「スリー・ビルボード」
ミズーリ州の田舎町で、少女がレイプされた上に焼き殺されるという凄惨な事件が起きる。犯人が逮捕されないことに業を煮やした被害者の母ミルドレッドは、三つの看板に警察署長のウィロビーを非難する意見広告を出す。ウィロビーを敬愛する部下のディクソンや町民たちは、ミルドレッドに激しい敵意を抱く。それはやがて、思わぬ事態を引き起こすことに…
来たるオスカーの最有力作と目されている話題作を、ついに観ることができました!マーティン・マクドナー監督の「ヒットマンズ・レクイエム」「セブン・サイコパス」が好きなので、この新作もすごく楽しみにしていました。高い評価も納得の、すごくユニークでインパクトある秀作でした!
レイプ殺人に人種差別、暴力、末期がん、家族崩壊etc.描かれている悲惨で暗い人間関係や社会の病巣には、フツーなら気が滅入ってしまうところなのですが、この映画の不思議さというか面白さは、深刻で悲痛なドラマなのにプっと笑ってしまうダークでブラックなユーモアにあります。こんな話がコメディになってしまうなんて、日本ではありえません。
悲惨で苛烈なシチュエーションなのに、ミルドレッドとディクソンのブチギレ大暴れっぷりが笑えるんですよね~。非道いけど、ある意味痛快でもあって。あんなに正直に堂々と、ムカつく相手に手や足を出してみたいものです。ほとんど殺人未遂な暴力を振るいまくってるのに、そんなに大事にならないところが怖い。あれぐらいの暴力は、アメリカでは日常茶飯事なのでしょうか。どのバイオレンスシーンも激烈かつ珍妙なのですが、私が特に好きなのは、ミルドレッドが歯医者の指にドリルで穴を開けるシーンと、ディクソンが看板管理者をボコボコにして窓から放り投げるシーン。とにかく触るな危険!な二人がヤバすぎて笑えました。
ヴァイオレンスなミルドレッドとディクソンに関わる人々も、みんな強烈で味わい深いキャラばかりでした。ディクソンのママとか、この息子にしてこの母ありな、とんでもないクソババア、なのにムカつくよりも笑えるナイスなキャラになってるんです。ミルドレッドの元夫のGFも、アホだけど微笑ましい、ちょっとホっとさせるキャラになってたし。私が最も好きなサブキャラは、ミルドレッドに気があるドワーフのジェームズ。彼の優しさと哀しみが、すごく心に沁みました。「ペネロピ」などの人気ドワーフ俳優ピーター・ディンクレイジが、今回もいい味だしてました。
笑える暴力が独特ですが、登場人物たちが滲ませる哀愁、悲哀が、押し付けがましくなくしみじみと伝わってくるところも、マクドナー監督ならではでした。脚本が今回も秀逸で、まったく展開が読めません。正義を求めていたミルドレッドが、まさかの?!とか、とんでもないクソ野郎だったはずのディクソンが、まさかの?!とか。ラスト近くになって、まさかのタッグ!とか、最後まで観客を楽しく驚かせてくれます。レイプ殺人の犯人が、ついに?!な急展開、そして真相も、ああ脚本が巧いな~と感嘆しちゃいました。脚本の巧妙さが、とにかく劇中あちこちできらめいてます。大やけどを負ったディクソンが、病室で一緒になった患者は…とか、そうきたか!と膝を打ちました。病室でのシーン、笑えるけど感動的で、ホロっときたわ~。
この映画のテーマは、赦し合うこと、理解し合うことの難しさ大切さ、でしょうか。この映画は今の殺伐と混沌としたアメリカ社会への、痛烈かつ優しいメッセージのように思えました。憎しみや暴力は、結局のところ不毛なだけ。身も心も傷だらけになり、怒涛の紆余曲折を経てそれに気づいたミルドレッドとディクソンの姿に、一抹の希望を見ることができました。ラストシーンの二人、彼らが選ぶ道はきっと…観客の想像に委ねる終幕も、しみじみと深い印象を残します。
脚本同様、キャストも素晴らしいの一言に尽きる!もう学芸会邦画なんて観てられなくなりますよ!ミルドレッド役を激演した名女優フランシス・マクドーマンドは、オスカーを受賞した「ファーゴ」以上のディープインパクト!クズどもバカどもに容赦なく鉄拳をくらわす豪胆さ、迫力ときたら!一匹狼のハードボイルドおばちゃん、キレるけど常に冷静で無表情なのがシブくてカッコいい!まったくキレイに見せようとしてない風貌だけでも、生半可な女優では不可能。荒々しくも悲しく、かつかなりズレてて笑える前代未聞のヒロインを、世界広しといえども演じることができたのはマクド姐さんだけ!オスカーは彼女以外ありえないのでは。
「セブン・サイコパス」でも好演してたサム・ロックウェルとウディ・ハレルソンが、この映画で仲良くオスカーの助演男優賞にノミネートされています。
マクド姐さんとほぼW主演と言っていいのが、ディクソン役のサム・ロックウェル。凶暴なんだけど、何か憎めない可愛さ、哀切さもあって、そのヤバさにドン引きしつつ、愛しくもなるチャーミングな名演でした。小柄でちょっとユルい感じの体型も、親近感たっぷり。決して悪人ではなく、生まれ育った環境ゆえに、人種差別は交通ルールを守ることと同じような常識、みたいな感覚を自然に身に備えてしまった怖い天然さが、その激情的かつピュアな表情から伝わってきて、否応なく惹きこまれます。ウィロビー署長役のハレルソン氏は、誰よりもヤバそうなコワモテ風貌ながら、もっとも優しく悲しい役でした。彼のミルドレッドとディクソンに遺した思いと願いは、まさに世界中の憎しみや恨みにまみれた人々への愛のメッセージのようでした。ミルドレッドの息子役のルーカス・ヘッジズくんの好演も印象的でした。
それにしても。レイプしたあげく焼き殺すなんて、犬畜生にも劣る赦しがたい所業ですよね~。日本でも三島女子大生殺人事件、岡山の元同僚殺人事件とか、映画に酷似した酸鼻をきわめた凄惨すぎる事件がありましたね。両事件の鬼畜どもは、当然のことながら死刑執行になりましたが…とても二つの事件をブラックコメディになんか、日本ではできないだろうし、してほしくないですね~…
ミズーリ州の田舎町で、少女がレイプされた上に焼き殺されるという凄惨な事件が起きる。犯人が逮捕されないことに業を煮やした被害者の母ミルドレッドは、三つの看板に警察署長のウィロビーを非難する意見広告を出す。ウィロビーを敬愛する部下のディクソンや町民たちは、ミルドレッドに激しい敵意を抱く。それはやがて、思わぬ事態を引き起こすことに…
来たるオスカーの最有力作と目されている話題作を、ついに観ることができました!マーティン・マクドナー監督の「ヒットマンズ・レクイエム」「セブン・サイコパス」が好きなので、この新作もすごく楽しみにしていました。高い評価も納得の、すごくユニークでインパクトある秀作でした!
レイプ殺人に人種差別、暴力、末期がん、家族崩壊etc.描かれている悲惨で暗い人間関係や社会の病巣には、フツーなら気が滅入ってしまうところなのですが、この映画の不思議さというか面白さは、深刻で悲痛なドラマなのにプっと笑ってしまうダークでブラックなユーモアにあります。こんな話がコメディになってしまうなんて、日本ではありえません。
悲惨で苛烈なシチュエーションなのに、ミルドレッドとディクソンのブチギレ大暴れっぷりが笑えるんですよね~。非道いけど、ある意味痛快でもあって。あんなに正直に堂々と、ムカつく相手に手や足を出してみたいものです。ほとんど殺人未遂な暴力を振るいまくってるのに、そんなに大事にならないところが怖い。あれぐらいの暴力は、アメリカでは日常茶飯事なのでしょうか。どのバイオレンスシーンも激烈かつ珍妙なのですが、私が特に好きなのは、ミルドレッドが歯医者の指にドリルで穴を開けるシーンと、ディクソンが看板管理者をボコボコにして窓から放り投げるシーン。とにかく触るな危険!な二人がヤバすぎて笑えました。
ヴァイオレンスなミルドレッドとディクソンに関わる人々も、みんな強烈で味わい深いキャラばかりでした。ディクソンのママとか、この息子にしてこの母ありな、とんでもないクソババア、なのにムカつくよりも笑えるナイスなキャラになってるんです。ミルドレッドの元夫のGFも、アホだけど微笑ましい、ちょっとホっとさせるキャラになってたし。私が最も好きなサブキャラは、ミルドレッドに気があるドワーフのジェームズ。彼の優しさと哀しみが、すごく心に沁みました。「ペネロピ」などの人気ドワーフ俳優ピーター・ディンクレイジが、今回もいい味だしてました。
笑える暴力が独特ですが、登場人物たちが滲ませる哀愁、悲哀が、押し付けがましくなくしみじみと伝わってくるところも、マクドナー監督ならではでした。脚本が今回も秀逸で、まったく展開が読めません。正義を求めていたミルドレッドが、まさかの?!とか、とんでもないクソ野郎だったはずのディクソンが、まさかの?!とか。ラスト近くになって、まさかのタッグ!とか、最後まで観客を楽しく驚かせてくれます。レイプ殺人の犯人が、ついに?!な急展開、そして真相も、ああ脚本が巧いな~と感嘆しちゃいました。脚本の巧妙さが、とにかく劇中あちこちできらめいてます。大やけどを負ったディクソンが、病室で一緒になった患者は…とか、そうきたか!と膝を打ちました。病室でのシーン、笑えるけど感動的で、ホロっときたわ~。
この映画のテーマは、赦し合うこと、理解し合うことの難しさ大切さ、でしょうか。この映画は今の殺伐と混沌としたアメリカ社会への、痛烈かつ優しいメッセージのように思えました。憎しみや暴力は、結局のところ不毛なだけ。身も心も傷だらけになり、怒涛の紆余曲折を経てそれに気づいたミルドレッドとディクソンの姿に、一抹の希望を見ることができました。ラストシーンの二人、彼らが選ぶ道はきっと…観客の想像に委ねる終幕も、しみじみと深い印象を残します。
脚本同様、キャストも素晴らしいの一言に尽きる!もう学芸会邦画なんて観てられなくなりますよ!ミルドレッド役を激演した名女優フランシス・マクドーマンドは、オスカーを受賞した「ファーゴ」以上のディープインパクト!クズどもバカどもに容赦なく鉄拳をくらわす豪胆さ、迫力ときたら!一匹狼のハードボイルドおばちゃん、キレるけど常に冷静で無表情なのがシブくてカッコいい!まったくキレイに見せようとしてない風貌だけでも、生半可な女優では不可能。荒々しくも悲しく、かつかなりズレてて笑える前代未聞のヒロインを、世界広しといえども演じることができたのはマクド姐さんだけ!オスカーは彼女以外ありえないのでは。
「セブン・サイコパス」でも好演してたサム・ロックウェルとウディ・ハレルソンが、この映画で仲良くオスカーの助演男優賞にノミネートされています。
マクド姐さんとほぼW主演と言っていいのが、ディクソン役のサム・ロックウェル。凶暴なんだけど、何か憎めない可愛さ、哀切さもあって、そのヤバさにドン引きしつつ、愛しくもなるチャーミングな名演でした。小柄でちょっとユルい感じの体型も、親近感たっぷり。決して悪人ではなく、生まれ育った環境ゆえに、人種差別は交通ルールを守ることと同じような常識、みたいな感覚を自然に身に備えてしまった怖い天然さが、その激情的かつピュアな表情から伝わってきて、否応なく惹きこまれます。ウィロビー署長役のハレルソン氏は、誰よりもヤバそうなコワモテ風貌ながら、もっとも優しく悲しい役でした。彼のミルドレッドとディクソンに遺した思いと願いは、まさに世界中の憎しみや恨みにまみれた人々への愛のメッセージのようでした。ミルドレッドの息子役のルーカス・ヘッジズくんの好演も印象的でした。
それにしても。レイプしたあげく焼き殺すなんて、犬畜生にも劣る赦しがたい所業ですよね~。日本でも三島女子大生殺人事件、岡山の元同僚殺人事件とか、映画に酷似した酸鼻をきわめた凄惨すぎる事件がありましたね。両事件の鬼畜どもは、当然のことながら死刑執行になりましたが…とても二つの事件をブラックコメディになんか、日本ではできないだろうし、してほしくないですね~…