まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

いつだって分断と混乱のU.S.A

2020-11-19 | 北米映画 15~21
 「シカゴ7裁判」
 1968年のシカゴ。ベトナム戦争反対のデモと警察が激突する。デモを扇動した罪でトム・ヘイドンら7人の運動家たちが起訴され、全米注目の裁判が始まるが…
 評価が高い。出演者もいい役者がそろってる。観ない理由はない作品です。オスカー候補も間違いなしと絶賛されているようですが、うう~ん?そこまでの傑作なのかな?面白かったし、名うての役者たちの個性と演技のぶつかり合いは見ごたえありなんだけど、何だろう、いい意味でも悪い意味でも軽妙というか…まるで見せ場ばかりを切り取ってつなぎ合わせた予告編みたいな構成は、ユニークで斬新だなと感心しました。ドキュメンタリータッチなシーンの挿入や、予想外・想定外の応酬の法廷劇も楽しいのですが、楽しくしすぎた感がなきにしもあらず。泥沼のベトナム戦争や暗殺やら暴動やら、背景には深刻な闇や傷、悲しみがあるはずなのに、それらが全然伝わってこなかったのが映画を軽薄にしていたように思われます。何か強いもの、深いものが胸に余韻を残すことなく、ドドーっと勢いよく進んで終わってしまった、というのが正直な感想です。

 登場人物の中に共感とか魅力を感じる人がいなかったのも、かなり残念な点です。ほぼ全員が実在の人物、アメリカでは有名な人たちなんですよね?左の人たちには、いまだに疑問や反感を覚えてしまう私。大昔に右な男から受けた強い洗脳が今も解けてないみたいです劇中の反戦運動家たちの言動が、私に違和感とか反発をどうしてももたらしてしまうのです。この人たち、本当に平和とか友愛を願ってるのかな?と。まあ、右すぎる人たちも同じですが、自分たちの価値観こそが正しく、違う価値観の者は敵、理想の実現のためには暴力も辞さない、そういう独善的で危険な考えや行動が怖くて迷惑。日本でもかつて、赤軍とか安保とか物騒な時代がありましたが、リアルタイムじゃない者からすると信じられないことばかり起きてた時代。内容や状況は変わっても、政治による不穏で過激な動乱や分断は不変なアメリカ。対立に血道をあげるエネルギーを、軽蔑すべきか羨望すべきか。大多数の日本人の政治不信や不満ってやはりたかが知れてるのかな、とアメリカや香港やタイなど世界中で起こってるデモをニュースで見るたびに、そんなことにはならない日本に生まれてよかったと安堵しています。

 出演者は豪華というよりシブい通好みのメンツでした。運動のリーダー格であるトム・ヘイデン役はエディ・レッドメイン。彼は間違いなく個性的かつ優秀な俳優なのですが、見た目があまりタイプじゃないというミもフタもない理由で、ちょっと苦手万年青年みたいな風貌ですが、明らかに若者ではないのでちょっと気持ち悪く見えることも。別にエディじゃなくてもいいような役で、彼にしては可もなく不可もなくでした。「リリーのすべて」の彼も気持ち悪かったけど、壮絶強烈な役者魂には心から敬服、感服したものです。

 弁護士役のマーク・ライランスは、金八先生みたいな髪型、服装で笑えた。いちばん目立ってたのはサシャ・バロン・コーエンでしょうか。服装も言動もやっぱふざけてて人を食ってるのですが、冗談も皮肉も知的でやはりどこかイギリス的。それはそうと。エディもライランス氏もサシャもイギリス人。アメリカの、アメリカ人の話なのに、なぜかイギリスの有名俳優たちがメインロールを演じてたのが謎。ハリウッドにもいい俳優いっぱいいるだろうに。
 アメリカからはジョセフ・ゴードン・レヴィッドが検事役。あまり敏腕には見えなかったけど、ライランス氏と堂々とわたりあう法廷シーンでの迫真の演技は素晴らしかったです。偏りすぎて不公平な裁判長役のフランク・ランジェラ、証人役のマイケル・キートンといったベテランの俳優たちも好演してました。
 この映画の中でもっとも私の目を惹いたのは、ブラックパンサー党のメンバー、フレッド・ハンプトン役のケルヴィン・ハリソン・ジュニアです。

 イケメン!明らかに他の黒人さんとは違う顔面偏差値の高い美男子で、傍聴席シーンではまさに掃き溜めにツルな輝き!調べてみると、いま注目の若手黒人俳優みたいなので、他の出演作も観たいと思います。チャドウィック・ボーズマンの穴を埋めてくれるニューブラックイケメンとして期待したいです。
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海辺のドブネズミ

2020-11-11 | 北米映画 15~21
 「ブルックリンの片隅で」
 ブルックリンに住む無職の青年フランキーは、セックス相手の男をSNSで探す一方、ゲイであることを隠すため女性ともセックスするが、それに満たされることはなく…
 見ていて嫌な気持ちにさせるもののひとつに、社会問題化にもなっているニートの人たちの存在が挙げられます。ニートといっても、老齢とか病気とか仕事がないとか、働きたくてもやむを得ぬ事情で働けない人たちのことではなく、若くて健康的で探せばいくらでも働き口はあるはずなのに、働かず怠惰にブラブラしてる人たちのことです。自分の力で誰にも迷惑かけずにニート生活を送ってるのなら全然OKですが。実家にパラサイト、衣食住は親の金、日がな一日同じニート仲間たちと遊び回り、金に困ったらスリしたり母親の宝石を勝手に質に入れたり、この映画の主人公フランキーみたいなニートには本当に腹が立ちます。昼も夜もフランキーの家に上がり込んで我が物顔でたむろするニート仲間たち、実際にもこんな連中いっぱいいるんだろうなと思うと気が重くなります。家族や社会に迷惑をかけてのニートや引きこもりは、もはや犯罪に近いです。

 実は…今年のはじめに二度目の離婚をし、我が家に出戻ってきた兄が、酔っ払って階段から転げ落ちて骨折、そのまま仕事に行かなくなりニートと化しちゃってるんですよおとなしく遠慮がちに暮らすどころか、大威張りな殿様ニート。朝から酒飲んで、1時間おきに冷蔵庫を漁っては食べまくり。アル中&過食の中年デブニートだなんて、まさに最低最悪な生物。それを嫌ってM子も全く里帰りしなくなりました。あまりの傍若無人さ、身勝手さで我が家は今どよよ~んと沈んでます。暴力は振るわないけど、意見したり逆らったりしたら何をするか分からない不穏さのせいで、私たちはもう黙って我慢するだけ。今夜も夕食のおかず、ほとんど食べられてしまいました。さっき老母に肩をもませ、ダミアンにビール買って帰れと電話してました。鬼のようなニート。炭治郎に退治してほしい。鬼兄がこの映画の主人公とカブるので、見ていて本当に不快、そして暗澹となってしまいました。

 閑話休題。我が家の恥はサテオキ。フランキーは隠れゲイで、夜な夜ないかがわしい出会い系SNSで男(おっさん好きのオヤジ専!夜の真っ暗な屋外で、見ず知らずのおっさんとヤるとか怖すぎ)を漁ってセックスしたり、好きでもない女と付き合って性癖をカムフラージュ(というより、俺は真性ホモじゃないと自分に言い聞かせるために)したりは、眉はひそめてもそんなには不快感も嫌悪感も覚えませんでした。鬼ニートに比べりゃ何でもないことに思える。ゲイが比較的生きやすそうな大都会ニューヨークでも、底辺社会ではまだ同性愛は恥ずべきことなんですね。ゲイとして堂々と生きることができたら、フランキーもあんなドブネズミみたいな毎日で青春を無駄にせずにすんだのかもしれません。それにしても。フランキーは若いだけではなく、路上に立ってるだけでスカウトされそうなイケメンだったので、仕事なんていくらでもありそうだったが。もったいなさすぎる。

 ラスト、クズなニート仲間たちにそそのかされて、出会い系SNSで知り合ったゲイの男性を騙して呼び出して、彼からハッパを強奪しようとして陥る予期せぬ悲惨な事態に、なすすべもなく呆然となるフランキー。どこまで愚かで浅はかなの。悪党にもなれない、みみっちい卑小なドブネズミなまま一生を終えそうなフランキー、ある意味死ぬより悲惨かも。
 主人公のフランキー役は、「キングスマン」の新作の主役に抜擢され、いま注目されてるイギリス人俳優のハリス・ディキンソン。「マティアス&マキシム」にも出てましたね。薄~い顔のイケメン。童顔で、たまにすごくあどけなく見えるのが可愛いです。ちょっとカープの森下くん似?薄い顔に似合わぬすごい肉体美!ニートであのカラダはありえんわ~。劇中、ほぼタンクトップもしくは上半身裸で、セクシーボディを惜しげもなく披露してます。おっさんとのセックスシーンでは、大胆すぎる全裸にも。ケツだけでなくアソコもドーンと出してますハリウッドや日本の若手俳優には絶対無理な演技に瞠目でした。

 ↑「キングスマン:ファースト・エージェント」は来年2月日本公開!楽しみ!
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悪夢の玉の輿!

2020-10-28 | 北米映画 15~21
 「レベッカ」
 金持ちの老婦人の付添人としてモンテカルロに滞在中だった“私”は、イギリスの大富豪マキシムと恋に落ち、彼が所有する壮麗な館マンダレーで新婚生活をスタートさせる。マンダレーにはマキシムの亡妻レベッカの影が色濃く残っており、レベッカに忠実だった家政婦のダンヴァーズ夫人は“私”を冷ややかに扱う。しだいに“私”は精神的に追い詰められ…
 恥ずかしながら、名作の誉れ高いアルフレッド・ヒッチコック監督のオリジナル版は未見。先にリメイク版を観てしまいました。ざっくり言えば、オカルト風サイコサスペンスでしょうか。亡妻の死霊に憑りつかれてるかのような館、邪悪な家政婦、恐ろしい秘密に苦しむ夫、精神的に追い詰められてい新妻…レベッカの死の真相など、ミステリーの要素もあり、盛沢山だなと思いつつ、飽きずに最後まれ観られる内容、という重要な課題はクリアしてる作品です。でも、何ていうか…せっかくイギリスの上流社会の話なのに、イギリスといえばの優雅さとかスノッブさが希薄でした。演出も映像も出演者も、華やかというか派手で違和感。こういったダークでミステリアスな物語には、やはり神秘的で憂いのあるモノクロのほうが合ってるのかなと思いました。

 モンテカルロのリゾートやイギリスの海など、美しい風景を背景に物語が進行するのですが、たまにこれ合成?ロケしてない?と勘ぐってしまうシーンがあったり。美しく壮麗なマンダレーも、いかにもセットな感じが強かったり(どう見てもハリボテな壁があったり)予算をかなりケチってる印象が否めませんでした。脚本もどことなく2時間ドラマっぽくて、ラストの断崖でのヒロインVS犯人なんて、もろ火サスで失笑。キャストも悪くはないのだけど、高級感とか重厚感は全然ないメンツでした。

 “私”役のリリー・ジェームズは、「高慢と偏見とゾンビ」でも思ったけど、美人!なんだけどクラシカルな役、映画には適してない美しさ。顔も雰囲気も現代的で派手なんですよ。男をキュンとさせるウブでドヂっ娘な言動が似合わない。気が強そうなので、守ってやりたいという男の父性本能をくするぐる女に、何をやっても見えないんですよね~。ギラギラしてて、玉の輿を狙う女豹のようだった。不安や恐怖に怯えたり精神的に追い詰められる繊細さが全然なくて。あんた、それぐらいでビビる女じゃないでしょ!と思わずにはいられませんでした。見た目はか弱げ、はかなげだけど芯は強そうな女優がやるべきヒロインです。それにしても。今の女性はこの映画のヒロインのように、理不尽な状況や夫の嘘、精神的DVに黙って耐え忍んだりしないので、この映画は現代版ではリメイクできませんね。時代とは言え、強い女性ばかりというのも何だか味気ないですね。

 マキシム役のアーミー・ハマーは、いいとこの坊ちゃん風ではあるのですが、イギリスの貴族には見えません。アメリカの良家とイギリスの貴族って、全然違いますね。もともとデカい彼ですが、この映画ではさらに恰幅がよくなっていて、ヌオ~っとした威圧感が。怒ったらゴゴゴゴ…と音がして大魔神に変身しそうなところは、「コードネームUNCLE」の時と同じで笑えた。
 邪悪な家政婦ダンヴァーズ夫人役のクリスティン・スコット・トーマスは、陰険さ冷酷さもどこかエレガントかつ知的で、気持ち悪いとか怖いとかいった感じはあまりなかった。レベッカの間男役の男優が、どっかで見たことある、いや、聞いたことある声だなと思ったら、サム・ライリーだった!

 「高慢と偏見とゾンビ」でのダーシーとは全然違って見えて、すぐに彼だと気づかなかった!独特すぎるしゃがれ声は不変でしたが。今回はイケメンじゃなかったけど、何に出ても何演じても同じな俳優と違う面白い役者だなと、あらためて好きになりました。それはそうと、高慢と偏見とゾンビでは、リリー・ジェームズとサム・ライリーは恋人役でしたね。今回は敵対する役だったのが面白かったです。アメリカンなアーミー・ハマーより、ダーシー役の時みたいなイケメンバージョンのサム・ライリーのほうが、マキシム役にピッタリかも。ヒッチコック監督版も近いうちに観たいと存じます。
 
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彼と僕、はじめてのチュウ

2020-10-14 | 北米映画 15~21
 「マティアス&マキシム」
 幼なじみのマティアスとマキシムは、友人の妹に頼まれて出演した短編映画でキスシーンを演じる。以来二人は、これまでになかった感情の芽生えに戸惑うが…
 グザヴィエ・ドラン監督の新作。「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」と間を置かずに作品が日本公開で、コンスタントな仕事ぶりがファンには嬉しい。この新作、これまでのドラ美の作品の中では最も明るい、楽しい映画に仕上がっていました。過去作品も決して暗くも退屈でもないのですが、ドラ美らしい若々しくポップなケレン味が良い意味で薄れて落ち着いた感じになった印象。全体的にとっつきやすくなったというか。ドラ美も大人になったんですね。

 才気を全面に押し出した癖の強さはなくなったけど、ドラ美らしさは失われていませんでした。演出や音楽における独特のスタイリッシュさは不変。周囲は早送りされる中で、マティアスとマキシムは時間が止まったかのように揺れる想い~♪な様子とか、外は嵐な張り窓のキスシーンとか、切なくも斬新な演出で好きです。お話じたいは、ノンケが突然男への友情以上の気持ちに気づかされて悩む、といったライトで初歩的なBLです。厳しい現実に暗澹とさせられるシーンも生々しい性愛シーンもないし、BLが苦手な人でも大丈夫なBL映画です。

 それにしても。仲が良すぎる男同士って、セックスしない恋愛関係みたいですよね。ひょっとしたら俺、こいつとセックスできる、いや、したいのでは?という、ほとんどの仲良し男同士が踏むことのない境界線でモヤモヤ、という設定が腐には胸キュンです。YOU!悩んでないで一線超えちゃえ!ヤっちゃいな!と腐は無責任に思ってしまいますが
 キスをきっかけにマキシムと今まで通りに接することができなくなり、動揺・狼狽しまくるマティアスが何だか切ないというより滑稽で可愛かったです。旅立つ前のマキシムに冷たく当たってしまったり、狂おしくキスした後に理性が勝ってしまうリアクションとか、BLならではの甘い痛みで腐のツボをつきまくります。

 思わぬBLのめざめにすっかりトチ狂ってしまうマティアスと違い、マキシムはいたってクール。マキシムはゲイの設定だったのでしょうか。ノンケの男に対して期待とか夢とかは抱かない、むしろ傷つくことを恐れて距離を置こうとする、ゲイならではの諦観とか臆病さもまたスウィートペインな切なさ。まあマキシムは、ママのことで恋どころじゃなかったですし。マキシムのママのクソババアっぷり、ひどすぎて笑えた。あんまりな仕打ちに傷つくマキシムが哀れでした。ママと息子の確執、壮絶なケンカもドラ美の映画ではおなじみ、ドラ美にとっては重要なテーマのようです。

 ドラ美、自作での監督兼主演は「トム・アット・ファーム」以来でしょうか。やっぱ美男子ですね~。薄口イケメンが多いので、ドラ美のほどよい濃さが美味です。小柄なので少年っぽいところも可愛い。Tシャツに半ズボンがこれほど似合うアラサー男もいません。ふてくされた斜に構えた役が多いドラ美ですが、今回は笑顔も多い明るい役でした。笑うとクチャっと崩れる顔も可愛い。もともと子役として活躍していたドラ美は、演技へのこだわりや情熱もひとかたならなぬようで、最近のインタビューでは監督業よりも今後は俳優業に重点を置きたいと言ってましたが。どっちもバランスよく両立させてほしい、というのがファンの願いです。

 マティアス役のガブリエル・ダルメイダ・フレイタスが、優しそうで色気があるイケメン!ブラッドリー・クーパーをほっそりスマートにしてインド人っぽくした感じ?スタイルがよくて、スーツもカジュアルなファッションもオシャレに着こなしてました。マティアスが接待するチャラい弁護士役は、「キングスマン」シリーズの新作の主人公に抜擢されたハリス・ディキンソン。彼もスタイル抜群。タイトなスーツ姿でのピチっとしたお尻がセクシイでした。マティアス&マキシムの友人たち、そのママたちもみんな個性的でいい味だしてました。特にリヴェット兄妹が好き。バカ言い合ってワイワイ騒いだりケンカしたり、男子って楽しそうでいいな~と羨ましくなりました。

 ↑ 美貌と才能、どっちかだけでもどっちもないわしにくれや!勝ち組人生に恵まれているようで、凡人には無縁な苦労や悩みもいっぱいあるんだろうな~。それもまた映画に昇華できるドラ美はやっぱ神に選ばれし者ですね
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時間の国のバトル

2020-09-25 | 北米映画 15~21
 「TENET テネット」
 キエフでのテロ制圧部隊に加わったCIAの男は、敵に捕まり自決薬を飲む。だがそれは彼を試すために仕組まれた作戦だった。時間を逆行させる謎の装置を使って世界を壊滅させようとしている武器商人セイターを阻止するための任務を、男は課せられるが…
 今や映画ファンの間で最も新作が待たれるクリストファー・ノーラン監督の新作。コロナ禍の中、無事に公開されて誠に重畳!ですが、ううう…感想は、ワケワカメ!その一言に尽きます本当に意味不明な映画でした。この映画を理解できた人、熱く考察できる人を心の底から尊敬します。わしのような低能人間はお断り、みたいな敷居の高い内容でした。

 中盤までは、フツーに面白いスパイアクションなんですよ。インドでの潜入作戦とか、ロンドンでの重要人物との接触の仕方とか、ミッションインポッシブルや007と遜色なしなスリリングさ、スタイリッシュさでした。私が特に好きなのは、冒頭のテロシーンです。怒涛の展開で、まるで大きなうねりに飲み込まれて運ばれていくような感覚。あれ、なかなか味わえないですよ。空港でのジェット機突入シーンにも驚愕。CGじゃなくて、実際にやってる!すごいスケールと金遣い!ハリウッド映画ってほんとスゴいですよね~。公開が延期になった邦画「太陽は動かない」のチケット購入してるのですが、スパイ活動とかアクションとか演技とか、テネットみたいな映画を観た後ではショボすぎて痛ましく感じるだろうな~。

 でもでも。クオリティの高いスパイ映画が、だんだんと?????!!??な方向へと疾走、いや、暴走するんですよ。時間の逆行を使った戦いが始まると、多くの観客はただもう戸惑い置いてけぼりをくらうことになります。後半になると、もうどこで何が起こっているのか、何を言ってるのかチンプンカンプン。時間にこだわった複雑なシチュエーションや構成はノーラン監督の特色ですが、今回は今まででいちばん難解だったように思いました。
 タイムスリップとかタイムリープとか興味ないので、素直にオーソドックスにSFじゃない正統派スパイ映画を作ってほしかった、と私なんかは思ってしまいましたが、ノーラン監督のファンにとっては複雑さ、難解さが魅力なんでしょう。でもそんな意識高い系ファンだけでなく、私のような者でも理解できないと知っててもノーラン作品を観てしまうのは、やはり凡百な監督の作品では体験できない驚異の映像や演出を楽しめるから。この映画も、視聴覚的には衝撃的なまでに斬新。一部の人たちだけが崇めるカルト監督で終わらない非凡なエンタメ性こそ、彼を世界で最も支持される人気監督たらしめてます。

 名無しの主人公役は、「ブラック・クランズマン」での好演も記憶に新しいジョン・デヴィッド・ワシントン。言わずとしれた名優デンゼル・ワシントンの息子。パパよりゴツくてパワフルな風貌。鋭すぎる眼光といい本当に強そうで、格闘シーンとか迫力があります。日本のイケメン俳優とか、本格アクションだの肉体改造だの言わないほうがいいですよ。ジョン・デヴィッドとかの前に出たら、ナヨっちいオカマかかよわい女子にしか見えないだろうし。ブリティッシュ仕立ての高級スーツ姿のジョン・デヴィッドもカッコよかったです。
 相棒のニール役は、いまだにその魅力がわからないロバート・パティンソン。若い頃から全然イケメンに見えないし、目つきや口元が何か卑しい感じがして苦手。山田孝之にちょっと似てるからというのも苦手な要因。ほっそりスマートにしてギトギトした脂を抜いた山田、みたいな。ニール役、私が好きな英国俳優だったらな~。ノーラン監督の「ダンケルク」に出てたジャック・ロウデンとかビリー・ハウルとかにしてほしかった。パティンソンのファンの皆さん、すんません💦
 悪役はケネス・ブラナ、イギリス貴族役でチョコっと友情出演のマイケル・ケイン、ノーラン監督の過去作でもおなじみの英国名優たちが再出演。ヒロイン役のエリザベス・デビッキが、で、でかい!ほっそい巨体に極小顔が不自然というか異様なスタイルで、スレンダーマン役にぴったりだと思いました。後半、時間逆行ワールドでの戦闘で登場する軍人役の俳優がイケメン、どっかで見たことあると思ったら、アーロン・テイラー・ジョンソンだった!出てると知らなかったのでビツクリ。
 世界各国に飛び回ってのロケもスケール感を強くしてます。ロンドンやニューデリー、オスロも印象的でしたが、イタリアのアマルフィ海岸の風景が壮観で素晴らしかったです。F50フォイリングカタマランのレースシーンも圧巻でした。

 
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蒼いリンゴに唇よせて

2020-09-08 | 北米映画 15~21
 「Fair Haven」
  シカゴの教会で同性愛矯正カウンセリングを受け故郷に戻ったジェームズは、息子に家業のリンゴ農園を継いでもらいたい父とのぎくしゃくした関係に苛立つ。そんな中、教会に行く原因となった元恋人のチャーリーと再会したジェームズは…
 BLもずいぶん市民権を獲得して、今や安定の人気ジャンルに。現実世界でも昔に比べると、LGBTへの差別や偏見もあからさまではなくなってきてるようですが、やはり今でも多くの国、地域では理解できない!許せない!という狭量さや不寛容さのほうがマジョリティです。特に田舎では、いまだに同性愛なんて“善き常識人”からしたら、逆さまの変態世界なのです。保守的な田舎、そこに宗教が絡んでくると、さらに同性愛否定、同性愛排斥は頑強化してしまいます。この映画、同性愛に苦悩する主人公が教会で矯正カウンセリングを受ける設定は「ある少年の告白」と同じですが、こちらの神父さまには人権無視な過激さ、非情さはなく、決して声を荒げたり何かを無理強いすることもなく、同性愛者の若者たちに穏やかで気さくなダンディ。でも優しい物腰、物言いの中でもしっかり、がっつりと同性愛を全否定してるんですよ。罪悪感を植え付ける手法は、教会の常とう手段のようです。

 同性愛は非生産的、男も女も結婚して子どもを作るのが人間の義務!という聖書の教えは、こんなにも世界中で人権の尊重、個人の自由と権利が声高に叫ばれ、守られているはずの今の時代に逆行してる!と思う人のほうが、実は少ないというのが虚しい現実です。この映画の主人公ジェームズも、同性愛は罪!悪!という聖なる圧で潰されそうになってる哀れな若者なのですが、あまり同情も共感もできないんですよね~。とにかく彼、いくら余裕がない切羽詰まった状況にあるとはいえ、いつも自分のことばかりで周囲の人たちの気持ちや立場への思いやりや配慮が全然なく、優しい人たちへの刺々しい態度には見ていてイラッムカっとするだけでした。

 ジェームズよりも、彼のパパのほうが哀れで痛ましかった。お父ちゃんも田舎のキリスト教信者なので、同性愛にはオープンマインドになれないけど、だからといって頭ごなしに息子を責めたりしないし、冷ややかに侮蔑したりもしないし、罪悪感を煽るように悲嘆に暮れたりもせず、不器用ながらも息子の意に添うように努力してる様子が、いじらしくも切なかったです。息子が家業の農園を継ぎたがらず、音楽の道に進みたがってることに不安を抱いたり賛成できないのは、親として当然のことだし。なのに息子は、農家なんかイヤだ!全部売って学費にしろ!とか言ってパパを陰に陽に責めたり蔑んだり、親不孝すぎて殴りたくなりました。同性愛者であることに苦しんでる、それを盾に何でも許してもらえるとでも思ってそうな振る舞いが不愉快でした。ジェームズに振り回され傷つけられる元カレのチャーリーも、ノンケのふりをするために利用される女の子も可哀想だったけど、彼女がBLに苦悩したり理解を示したりするような重いキャラではなく、“善き常識人”の一人だったのでちょっと安心。女がBLに絡んでくるの、苦手なんですよね~。

 ジェームズ役のマイケル・グラントは、ちょっと若い頃のトム・クルーズを地味にした感じ。チャーリー役のジョッシュ・グリーンは、ジョセフ・ゴードン・レヴィッドを地味にした感じの風貌。ラブシーンも地味でした。いつ誰が入って来るかわからない納屋でエッチするとか、大胆というか不用心というか。ラストがちょっと都合よすぎ。若い二人はルンルンなハッピーエンドでも、お父ちゃんはほんとにそれでよかったの?と、つくづく親って悲しい、報われないな~と、我が両親と自分たち兄妹の関係を顧みて、罪悪感に胸が塞がってしまいました。
 
 
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アラビアの狼少年

2020-08-28 | 北米映画 15~21
 「コードネーム エンジェル」
 中東諸国とイスラエルの対立が深刻化していた70年代初頭。エジプトのナセル大統領の娘婿アシュラフは、イスラエルにエジプトの情報を流そうとする。ナセルが急死し、次の大統領となったサダトの信頼を得て政府高官となったアシュラフに、イスラエルの諜報員が接近してくるが…
 実写版「アラジン」やNetflixの「オールド・ガード」など、アメリカ映画での活躍が目立つオランダ俳優、マーワン・ケンザリ主演のスパイ映画。マーワンが全編出ずっぱりな主演作は初めて観ました。彼がいい男かついい役者であることを再認識できました。若造でもなくおっさんでもない、脂がのる男の最盛期といっていい年頃の男優が好きです。マーワンはとにかく艶っぽくて色気があるんですよね~。最近の人気俳優はみんな見た目はいいけど、色っぽくはないのが残念。なのでマーワンみたいなフェロモン男は貴重。この映画ではセクシーシーンや脱ぎは全然ありませんでしたが、男の色気は香水のように放っていました。若く見えるけど大人の男性って感じが好きです。彼、山下や亀梨と同じ年頃なんですよね~。いい歳して未成年と飲酒や淫行してるタレントとは大違いな大人の魅力です。

 劇中のマーワン、カイロにいる時はスーツ姿なのですが、ロンドン滞在中は70年代のファッションで、それが似合ってて素敵でした。パンチパーマみたいな髪型なので、ちょっと品のある金持ちのヤクザっぽくも見えて、それがまたイケてました。この映画のマーワン、どこかで見たことがあるような、誰かに似てるような、と思って見てたら、あ!ルパン3世だ!もしハリウッドでルパン3世が実写化されるとしたら、マーワンでお願いしたい!少なくとも小栗旬よりは絶対合ってると思う。あと、顔が玉木宏にもたまに似て見えた。玉木を濃ゆく優しそうにした感じ。英語だけでなくアラビア語の台詞も多く、すごく流暢!マーワンの語学力にも感嘆。

 ただのダメ男なのか、卑劣な売国奴なのか、それとも?舅である大統領に軽んじられたり生活費をケチられたりした腹いせで、敵国であるイスラエルに情報を売ろうとしてたアシュラフが、いつの間にか国家間の争いを阻止しようと紛争する英雄なヒーローに、と思いきや、不運で?故意に?偽情報を渡してイスラエルを何度も翻弄するなど、アシュラフの行動は不可解で観客も惑わされます。ダメ男に国家が振り回される滑稽な悲劇なのか、驚くべき深謀遠慮が隠されているのか。ラストの展開で判明されるのですが、ミスリーディングさはなかなか巧みでした。イソップ童話の狼少年が重要なキーワードになってたのも面白かったです。

 スパイ活動と家族の間でデスパレートに追い詰められまくるマーワン、どう見ても悪だくみや非道なことをしそうにない善人オーラがハンパないです。「アラジン」では悪役でしたが、顔が優しいのでアラジンとジーニーより善い人に見えましたし。この映画でも笑顔がスウィートで、彼が何をしても奥さんやイスラエルの諜報員が冷たくできず、つい気を許してしまうのも理解できました。男の魅力を利用して女にスパイ活動に協力させたりもするのですが、007と違って性的には潔癖で据え膳食わず、奥さんに誠実だったのがちょっと物足りなかったです。映画も不倫や情事には厳しくなってるのが、ほんとつまんないご時世です。

 中東の歴史や政情については無知なので、すごく勉強になりました。エジプトやシリアなど中東との険悪な関係や、モサドやヨム・キッパーなど、イスラエルの特殊すぎる存在もあらためて再認識。モサド諜報員役のイギリス人俳優トビー・ケベルもなかなかの男前でした。仲間の中にもクリス・ヘムズワース似のイケメンがいました。物騒だけど、エジプトやイスラエルにもいつか行ってみたいです。でもやっぱ行けるとしたら、この映画の主な舞台となったロンドンかな~。ビッグベンの前や有名な公園で、私もスパイ活動してみたいです

 ↑優しそうでエロいマーワン、母国オランダの出演作も観てみたいです
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不死の軍団

2020-08-23 | 北米映画 15~21
 「オールド・ガード」
 数世紀に渡って密かに世界を危機から救うべく戦っている不老不死の戦士アンディ、ブッカー、ジョー、ニッキーは、元CIA諜報員のコプリーから南スーダンでの人質救出の依頼を受ける。だがそれは、4人が不死であることを確認し証拠を入手するための罠であった。一方、アフガニスタンで従軍中の兵士ナイルは、襲撃者に喉を裂かれるが落命せず傷もすぐに完治する。アンディたちは新たなる仲間の誕生を感知し…
 不老不死の戦士たちが悪と戦う、という荒唐無稽な設定ながら、アベンジャーズに勝るとも劣らぬカッコいい、面白いアクション映画の秀作でした。コミカル要素が強く、おんな子どもが観てもOKなアベンジャーズと違い、こちらはハードかつダークで生々しい血まみれ、血みどろな殺戮シーン満載で、戦士たちのキャラも宿命もシリアスなので、いくぶん大人向けのヒーロー映画になってます。怒涛のアクションシーンはスタイリッシュかつ荒々しく、まさに美しい暴力って感じでした。

 何百年、何千年も生き続けて、ひそかに世界の危機を救っているヒーローたち、という設定がユニーク。撃たれても刺されても時間が経つと傷が消えたり、頭吹っ飛ばれてたりビルから落ちてグジャグジャになっても生き返ったり。有名な事件や戦争、革命の裏には彼らの活躍があったんですよ。世界史の勉強にもなりました。不老不死チームのメンバーそれぞれのキャラ立ちも、あくまでクールでどこか虚無的だったのも、異色で斬新でした。見た目は若いけど、実は数世紀も生きてるジジババばかりで、もうしんどい、楽になりたいというボヤキながら死闘を続けている彼ら。早く人間なりたい~という願望は、まるで妖怪人間みたいで笑えた。

 アベンジャーズと違い、オールドガードには不老不死、再生能力以外にこれといった特殊能力はなく、ほぼおのれのの肉体で戦う肉弾派。重症を負ったら死なないけどすごい苦痛は避けられないので、戦いは生き地獄でしかない。しんどいしんどい言いながらも、怠けず律儀に戦い続けるオールドガードの面々、ほんと真面目だな~と感嘆。私が不老不死なら、それを利用して思いっきり楽しく永遠に生きるんだけど。とはいえ、やっぱ死ねないのはしんどい、つらいことですね。命って限りがあるから一生懸命に有意義に生きたいと思うし。

 この映画のいちばんの勝因は、やはりキャスティングでしょうか。リーダーである最年長のアンドロマケ(アンディ)役は、今や世界最強の男前美女シャーリーズ・セロン。「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のフュリオサに劣らぬ激烈女戦士っぷりでした。今回は得意の美貌崩しはあまりしておらず、シャープでクールな美しさは神々しいほど。キャラもファッションもほとんど男、という美女役はもはやシャー子さんの専売特許ですね。屈強な男どもを従え、彼らに慕われる最強の女ボス役なんて、もうシャー子さんしか演じられないでしょ。鬼強だけど優しい、その優しさも女性のものではなく強い男がもつ優しさ、を表現できる美しい女優も、世界広しと言えシャー子さんしか今はいません。40過ぎてあのスタイル、あの動きも、ほんと驚嘆しかない女優です。日本の女優のアクションとか、チャンチャラおかしいです。

 男性メンバー役に、ヨーロッパのいい男たちを起用したキャスティングのハイセンスさにも脱帽!ナポレオン時代の元軍人で、チームの副隊長的なブッカー役は、ベルギー出身のマティアス・スーナールツ。ゴツい風貌、冷酷そうな顔なのでほんと敵に回したくないオーラびんびんなんだけど、実は優しく不器用というのが彼のオハコ役。今回もそうでした。年を重ねて哀愁が出て、大人の優しさがにじむ素敵な熟年に。チームの中で見た目はいちばん年上だけど実は最年少で、たまにする末っ子言動が可愛かったです。

 元十字軍の戦士ジョー役は、最近は「アラジン」実写版や「オリエント急行殺人事件」など英語圏の作品でもよく見るオランダ人のマーワン・ケンザリ。ちょっと濃い目の見た目とセクシーフェロモン、そして優しそうな笑顔が魅力的。チーム内では癒し系の穏やかキャラ。同じく元十字軍の戦士であるニッキー役、「マーティン・エデン」でヴェネツィア映画祭の男優賞を受賞した注目のイタリア俳優ルカ・マリネッリも、ちょっと濃い目のイケメンで、鋭い目つきが印象的。この映画の画期的、かつ最大の魅力、注目点は、ジョーとニッキーがラブラブなBLカップルだったこと。ヒーローとして戦うゲイが出てくる映画、今のご時世でもなかなかお目にかかれませんし。イケメン二人が交わす視線や微笑みには強く深い愛が滲んでいて、腐は胸キュン必至です。敵の前での濃密キスは名場面でした。感動したのかドン引きしたのか、目の前のキスに黙り込んでしまう敵軍団が笑えた。
 
 新たに加わった元米軍兵士ナイル役は、「ビール・ストリートの恋人たち」では可憐な女の子役だったキキ・レイン。肉体改造して強靭な女戦士に変貌してた彼女に、女優魂を感じました。アンディとナイルとの師弟関係なやりとりもなかなか胸熱でした。見た目はイケメンだけど全員おじいさんである男性メンバーが、ルーキーのナイルに優しいところにもほっこり。
 元諜報員でオールドガードに仕事を依頼するコプリー役は、「それでも夜は明ける」でオスカー候補になったイギリスのキウェテル・イジョフォー。真面目そうでシリアスな役が似合う男前黒人俳優、といえば今や彼とチャドウィック・ボーズマンが双璧。彼が大儀のために協力する悪の組織が、ちょっとショボかったのが残念。もっとスケールのでかい悪にしてほしかったかも。

 世界各国をめまぐるしく駆け巡る展開、各地の風景も楽しかったです。敵の本拠地、そして最終決戦地はやっぱりロンドン。巨悪の巣窟で、陰謀が渦巻きヒーローたちが大暴れする街、といえば今も昔もロンドンがお約束。今回もとんでもないことが起きてるのに、ロンドン市民はあまり気にしてなさそうだったのが笑えた。パート2へと続く終わり方でしたが、続編はいつ頃観られるのでしょうか。待ち遠しい!
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アイドルと文通

2020-07-10 | 北米映画 15~21
 「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」
 母親とロンドンで暮らすアメリカ人の少年ルパートは、大好きなアメリカのスター俳優ジョン・F・ドノヴァンにファンレターを書き返事をもらう。それを機に二人のひそやかな文通が始まるが、それはやがて思いもよらぬ事態を招くことになり…
 コンスタントに新作を発表しているグザヴィエ・ドラン監督が、初めて英語で撮った作品。ドラ美の作品はいつも楽しみですが、この新作はいつも以上に待ち遠しかったです。だってだって、主演が大好きなキット・ハリントンだっちゅーの(古っ)!さすがドラ美、男優選びのセンスがええわ~。ドラ美の新作にキットが起用されたとのニュースは、激しく私を興奮させました。ドラ美とキットが仲良く一緒に仕事してる姿を想像しただけで、あらぬ妄想をかきたてられた人って結構いるのではなかろうか。かくいう私がそうです愛しのキットがどんな風にドラ美に料理されたのかしらん?WAKUWAKUしながら劇場へと急いだのでした。そういえば、キットを大きなスクリーンで見るのは初。

 キット、やっぱカッコいい、ていうか、可愛いですね~劇中劇で高校生を演じてるのですが、ぜんぜん違和感なかったです。童顔で小柄で可愛いけど中性的な美青年ではなく、ナヨナヨしたキャマっぽさとは真逆な、男くさい風貌との濃密な♂フェロモンが素敵。前から思ってたけど、キットって顔といいカラダといいゲイ受けも良さそう。今回は初のゲイ役?満を持してのゲイ役でしたが、ゲイゲイしさが全然ないところも腐やゲイの厳しいお目がねにかなっている要因ではなかろうか。

 存在自体がエロいキットなので、ちょっと裸になっただけで、ちょっと男とキスしそうになっただけで、ウホッ♡となってしまいますが、18禁レベルのエグいゲイのセックスシーンを見慣れている人にとっては、今回のキットのBL演技はかなり物足りないかもしれません。もともとドラ美は、男同士の性愛シーンを過激には撮らない人なので、まあこんなもんでしょとは思ったけど、やっぱキットのファンとしてはもうちょっと脱いで絡んでほしかった、というのが正直なところです。

 でも、キットのデリケートなコワレ演技は痛々しくも切なくて、じゅうぶんに胸がムズキュンでした。スターとしてキラキラしてる時のキット、転落して身も心もボロボロなキット、どっちも魅力的でした。彼も不幸が似合う俳優。小鹿みたいな黒目がちのつぶらな瞳が、悲しみや痛みが増せば増すほど美しく見えた。

 それにしても。ゲイであることに苦悩し、バレることを恐れてビクビクしてるジョンが哀れだったと同時に、すごいイラっともさせられました。ゲイであることがそんなに罪なの?恥ずかしいの?ひと昔前の話ならいざ知らず、今は堂々とカミングアウトして活躍してる俳優、いっぱいいるじゃないですか。ジョンにも自信をもって頑張ってほしかったです。あと、ルパート少年との文通がスキャンダルになってしまうのですが、スターと少年の文通なんて微笑ましいじゃないですか。素敵な美談にもできたはずなのに。ちなみにスターと少年との文通という設定は、ドラ美が少年の頃「タイタニック」のレオナルド・ディカプリオに恋をして彼にファンレターを書いた、というエピソードが元ネタなんだそうです。ドラ美さん、いつかレオを主演に映画を撮れるといいね!

 ジョンとルパート少年のエピソードが交互に描かれる構成なのですが。二人の家族(母親)との確執にほうに重きが置かれていて、会わなくても手紙で深まっていく精神的な愛情とか不思議な絆とかのほうを、もっと掘り下げて描いてほしかったです。愛情は深いけど、我が強く不器用な者同士なので激しく衝突する母と息子、といういつものドラ美な内容でしたが、従来よりはかなり解かりやすい関係というか、ベタな感動寄りになってたような。ドラ美のあの独特なスタイリッシュなケレン味は薄まってました。音楽の使い方も毎回こだわりを感じさせるドラ美です。

 この映画、キャストがなかなか豪華です。ルパート役は「ルーム」での名演も記憶に新しいジェイコブ・トレンブレイ。美少年ではないけど、感情の起伏が激しい演技が巧いですね~。キンキン声がちょっと耳障りでしたが。ルパートの母親役はナタリー・ポートマン。ナタポーもあんな大きな息子がいる役をやる年齢になったんですね~。ジョンの母役がスーザン・サランドンで、ジョンのマネージャー役はキャシー・ベイツと、ナタポーも含め大物オスカー女優が3人も出演してます。
 
 成長したルパート青年役ベン・シュネッツァーはイケメンではないけど、味のある風貌。ちょっと福くんをカッコよくした感じ?当初ルパート青年役はニコラス・ホルトが演じる予定だったけど降板したんだとか。残念ですが、ジェイコブくんが成長してニコラスになるって無理がありすぎるので、ベンで良かったとは思う。ルパート青年をインタビューする女性記者役のタンディ・ニュートンが美人でした。

 ラスト、ルパートをバイクで迎えに来た恋人って、まさか少年ルパートをいじめていた同級生のセドリック?!成長したセドリックに見えたのは私だけ?セドリック、異常なまでにルパートに執着してたけど、あれって男の子によくある好きだからいじめてたパターン?もしそうだったら、すごいハッピーエンドでほっこりします。

 ↑ お二人さん、なかなかお似合い♡腐った目の中では、イメケンのツーショットって常にBLカップルなのですキットはマーベルの新作「ジ・エターナルズ」、ドラ美は自身主演&監督の「マティアス&マキシム」が日本公開決定!楽しみ!
コメント (2)
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かしましシスターズ

2020-07-07 | 北米映画 15~21
 「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」
 19世紀半ばのアメリカ、マサチューセッツ州。マーチ家の4人姉妹メグ、ジョー、ベス、エイミーは母と共に、従軍中の父が留守にしている家を仲睦まじく守っていた。ジョーは将来作家になるという夢を抱いていたが…
 原作の文学小説は、何度もハリウッドで映画化されています。これはその最新版。キャサリン・ヘプバーン版とウィノナ・ライダー版も秀作でしたが、才女グレタ・ガーヴィク監督によるこの最新版もなかなかの佳作でした。旧作よりも躍動感があって瑞々しく、それでいてレトロな映像で古き良き時代の雰囲気を醸していたところが斬新でした。女性の生き方、生き辛さについても考えさせられるメッセージ性もあって、女性の地位が高まり権利も認められるようになっているとはいえ、まだまだ女性にとって理不尽で不平等な現代社会にも通じる内容になってました。何でも社会のせい、男が悪いと声高に糾弾するガチなフェミニズム映画は苦手ですが、この映画のフェミニズムはあくまで軽快で爽やかだったので、ドン引きしたり気重にならずに観られました。

 ソフィア・コッポラ監督の作品とか、ガーリーすぎる映画は苦手。そもそも女の子になんか全然興味ないし正直、美人4姉妹よりもイケメン4兄弟のほうがいい!でもこの映画の4姉妹には、私が苦手な可愛いでしょアピールとかほどんどなく、見た目もキャラも逞しい男前女子だったので好感。貧困とか結婚とか、いろんな問題や試練にぶつかるマーチ姉妹ですが、良くも悪くも深刻さが薄かった。シリアスでヘヴィな生活苦とか家族の軋轢とか、実際に身をもって知ってる人たちからすると、マーチ家の人々はかなり恵まれているのでは。貧しい設定なのですが、その割にはきれいな家に住んで毎日きれいなドレスを着て、家事は女中にさせて仕事もせずに楽しそうに遊び暮らしていて、ちょっと困ったことがあればすぐに誰かが助けてくれる。苦労らしい苦労はほとんどしない彼女たちに、お嬢さまはいいね!と鼻白んじゃいました。そんな自分の心の貧しさがイヤです。マーチ姉妹のような高い精神こそ、幸せになるために必要なものなのでしょう。

 いつも明るく楽しく、愛にあふれているマーチ家ですが。素敵だなとは思いつつ、こんな騒々しい暮らしはゴメンだわ、とも。姉妹でイチャイチャするのもケンカするのも、すごい体力と気力が必要。マーチ姉妹の元気すぎる愛情、見ていて疲れました。愛にあふれた騒々しい生活より、愛はないけど静かな生活のほうがいい…な私って、つくづく可哀想なぼっち体質

 この映画、キャストがすごい豪華です!ほぼオスカー受賞者、もしくは候補経験者。実質のヒロイン、次女のジョー役で20代半ばにして4度目!のアカデミー賞ノミネートとなったシアーシャ・ローナン。ケイト・ウィンスレット路線ですね~。透明感がありながら、可憐な妖精とは真逆の凛々しく闊達な女丈夫。長身でゴツい体格も頼もしい。聡明で勇ましいけどデリケートな演技が秀逸。ラスト近くの、女の自立!とイキってはみたけどやっぱり不安、寂しい…と一度はフった男とヨリを戻そうとする、イタくてみっともない女心を表現する惑乱演技が、ほんとに素晴らしかったです。

 長女メグ役は、ハリポタでおなじみのエマ・ワトソン。初めて彼女がいい女優、きれいな女性に見えた。世間の美女扱いには疑問ですが、メグみたいな地味で思慮深い娘役だとしっくりきます。顔が極小!四女エイミー役のフローレンス・ピューの、おばはんみたいな豪快さと貫禄が強烈。それにしても。シアーシャはアイルランド人、エマとフローレンスはイギリス人。アメリカ人の姉妹役なのに。ハリウッドの若手女優の人材不足が深刻。ママ役は「マリッジ・ストーリー」でオスカーを獲得したばかりのローラ・ダーン、金持ちの伯母さん役は大女優メリル・ストリープ、隣家の金持ち爺さん役はクリス・クーパーと、ベテラン大物が脇役で出演。

 隣家の金持ち爺さんの孫ローリー役、ティモシー・シャラメがカッコカワいい!優雅な放蕩息子役が似合う。ヨーロピアンな貴族的雰囲気とアメリカンな明るさを併せ持った魅力。劇中の時代劇衣装も、ティモたんなら現代の私生活で着てもオシャレに見えるのでは。ティモたん、可愛いけどたまに細く色白くなったミスター・ビーンに似て見えたのは私だけ?ジョーが下宿先で知り合う大学教授役、ルイ・ガレルがイメチェンに近い好演。フランスの退廃王子だった彼が、優しくて温かい朴訥な男性役だったのが新鮮でした。英語もお上手!ティモたんといいルイといい、フレンチテイストな若手男優の起用もハイセンスな映画です。ローリーの家庭教師で後にメグの夫となる青年役は、「チャタレイ夫人の恋人」でヒロインの夫役を好演した英国俳優のジェームズ・ノートン。素朴で優しそうな、感じのいい俳優。オスカーを受賞した衣装も目に楽しい!

 ↑ ルイ&ティモ、フランス映画でも共演してほしいですね(^^♪
コメント (4)
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