まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

月明り蒼い渚で…

2017-05-08 | 北米映画 15~21
 「ムーンライト」
 学校ではいじめられ、麻薬中毒の母親からは育児放棄されている孤独な黒人少年シャロンは、ドラッグ売人のフアンと出会う。何かと自分を気遣ってくれるフアンに、シャロンは心を開くようになるが…
 今年のアカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚色賞の3部門を獲得した話題作を、やっと観ることができました(^^♪
 オスカー授賞式でのクライマックスのハプニング、ほんと衝撃的でしたよね~。せっかく栄えある作品賞に輝いたのに、あんな形での受賞は気の毒としか言いようがない。ララランドも可哀想だった。でも、災い転じて福となすというか、すごい宣伝にはなりました。ララランドだけでなくこっちも観てみよっかな、と多くの映画ファンの興味を惹き、観客動員につながったことも事実ではないでしょうか。私はもともと、ラララよりもこっちのほうにが気になってました。理由は言うまでもなく、私が腐だからこの映画、黒人の物語というだけでなく、黒人のゲイのドラマ、ということも話題に。マイノリティ+LGBTって、なかなかヘヴィ。日本では一般受けしない内容かもしれません。私もどちらかといえば、軽い楽しい映画のほうが好きだし、3度のメシより好物なBLにしても、重すぎ現実的すぎるのは苦手。ということで、気にはなってたけどしんどいのはイヤだな~と、不安に思いながら観たのですが…シビアで悲痛ながらも、心に沁みる美しい佳作でした。

 この映画、期待してた以上に腐ってた(笑)のがナイスでした。人種差別、いじめ、貧困、育児放棄、麻薬など、深刻な社会問題がコレデモカ!と詰め込まれてるのですが、それらをリアルに告発したり提起するのではなく、メインボーカルのBLを盛り立てるバックコーラス的な役目になってたのが、私には好ましかったです。そのBLも、かなり切なくてセンチメンタルでビタースウィートで、性的なシーンもほとんどないので、ライトな腐向けです。乙女ちっくとも言えるピュアなBLを、デカいゴツい野獣のような黒人さんたちが繊細に哀切に奏でてるところが、異色かつ新鮮でした。

 ガキんちょシャロン、高校生シャロン、大人シャロン、の3部構成になってるのですが、どのパートのBLもとにかく切ないです。恋や性愛のエリアに踏み込みそうで踏み込まないもどかしさが、腐のハートをムズキュン。演出とムードが、すごい腐のツボを突くんですよ。特に、シャロンとケヴィンの夜の渚での出来事、大人になって再会した二人がぎこちなく遠まわしに想いを確かめ合う台詞に、男女の恋愛にはないやるせなさが。バリー・ジェンキンス監督は、ゲイなのかな?ノンケや腐女子では作れないような映画だと思うのだけど。
 学校ではいじめられるわ、母ちゃんはジャンキーな娼婦で育児放棄だわ、風呂のお湯がでないわ、もう辛酸なめ太郎すぎるシャロンが可哀想で暗澹となってしまうのですが、不思議と陰惨で悲劇的な映画になってなかった。捨てる神あれば拾う神あり、不幸で過酷な環境にあっても、優しさと愛情にもシャロンが恵まれていたからでしょうか。私など、特に不自由なく、辛い目に遭うこともなく育ちましたが、シャロンのように誰かに温かく優しくされたことないですし。フアンとケヴィンの存在だけで、シャロンは不幸な人間とは思えませんでした。それにしても。シャロンの我慢強さに驚嘆。私なら絶対に耐えられんわ~。
 こんなに黒人しか出てこない映画を観たのは初めて。出演者たちの好演も、忘れがたいです。フアン役のマハーシャラ・アリは、アカデミー賞助演男優賞を受賞。

 こんないい人がヤクの売人とか、矛盾ありすぎるわ~。フアンみたいな人こそ、学校の先生とか政治家になってほしいのに。シャロンへの慈父のような優しさ、温かさが感動的でした。赤の他人であるシャロンへの優しさも、フツーなら何か魂胆がある、少年愛の変質者?と疑うところですが、あの明るくて屈託のない笑顔にはシャロンじゃなくても心を許すわ。いかつくてコワモテ、一目でその筋の人と判る風貌に仏心を宿したフアンを、マハーシャラさんが魅力的に演じてました。時おり見せる悲しい表情が、心の中での鬼と仏の葛藤に苦悩してるようでした。疑似父子みたいなシャロンとフアンですが、ちょっとだけショタっぽい危うさもあって、ドキっとさせられることも。特に海で泳ぐシーン。何かを待ってるような、何をしても受け入れそうなシャロンを、フアンが今にも抱きしめそうな雰囲気。あれは父子な二人じゃなかったぞ!マハーシャラさん、第1部のみ登場ですぐに消えちゃうのですが、シャロンの心同様、観客の心にも最後まで残る名演でした。
 007シリーズのマネーペニー役で有名なナオミ・ハリスが、シャロンのジャンキーママ役を熱演しオスカー候補に。本来は美しく知性的なイギリス女性のナオミが、アメリカのヤク中底辺女役!まさに自分とは正反対な女の役なのに、なかなかのハマリっぷりでした。浅ましい醜態、狂態に、こんなママ絶対イヤ!とドン引きしつつ、何か哀れで痛ましくもあって、シャロンが彼女を見捨てられないのも理解できました。

 各時代のシャロンを演じた3人の俳優たちも賞賛に値します。見た目もナイーブだった少年シャロンが、大人になるとプロレスラーのような様変わりしてビツクリ。怖い風貌になったシャロンが、ケヴィンとの再会に胸ときめかせたり不安に揺れたり、中身はデリケートな少年のままなのが微笑ましかったです。あと、フアンの恋人テレサ役も、好感度の高いキャラでした。演じてたジャネール・モネイが、クールな美人。
 本当の愛は、運命の人は、人種とか男女とか関係ないんですね。ケヴィンなんて、基本はバリバリのヤリチンノンケなのに。マイノリティやLGBTの試練や困難が、私には羨ましくもあります。私なんかそもそも、戦ったり悩んだりする本当の愛にも運命の人にも縁がない!それにしても。やっぱ男のほうが、女より純で優しくてロマンチックですよね~。母親への愛憎にしろ、一途な初恋にしろ、女はもっとドライで冷酷で現実的、打算的だよな~と、シャロンやフアン、ケヴィンを見ていてつくづく思いました。
コメント (3)
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