「フォックスキャッチャー」
オリンピック金メダリストのレスリング選手マークは、コーチである兄デイヴの助手をしながらくすぶった生活を送っていた。そんな中、デュポン財閥の御曹司ジョンから、彼がスポンサーであるレスリングチーム“フォックスキャッチャー”にスカウトされたマークは…
「カポーティ」「マネーボール」など、実話映画化に長けたベネット・ミラー監督の新作。ミラー監督は、この映画でカンヌ映画祭の監督賞を受賞、今年のオスカー候補にもなっています。
男たちの愛と憎しみ、嫉妬や欲望が渦巻くドロドロドラマ!と、ワクワク期待に胸ふくらませて観に行ったのですが。思ってたほどドロドロではなく、ちょっと肩すかしでした。全体的に暗く冷たい乾いた空気に支配されていて、ドロドロというよりドヨヨ~ン系?あまりにも鬱々しく重苦しいムードなので、いま心がしんどい人は観ないほうがいい映画かもしれません
鬱映画ですが、男たちの心の闇は興味深く描かれていました。理解しがたい狂気ではなく、何か身近にもありそうな、見覚えのある黒い暗い深層心理。そもそも、デュポンとマークが抱えている葛藤や苦悩が、すごく子どもっぽいんですよ。おまえら中学生か!みたいな。小・中学生の男子にありがちな言動、心の揺れや爆発が、何だか笑えてしまった。男って基本、いくつになっても子どもだよな~。やっぱ女のほうが強くてズルい生き物です。
デュポンなんて、見た目だけ年老いたガキそのものだし。欲しがり屋さんで、手に入らなかったり気に入らなかったりすると、ダダこねるわスネるわプッツンするわな、甘やかされた困ったちゃん坊ちゃま。見栄っぱりなところも、子どもっぽすぎるんですよ。自画自賛なドキュメンタリー映画とか、ママの前で有能ぶるところとか、出来レースやらせ試合とか、イタすぎて滑稽。まわりのみんなが調子合わせてあげてるところなど、はたから見たら裸の王様すぎて哀れにもなります。才能も人徳もない人に、虚栄心と金だけは腐るほどあったというところが、悲劇の根幹だったのかもしれません。あの無駄づかいされまくった金が、もし本当に有能で高徳な人にあれば…と、心の底から思いました。
マークも、図体がデカイだけのアホで心の弱いガキそのもので、そのレスリング以外無能な脳筋キャラにイラっとさせられます。デュポンと兄ちゃんの言いなり、受け身すぎ。甘えんなー!しっかりしろ!と叱りたくなりました。頭が悪い、心が弱いせいで、容易につけこまれ操られるマークって、ヤバい新興宗教や思想にハマってテロリストに仕立て上げられちゃうタイプですよ。オ○ムやイス○ム国に入らなかったのは、不幸中の幸いだったかもあんなに屈強な肉体と、レスリングの才能、厳しい練習に取り組む根性があったんだから、もうちょっと自信をもって生きてほしかったです。そうできなかったのも、悲劇の要因と言えましょう。健全な肉体には健全な魂が、とか言うけど…必ずしもそうとは言えないのね、とマークのコワレっぷりを見ていて思いました。そして、おいしい話、都合のいい話には何かある、軽々しく乗ってはいけないと痛感。あと、せっかくの名声も、うまく世の中で立ち回らないと宝の持ち腐れになるんだな~と、あの人は今な金メダリストを思い出して切なくなりました。
いちばんの被害者は、マークの兄デイヴです。可哀想すぎる!至極まともで、フツーにいい人だった彼が、いちばん理不尽で悲惨な目に遭ってしまうなんて。悲運としか言いようがありませんが…彼の常識人キャラ、裏を返せば俗っぽい人柄には、いろいろ考えさせられました。ナンダカンダで金で動く、生活のためには不本意なことも我慢するところなど、誰だって私だって同じことするだろうと思いつつ、デュポンの金にあかせたオファーなど一蹴してほしかった、デュポンを崇敬しているかのようなコメントを強いられても拒否してほしかった。金や安定がすべてじゃない、信念やプライドを貫くという美しい男気って、やっぱ非現実的な理想なんだな~。それを知っているからこそ、黒田博樹のカープ復帰には多くの人が感動したのでしょう。
男たちのダークサイドを描いた映画ですが。デュポン、マーク、デイヴのやりとりは、ほんと中学生の教室、クラブ活動で見られるような子どもっぽさで、イヤな意味で微笑ましくもあったり。実は嫌われてるけど、気前がいいのでみんなからチヤホヤされてる金持ちのぼんぼんが、頭からっぽで根暗だけどスポーツマンの少年も取り巻きに加える。二人はやがて友だちがいないもの同士、互いにないものを補い合って親密に。でもぼんぼんは、クラスの人気者である学級委員長と本当は仲良しになりたくて、金や親の権力を使って何とか委員長に近づくことに成功。そうなると、スポーツくんが不要、ウザくなってきて、邪険にしだす。戸惑い傷つくスポーツくん。表向きは愛想よくしてるけど、ぼんぼんとはさりげなくもキッパリ距離を置く委員長。自分と友だちになってくれない、自分と違って本当に誰からも愛されている委員長に対して憎悪を抱き始めるぼんぼんは、ひとりぼっち同士スポーツくんとヨリを戻そうとするけど、心底傷ついたスポーツくんは、すっかり心を閉ざし完全無視…みたいな関係は、中学生日記?!と見紛うほど。過激になった中学生日記、みたいな。
デュポン役でアカデミー主演男優賞にノミネートされたスティーヴ・カレルは、元々は人気コメディアン。笑いを封印し、特殊メイクを施してヤバい人を怪演してます。あまりにもイタい人っぷりでブラックな笑いさえ誘うところは、さすがコメディアン。
マーク役は、チャニング・テイタム。実質の主役はカレルよりも彼のほうです。ハリウッドきっての肉体派なタム蔵ですが、いつもに増して肉肉しいです。ゴツくてガチムチ、レスラー体型を見事に作り上げてます。オツムがちょっとアレなのかなと心配になる暗い無表情が、怖いヤバい。ほぼ出ずっぱり、オールヌード、リアルなレスリングシーンや、鏡を頭突き割りシーンなど、文字通り肉体を擲って大熱演してます。彼だけオスカーにノミネートされなかったのが可哀想。「マジック・マイク」とかもそうだけど、肉体美だけでなく身体能力もスゴいタム蔵。この映画でも、あのゴツいカラダでひょいっとバック転とかするし。
デイヴ役で、アカデミー助演男優賞にノミネートされてるマーク・ラファロ。スーパーマリオみたいな風貌が可愛い。彼って男くさいけどすごく暖かい、優しい、懐が深い感じがするので好きです。ソフトな声も素敵。
屋敷や馬など、デュポン家の優雅で上品な雰囲気が、名家って感じでした。由緒ある名家と成金セレブって、やっぱ違うんですね~。
この映画、作り方によっては超おいしいBL映画になり得たのにな~。ほぼ男だけ、男だらけの男祭りな映画だし。そのままキス、セックスしちゃうのでは?!なガッツリベタベタシーンも多かったし。デュポンがキモいおっさんじゃなくて男前紳士だったら、さぞかし腐的にはウホウホだったでしょう。こういう映画、日本でも作ってほしいな~。理想妄想キャストは、デュポン=岡村隆史、マーク=池松壮亮、デイヴ=妻夫木聡、で!レスリングはボクシングに変更。イケると思うわ~。
↑鬼気迫る劇中とは違い、オフスクリーンでは和気藹々な3人
オリンピック金メダリストのレスリング選手マークは、コーチである兄デイヴの助手をしながらくすぶった生活を送っていた。そんな中、デュポン財閥の御曹司ジョンから、彼がスポンサーであるレスリングチーム“フォックスキャッチャー”にスカウトされたマークは…
「カポーティ」「マネーボール」など、実話映画化に長けたベネット・ミラー監督の新作。ミラー監督は、この映画でカンヌ映画祭の監督賞を受賞、今年のオスカー候補にもなっています。
男たちの愛と憎しみ、嫉妬や欲望が渦巻くドロドロドラマ!と、ワクワク期待に胸ふくらませて観に行ったのですが。思ってたほどドロドロではなく、ちょっと肩すかしでした。全体的に暗く冷たい乾いた空気に支配されていて、ドロドロというよりドヨヨ~ン系?あまりにも鬱々しく重苦しいムードなので、いま心がしんどい人は観ないほうがいい映画かもしれません
鬱映画ですが、男たちの心の闇は興味深く描かれていました。理解しがたい狂気ではなく、何か身近にもありそうな、見覚えのある黒い暗い深層心理。そもそも、デュポンとマークが抱えている葛藤や苦悩が、すごく子どもっぽいんですよ。おまえら中学生か!みたいな。小・中学生の男子にありがちな言動、心の揺れや爆発が、何だか笑えてしまった。男って基本、いくつになっても子どもだよな~。やっぱ女のほうが強くてズルい生き物です。
デュポンなんて、見た目だけ年老いたガキそのものだし。欲しがり屋さんで、手に入らなかったり気に入らなかったりすると、ダダこねるわスネるわプッツンするわな、甘やかされた困ったちゃん坊ちゃま。見栄っぱりなところも、子どもっぽすぎるんですよ。自画自賛なドキュメンタリー映画とか、ママの前で有能ぶるところとか、出来レースやらせ試合とか、イタすぎて滑稽。まわりのみんなが調子合わせてあげてるところなど、はたから見たら裸の王様すぎて哀れにもなります。才能も人徳もない人に、虚栄心と金だけは腐るほどあったというところが、悲劇の根幹だったのかもしれません。あの無駄づかいされまくった金が、もし本当に有能で高徳な人にあれば…と、心の底から思いました。
マークも、図体がデカイだけのアホで心の弱いガキそのもので、そのレスリング以外無能な脳筋キャラにイラっとさせられます。デュポンと兄ちゃんの言いなり、受け身すぎ。甘えんなー!しっかりしろ!と叱りたくなりました。頭が悪い、心が弱いせいで、容易につけこまれ操られるマークって、ヤバい新興宗教や思想にハマってテロリストに仕立て上げられちゃうタイプですよ。オ○ムやイス○ム国に入らなかったのは、不幸中の幸いだったかもあんなに屈強な肉体と、レスリングの才能、厳しい練習に取り組む根性があったんだから、もうちょっと自信をもって生きてほしかったです。そうできなかったのも、悲劇の要因と言えましょう。健全な肉体には健全な魂が、とか言うけど…必ずしもそうとは言えないのね、とマークのコワレっぷりを見ていて思いました。そして、おいしい話、都合のいい話には何かある、軽々しく乗ってはいけないと痛感。あと、せっかくの名声も、うまく世の中で立ち回らないと宝の持ち腐れになるんだな~と、あの人は今な金メダリストを思い出して切なくなりました。
いちばんの被害者は、マークの兄デイヴです。可哀想すぎる!至極まともで、フツーにいい人だった彼が、いちばん理不尽で悲惨な目に遭ってしまうなんて。悲運としか言いようがありませんが…彼の常識人キャラ、裏を返せば俗っぽい人柄には、いろいろ考えさせられました。ナンダカンダで金で動く、生活のためには不本意なことも我慢するところなど、誰だって私だって同じことするだろうと思いつつ、デュポンの金にあかせたオファーなど一蹴してほしかった、デュポンを崇敬しているかのようなコメントを強いられても拒否してほしかった。金や安定がすべてじゃない、信念やプライドを貫くという美しい男気って、やっぱ非現実的な理想なんだな~。それを知っているからこそ、黒田博樹のカープ復帰には多くの人が感動したのでしょう。
男たちのダークサイドを描いた映画ですが。デュポン、マーク、デイヴのやりとりは、ほんと中学生の教室、クラブ活動で見られるような子どもっぽさで、イヤな意味で微笑ましくもあったり。実は嫌われてるけど、気前がいいのでみんなからチヤホヤされてる金持ちのぼんぼんが、頭からっぽで根暗だけどスポーツマンの少年も取り巻きに加える。二人はやがて友だちがいないもの同士、互いにないものを補い合って親密に。でもぼんぼんは、クラスの人気者である学級委員長と本当は仲良しになりたくて、金や親の権力を使って何とか委員長に近づくことに成功。そうなると、スポーツくんが不要、ウザくなってきて、邪険にしだす。戸惑い傷つくスポーツくん。表向きは愛想よくしてるけど、ぼんぼんとはさりげなくもキッパリ距離を置く委員長。自分と友だちになってくれない、自分と違って本当に誰からも愛されている委員長に対して憎悪を抱き始めるぼんぼんは、ひとりぼっち同士スポーツくんとヨリを戻そうとするけど、心底傷ついたスポーツくんは、すっかり心を閉ざし完全無視…みたいな関係は、中学生日記?!と見紛うほど。過激になった中学生日記、みたいな。
デュポン役でアカデミー主演男優賞にノミネートされたスティーヴ・カレルは、元々は人気コメディアン。笑いを封印し、特殊メイクを施してヤバい人を怪演してます。あまりにもイタい人っぷりでブラックな笑いさえ誘うところは、さすがコメディアン。
マーク役は、チャニング・テイタム。実質の主役はカレルよりも彼のほうです。ハリウッドきっての肉体派なタム蔵ですが、いつもに増して肉肉しいです。ゴツくてガチムチ、レスラー体型を見事に作り上げてます。オツムがちょっとアレなのかなと心配になる暗い無表情が、怖いヤバい。ほぼ出ずっぱり、オールヌード、リアルなレスリングシーンや、鏡を頭突き割りシーンなど、文字通り肉体を擲って大熱演してます。彼だけオスカーにノミネートされなかったのが可哀想。「マジック・マイク」とかもそうだけど、肉体美だけでなく身体能力もスゴいタム蔵。この映画でも、あのゴツいカラダでひょいっとバック転とかするし。
デイヴ役で、アカデミー助演男優賞にノミネートされてるマーク・ラファロ。スーパーマリオみたいな風貌が可愛い。彼って男くさいけどすごく暖かい、優しい、懐が深い感じがするので好きです。ソフトな声も素敵。
屋敷や馬など、デュポン家の優雅で上品な雰囲気が、名家って感じでした。由緒ある名家と成金セレブって、やっぱ違うんですね~。
この映画、作り方によっては超おいしいBL映画になり得たのにな~。ほぼ男だけ、男だらけの男祭りな映画だし。そのままキス、セックスしちゃうのでは?!なガッツリベタベタシーンも多かったし。デュポンがキモいおっさんじゃなくて男前紳士だったら、さぞかし腐的にはウホウホだったでしょう。こういう映画、日本でも作ってほしいな~。理想妄想キャストは、デュポン=岡村隆史、マーク=池松壮亮、デイヴ=妻夫木聡、で!レスリングはボクシングに変更。イケると思うわ~。
↑鬼気迫る劇中とは違い、オフスクリーンでは和気藹々な3人