優の競演が売りな映画なのですが、3人が一緒の画面でそろうのはエレベーターで鉢合わせするシーンだけ。ほぼ個人プレーなので、女優同士の火花散ら演技合戦という期待はハズレて残念。そしてこの御三方、他の出演作でもですが、鼻息が荒く力が入り過ぎな傾向があるので、見ていてちょっと疲れることも事実。どう見ても泣き寝入りなんかしそうにない、やられたら倍返し間違いなしな女たちなので、被害者の痛みや苦しみはあまり伝わってこなかったです。

 3大女優の演技もだけど、セクハラパワハラに心身を傷つけられる女の痛みや屈辱、反旗を翻す女の怒りと強さ、というゴリゴリなフェミニズムが結構しんどい。セクハラパワハラ野郎や老害をギャフンと言わせてスカっとするはずの内容なのに、痛快さやカタルシスはほとんどなかった。3人の女たちの強さや行動力には心底頭が下がるけど、共感とか好感は抱けませんでした。彼女たちは被害者なんだけど、毒を食わらば皿まで的にセクハラパワハラに耐えたり見て見ぬふりをしたりしてまで出世したい、富と名声を得たいという野心や打算もまた生々しくイヤらしく、女たちの蜂起と糾弾もほとんど私憤にかられた報復っぽくて、女の恨みの深さに戦慄。良識的で平等と協調が保たれた清い世界では、きっと彼女たちは満たされず輝けなかっのではなかろうか。汚いものを栄養に強く美しくなっていく、そんなヒロインたちのように思えました。

 それにしても。老害社長たちのセクハラパワハラは非道すぎ醜悪すぎて、ほんと吐き気がしました。出世のためとはいえ、女たちよく我慢できたよな~。あんなことが当たり前のように横行する環境、怖すぎる異常すぎる。有能で美しいと、受難もまた多いんだな~。有能でも美しくもない私は幸せ者かも。権力を振りかざして立場の弱い者を虐げたり食いものにするような卑劣なゲス野郎どもは、手ひどい天罰が下ればいいと心底願いますが、私のように強い賢い男には従順になる意識が低い愚か者には、攻撃的で好戦的なフェミニズムが少し息苦しく重くも感じられます。

 ジョン・リスゴーの強権的なゲス老害っぷりの醜いパワフルさも圧巻。後半に登場する弁護士役は、マーゴット・ロビー主演の「アイ、トーニャ」でアカデミー助演女優賞を受賞したアリソン・ジャネイでした。TV局オーナーの次男役の俳優がイケメンだった。アメリカのTV事情とか政治情勢とかに無知なので、登場人物の関係性とか肩書、立場がよく分からず戸惑うことが多々ありました。トランプ大統領、ほんとど準主役級な登場回数と存在感です。日本の女子アナたちも、この映画のようにパワハラセクハラにまみれながらも、したたかにサバイバルしてるのかな。
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猫人間の怪奇譚SHOW

2020-02-24 | 北米映画 15~21
 「CATS キャッツ」
 ロンドンの路地裏に棄てられた子猫のヴィクトリアは、猫の集団ジェリクルキャッツと出会い仲間として受け入れられる。ジェリクルキャッツは年に一度の舞踏会で、天国へ昇って生まれ変われる者に選ばれるため歌や踊りを競っていたが…
 人気ミュージカルの映画化。製作者や監督はアカデミー賞も狙える評価やヒットを狙ってたはず。でも蓋を開けてみると全米では空前絶後の酷評で、アカデミー賞どころか最低最悪映画の汚名を被ってしまったのでした。そこまでボロクソな悪評だと返って、中途半端な好評作よりも観たくなります。私も思いっきりコキおろしてやろうと手くずね引いて観たのですが、うう~ん?言われてるほどなゴミ映画じゃなかったような。フツーに面白かったので、かなり拍子抜けしました。ハリウッドのミュージカル映画って、ほんとスゴい!と今回も感嘆しましたよ。歌も踊りも圧巻の迫力とハイクオリティさだし、セットなど美術も金がかかってることは一目瞭然で、およそ目を驚かすばかりでした。

 ただ、内容というか世界観が特異すぎて、しばらくついていけず追いてけぼり状態に。猫が歌謡コンテスト?勝ったら天国に昇って生まれ変われる?…ちょっと何言ってるのか解からないんですけど?なストーリーに、ただもう狼狽と当惑。私の想像力と許容応力が低すぎるのも問題だったのでしょう。中盤になって、ああこれはゲゲゲの鬼太郎の夜は墓場で運動会~♪的な世界なんだと無理やり自分に言い聞かせました。でもそれが延々と続くのは苦痛で、だんだんウンザリしてきたのも事実です。猫のコンテストとか大人には荒唐無稽でくだらない。子どもには意味不明で薄気味悪い。そこが大コケの大きな原因なのではないでしょうか。 

 可愛い猫ちゃんならいざしらず、猫、というか猫人間?の不気味なヴィジュアルを、生理的に受け入れられない人もきっと多かったはず。ほぼCGにされてしまった俳優たちが、何だか滑稽で可哀想になりました。ゴキブリ人間のマーチとか、アホらしすぎて笑えませんでした。選んだ猫を天国へ送る権限をもつ長老猫とか、魔術?を使う悪い猫とか、どういう経緯でそうなったの?な謎でした。コンテストの優勝者、じゃない優勝猫が最後に気球に乗せられ空へ飛ばされたのですが、生きたまま天国だなんて何か怖いしイヤだわ~。
 キャストは、長老猫役の大御所ジュディ・デンチと、元舞台俳優猫役のイアン・マッケラン、悪い猫の手下猫役の人気歌手テイラー・スウィフト、孤独な猫役のジェニファー・ハドソン、悪い猫役のエドリス・エルバ、といった有名どころが。デンチ御大、あれ歌ってると言えるの?マッケラン氏、あれ猫なの?ジェニファー・ハドソン、名曲「メモリー」を大熱唱しているのですが、うっとりと聞き入るような歌声ではなく、ヘタするとうるさい!と怒鳴られしまうかもしれない歌声。カッコいいはずのエドリス・エルバが、お笑い芸人演技で失笑を買うハメに。ヒロイン猫のヴィクトリア役、フランチェスカ・ヘイワードが可愛かったです。バレエみたいなダンスやクネクネした動き、本業はバレリーナと聞いて納得。

 手品猫役の俳優が優しそうなイケメンだったので、後で誰かチェック。ローリー・デヴィッドソンというイギリス人俳優でした。ウィリアム・シェイクスピアの青春を描いたTVドラマで主役を演じてる彼、なかなかの美青年ぶり。要注目の英国男子です。セクシー猫の日本語吹き替えを、Official髭男dismの藤原聡!が担当していたので、吹き替え版にも心惹かれたのですが、やっぱオリジナルを選んでしまいました。予告編でちょっとだけ聞けた藤原くんのハスキーでファンキーな歌声、なかなかセクシーで素敵。俳優仕事もぜひ挑戦してほしいものです。

 ↑ 猫というよりカピバラって感じな藤原くん嫁が羨ましい!
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悪夢のBL矯正施設!

2020-02-19 | 北米映画 15~21
 「ある少年の告白」
 アメリカ南部の田舎町で暮らす高校生のジャレッドは、自分が同性愛者であることを両親に告白する。敬虔なキリスト教信者である父によって同性愛者矯正施設へ入れられたジャレッドを待っていたのは、非道な精神的虐待だった…
 ひと昔前よりは社会的権利も認められるようになり、差別や偏見による嫌悪や拒絶も露骨ではなくなってはいるけど、今なおLGBTの人々にとっては生き辛い社会であることに変わりはありません。ストレートとの垣根も溝もなくなったなんて、まやかしに過ぎません。LGBTの苦悩や苦難には暗澹となりますが、それ以上に彼らを見下し虐げる連中の卑劣さには怒りよりも恐怖を覚えます。何でストレートというだけで自分たちはゲイやレズビアンより上だと思えるのでしょう。そんな連中の心根の低さ浅さも救い難いけど、元来はとても愛情深く善良なのに、宗教の影響で同性愛者を拒んでしまう人たちにも絶望してしまいます。

 ジャレッドのパパとママ、すごく善い人たちなのに。信仰心ゆえに愛する息子を悲しませ苦しめる彼らの冷酷さ偏狭さに、宗教って本当に人を救ってるのかなあと懐疑的になってしまいます。いろんな宗教がらみの映画を観てきましたが、どれも苦痛と息苦しさしかない。正してあげねば罰してあげねば、と神の名のもとに同性愛者たちの心身を傷つける宗教き◯がいたちが怖い。
 ジャレッドがブチ込まれる矯正施設が、思ってたほど非道い場所じゃなかったので安堵、と同時に肩透かし。てっきり戸塚ヨットスクールとかアイルランドの修道院みたいな虐待地獄かと思ってました。でも罪悪感や自己否定を強いるカリキュラムは、立派な精神的虐待でおぞましい。おそらくトランプさんを支援してる人たちの大半が、この映画の親たちのように同性愛者を否定して、自分たちの狭い価値観の鋳型にはめようとする敬虔な善き人たちなんだろうな。
 本当の自分を両親に受け入れてもらえず、施設で精神的苦痛を強いられるジャレッドが痛ましいのですが、ひたすら従順に孤独に忍耐、やがて心が壊れるといった感じではなく、わりと自我も反抗心も強いところが、映画をお涙ちょうだいにしてませんでした。はじめはちょっとウジウジしすぎだとは思ったが、あんな保守的な田舎町だと仕方ないよな~と同情。NYやLAみたいな大都会だったら、もっと堂々と自分らしく生きられたでしょうに。男との初体験がレイプに近かったのが可哀想だった。でも、大学でも施設でも次々とイケメンたちが近づいてきて、人間関係はかなりリア充。ブサイクで独りぼっちなゲイに比べると、ナンダカンダですごく幸運な子でした。

 ジャレッド役は、「マンチェスター・バイ・ザ・シー」でオスカー候補になり、「スリー・ビルボード」などでの好演も忘れがたいルーカス・ヘッジズ。美男とかイケメンとかとは違うけど、素朴で賢く健全なアメリカンボーイの見本みたいな風貌。ちょっと若い頃のマット・デーモンを思い出させますが、マットよりもデリケートで暗い感じ。劇中ずっと憂い表情で、こっちの気も滅入る演技でした。可愛い面もちょっとは見せてほしかったです。BLシーンもほとんどなし。腐としてはもうちょっとドキ!とかキュンとくるシーンがほしかった。

 ジャレッドのパパ役はラッセル・クロウ、ママ役はニコール・キッドマン、オーストラリア出身の大物スターが夫婦役。ラッシー、まるで元お相撲さんみたいなデップリした体型に。かつての野獣な魅力は微塵も残ってません。息するのも苦しそうだった。演技に支障が出てる?太り過ぎ!ニコキさんがただ夫の言いなりになる無力な奥さん役をやるはずがなく、中盤になって母のラブパワーを発揮する力演で面目躍如。施設長役のジョエル・エドガートンは、この映画の監督も兼任。

 ジャレッドが施設で出会うミステリアスな青年役で、人気監督のグザヴィエ・ドランが登場。チョイ役なのかと思ってたけど、わりと出番は多かった。もう見るからにただ者じゃない、ワケアリ感ビンビンな雰囲気。ちょっと濃い目の美男子で、俳優としても魅力的。同じく施設で出会う金髪の青年役のトロイ・シヴァンも、印象的な美形。ドラ美も彼もストレートの男にはないゲイの匂いをプンプン放ってますが、キャマキャマしくは全然なくて、むしろフツーの男よりも毅然と剛毅な男らしさがあります。初体験相手は、最近よく見るイギリス人俳優のジョー・アルウィン。半ば無理やりジャレッドのア○ルに突入してしまったけど、ジャレッドもそれまで思わせぶりというか、相手が踏み込んでくるのを待ってる雰囲気出してたのに、いざとなるとダメよダメダメは女々しい。それにタイプじゃないブサイク男ならまだしも、アルウィンくんみたいなイケメンならラッキーなのではとも。あのとき素直に抱かれ快楽に身を委ねてたら、ひょっとしたら幸せなカップルになれたかも。ジャレッドが展覧会で知り合い親密だけどプラトニックな一夜を過ごす男の子役の俳優も可愛かったです。

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謎解きはランチの前に

2020-02-12 | 北米映画 15~21
 「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」
 世界的な推理小説家ハーランが、家族が集った誕生パーティの翌朝に死体となって発見される。ハーランの莫大な遺産をめぐって家族が色めき立つ中、名探偵のブノワ・ブランは独自の捜査と推理で犯人を突きとめようとするが…
 評判通り、期待以上に面白かったです!田舎にある広大な屋敷、そこに集まったワケアリ家族、そして殺人。アガサ・クリスティー風ミステリーな舞台設定と登場人物、だけどイギリス的な優雅さとか上品さはなく、アメリカンな下品さとパワーであふれたハイテンションドタバタコメディ、という珍味な作品でした。あっと驚くトリックとかアリバイ工作とか、思いもよらぬ真犯人と動機、といったものは正直ありません。本格的ミステリのファンからしたら物足りないかもしれません。どちらかといえばミステリよりもコメディ色が濃ゆいかも。容疑者たちの醜い遺産争族っぷりが、滑稽に愉快に描かれています。

 それにしてもアメリカ人って。やっぱイギリス人とは違いますね~。すごい豪快で正直。殺人で小細工とか似合わない。オゲレツな口汚い罵り、このヤロー!!とすぐに掴みかかろうとする攻撃性などは、アガサ・クリスティーの世界ではほとんど見受けられない、まさにアメリカン気質。でも陰湿さとか病的なところがないというか、あっけらかんと明るいところもまたアメリカン。一家はみんな移民の看護師マルタに対してフレンドリーで気前がいいけど、実は彼女を見下していて、下々の者に優しくしてやってる、施してやってるというバレバレな親切ごかしな偽善、格差の現実は、「沈黙の女 ロウフィールド館の惨劇」や「パラサイト 半地下の家族」の金持ち一家とカブります。相続人になったマルタに手のひら返しの差別意識丸だし攻撃を開始、泥棒!出てけ!と大騒ぎする一家は、移民を嫌い排除しようとするトランプ大統領が君臨する今のアメリカを思い出させました。皮肉なラストは、トランプさんへの揶揄のようでした。

 この映画、脚本も演出もすぐれていますが、キャストがこれまた素晴らしいです。地味だけど、いい役者ぞろい。みんな楽しそうにノリノリで好演してます。まず、名探偵ブノワ・ブラン役のダニエル・クレイグ。見た目はもう007にしか見えない彼ですが、表情や細かな仕草などで007色を払拭し、007とはまったく別人の新キャラになりきってます。彼ってもともと007になる前は、地味ながらいい役者として評価は高かったんですよね~。スーツが相変わらず似合う!イギリス風の紳士探偵だけど、実はアメリカ南部の田舎おっさん、という実態も笑えた。ちょっとキザなダンディ、トボけた感じでグイグイしつこく迫り、突拍子もない言動をするブランは、ポワロというより古畑任三郎系?そんなに名探偵とは思えず、どちらかと言えば事態をややこしくする困ったおじさんって感じでしたが。

 長女役はベテランの名コメディエンヌ、ジャーミー・リー・カーティス。カッコいいスタイリッシュ婆さん!彼女の夫役は、どこかで見たことがあるような男前おじさん。あ!ドン・ジョンソンだ!マイアミバイス!な、懐かし~!今でもカッコいいわ~。素敵熟年だけど軽薄な言動で笑いを誘います。次男役はハリウッド随一の怪優マイケル・シャノン。そこにいるだけで不気味!亡き長男の嫁役はトニ・コレット。「ヘレディタリー」での超怪演には度肝を抜かれましたが、この作品でも顔芸が強烈でした。殺される家長ハーラン役は、老いてから輝きを増した名優クリストファー・プラマー。苦み走った冷酷そうな鬼顔、でも切ない親心が泣かせます。重厚かつエレガントな雰囲気は、やはり英国俳優ならでは。

 看護師マルタ役のアナ・デ・アルマスは、実質のヒロイン。心優しく誠実だけど、いざとなるとしたたかにもなるチャーミングな役で、ダニエル・クレイグより出番も見せ場も多かったです。嘘をつくと嘔吐するという変な癖が、犯人を追い詰めることになる伏線にもなっていて、脚本がほんと優秀。いちばん美味しい役もらってのは、孫(長女の息子)役のクリス・エヴァンズかも。あの真面目で正義感あふれたキャプテン・アメリカが!人もなげな傲慢不遜さ、下品で憎々しい罵詈雑言と毒舌が非道すぎて爆笑しちゃいました。キャプテンアメリカ以外の彼を見たのは初めてでしたが、ズルい役イヤな役もなかなかハマってました。そしてどんな役でもイケメン。セーターがカジュアル、かつアメリカの金持ちっぽさをよく出してました。黒人刑事役のキース・スタンフィールドもなかなかのイケメンでした。

 美しくも怪奇な刃の館も見どころです。あんなに広いと管理が大変そう。奇抜でユニークなインテリアや置き物、面白いけどあんないろんなものに囲まれてたら落ち着いて暮らせんわ~。この映画、続編も決定したみたいで楽しみ。またいい役者をそろえてほしいものです。ダニエル・クレイグ、007を卒業してもまた新シリーズで稼ぐ予定?日本でぜひリメイクしてほしいわ。理想妄想日本版は…

 ブノワ・ブラン ・・・ 本木雅弘
 マルタ ・・・ 小松菜奈
 長女の息子 ・・・ 竹内涼真 
       ・
 長女・・・山口智子
 長女の夫・・・ 唐沢寿明
       ・
 次男・・・ 竹野内豊
 長男の妻・・・ 鈴木保奈美
       ・
 刑事A ・・・ 小澤征悦
 刑事B ・・・ 金子大地
 長男の娘・・・ 新木優子
 次男の息子・・・ 鈴木福
 家政婦・・・ 筒井真理子
       ・
 ハーラン・・・ 片岡仁左衛門

 こんなん出ましたけどぉ~?
 熟年美男モックンに名探偵役をやってほしい!ヤな男な涼真くんも見てみたい。唐沢&山口夫妻の久々の共演や、山口&竹野内のロンバケ以来の姉弟役も話題になること間違いなし!


 
 
 
 
 

 
 
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ちびる!おっさんずスピード

2020-01-28 | 北米映画 15~21
 「フォードVSフェラーリ」
 元レーサーであるカーデザイナーのキャロル・シェルビーは、アメリカ最大の自動車会社フォード・モーターズから、24時間耐久レースのル・マンでフェラーリに勝つ車を作りだすようオファーをされる。天才的なドライバーだが今は小さな自動車工場を営むケン・マイルズをスカウトし、彼とル・マン出場を目指すキャロルだったが…
 車にもモータースポーツにもあまり興味がない私ですが、すごく楽しめました!仕事帰りのクタクタ状態でのレイトショーだったので、ヘタすりゃ爆睡かなと危惧してたのですが、驚異的な映像と音響のおかげで長い上映時間ながら一睡もできませんでした!まるでドライバーと同乗しているかのような高速体感。なかなかのスリルと快感でしたが、車に酔う人やジェットコースターとかが苦手な人には、ちょっとキツイかも。ワイルド・スピードもそうですが、カッコいい車がデンジャラスに爆走するのを見るのは楽しいけど、憧れはしないですね~。マネしたいとも思わない。私って骨の髄まで保守的で小心者なんです。安全運転がモットーです。スピード違反はダメ!絶対!

 それにしても。スピードレースって、ほんとんど自殺行為だよな~。劇中、炎上したりクラッシュしまくるレースカー。生きてるのが奇跡な死と隣り合わせの高揚感なしでは生きられない男たち、私なんかからするとほとんど病気。レースに身を捧げるキャロルとケンを衝き動かしてたのは、夢とか挑戦ではなくスピードというカルマのように感じました。あと気になったのは、大破したり炎上したりする車の処分方法とか、ものすごい量の排ガスとかガソリン。この映画、環境問題少女のグレタさんが観たら、How dare you!と激怒するに違いありません

 中盤から後半は、ほぼ大迫力のレースシーンだけで、人間ドラマとかはほとんどありません。それが返って贅肉を削いだようなスッキリした映画にしていました。恋愛とか家族愛とか、余計なベタベタしいエピソードは除かれていて、ひたすらスピードと勝利のために奮闘する男たちのロマンがメインになっていました。キャロルとケンの友情も、厚いけど互いの私生活や心に踏み込むことはせず、あくまで車で繋がったクールな関係だったのも好感。一度だけ中学生みたいな取っ組み合いしたのが微笑ましかったです。ケンの奥さんが、ちょっと言動がいい女気取りすぎで鼻についたわ。

 キャロルとケンを翻弄するフォードとフェラーリの内幕、大人の事情が興味深かったです。キャロルとケンに感銘を受け支援するフォード社長ですが、盲信はせずあくまでビジネス重視な狸爺なキャラ。頂点に立つ者は純真で善良なだけじゃダメ、ズルさも汚さも大事なんですよね。キャロルとケンの邪魔をする重役の、いかにも小物なセコい妨害や干渉にはイラっとしましたが。金にものをいわせて何でも思うようにしようとするフォード社長を見下し突っぱねるフェラーリ社長は、まさにアメリカを蔑むヨーロッパのプライドの高さ所以。二人ともまるでマフィアのボスみたいな風貌と手下への態度で笑えた。

 決戦のル・マンに挑むフォードのGT40、赤いフェラーリがカッコいい!マスタングやポルシェなど、車好きにはたまらんであろう名車が妍を競っています。私が特にいいな~乗ってみたいな~と感嘆したのは、キャロルが普段乗ってたオープンカーです。
 私がこの映画を観たのは、もちろん車やレースが目的ではなく、W主演のマット・デーモンとクリスチャン・ベールの競演、ということは言うまでもありません(^^♪
 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のレオナルド・ディカプリオ&ブラッド・ピットほど派手ではりませんが、こっちも十分に超大物の事件な競演。クリベーは子役、マットもまだ20代前半の頃から。ずっと二人を応援してきた私からすると、ほんと感無量な二人の成熟ぶりです。二人ともおっさんになった。でも、すごくいい感じのおっさんに。

 まず、マット。おっさんになったけど、脂ぎった中年ではなく爽やかで若々しい。ゴリゴリしい体つきが好き。その貫禄といい恰幅といい、年齢とともに増す篤実さ頼もしさといい、ちょっとトム・ハンクス路線?大物になっても威張った感じがしないところも共通点。若い頃は鼻もちならない天才役が多かったマット、今でも優秀な人物役がほとんどですが、昔と違って角がとれて柔らかくなった。大人になったんだな~。真の主役はクリベーに譲って、主人公を守り支える一歩退いた控え目なマットも、新鮮かつ役者としての余裕を感じさせました。

 ケン役のクリスチャン・ベールは、いい男というよりいい役者としてすっかり地位を確立してますよね~。極端に太ったり痩せたり見た目の変化が激しく、作り込みすぎる演技が見ていて疲れるクリベーですが、今回は素に近い風貌で、エキセントリックながらも天真爛漫、愛嬌たっぷりなクリベーもなかなか珍しく、役者としての幅の広さに感服。レースシーン同様、一流俳優の演技力と魅力にも酔える快作になってます。同じカーレース映画でも、ゲス不倫大根と14歳で隠し子男の「オーバードライブ」は、学芸会の見本のようなトホホ映画でしたけど。

 どんなにエモい衝突や仲良しぶりを見せつけても、二人ともいい男だけど色気がないので、BLの匂いは全然なし。腐女子が妄想を楽しめるカップリングではありませんが、最近はレオ&ブラピのワンハリもですが、男同士の恋や性愛ではなく友情を超えた精神的な愛を描いた、いわゆるブロマンス映画が人気。ブロマンス好きな人なら、信頼と敬意で結ばれたマット&クリベーの絡みに萌えるのではないでしょうか。

 ↑マットも今年で50歳!クリベーも46歳。まさに男ざかりですね~

 ↑ マットの最新作はリドリー・スコット監督、アダム・ドライバー共演の時代劇“The Last Duel“で、久々に親友ベン・アフレックと脚本も担当してます
 
 ↑クリベーの最新作は何と!マイティ・ソーのシリーズ第3弾!元バットマンがマーベル映画に?!

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少年よ王座に就け

2020-01-07 | 北米映画 15~21
 ゴールデングローブ賞は、ちょっと意外な結果に。

 作品賞 1917 命をかけた伝令(ドラマ)
     ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(ミュージカル/コメディ)
 監督賞 サム・メンデス
 主演男優賞 ホアキン・フェニックス(ドラマ)
       タロン・エガートン(ミュージカル/コメディ)
 主演女優賞 レニー・ゼルウィガー(ドラマ)
       オークワフィナ(ミュージカル/コメディ)
 助演男優賞 ブラッド・ピット
 助演女優賞 ローラ・ダーン
 外国語映画賞 パラサイト 半地下の家族

 作品賞と監督賞は、伏兵快挙!って感じ。驚喜だったのが、タロン・エガートン!アダム・ドライバーにも獲ってほしかったけど、ホアキンもスゴかったので納得。レニゼルは苦手な女優だし、そっくりさんモノマネ演技も好きじゃないので、スカ子のほうに軍配が上がってほしかったです。ブラピはこれでますますオスカー受賞の確率が高まった?ついにブラピもオスカー俳優か〜。パラサイトの外国語映画賞はもう鉄板。韓国映画初のオスカーとなりそう。来週発表のオスカーノミネーションが楽しみですね!

 ↑タロちゃん、おめでと!オスカー候補になりますようI wish!
  
 「キング」
 15世紀のイギリス。父王への反発から王宮を出て放蕩生活を送っていたハル王子は、父の死後ヘンリー5世として王位を継ぐ。国内の反乱やフランスとの戦争など、深刻な内憂外患にヘンリー5世は立ち向かうが…
 大好物なジャンル、イギリス王室ドラマ。ロイヤルな人々の家族関係や権力争いが、殺伐と血生臭いのがいいんですよね~。王族も貴族もワイルドな野蛮人で、ちっとも高貴じゃないし優雅じゃなくて、皇室をめぐる政争記である平家物語とかみたいに、盛者必衰や諸行無常といった耽美さが全然ないところなど、日本とのお国柄の違いがわかって興味深いです。とにかく激しくて血塗られたトンデモ話やホラー話でいっぱい、ネタの宝庫である英国王室ですが、この映画の主人公であるヘンリー5世も有名。そのドラマティックな生涯と活躍を描いたシェイクスピアの戯曲は、多くの名優たちによって舞台だけでなく映画化ドラマ化もされてます。

 奔放な青春、父王や廷臣たちとの確執、内乱やフランスとの戦いetc.2時間弱の映画よりも大河ドラマ向けな波乱万丈さですが、この映画…何か盛り上がりに欠けるというか、すごく平坦で淡々としてて暗くて、あくび数回、リタイア寸前。劇的なエピソードや人間ドラマでいっぱいなのに、退屈になってしまったのが不思議で残念。同じくハル王子/ヘンリー5世を主人公にした「ホロウ・クラウン 嘆きの王冠」はすごく面白かったのに。脚本と演出の問題もあるのでしょうけど、いちばんの敗因はハル王子/ヘンリー5世に魅力が欠けてたこと。ホロウ・クラウンのハル王子/ヘンリー5世はチャーミングな好男子だったのに。これは演じてたトム・ヒドルストンの魅力と力量の成せるわざだったのでしょう。とはいえ、この作品のティモシー・シャラメが俳優としてトムヒより劣ってるとか、魅力と演技力がないとか、そういうことではありません。ただ単に、彼には相応しくないミスキャストだったということです。

 ティモたん、ぜんぜんイギリスの王さまに見えん民衆や兵士を鼓舞し鬼神のごとく勇猛果敢に戦う英雄役を、見た目もキャラも草食文系男子の代表格みたいなティモたんにオファーするなんて、無茶ぶりにもほどがあります。引き受けるティモたんもどうかしてる。誰もが畏怖しひれ伏してしまうカリスマや威厳なんて、ティモたんじゃなくても若手イケメン俳優には荷が重すぎます。ヘンリー5世になってからのティモたん、違和感ありまくり。台詞まわしの力強さとか男らしい挙措など頑張ってたのですが、いかんせんルックスが。顔も体つきも雰囲気も、良い意味でも悪い意味でもモダンすぎるんですよね~。「君の名前で僕を呼んで」の主人公エリオ役は、まさに彼のために用意されたような一世一代のハマリ役でした。自堕落でアンニュイなハル王子の時は、ちょっとエリオを彷彿とさせましたが。時代劇でも、芸術や遊興を優雅にけだるく楽しむ貴族の青年役ならほんとピッタリなんだけど。この映画でも、パリまたはニューヨークのオシャレ男子に見えて仕方なかったです。

 ティモたん、独特の風貌と魅力なので、それを活かせる役を演じてほしいです。何でもこなします!的なオールマイティ俳優を目指す必要はないと思う。ブリティッシュイングリッシュだけでなく、流暢なフランス語も駆使するなど、さすがインターナショナルで高学歴なティモたん。同世代の若手俳優とは一線を画してます。それにしてもティモたん、すごい美男に見える時とキモいお笑い芸人みたいな顔に見える時のギャップが激しいそこも彼の個性ですね。若い頃のレオナルド・ディカプリオとカブりますが、レオとはまた全然違う年齢の重ね方をすることでしょうね。
 ハル王子の親友でヘンリー5世の腹心となるフォルスタッフ役は、最近は監督としても活躍してるジョエル・エドガートン。フォルスタッフってブサイクな巨漢ってイメージだし、あんな思慮深いキャラだったっけ?ジョエルのフォルスタッフはカッコよすぎ。意外な好演だったのが、フランスの皇太子役のロバート・パティンソン。苦手な俳優ですが、性悪で残忍で愚劣な役はすごい似合う!今後は癖の強い悪役で活路を見出しそう。ヘンリー5世と結婚するフランスの王女役で、実生活でもティモたんの恋人であるリリー・ローズ・デップが登場。両親であるジョニー・デップとヴァネッサ・パラディのどっちにもよく似てる!けど、両親のほうがキレイカワイイ
 イギリスの時代劇は、衣装や王宮など建造物や室内装飾も、華美さはなく地味で重苦しいけど、シンプルでスタイリッシュなカッコよさがあって好きです。

 ↑「レディバード」の監督&主演女優と再結集の「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」が、近日日本公開のティモたんです。ティモたんとそんなに年が変わらないはずのシアーシャ・ローナンが、すでに貫禄ある熟女に見えるレオ&おケイみたいに大出世してね!
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理想の離婚

2020-01-05 | 北米映画 15~21
 「マリッジ・ストーリー」
 ニューヨークで活動する舞台演出家の夫チャーリーと別れ、息子を連れてロスの実家に戻り女優として再起を目指すニコールだったが、息子の親権をめぐってチャーリーと争うことになり…
 評判通りの秀作でした!結婚はパっとサっとできちゃうけど、離婚となるとそうはいかないんですね~。離婚するために必要かつ消耗する時間や気力を想像しただけで、やっぱ独りがいい!なんて寂しく気楽な我が身をかえりみてしまいます

 夫婦が傷ついて悩むだけでなく、子どもの親権という難題が重すぎます。この映画を観ていて思ったけど、子どもにとってはほんといい迷惑。チャーリーもニコールも息子のことを本当に愛していてるのはわかるのだけど、自分たちの都合やエゴで息子を振り回してもいて、勝手だな~と憤りを覚えました。どんな事情があるにせよ、子どもを傷つけることは許されません。でも、息子があまりナイーブではなく、両親の間を行ったり来たりしながら、しょーがないな~みたいな感じで根気よく付き合ってあげてる風が微笑ましく救いになりました。涙を誘うけなげ系じゃなかったのが返って好感。息子があまりにも恬淡としているので、ちょっと発達障害なのかな?とも。LD(学習障害)っぽかったし。

 離婚、親権争いだけでなく、家庭や社会における女性の立場や自立についても考えさせられました。チャーリーの言動や思考回路には、ニコールじゃなくても妻って?母親って?と疑問に思っちゃいますわ。基本的にはチャーリーって仕事熱心で妻にも優しくて子煩悩で、悪いところなんか全然ない、文句言ったらバチが当たる、すご~くいい夫、いいパパなんですよ。でもでも、ん?は?なことをふと言ったりしたりして、ナンダカンダでやっぱり彼も世の亭主と同じだなと暗澹とさせるのです。結局は女が我慢し譲歩して諦める。妻だから母だから。女は結婚したらこうあるべきという社会通念を当たり前のように守ろうとしていて、根底では女を見下してる。私が最も不快だったのは、ニコールの稼いだ金を自分の仕事に使って何が悪い?みたいな考え方。そういうのが女性を傷つけるなんて気づきもせず、とことん無邪気に鈍感。これがいちばんタチが悪いんですよね~。

 ニコールのように自立心や自尊心が高い女性にとっては、確かに一緒に暮らすには辛い相手かもしれませんが、愛する男性に尽くしたい、黙ってついていきたいタイプの女性にとっては、チャーリーは理想の夫かもしれません。とにかく男と女の間には、どんなに愛し合っていても埋められない溝があるんですね~。でも、何でも理解し合える、わかち合える話の映画なんて、ウソくさいし面白くありません。ギスギスドロドロしがちな下世話な話を、クスっと笑えるユーモアや、ほのぼのしたぬくもりで包んでいるところが、この映画の特徴と魅力です。あからさまに男が悪い!な糾弾や偏重はなく、さりげなく女性寄りなところも、キツいフェミニズム映画が苦手な人向けなのでは。
 納得できずに気疲れはしつつも、互いを尊重し合っていがみ合ったり顔も見たくない!と憎しみ合うこともなく、友好的な関係を構築するニコールとチャーリーですが、あれって二人に才能とお金があったおかげだよな~とも。凡庸で貧乏な底辺男女だったら、目も当てられぬ醜悪で悲惨な修羅場になってますよ。しょせんセレブの世界の話、庶民感覚とのズレも感じました。爽やかで優しいラストは後味よく、離婚しなくても別居婚でよかったんじゃない?と思いました。
 主演のアダム・ドライバーとスカーレット・ヨハンソンが、今までの出演作中ベストかもしれない好演!

 アダムさん、ヌオ~っとした巨体と、イケメンなのかブサイクなのか判然とせぬ顔が、ほんと独特すぎる。いろんなことに戸惑ってる様子が可愛い。演技してるとは思えぬ自然な感じは、いかにも熱演してます!な演技よりも難度が高いはず。奇抜な役でも演技でもなく、特殊なメイクもせず、観客の心に刺さる演技に感嘆。印象に残るシーンいっぱいありましたが、特に好きなのは悲しい歌をカラオケするシーン。淡々としつつ痛みが伝わってくる名演でした。スカーレット・ヨハンソンも、いい女優になりましたね~。可憐に生意気な少女から、酸いも甘いも知った立派なおばさんに成長。二人ともすごい長い台詞を自然かつエモーショナルにこなし、役者の真髄を見せつけてくれました。二人にオスカーあげたい!
 対照的なニューヨークとロサンゼルスの風景や生活の描写も興味深かったです。どっちも魅力的。どちらかに住めるなら、私はニューヨークのほうがいいかも。開放的な明るさより、活気と憂いが混じりあった大都会に心惹かれます。チャーリー率いるNYの劇団の舞台裏と、ニコールが復帰するLAのTVドラマ撮影裏も、対照的に描かれていて面白かったです。

↑ 近日発表のゴールデングローブ賞、アダムの主演男優賞受賞をI wish!スターウォーズも大ヒット中、オスカー候補も確実視されてるなど、いま最もイケイケな役者!
 
 
 
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地獄の道化師

2019-12-04 | 北米映画 15~21

 「ジョーカー」
 荒廃したゴッサムシティの底辺社会で、母の介護をしながらコメディアンになることを夢見ていたアーサーに、理不尽な解雇や暴力、そして出生の秘密など次々と不幸が襲いかかる。積もり積もった悲憤と怨嗟はやがて、アーサーを狂気の殺人者ジョーカーへと変貌させるのだった…
 話題作をやっと観に行くことができました~(^^♪なかなか劇場に足を運べず、もういっかなと半ば諦めかけていたのですが、ここまで評判が良く大ヒットまでしているからには、やはりスルーはできませんでした。すぐに観に行かなかったのはタイミングのせいでもあるのですが、好きなスターが主演ではないからというのも大きい。好きなスター主演だったら、たぶん速攻で観に行ったでしょうし。ジョーカー役のホアキン・フェニックスは、いまやハリウッドきっての名優。それを否定するつもりは毛頭ありません。でも苦手な俳優なんですよね~。見た目が気持ち悪いというか。でもそんなホアキンのキモさが激烈に、かつ魅力的に活かされていた今回のジョーカー役でした。初めてホアキンアレルギー反応が出なかった作品かも。

 これでもか!と虐げられ侮られ軽んじられ、ゴミのように扱われるホアキン。その目も当てられぬ悲惨さときたら!こっちまで心が傷つき沈むみじめさ。でもただの可哀想な人、にならなところが名優ホアキンのホアキンたる所以。哀れなんだけど、その強い目つきや傲然とした表情、独善的な言動など、人に優しい気持ちや同情を抱かせない、人をイラっとさせて攻撃的な気分にさせる見た目と演技がお見事でした。発作的な笑いも、その顔といい声といい神経に障る気持ち悪さ。奇形に近いガリガリ裸体も、目を背けたくなるおぞましさ。病的な負のオーラを死臭のように発酵させてるホアキンの、まさに命がけな気迫は非凡な俳優にしか生み出せないもの。日本のCMメイン俳優との差をまざまざと感じさせます。

 ジョーカーに変貌してからのホアキンは、今まで見た出演作の中ではいちばんカッコよかったです。「ダークナイト」のヒース・レジャーのジョカーも圧巻の鬼気迫る激演でしたが、ハイテンションで漫画ちっくなヒース版はスゴいね~と笑って楽しめるけど、憎悪や怨念を内面にドロドロと溜めたホアキンジョーカーの欝々しさ重苦しさは、アーサーと同じ社会の底辺で生きる者にとっては笑えないリアリティが。怖いのは悪夢より厳しい現実…オスカーの呼び声高いホアキン、受賞に値する痛烈な熱演でした。

 ホアキンの演技ならぬ怨技も戦慄でしたが、私のような底辺人間には身につまされる内容にもゾっとしました。貧困、格差、暴力、失業、虐待、孤独、メンヘラ、暴動…世界各国で見られる深刻な社会問題、病巣てんこもり。カオスなゴッサムシティは、決して映画の中だけの世界ではありません。精神病を患ってるアーサーが、病気に理解も寛容さもない冷たく残酷な社会にキレで復讐する姿が、日本でも多発している精神障害者、発達障害者が生きづらさに追い詰められ社会を逆恨みして起こしてしまう事件とカブりました。観てる間、バットマン関連のアメコミ映画であることをすっかり忘れてしまってました。さすがにアーサーほどではないにせよ、私も社会の冷たさを身に沁みながら生きてるし、憤懣もやるかたない。私だって、一歩間違えればジョーカーと化すやもしれぬ。ジョーカー予備軍がそこかしこにいるカタストロフィな時代を、私たちは生きているのですね…

 

 

 

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