まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

私より強い男を探してた

2015-07-29 | 北米映画 20s~50s
 お松の独りアイルランド映画祭③
 「静かなる男」
 30年代のアイルランド。アメリカから生まれ故郷に戻ってきた元ボクサーのショーンは、村の金持ちで偏屈者であるダナハーの妹メアリーと恋に落ちる。しかし、ショーンのことが気に入らないダナハーは、二人の結婚を認めようとせず…
 巨匠ジョン・フォード監督が、4度目!のアカデミー賞監督賞を受賞した名作。アイルランドが舞台ということで、さっそく観てみました♪
 フォード監督&ジョン・ウェインのコンビ作といえば、硬派で骨太な男の映画、というイメージですが。意外なことに、この映画はほとんどラブコメなんですよ。男らしい主人公と勝気なヒロインが互いに一目ぼれ、でも気が強い者同士なかなか素直になれなかったり、周囲や環境に邪魔されたりしつつ、ケンカしながらもラブラブになっていき、障害を乗り越えてハッピーエンド。壁ドンや顎クイ、お姫様ダッコとか雨の中のキスとか、胸キュンなLOVEシチュエーションもバッチリあったりします。

 基本は純愛ラブコメ、そこにフォード監督&ジョン・ウェインっぽい漢(おとこ)らしいシーンや友情人情、そしてアイルランドの美しい自然がトッピングされている、といった感じの映画でしょうか。とにかく、ジョン・ウェイン扮するショーンが、今や絶滅種ともえいる男らしいキャラなんですよ。ハーレイクンとかによく出てくる、ほとんどファンタジーな男。生まれはアイルランドだけど、育ったのはアメリカなヤンキーキャラも素敵。アメリカナイズされたショーンが、アイルランドの風習や因習に戸惑う、というより、そんなん知るか!と男らしく打破していく姿が、めっちゃ痛快豪快でカッコいい。ヒロインだけでなく、周囲の男たちも惚れていく雄々しさ。でも、やみくもに男らしさをひけらかす粗野さはなく、普段は静かで紳士的なところも理想的。そんな強く優しい男に、恋しない女はいないでしょう。ヒロインのメアリーも、ショーンのやることなすことにハートをズキュンバキュンされまくり、でもプライドが高く気が強いので、逆らったり抗ったり、でも好き好き大好きビーム出しまくりな彼女のツンデレっぷりが、かなり笑えます。

 素直になれないメアリーに対するショーンのアプローチが、これまた男らしいんですよ。たいていのことは女に合わせてくれ、女が怒ったりスネたりしても可愛い奴だなと余裕で笑ってる彼ですが、いざという時はめっちゃ強引。その行動力、決断力に女はますますメロメロに。女ってほんとは、自分より強い男に屈したいんだよな~。メアリーみたいな気が強い女は、特にそんな傾向あり。なんとか結婚にこぎつけても、兄が認めてくれない、持参金なしで嫁入りした自分が恥ずかしいと、ショーンにとってはどーでもいいことにウジウジこだわって家出してしまうメアリー。ついにプッツンし、彼女を無理やり家に連れて帰るショーン。ズルズル女を引きずりまわしたり髪の毛掴んだり突き飛ばしたり、DVに近い強引さはちょっと怖かったけど。でも、ワガママな女にはあれぐらいの荒療治は必要!女もナンダカンダで嬉しそうだったし。愛のために手をこまねいたり手を抜いたりしない男って、ほんとカッコいいですよね。あんな風に男に、熱く大切に思われるって幸せなことです。

 ショーン役のジョン・ウェインがカッコよかったです。イケメンとか美男は腐るほどいるけど、彼みたいな男の中の男は今いないですよね~。キャラ的には、高倉健に近い?顔がちょっと國村準に似て見えたのは私だけ?デカくてゴツいところも頼もしい。ラブコメも頑張ってたけど、馬に乗って疾走するシーンや、ダナハーとのファイトクラブも真っ青なガチンコタイマンシーンは、これぞジョン・ウェイン!な漢(おとこ)っぷりです。まさに拳で解かり合う的なショーンとダナハー、ノリはジャンプの漫画っぽくて笑えた。それはそうと…ショーンは、もうちょっと若い俳優のほうがよかったかも。青年役にしては、さすがに見た目はおじさんすぎなジョン・ウェインでした。
 メアリー役のモーリン・オハラも、すごくチャーミングでした。勝気なキャラにピッタリな赤毛も印象的。主役のカップルを取り巻く人々も、みんないい味だしてます。アイルランド人って、のんびりとおおらか、でも血の気が多い、という気質なのでしょうか。私も日がな一日、のんびりパブでほろ酔いしてみたいものです。
 この映画の真の主役は、アイルランドの自然の美しさかも。木々の葉や大地の緑、空の青、涼やかな小川、荒々しい海、のどかな馬や羊etc.すべてがほんと瑞々しくて清らかで牧歌的で、デトックスできそう!シンプルな住民の生活も、いいな~と感嘆。携帯やPCなんてなくても、じゅうぶん生きていけるんですよねホントは。ゴチャゴチャ不必要なものにあふれた、有害な情報にまみれた現代社会が、あたらめて薄汚れた息苦しいものに思われました。
コメント
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